未だ力を制御しきれない紫苑は雪泉の闇の力を否定せず受けいれればいいという言葉に道を見出す
闇を受け入れ、御すための修行に紫苑は明け暮れ、それにより何とかほぼ完ぺきというところまでこぎつける
しかしその最中、拠点が襲われている光景を目にし、修業によって疲弊していうことを理由に待機するよう促す雪泉を説得し、共に救援に向かった
拠点のほうでは前回のリベンジと称し、襲撃してきた紅蓮竜隊との戦闘が勃発しており
防衛に努める4人が精一杯の抵抗を見せている
そんな中、叢は詠と対峙していた
交戦をするも功を焦った叢の隙を突いた詠によって追い込まれ、事態は月閃の劣勢に持ち込まれていた
ヤグラを巡って月閃女学館と紅蓮竜隊の戦いが繰り広げられる
ガキィィィィィィィン!!
「~~――っ!?」アセアセ
「「「――っ!?」」」
鈍い音が響いたと共に叢の身体は大きく後方へと吹き飛ばされ、地面に倒れる
「「「叢(さん)(ちゃん)(ムラっち)――っ!?」」」
彼女が倒れる様を見て3人が一斉に声を上げる
「痛たた…っ!?」
痛みを感じつつ立ち上がろうとする叢は頬に手を当てるとともに面がないことを再認識した
「探し物はこれですか?」
「あっ!?」
歩み寄る詠の声に視線を向けると彼女の手には叢の持つ面が握られていた
「か、かかかか、返してください、お面を返して///!?」アセアセ
面が取れてしまったことで本来の自分が出てしまい、おどおどしながら必死に詠に面を返してほしいと懇願していた
「そんなにお面を返して欲しいですか?」
「ははは、はい!返して欲しいです!返して欲しいですから今すぐそれをこっちに寄越してくださーい///!?」
恥ずかしさで死にそうなくらい顔を真っ赤にしながらも叢は詠にお面を返すように懇願する
「…そんなに言うのでしたら返してあげなくもありません」
「ほほほ、ほんとですか!でしたら今すぐに返して///!」
返してあげてもいいという詠の言葉に藁をも縋る気持ちで応える
「ではこの面を返すのと引き換えに叢さんたちのヤグラをすべて破壊させてもらいます」
「「「「――っ!?」」」」
詠からのとんでもない条件に叢たちは衝撃を受ける
ヤグラが壊れるとなればもう黒影とこの世界に居る事は出来ないからだ
「そ、そそそそ、それは…」
「それはももやしもございません。どちらをとるんですか?お面か、ヤグラか?」
「う、うう~///!?」
叢は困り果ててしまった
お面は返して欲しい、だが、もしそれを呑んでしまえば紫苑たちと対立してまで通そうとした黒影と一緒に居たいという叢の願いは潰えてしまう
「むらっち、待ってて今あたしが!」
「あたしを無視してどこ行こうとしてんのよ――っ!」
バババババババ!
「ぐぅっ!?」
「しししし、四季さん///!?」
ピンチを感じた四季が叢の救援に向かおうとするもそれを阻止するかのように未来の乱射による弾丸の雨が彼女を襲った
「四季!?」
「わしを相手によそ見とは…いい度胸やな?」
「――っ!?」
夜桜は四季のピンチを目にし、彼女の名を叫ぶ
しかしそんな夜桜の背後から冷たい視線と殺気が
振り返った瞬間にはもう手遅れであり、夜桜の体を鋭利なる斬撃が切り裂いた
「よよよ、夜桜さん///!?」
四季の次は夜桜が襲われる
「四季ちゃん、夜桜ちゃん…むぅ〜!みのり怒ったぞー!やーー!!!」
2人のやられる様子を目にした美野里が敵を打つべく腕をぶん回しながら駆け出す
「あらあら、勇敢ね。だ・け・ど~…ふっ」
それを見ていた春花は自分に向かってくる美野里の勇ましくもどこか可愛らしいところにくすりと笑みをこぼしながら傀儡を操作する
春花からの指示を受けた傀儡は迫りくる美野里の頭を取り押さえ、攻撃を無力化させる
「ふんにゅ~――っ!!!」
「うふふっ、可愛らしいわね~♪」
頭を押さえつけられているせいでまったく前進できないものの、尚も手をぶんぶんと振り回し攻撃を続けている美野里の姿はどこか健気で可愛らしさを感じさせた
「み、みみ、みのりさん…」
美野里まで無力化され、こうして今拠点にいる月閃の勢力は完全に無力化されてしまった
「さぁ叢さん、これで助けは来ません。何よりこの状況、既に勝敗は決しています。あなたたちの敗北です」
「うぅ…」
仲間たちは全員やられてしまい、残されてるは叢ただ1人
だが、未だお面の無い叢はそわそわするだけしかできなかった
「…やはり今のあなたではこの程度だと言うことですね。失望しましたよ叢さん」
「な、ななな、なんですって///?」
「黒影さんがあなたたちにとってどれほど大切な人なのか、わたくしにはよくわかりません。ですが忍としての矜持を捨ててまで過去に拘るなど愚の骨頂ですわ。少なくとも光牙さんはお母さまと再会したくらいで信念を曲げるようなことはしませんでしたわ」
「っ…///」
詠は叢たちが黒影を慕っている気持ちに関しては理解しているつもりだ
しかしそれにかまけて自分の成すべきことを投げ捨てしまっている叢たちの姿は彼女としても由々しきものに思えた
「それに、わたくしからしたら叢さんは…いえ、叢さんだけではありません、月閃のみなさんは黒影さんに、光牙さんと雅緋さんはお母さまに、両備さんと両奈さんは両姫さんに、この世界に来てから生前より愛していた人と再会を果たすことができました。ですがわたくしにはそれは敵わないことなのです」
この世界にて叢たちや光牙たちが大切な人と再会できたのは全員が忍だったから
元々この世界は小百合が彷徨える忍たちの魂を清め、黄泉へと導くために用意されたものだ
そう、あくまでこの世界で再会することができるのは「忍」だ
普通の一般人で忍とは何のゆかりも繋がりもない詠の両親の魂はこの世界にない
つまりどんなに懇願しようとも詠は他の者たちのように大切な人に会うことはできない
自分を生かすために身を粉にし、その果てに命を失った両親に
「わたくしもできることならもう一度会いたい、でもそれで信念を曲げてしまうようでは両親の今までの苦労や努力を無駄にしてしまう、もしそうしてしまえばそれはは両親に対する裏切りになってしまう、だからわたくしは何があろうともこの信念を曲げるつもりはありません。それが私が両親にできる一番の孝行と信じて」
「…っ///」
叢は詠の言葉に何も言い返す言葉がなくなった
ただただうなだれるだけで完全に意気消沈していた
「…話しは終わりです。終わりにしましょう。みなさん!」
「うん!」
「ほ~い」
「えぇ」
詠の呼びかけに応じ、他の3人もヤグラを標的に定める
「これで終わりですわ!」
「「「――っ!」」」
ヤグラを破壊すべく4人は身構えた
しかしその直後だった
「――っ!」バッ!
「「「「――っ?」」」」
「【黒氷】――っ!!」
「「「「――っ!?」」」」
突如上空に現れた人影が4人目掛けて鋭利なる氷塊を放つ
それを見た4人はすかさず後方へ下がる
「大丈夫ですか皆さん?」
「ゆ、雪泉さん!?」
叢は自分の前に佇む雪泉の後ろ姿を視線に捉えるのだった