この数日間、佐介が1人で出歩きに行っている目撃例もあり、理由を探るべく尾行を決行した
佐介を追って山奥にやってきた飛鳥たちは自然豊かな綺麗な場所とそこに佇む一軒家を発見した
そしてそこからいろいろあって家の中に案内された飛鳥たちはそこで2人の正体が佐介の両親であることを聞かされた
まさかの展開に驚きを隠せずにいた飛鳥たちだったが、その後はすぐに、特に母と意気投合した様子であり
彼女から幼き日の佐介の様子をまとめたアルバムを見せてもらい、その愛らしさにすっかりメロメロになっていた
この間、佐介の羞恥心は臨界点寸前だったのはここだけの話……
後を着いていった事がきっかけとなり飛鳥達にも佐介の両親が居た事が知れ渡った
女性陣はあれからアルバムを見ながら色々と語り合いに花を咲かせていた
この間、佐介は己の底から湧き起こっている羞恥心に必死に耐えていた
やがて女性陣にとって楽しい一時が一段落を迎えた
「飛鳥ちゃんはこれをお願い」
「はい」
「斑鳩ちゃんの方はどうかしら?」
「こちらも問題はありませんわ」
談笑を終えた一同は時間がお昼を回っていたこともあり2人の提案によりここで昼食を取ることとなった
「そっちの方は?」
「こっちの方はもうすぐですよお母さん」
「そう、ありがとう♪」
佐介母と飛鳥、そして斑鳩が料理の調理を担当し、佐介を含む数名が食器などの用意をしていた
「…みんな、お待たせ。できたわよ」
「おぉ、出来たか」
「待ってました!」
そうして料理を作り出して数分後、準備が整い、出来上がった料理がテーブルに運ばれる
人数が人数だけに料理の量もかなりのものだった
肉と野菜の炒め物、焼き魚、卵焼きやお味噌汁
どれもこれも和食の定番ともとれるものばかりだった
「これが佐介の母さんの料理か、見てるだけでうっまそうだってわかるな♪」
「見た目だけじゃないよ、私と斑鳩さん料理を手伝う過程で軽く味見とかさせてもらったんだけどそれだけでもすんごくおいしかったもん」
「えぇ、とても良い味付けでした。わたくしも見習いたいくらいですわ」
テーブルに並んだ料理を見て葛城が率直な感想を述べる
仕込みなどを手伝っていた飛鳥たちは味見をしただけでもその料理の完成度は相当なものだったと述べていた
「さぁみんな、遠慮なく召し上がれ」
「うん、ではみんないただくとしよう」
「「「「「「はい、いただきます!」」」」」」」
食前の祈りの言葉を口にしながら皆箸を手に料理を口にする
「「「「「美味しい~♪」」」」」
すると黒獅と虎白、そして先んじて彼女の料理を口にしていた佐介以外の者たちの目がハッとなったように見開き
次に飛鳥たち全員の口からこぼれたのは料理を称賛する言葉だった
「こいつは確かに美味いな~♪」
「うん、でもさっき味見した時よりもこっちのほうが断然おいしいよ♪」
「この一つ一つ丁寧に調理されることで素材の味をしっかりと引き出している♪」
「ほっぺた落っこちそう~♪」
口にした料理の美味しさに皆の心もうきうきと幸せだった
「みんな喜んでくれて嬉しいわ♪」
自分の料理を幸せそうな顔をしながら食す飛鳥たちを見て虎白は満足気につぶやいた
「当然だ、妻の料理は世界一だからな」
「もう、あなたったら♪」
それに対して黒獅はまるで自分のことのように誇らしげに語り、その言葉に虎白も小恥ずかしそうに頬を染めていた
「(お二人ともとても仲睦まじいですね?)」
「(うん、うちのお母さんとお父さんと同じくらいだと思う。いいな~、憧れちゃうな~♪)」
2人の様子を飛鳥と斑鳩は耳打ちで語り合いながら互いに愛し合っているんだなと、羨ましさを感じていた
「お母さん、おかわりをいただけますか?」
「はいはい…どうぞ」
「ありがとうございます!…う~ん、おいひいです~♪」
「「ふふっ♪」」
不意に佐介がお茶碗を差し出し、おかわりの申し出をし
母がそれに答えて空になったお茶碗におかわりのごはんをよそうとそれを差し出す
お礼を言いながら受け取ったお茶碗に盛りつけられたごはんを再びかっ込み
食すことの喜びを噛み締めているような幸せそうな顔を浮かべていた
幸せそうな佐介を見て両親である2人も我が子の姿に笑みを浮かべていた
「(佐介くん…よかったね)」
飛鳥は両親に囲まれて嬉しそうにしている佐介を見て安堵の表情を浮かべるのだった
そうして食事も終わり、とうとうお開きの時間になった
「「「「「ありがとうございました」」」」」
「あらあらいいのよ。私も喜んでくれて何よりだったもの」
帰路につくべく外に出た飛鳥たちはお見送りをしてくれている黒獅と虎白に頭を下げた
「ではお母さん、お父さん。また来ます」
「えぇ、いつでもいらっしゃい」
「待っているよ」
「はい!…それでは――っ!」
佐介もまた皆と一緒に拠点に変えるために両親に挨拶をし、手をふって飛鳥たちと一緒に帰路を行くのだった
両親と別れ、皆が拠点に向かっていた
「いやしかし、尾行した先で佐介の両親に会う事になるなんて思わなかったぜ」
