紫苑たち月泉女学館との戦いにより、彼らが撤退してくれたことによりからくも命拾いをした半蔵学院の面々たちだったが
この戦いで受けた傷は余りにも大きすぎた
「霧夜先生、みんなの具合はどうなんでしょうか……?」
「思いのほか傷が深かった。まだしばらくは安静が必要だ……とくに佐介はな」
「……佐介くん」
みんなの容態が気になった飛鳥は霧夜に尋ねるとみんなこの戦いによるダメージはかなりのものだったらしい
とくに佐介に関しては紫苑との戦いでほかのみんなよりも深い傷を負っていたのである
飛鳥は佐介がそのような状態になってることを聞き、心が張り裂けそうな思いだった
「飛鳥、わかっているとは思うが…」
「はい、月閃からの攻撃を凌いだんですから、今度は私たちが攻める番ですね」
なにはともあれ、月閃が引いたことにより、学炎祭のルールによって学校への攻撃権は自動的に半蔵学院に移ったことになる
「みんなの分まで私が頑張ります」
一人で月閃に乗り込むと言い出す飛鳥だったが
「ダメだよ…飛鳥ちゃん」
「「!?」」
障子を開けて出てきたのは体中に包帯やら顔にシップなどつけた佐介だった
「さっ、佐介くん!」
飛鳥は急いでかけより、彼を支えてあげた
「なにをしている。安静にしてなきゃダメじゃないか?」
霧夜が安静にしてなければならない状態であるにも関わらず起き上がってきた佐介を注意する
「はぁ…はぁ…。すみません…でも、飛鳥ちゃんを一人で行かせるのは危険です…」
「佐介くん。私なら大丈夫だよ。みんなの分まで私が…」
「ダメだよ。…月閃には紫苑さんがいる。あの人の強さは本物だ…そんな人をいれた6人を相手に飛鳥ちゃん1人で行くのは危険すぎる。」
飛鳥の身を案じる佐介はなんとか彼女を言い止めようと説得する
「ありがとう佐介くん。私、嬉しいよ。大丈夫、私みんなの分まで頑張るから!」
「飛鳥ちゃん…」
「だから佐介くんはゆっくり休んでて…霧夜先生。私、月閃に行きます!」
みんなの分まで頑張る。そう決意を固める飛鳥だったが
「……飛鳥ちゃん」
ふと佐介が飛鳥を呼ぶ
「うん?なに佐介k『ドスッ!』っ!?」
その声に反応し、飛鳥が佐介の方を振り向いた瞬間、突然腹に衝撃が走る
恐る恐る見てみると佐介が自分に腹パンをしていたのである
「さ、すけ…くん」クラッ
これにより気を失い倒れ込む飛鳥を佐介が優しく抱き抱える
「佐介、お前…」
それを見た霧夜は驚いていた
「わかってます。こんなこと良くないってことは」
話しの途中、抱えていた飛鳥を床にそっと寝かしつける
そしてそれを終えると霧夜と向き合う
「でも、僕はもう嫌です。みんなも傷ついてるし、飛鳥ちゃんが月閃に攻め入れば雪泉さんたちはもちろんのこと、紫苑さんも黙ってはいない。そうなれば飛鳥ちゃんが危ないのは目に見えてる…それを黙って見てるなんて僕にはできません!」
飛鳥を思えばこそ、彼女を危険な目に合わせる訳にはいかないと佐介はこの行動に出たのであった
「しっ、しかし…お前は他のやつらよりもさらに手負いの状態、そんなお前が月閃に攻め込めば返り打ち…いや、最悪力尽き死んでしまうかもしれないんだぞ?」
霧夜は佐介に身の危険を告げるも
佐介は頭につけた包帯や顔についたシップを外すと
「忍、転身…」
静かに呟き、自身の忍装束である。背中に「一騎当千」の文字が刻まれた学ランを羽織る
「佐介…」
「僕は、絶対に死にません。僕は尊敬する2人と約束したんです。一つは、この背中の文字に恥ぢぬ忍になり、カグラになるということ、そしてもう一つは、この世界にラブ&ピースをもたらすこと」
