互いに一歩も譲らぬ攻防を繰り広げるも、徐々に父のほうが押し始めていった
それでも尚、佐介は諦めようとせず、最後の最後まで立ち向かう旨を見せる
彼のその姿勢に感銘を受けた大導寺もまた最後のあがきと持てる力を注ぎ込む
2人の思いが力となり、劣勢に追い込まれていた現状が徐々に覆りだした
追い込みをかけていく佐介と大導寺がスパートをかけるように互いの秘儀を発動させる
これにより勢いを増した2人の獣波拳の威力によって佐介父はこの押し合いに負け、膨大なエネルギーの渦に飲み込まれた
撃ち合いに勝利し、駆け付けた飛鳥ともども勝ちを確信する
しかしその直後、立ち込める煙の中から仁王立ちする父に驚愕することになったのだった
激しい獣波拳の撃ち合いに辛くも勝利を収めた佐介と大導寺だったが状況は予想外の方向に傾いていた
「…――っ」トコッ、トコッ
「こっ、こっちに来るよ!?」アセアセ
「「――っ!?」」アセアセ
あの攻撃を受けて尚立っているばかりかこちらに向かって歩みよってくる
佐介と大導寺、飛鳥はそんな黒獅の姿に恐怖を感じていた
しかももう佐介たちは先の撃ち合いによってパワーを使い切ってしまった
更には無理にそれらを引き出したせいで体の自由が効かない
正に最悪のシチュエーションだった
こうしている間にも黒獅はふらつきながらもこっちに近づいていく
「くうっ……っ!」バッ!
「飛鳥ちゃん!?」
「何をする気だ!?」
「2人は下がってて、ここは私がなんとかして見せる!」
寸前まで到達したのを受け、動けない2人の代わりに飛鳥がそれを阻止しようと飛びかかる
「やああぁぁぁぁぁ!」シャキン!
「――っ!」スッ!
「わわわっ!?」ザザァァ!
「あっ、飛鳥ちゃん!?」
だが、黒獅がボロボロな状態にあるにも関わらずそれを避けたことで飛鳥はそのまま後方の地面にダイブする形になってしまった
「…――っ」トコットコッ
妨害に失敗した飛鳥を尻目に黒獅は再び2人の方に歩み寄る
「待って、行かせない!」
当然一度の失敗で諦めるような飛鳥ではない、すぐにもう一度押さえつけようとすべく立ち上がろうとする
「ダメよ飛鳥ちゃん!」ガシッ!
「うわっ!こ、虎白さん!?」
その直前、背後から現れた虎白によって飛鳥はその身を拘束され、動きを封じられてしまった
「いい子だから大人しくしてなさい!」
「い、いや!離してください!?」ジタバタ!
