自責の念に囚われてしまった佐介は気分を変えるために一人森を行く
そんな中、香ばしい匂いにつられながら佐介は一軒の家を発見する
さらに佐介の到着を心待ちにしていたかのように謎の女性とその跡に続いて男性と出会う
導かれるままに家に招かれ、2人とともにずらりと料理が用意された食卓を囲んだ
勧められた料理を食べた佐介は美味しさとともに何とも言えない感じを抱く
食事後に佐介はこれまで抱いていた疑問を2人に問うた
頃合いと感じた2人は佐介に自分たちが何者なのかを告白する
自分たちが佐介の両親だと
語られたその内容を聞いた佐介は驚愕する
そんな佐介を2人が優しく抱きしめ、そのぬくもりを感じた佐介もまた2人を抱きしめるのだった
時は半蔵学院と仮面の忍達が戦闘している頃まで遡る
半蔵学院の拠点で戦闘が行われている中、月閃女学館でも穏やかではない空気が流れていた
「…はぁ~」
叢たちの内輪揉め、紅蓮竜隊の襲撃の騒動があって以降、一先ず身を隠す事にした紫苑は
一本の木に縁りかかるように座していた
そんな中紫苑は考え事をしていた
理由は勿論叢達の事だ
『我はこの世界に残る。やはり黒影様と離れたくはない…』
『なぜ気持ちを押し殺してまで元の世界に戻らなければならないんだ!』
『そんなことは認めない、我がさせない。どうしても拒むというのなら!…力づくでも言うことをきいてもらう!』
紫苑の脳裏に叢の言葉がフラッシュバックする
この世界で黒影と時間を過ごしたことにより彼女を筆頭に夜桜も四季も美野里もこの世界に残ると言い出してしまった
「(僕は…どうしたらいいんだ?叢たちの気持ちもわからなくはない)」
しかし彼女たちの気持ちも分からなくはない
できることなら紫苑とて黒影とまた暮らすことができるなら自分とてそうしたい気持ちはある
「(…でも、やっぱりそれじゃダメだ。こんなことで黒影様は決して喜びはしない。なんとか叢たちにそれをわかってもらえたら…だけどどうすれば…)」
考えを模索するも今の紫苑にはいいアイディアが浮かばなかった
話し合いで解決しようにもあそこまで居を固めている彼女たちに生半可な説得などできようはずもない
一通り考えを模索しても答えは出なかった
「(せめて、せめて、力の制御を取り戻せれば…)」
この期に及んで未だ自分の力は不安定のまま
おまけにもっと最悪なのは
「っ…!?」
力を入れる度に出るこの闇の残留思念
「(どうして…どうしてまだ僕に纏わりつく、どうして僕をまだ苦しめる!?あの戦いは終わったのに、闇を消しさったと思ったの!この力のせいで僕は…僕は…)」
浮かび上がる闇を見て紫苑は嫌悪感を抱く
未だこの力があるせいで今の自分がどれ程苦労した事か…と
そんな考えばかりが頭を支配していた
「紫苑」
「っ!?」
すべきことがありすぎて頭を抱えている紫苑の元に同じくこの森に逃げてきた雪泉がやってきた
「大丈夫ですか?とても険しい顔をしていたようですが?」
「あぁ、えっと、そ、そんなことないよ。叢達にどうわかってもらえるかを考えてただけだよ」
心配している様子の雪泉を見て紫苑は自分が大丈夫だと主張する
「…嘘ですね」
「えっ?」
しかし雪泉にそれが嘘だと一瞬で見破られてしまった
「確かに貴方は今叢さん達の事も考えてはいます。でもそれと同時に別の事も考えていますね?」
「な、なんのことかな?」
「白を切っても無駄ですよ…私と貴方は幼き頃より、あの日出会った頃よりずっと一緒でした。それこそ叢さん達よりもずっと前から、そんな私を誤魔化せるとでも思っているのですか?」
「うぅ…」
雪泉のその言葉に紫苑は何も言えなくなってしまった
「紫苑、まだ闇の力のことを引きずっているのですか?」
「…まったく、全部お見通しとは、本当雪泉には敵わないわ。うん、そうだよ雪泉の言う通りさ、今もこの闇の力のせいで力をコントロールできていない、このままでじゃいつまで経っても僕は満足に戦うことすらできやしないんだ」
皆を説得させる為には勿論だが、先の紅蓮竜隊の襲撃のように他のチームが攻め込んで来た時の対処をする為にも力を取り戻さなければいけない事を正直に雪泉に話す
「そうでしたか。あなたはそれほどまでその内に潜みし力に苦しんでいたんですね?」
「うん、雪泉、僕はどうしたらいいんだろうか、なんとかしたくても今の僕にはこの力を消し去る方法が思い浮かばないんだ」
自らに潜む闇の力の残留をどう消し去ればいいのかと紫苑はこれまで抱えていた悩みと苦悩を雪泉に告げる
「…私からこんなことを言うのも変な話かも知れません。でも敢えて言わせてもらうなら……受け入れてみるのはいかがでしょう?」
「受け入れる?……まさか?」
「はい、その内に潜む闇の力を受け入れる…ということです」
雪泉のまさかのこの言葉に紫苑は空いた口が閉じないと言う感覚に襲われる
「ゆ、雪泉、何を言い出すの?この力は危険な代物なんだよ。これのせいで僕はあんな事になって、雪泉達を危険に晒してしまったんだよ?それを受け入れるなんて簡単にできる事じゃない」
ぎゅっと手を握りしめるとともに紫苑の脳裏にあの時の光景が蘇る
誘惑を受け、闇の力を解放した紫苑は圧倒的な力を得る代償として徐々に心を闇に食われかけてしまった
そのせいで雪泉達を傷付けてしまったりもした
挙句の果てにはあのような結末を迎えることにも
あの悲劇を生み出した象徴ともいえるこの力に紫苑は憎しみすら覚えるほどだった
故に雪泉から受け入れてみてはと言われても簡単に納得できる様なことではなかった
「…紫苑、嘗て私達は自分達の正義ばかりを優先して色んな事に目を背けてました。でもそれは飛鳥さんたちとの出会いから始まり、焔さんや雅緋さんとも戦いを通して悪が全て悪しき存在ではない事を知りました」
雪泉は紫苑に語りかけながらこれまでの自分達と飛鳥達との出会いを振り返っていった
出会った当初は互いを敵としか見る事が出来なかった自分達が今では共に笑い合い、切磋琢磨する友になれた
「その力もまた同じようなものだと思うんです。確かにその力によって貴方がどれ程苦しんでいるというのは百も承知です。でもだからといって一方的に切り捨てるだけでは何も解決しないと思うのです。貴方がその力を理解し、受け入れることができるのだとすればきっと答えが見えてくると私は思うんです」
「……闇を、受け入れる…」
紫苑は雪泉のその言葉に自分の内に潜む闇のことを改めて考える
「…そんなこと今まで考えてもみなかった。今の今まで。でも確かに雪泉の言うことも一理ある。どの道他に手がないのなら、僕は…っ」
見つめる拳をぎゅっと握りしめた紫苑は真剣な面持ちになった
「雪泉、ありがとう。僕やって見せるよ」
「はい、それでこそ紫苑です」
雪泉の励ましによって紫苑は道を見出した
その行きつく先は希望か、はたまた絶望か…