「えぇ、ほんと驚きでしたわね。しかも飛鳥さんや半蔵様たちとも関わりが深かったなんて」
「でもどこか優しげな感じがしてたよ」
「流石は佐介の両親と言ったところだろうな」
帰路に着く道のりの中、斑鳩たちは黒獅と虎白がどんな人だったかについて思い思いの意見を述べていた
「佐介くん、良かったねお母さんとお父さんに会えて。この世界に来たおかげだね」
「うん。僕も嬉しいよ」
家族にことに佐介はとても喜んでいる様子だった
飛鳥もそんな佐介の様子を見てつられて笑みをこぼした
「…あっ!?」
「ん?」
「どうした飛鳥?」
ここで急にハッとなった顔を浮かべた飛鳥に皆が驚く
「ごめんみんな、先に行ってて、家にスマフォを置き忘れちゃったかもしれない!?」
「えっ、そうなの?それは大変だよ!」
どうやら黒獅と虎白の家にスマフォを置き忘れてしまったようであった
「うん、だからちょっと行ってくるっ!」
「なら僕も一緒に」
「いいよいいよ、返してもらうだけだから時間掛からないだろし、私だけで行ってくるよ」
「そう?…そういうことならわかったよ」
スマフォを返してもらいに飛鳥は単独で家に引き返すことになった
「じゃあみんな、また後で――っ!」
「気をつけてね~!」
「うーん――っ!」
皆にそう告げると飛鳥は家に向かって駆けていった
走り出して数分後、前方に家が見えた
玄関前にたどり着くと飛鳥は走ったことで乱れた息を整える
「ふぅ…さてと」
十分に息を整えると飛鳥はドアをノックしようとする
「ごめんくださ『―――』…うんっ?」
しかしその直前、家の中から何やら話し声が聞こえてくる
「(……なんだろう?)」
好奇心も相まって飛鳥はそっと聞き耳をたてる
『ようやくここまで漕ぎ着けられたな』
『ええっ、うまくことが運んでくれて助かったわ』
「(うまくことが運んだ?2人は何を言ってるんだろ?)」
会話の内容が理解できない飛鳥は小首をかしげながらも引き続き、聞き耳を立てる
『しかし、今更なんだが、本当にこれでいいのだろうか?』
『あなたの言うことも分からなくはないわ。でももうこれしか手はないの。あの子には少し辛い思いをさせてしまうかもしれない、でもそれでもあの子と一緒に暮らすためにも半蔵学院の残りのヤグラを破壊し、佐介をこの世界に留まらせる以外に方法はないわ』
「(――っ!?)」
その瞬間、飛鳥はわが耳を疑った
「(ど、どういうこと?私たちのヤグラを壊す?佐介くんをこの世界に留まらせる?)」アセアセ
ドアの向こうの佐介母から語られたその内容の衝撃に飛鳥は絶句する
混乱する頭で必死に状況を整理しようとする
そしてその直後、飛鳥の脳裏にある仮説が浮かび上がる
「(…もしかして私たちの拠点を襲っていたあの仮面の忍たちって?)」
飛鳥の脳裏に浮かんだのは前々から自分達の拠点を襲いヤグラを壊しては姿を消す仮面の忍たちの姿
考えてみれば仮面こそつけているもあの2人組も男性と女性だ
先ほどの2人の話しが間違いでなければ十中八九仮面の忍たちと佐介両親が同一人物である可能性は極めて高いことは容易に想像できる
「(だとしたらこれ相当やばいんじゃ?)」
会話の内容からしてとんでもないことを聞いてしまったのではと焦りが募っていく
「(早くみんなにこのことを伝えないと!?)」
一部始終を聞いた飛鳥は早くこれを皆に伝えなければと思った
しかしその最中だった
後ろに下がった際に運悪く枝を踏んでしまったのかぺきっと音が鳴る
『――誰だ?』
「――っ!?」ビクッ
音に気づいた様子の佐介母の声が聞こえ、ドアに向かって近づく足音が聞こえる
そして逃げる暇もないままドアが開かれた
「…あら、飛鳥ちゃん?どうしたの1人で?」
「あっ、えっと、じ、実はこっちにスマフォを落としてしまったみたいでとりに来たんです」アセアセ
飛鳥は焦る気持ちを必死に抑えながら訳を説明する
「あぁ、なるほど。あれ飛鳥ちゃんのだったのね、ちょっと待ってて」
理由を聞いた虎白は一旦家の中に戻ると数分後に片手にスマフォを持って現れた
「はい飛鳥ちゃん。これよね?」
「は、はい。そうです!」
差し出されたスマフォを受け取り、お礼を言う
「良かったわ。もう忘れちゃダメよ?」
「そ、そうですね。ありがとうございました」
深々と頭を下げながら飛鳥はそう告げる
「…ところで飛鳥ちゃん」
「は、はい?」
「…盗み聞きなんていけないわよ?」
「――っ!?」
ゆっくりと耳元に顔を近づけると虎白がそう囁き、それを聞いた飛鳥は絶句する
やばいと感じて飛鳥は逃げようとする
「――っ!」ドスッ
「うっ!?…――っ」
しかしその直後、首元に衝撃が走り、飛鳥は気を失った
飛鳥を気絶させたのは黒獅による手刀だった
「ごめんね」
気絶し、倒れ込んだ飛鳥を抱きかかえながら佐介母はそう呟き、父とともに家の中に入っていったのだった
だが、この時は誰もまだ知らなかった
「――っ」
その様子を草葉の陰から覗き込んでいる者が居た事を