「こら、暴れないの!?」アセアセ
必死に逃れようとするもなかなか解けずにいた
「飛鳥ちゃん……お母さん!?」
「佐介!?」
「…っ!?」
「……っ」
2人のほうを心配そうに見ていた佐介だったが、前方が暗くなった事に気づき、振り替えるとそこには黒獅が居た
「とっ、父さん」アセアセ
「くっ!ぬっ、ぐぅぅ!?」グヌヌヌヌ
「しっ……師匠」
迎えうとうとする大導寺もやはり体が思うように動かなかった
「…っ」スッ
「――っ!?」
そうしている間にも黒獅が佐介に手を伸ばす
「待て、やめろぉ!?」
大導寺が静止しようと叫ぶも、その手が止まることはない
佐介は咄嗟に目をぎゅっと閉じる
……しかし、次に佐介が感じた感覚は痛みではなく、頭に触れられた手の感覚と暖かい温もりだった
慌てて佐介が目を向けるとやはりこの感覚の正体は父が自分の頭を優しく撫でているものだった
「……お、父さん?」
「……っ?」
「どういう、こと?」
黒獅の予想外の行動に佐介はもとより、飛鳥と大導寺も面を食らっていた
「……佐介、この勝負、俺の負けだ。お前達の勝ちだ」
「…えっ?」
この状況から更に唐突に黒獅からの自身の敗北並びに佐介達の勝利だと告げられる
全くもって状況が掴めなかった
「待て義兄さん、我等の勝ちとはどういう意味だ!?」
困惑する佐介を他所に大道寺が代わりにその言葉の真意を父に問い質す
「……最初こそ俺は彼女と共に息子である佐介を取り戻す事のみを考えていた。だが、これまでの戦いの中で佐介は勿論、飛鳥ちゃんや君や他の子達の何度やられても立ち上がる姿勢、自分がどうなろうとも仲間を守るという意思を目にし、君たちがどこまで行くのかを見てみたくなっていったんだ」
大導寺の質問に対し、黒獅は語りだす
当初こそ虎白と同じく佐介を取り戻す事以外は特に何も思っていなかったが
自分達を相手に圧倒的な実力差を前にしても尚、諦めようとせず戦う彼女達を見て考えを改め出す
更にはその思いを継ぎ、自分達と戦う事を決めた佐介の決意を確かめるべく交戦し
彼女達同様に佐介も実力差を顧みず戦う意思を貫く姿勢を称賛する
そしてその思いがどこまで行くのかを確かめるべく全力の獣波拳を繰り出した事を告げた
「結果としてお前たちは俺達を倒した。お前達の絆の力、しかとこの目に見させてもらったよ……強くなったな。佐介」
「父さん……」
佐介の成長を確かめながら黒獅は嬉しそうに勝算の言葉を送る
「あなた」
「……っ?」
するとそこに虎白がやってくる
「お疲れ様ね」
「あぁ、ありがとう。それとすまなかったな」
「良いのよ。私も薄々こうなることは予想してたから」
労いの言葉を送りながら黒獅と虎白は互いに会話を交わす
不意に虎白の視線と佐介の目が合う
虎白は佐介の方を見ると優しげな笑みを浮かべる
「佐介、見事だったわ。まさかあなたがここまでやり遂げるなんて思いもしなかったわ」
「お母さん……」
「飛鳥ちゃん、それに大導寺も立派だったわ」
「虎白さん……」
先に佐介、その次に飛鳥と大導寺に母が労いの言葉を送った
それから暫くして戦いを終えた佐介達は気を失った他の皆と共に両親と向かい合っていた
「痛ててて~」アセアせ
「大丈夫かつ姉?」
「いや~、体中がバッキバキだぜ」アセアせ
「無理しないでくださいね」
意識を取り戻したみんなだったが先の戦闘によるダメージが残っているせいか体の節々が悲鳴を上げているようであった
「みんな、いろいろと迷惑をかけてしまって本当にごめんなさい、謝って済む話しではないけどせめてもの謝罪をさせてもらうわ」
「あっ、だったら謝礼の代わりにママさんのおっぱい揉ませてくれたら♪」
「葛城さん、流石に人妻に手を出すのは絵面敵にもアウトですわよ?」ギロッ
「じょ、冗談だって、あはは」アセアせ
母からの謝罪に対していつものノリをかます葛城に斑鳩がツッコミを入れた
「佐介、この勝負はお前達の勝ちだ。俺達はお前の事を諦める」
「父さん……」
「凄く残念だけど、これまでを見て貴方と皆が真の絆で結ばれてる事を教えてもらったわ。これ以上、私達の我が儘でそれを傷付ける事はもうしない。貴方は彼女達とこれからを生きて」
「お母さん……ありがとうございます。そしてごめんなさい」
本当は一緒に暮らしたいという思いを拭い切れたわけではない、しかし両親は佐介の今をこれ以上奪うのはしない事を本人の前で誓う
佐介もそんな両親の思いを知ってか、感謝と謝罪の言葉を送るのだった
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