「っ!?……その約束を交わした相手とは…」
約束の内容を聞いた霧夜は尋ねると佐介はにっこりと笑いながら
「…あなたのよく知る人たちです」
そう答えた
「…では、行ってきます」
「…わかった。そこまでの覚悟ならもう俺は止めはしない…だが、最後に一つ約束しろ。……必ず帰ってこい」
「はい、先生、飛鳥ちゃんやみなさんのことを頼みます!!」
霧夜との約束をかわすと佐介は飛鳥たちを霧夜に任せ、半蔵学院を飛び出し、単身で月閃女学館に向けて走り出していくのだった
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…。ここが…死塾月閃女学館…」
佐介は走り続けてついに月閃にたどり着いた
学館に続く階段から学館である建物を眺めていると
「あれれ~?佐介ちんじゃん?」
「あなたはっ!」
そこに月閃メンバーの1人、四季が現れた
「まぁ、やっぱ柳生ちんはあの怪我じゃムリかあー。っていうかさ、佐介ちんってば紫苑ちんとやりあってチョーボロボロ状態じゃん。まさかそんな状態であたしたちと戦おうっての?」
「いかに体がボロボロだろうと僕は負けられないんです。傷ついたみんなのためにも負けるわけにはいかないんです!」
佐介は決意を込めた眼差しを向けながら構えを取る
「うーん。佐介ちんってさ、なんかあれだよねー。どこぞのヒーロー番組の主人公みたいな感じ~?そういう1人でも頑張ろうとするタイプだっていうのがすんごい伝わってくるなー。えらいえらい。佐介ちんのそう言うとこマジリスペクトだよー」
「た、戦う前に相手を褒めて油断させようとしてもそうはいきませんよ!」アセアセ
「えー。っちょなに?佐介ちんってば可愛すぎなんですけどー♪反応とか仕草とか、紫苑ちんとはまた別の魅力があるねー」
四季は佐介の反応を見るなり可愛いだのなんだのと佐介に好感を持ったようである
「かっ、可愛い?僕は可愛くなんてありません!どちらかといえばかっこいいほうだと自負しています!」
「うわっ。佐介ちんってば意地張っちゃってー。でも残念、傍から見たら可愛らしさしか見当たらないよ」
「そっ、そんな」ガーン
気にしてることを言われてショックな佐介を見た四季はくすりと笑う
「しかしまじかで見れば見るほど、なるほどー。確かにこれなら柳生ちんたちが佐介ちんのこと好きな理由も納得だわ♪」
「僕だって柳生ちゃんたちのことは大好きですよ。みんな大切な友達ですし」
佐介は思ったことを素直に言ったつもりだがなぜか四季の顔は目が点になって驚いた状態になっていた
「…もしかしてさー。佐介ちん」
「はっはい?」
「まさかとは思うけど、佐介ちんみんなとは"ただの友達"とかおもってる?」
「ち、ちがいます!みなさんは"ただの友達"じゃなくて大切な仲間です!」
それを聞いた瞬間、四季は呆れた表情を浮かべた
「なーるほど、こりゃ柳生ちんたちも苦労するわ」ジド
「えっ?なんでそんな目で見るんですか?」
「さーねー。自分の胸に聞いてみたら~?」
四季の言ってることが分からず佐介は小首をかしげる
「さてっと、長ばなしはここまでにして、このまま何もしないで佐介ちんを帰すとかはありえないし、さくっと殺ちゃおうか」
そう言うと四季は鎌を構える
「やっとやる気になりましたか……では、行きます!佐介、仲間たちの想いとともに舞い忍びます!」
こうして佐介による月閃突入作戦は幕を開けたのだった