戦いに敗れたことで雅緋は指示に従うことを約束する
そして勝者権限を浄土された忌夢からの元の世界に戻ろうという話しを承諾する
覚悟を決めた雅緋と光牙の2人は別れを告げるために母の待つ炊事場に向かった
炊事場に到着した2人を母も待っていてくれたようであり、そこには母の手作りの親子丼が用意されていた
あの日食べられなかった母の親子丼を母を含めた3人で食すことができたことに光牙も雅緋も幸せを感じた
すると母は子供たち2人の成長を心ゆくまで堪能した母に未練も悔いもなく、清々しい思いだったという自分の思いを告げる
同時に未練が消えたことでこの世から消え始めた
光牙と雅緋は消えゆく母に最高の見送りの言葉を送り、それを受け、この上ない幸せを抱きながら母は消えていった
大好きだった母とちゃんとした別れを経て、涙を流しながらも心を一段と強くさせる2人だった
時刻は夕方を迎えていた
「……っ」
雅緋が拠点への帰路に着いていた
拠点ではすでに全員が勢揃いしていた
「すぅ~……ふぅ~……」
今までのことがあり、少し複雑な心境を抱く雅緋だったが
深呼吸をし、心を落ち着かせた雅緋が意を決して皆の元に向かって行った
「み、みんなっ!」
「「「「「――っ?」」」」」
全員に向けられた声に皆が振り返るとそこに雅緋が立っていることに気づいた
「た、ただいま…今帰ったぞ」
少し申し訳ない様子で雅緋が皆に挨拶をする
「雅緋…おかえり」
「あぁ、心配をかけたな――っでも、これでもう大丈夫だ。私はもう迷わない」
、
「そうか、よかった…」
雅緋の帰りを待っていた忌夢は心のそこから嬉しそうに言葉を送った
「なんだなんだ?なに2人して盛り上がってんだよ?」
「雅緋さん…雰囲気が違う、なんか――っ匂いが変わった気がする…」
「それってどういう?」
「まぁ待て、ちゃんと説明するから」
忌夢ばかりが理解できてあまり話しについていけてない相馬たちに雅緋がこれまでのことを説明をする
いろんなことがあったが、それらの果てに、母との別れを告げたことを…
「…という訳なんだ」
「そう、そんなことがあったんだ…お母さん、消えちゃったんだね?」
最愛の人が消えてしまったのだと知り、両備は共感したかのように訪ねてきた
「――っいや、消えてなんかいないさ。私たちが母さんのことを忘れない限り、母さんは私たちの心の中で永遠に生き続けていく…私はそれで充分さ」
これに対して雅緋は母の存在も思い出もすべては自分の心の中で生き続けて行くことを語る
少し前の雅緋ならきっと言うことができなかったであろう言葉を
悲しみを乗り越えて強くなれたのだと雅緋は語ったのだった
「なるほどな。そんなことがあったのか…良かったじゃねえか雅緋。ちゃんと母ちゃんに別れ告げられてよ」
「あぁ、この世界で母さんと再会できて、今度はちゃんと別れを告げることができたんだ。私は母さんのためにも元の世界で強くなって見せる」
それが天国へと帰っていった母への送りものだから
「紫、両備、両奈、そして相馬。私も今まで悩んでいた身でこんなこと言える義理ではないのかもしれないことは承知している。だが敢えて問わせてもらう。蛇女の誇りとはなんだ?悪忍の生き様とはなんだ?私たちが戦うのは何のためだ?」
「「「…っ」」」
雅緋からの質問を受けた際にうち3人は言葉が出なかった
「…あ~。あのさ、ちょっといいか?」
「何だ相馬?」
するとその最中、見かねた相馬が口を開く
「俺ってさ女じゃないから本来蛇女の生徒でもねぇし、ぶっちゃけちゃえば色々成り行きで忍になっちまったじゃん?本当だったらここに居るようなもんでもねぇしな」
「まぁ、そう言われればそうだな?」
元々相馬は病を患ったことがきっかけで紆余曲折を経てここにいる言わばイレギュラーな存在である
その話しをされて雅緋たちもそうだったというような顔をしていた
「みんなみたいな大層な考えとかも持ってねぇんだけどよ、でもこんな俺が言えるとしたら、俺はこうなった以上は今の自分のできることを精一杯やって前に進んでいこうと思ってる。きっとその先に何かしらの答えがあるんじゃないかって思っているからさ」
「「「「「…ふっ」」」」」ニッコリ
相馬は自分がこれまで蛇女で悪忍として生きていくことになって得たものや経験したことについてを語る
自分は元が一般人でみんなのように忍としての何たるかを持っているわけではない
予期せずしてこうなったとはいえ、今は忍となったことでこんな自分にもできることがあるのならそれを精一杯やっていく、それが今後の自分の道に繋がっていくことになるだろうと信じていると語る
その相馬の言葉に自然と蒼馬も笑みを浮かべる
「相馬っ――良い答えだな。また少しお前のことを見直したぞ」
「よせやい、褒めてもなにも出ないぞこのやろがい♪」
「…まったくおだてればすぐこれだ。少し前まで悩んでいたのがウソのようだな?」
「これが俺のアイデンティティーなもんでね」
自分なりに答えについてを語る相馬を雅緋が褒める
相変わらずちょっと煽てればすぐにふざけた態度を取るも
そのおかげで場の空気が少し和らいだのもまた事実だった
「…それにもう決めたからよ。もう俺も迷わない、次に響たちがきたら今度こそちゃんと向き合ってあいつらの悲しみも怒りも受け止めてやるってさ」
次に響たちと会うことになったら、その時は彼女たちに自分の思いを伝え、逆に彼女たちの抱えるものも受け止めて見せる
少し前まで思い悩んでいるだけの相馬はもう居なかった。
今の彼の目にはしっかりと覚悟が垣間見えていたからだ
「相馬、お前の気持ちと覚悟はよくわかった。だが、一人で抱え込もうとは思うなよな?それはもうお前だけの話しではない、私たちは仲間だ。お前には我々がついているんだからな」
「へへっ、なんだよそれ、改めてそう言われるとなんだかこそばゆい気持ちになってくるな…あんがとな」
1人で抱え込む必要などないんだと言ってもらえたことに相馬は照れくささを感じる
「無論これはお前たちも言えることだ。私はお前たちも置いて先に行こうとは思わない、我々はチームであり、一蓮托生だ」
選抜メンバーは友であり、仲間である。
故に誰一人欠けては意味がない、誰かが欠けていては意味はないのだと雅緋は皆に伝えた
「雅緋…」
「雅緋さん…」
「…ありがとう」
「両奈ちゃんも嬉しいよ〜ん♪」
みんなで自分たちの道を切り開こう、そんな雅緋の言葉を聞いた他の面々も心打たれる
「さて、他の連中に遅れを取る訳にはいかない。私たちも動き出さなくてはな」
「あれれ?もう始めちゃうの?両奈ちゃんたちを放置プレイしないって言ったばかりなのに?」
「戦うことで見出せる答えもある。お前たちも知っているはずだ」
「…うん、確かにそうね。両備たちはそうやって答えを出してきたもんね」
「言えてる言えてる」
考えて答えが出せない時もある。それならば戦うことで見出すこともまた自分たちらしいと両備と相馬は頷いた
「さぁ行くぞ、忍の盆踊りは我々蛇女が制する!手始めは千年祭執行部から禍炎の魂で血祭りにあげてやろう!」
「「「「「おー!」」」」」
こうして気持ちも新たに蛇女はついに再始動するのだった…