巫神楽三姉妹は自分たちの目的である人探しについての近況報告会を開いていた
未だに探し人の手がかりは掴めず、途方に暮れるしかないと言うのが現状だった
会えないことが彼女たちの心に暗い影を落とす、さらにはこの行為自体が自分達の自己満足でしかないのだと卑下することを語り出す始末だった
しかし、落ち込む妹たちに姉である蓮華が励ましの言葉を送る
たとえこれが自己満足だったとしても探し人に自分たちの気持ちを伝えるべきであると
蓮華励ましの言葉に救われた華毘と華風流は元気を取り戻す
さらにはそれがきっかけで華風流がまだ自分たちが探していない場所があることを思い出し
その言葉を信じ、三姉妹は行動を開始するのだった
ここはとある洞窟の中
「ゲホッ!ゲホゲホ!?」ベチャ
その中で小百合が苦しそうに咳き込みながら口からは大量の血を噴出していた
「はぁ…はぁ……くぅ~…ふぅ~…」
息を切らしながらも深呼吸をしてなんとか落ち着きを取り戻す
「…はぁ、まったく、歳なんてとるもんじゃないね?よっこらしょっと…」
洞窟内にござを敷いて横たわるとキセルを加え、ぷかぷかと煙を吹かすといくらか気持ちが楽になった
「ふぅ~…少々、気合いを入れ過ぎたかね?」
千年祭を大規模に行うためにかなり体力を使ってしまった
巫神楽三姉妹に協力させ、その舞台であるこの世界を構築するために高度な秘伝忍法を使用した代償がこれである
リスクは覚悟していたつもりだったが、使用例もないぶっつけ本番で行ったため、反動がこれ程のものになるとは小百合自身も想像できていなかった
だが、ここで倒れてしまうわけにもいけない。彼女にはまだやらなければならないことがあるのだから
「…ふぅ、まったく難儀なもんだよ」
意思は持っても体が言うことを聞かなければそれは無意識なものでしかないと小百合は感じていた
そうは考えてもこれ以上油を売っているわけにも行くまいと小百合は重い腰をあげて洞窟から出ようとする
「「小百合様!」」
「んっ?」
するとその直後。洞窟の前に降り立つ二つの影が現れる
「おぉ、お前たちか」
「はい」
小百合の前に現れた2人、それは佐介たちとの戦いを終えた黒獅と虎白、彼の両親だった
「事情はだいたい把握しておるよ。飛鳥が昨日、あたしのところに事の顛末を教えてくれたからね」
「左様でございましたか」
それについて報告をしようとしていた2人だったが、既に小百合が事情を把握していることに少し困惑してしまっていた
「…ところでいつまでもそんなところで畏まってないで楽な姿勢を取ったらどうじゃ?」
「す、すみません」
「ではお言葉に甘えさせていただきます」
「うむ、よろしい」
自分に対して跪く2人に小百合が楽にするように促し
指示に従うように黒獅虎白は体制を立て直し、正座の姿勢をとった
「さて、それでじゃが差し出がましいかもしれんが聞かせてくれんかの?お前さんたちの今の心境を?」
黒獅と虎白の2人に小百合が今の心境がどうなのかを質問する
「…正直、少し残念にも思っています。ですがあの子は我々に勝利し、自ら自分の道を決めたのです。ならば私たちはその意思を受け入れるのみでございます」
「…そうか」プシュ~
「小百合さま、結果はどうあれ私たちは満ち満ちております。このひと時の時間とは言え成長したあの子を抱きしめ、愛でることができた。死して叶うことができなかった生前の願いを遂げることができました。このご恩はあの世に旅立とうとも忘れません」
「「ありがとうございました!」」
そう言うと黒獅と虎白の2人は深々と頭を下げ、小百合に感謝の言葉を告げた
「よせ、感謝しているのはお互い様のことじゃ、お前さんたちは命をとして娘と孫を救ってもらった大恩があったからの、形はどうあれあたしはただ借りを返したにすぎんよ」
小百合は自分もまた黒獅と虎白に感謝していることを告げる
自らの命を顧みず小百合の大切な娘と孫を救った恩人のせめてもの頼みを聞き入れずして感謝も何もないと思えばこそだった
「それでお前さんたちはどうするつもりじゃ?もう心残りがないのであればあたしがあっちに送り届けてやるが?」
未練がないというのならば自分があの世に送り届けることを提案する
「…小百合さま。それはとてもありがたいご提案ですね。あの子の成長と想いを知れたので未練はありません。いつでも黄泉へと行く覚悟はできております…”私は”」
「む?”私は”とな?」
「…っ」チラッ
何やら含みがある言い方をする虎白に小百合は小首を傾げる
直後、虎白が隣にいる黒獅に視線を向ける
「…黒獅。お前さんは何か未練があるのかい?」
小百合が訊ねると黒獅は意を決したような表情を浮かべる
「すみません小百合さま、穢土への送迎はもう少し待っていただきたい、実は帰る前に新たにしておきたいことができたんです。俺はどうしてもそれを成し遂げたいんです!」
何か使命感のようなものを感じさせるものが黒獅の瞳に宿っていると小百合は感じた
「お前さんがそこまで言うということはそれほどまでに重要なことなんじゃな?」
「はい。これを果たさないまま旅立つようなことがあれば死して一片の悔いありとなりましょう」
「ふむ…」
死して悔いを残すほどという黒獅の言葉に小百合は言葉がでなかった
「…小百合さま、つまりそう言う訳なんです。この人がまだ残るというのであれば私だけ行くと言うのは考えられないものでして」
虎白は黒獅の手を握りながら小百合に懇願する
「ふふっ、お前さんたちは死しても尚、おしどり夫婦じゃの?」
「…いえ、それほどでも///」
「そうですよ。それに小百合と半蔵さまには敵いませんから///」
仲睦まじそうな様子を見て小百合は2人のことをおしどり夫婦だと称賛する
2人はそれを聞いて照れくさそうな仕草を取っていた
「して、そのしておきたいこととはなんじゃ?」
「…簡単なことです。父として最後の手ほどきをというだけのことです」
「父としてか、なるほどの、そうかそうか」
理由を聞いて小百合はふむふむと納得したように頷く
「では小百合、我々はここらで失礼させていただきます」
「うむ、良きに計らってやれ」
「はい。…では」
シュン!
小百合に一礼すると2人は風の如く瞬時にその場から消えていった
「…あやつらも息子思いよの~」
2人がいなくなったことを確認した小百合はキセルを吹かしながら彼らの佐介への愛がどれほど強いかを再認識する
「このカグラ千年祭。あたしの想像以上の成果を上げているようでなによりじゃな」
カグラ千年祭を開催したことで佐介たちはこれまで以上に着実に成長を重ねている
それこそ並みの忍学生では勝ち目すらないと言えるほどに
この事実を知れただけでもカグラ千年祭を開催した意味はあったというものだ
「じゃが、あの子たちは情が深すぎる……」
しかしそうであるが故の危うさも彼らは持ち合わせているのも事実
「故に示してやらねばならない。あの子たちに………さて、そろそろ行くとしよう」
意を決するように小百合は立ち上がり、彼らの元に向かうのだった
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