そんな彼らの前に姿を晦ましていた黒影が現れる
紫苑たちの前に現れた黒影は自分が彼らをずっと陰ながら応援していたことなどを打ち明ける
黒影は叢から紫苑にかけて一人一人に異なる内容を語り掛けていった
これに対し叢は自分が二つの顔がどちらも自分であることを、四季は黒影の願いを聞き入れ世界に羽ばたくことを
夜桜は真面目さと母性を貫くことを、美野里はいつまでも変わらぬ純真さを忘れないという約束を
雪泉は共にこれまで祖父と孫として生きてきた人生に感謝の言葉を送り、紫苑は皆の笑顔と想いを託された
最愛の子たちに伝えることを告げ、未練がなくなった黒影は天へと召され、それに対して紫苑たちは別れによる悲しさと感謝の意を示しながら涙を流すのだった
大道寺の加勢の甲斐もあり、佐介達半蔵学院メンバーは辛くも拠点に戻ってきた
「くそっ、なんだってんだよいったい全体!?」
「落ち着いてください葛城さん!?」
「いや落ち着けってのは無理があるだろう、飛鳥を探しに行ったと思ったらこんな事態になるなんて想像できるか!?」
「だからってここで騒いでも何にもならないではないですか!?」
状況が飲み込めず憤慨している葛城を斑鳩がなんとか落ち着けようと必死に宥める
ちょっと前まで和やかに、良好的な雰囲気だった筈なのに飛鳥を探しに行った途端に襲い掛かってくるわ
大道寺の助けがなければ危ういところだったことなど思いもしない状況に見舞われ、頭が整理に追いつけていなかった
「やめろ2人とも!」
「「っ!?」」
するとその時、2人の言い争いに柳生が割って入った
「2人とも今は言い争っている場合じゃないだろう……今一番辛いのは”オレたちじゃないだろう”?」
「「あっ…!?」」
柳生の言葉にハッとなるとともに2人は彼女と一緒に視線を別のほうに向ける
「……っ」
3人が向けた視線の先にはテーブルの上に腰掛けながらこの上ないほど無力感に苛まれていると思わしき佐介の後ろ姿があった
「…はい、佐介くん。飲み物用意したよ」
飛鳥が項垂れている佐介に飲み物を差し出した
「……ありがとう飛鳥ちゃん。でもごめん、要らない」
「佐介くん…」アセアセ
だが佐介はお礼を言いつつも気持ちだけ受け取るだけで飲もうとはしてくれなかった
「(どうして…どうして、こんなことに?いったいどうしてこうなっちゃったの?)」
必死に心の中で状況を整理しようとしても内容が内容故に上手く気持ちを整理できずにいた
そんな彼の心中を察したのか飛鳥は声をかけることができず、もどかしさを覚えていた
「…佐介」
「佐介さん……」
皆も飛鳥同様に佐介の気持ちを思えばこそかける言葉を思い浮かばないでいた
これからのことをどうすべきかと途方に暮れていた時だった
「…っ!?」ピクッ
「どうしたの佐介くん?」
俯いていた佐介がいきなり顔を上げる
顔を上げた彼の表情はとても焦っていた
「…この、気配は!?」アセアセ
「……っ!?」
「「「「――っ!?」」」」
佐介の様子からただ事ではないと感じ、彼の向く方に視線を向けた時だった
「――っ!!」シュタッ!
タイミング通りというかのように佐介たちの前に人影が降り立った
人影がゆっくりと立ち上がり、佐介たちに顔を晒す
「「「「「「――っ!?」」」」」」
一同は激しい動揺を見せた
「佐介、さっきぶりね?」
「お、お母さん…」アセアセ
目の前に現れたのは大導寺が食い止めてくれていたはずの佐介の母だったのだから
佐介母が佐介に声をかけると佐介は先ほどとは比べ物にならないほど動揺を隠せずにいた
「ど、どうしてここにいるんですか!?」アセアセ
「知りたい?それはね「すまん、遅れた」…あら、ちょうどいいわね?」
「――っ!!」シュタッ!
「「「「「「っ!?」」」」」
するとその直後、間髪入れずに今度は佐介母の隣に降り立つようにして佐介父がやってきた
見たところよほど激しい戦闘を行っていたのか衣服の半分はボロボロになっていた
だが、それでも父がここに来たことに一同はさらなる驚きを示していた
「と、父さん…どうしてここに!?」アセアセ
母ならまだこの場にいることはわからないわけではない
しかし父に関してはそういう訳にはいかない
動揺しつつも佐介は父に問うた
「それは愚問というものだぞ佐介、俺がここにいる。それがどういう意味かわからないわけじゃないだろう?」
「――っ!?」
「「「「「――っ!?」」」」」
父の言葉に佐介はもちろん、皆が絶句する
大道寺と戦っていたはずの父がここにいるということの意味
つまりは佐介たちの脳裏には最悪のシナリオしか考えつかさないことだった
「…で、どうだったのあの子は?」
「あぁ、かなり手こずったよ。流石というべきだったな」
「でしょうね、あなたがここまでボロボロになった姿を見たのは随分久しぶりに見たもの」
どこか嬉しそうに傷だらけの自分を見せている父の話しを聞いて母も同じように嬉しそうにしていた
「そんな…師匠が…」ガクッ!
「さ、佐介くん!?」アセアセ
師である大道寺が負けたと知り、佐介はガタっと膝を付いてしまった
何とも言えぬ脱力感が佐介を襲っていた
飛鳥たちもそんな佐介の心中に気づいてか歯がゆいような表情を浮かべていた
「さてと…じゃあそろそろいいかしら本題に入って?」
「「「「「――っ!」」」」」ピクッ
直後、佐介母が声をかけてきたので一同がそちらに視線を向ける
「これでわかったでしょう、私たちとあなたたちとの間にどれ程の差があるか?」
「「「ぐぅ…」」」アセアセ
単刀直入に言われてしまったが正直言い返す言葉が見つからない
目の前にいるのはあの大道寺ですら退けたほどの実力を持つ2人だ
このまま戦闘に入れば大道寺並みかはたまたそれ以上の猛者を2人も相手にしなければならない
今まで幾度も戦ったがそれらすべては2人が手加減したものだ
本気を出せば瞬殺される可能性は容易に硬くなかった
「もう無駄な抵抗はよしなさい、言ったでしょ?私たちの目的はあくまで佐介だけだって、その子を返してくれてばあなたたちに危害を加える気なんて私たちにはないのよ?」
佐介母はあくまで佐介を渡せばこれ以上のことはしないと改めて飛鳥たちに言った
「…佐介」
「…っ?」ピクッ
「もうこれ以上抵抗しないで、私たちは別にあなたを傷つけたいわけじゃないのよ。私たちはただあなたと一緒に居たい、あの時失ってしまった時間をもう一度取り戻したい、ただそれだけなのよ」
すると母は佐介に声をかけ、自分たちはただ息子と一緒にいたい、家族で一緒にいたい
飛鳥たちを傷つけるのは本意でないことを告げる
「だから…ねっ。いい子だから私たちの元に来て、今までしてあげられなかった分、私たちに愛情を注がせてほしいのよ」
優しい笑みを浮かべながら佐介母が手を差し伸べる
「お、お母さん……」
「さ、佐介くん…?」
「…っ」
母からのその言葉を聞いた佐介はこの状況で何をどうしたらいいのか
自分はどう選択すべきなのか、緊張感が漂うこの状況下の中、自問自答を繰り返すのだった