だが、伝説の忍であり、カグラの称号を持つ彼女の猛威の前になすすべなくやられてしまった
しかし手負い身ではあるが自分を追い込んだことにジャスミンは賞賛の言葉を送る
戦いには負けたが、情を捨てることなく突き進んだ自分たちの決断に後悔はないことを佐介たちはジャスミンに告げる
彼らの思いを知ったジャスミンはその思いに敬意を称し、褒美として千年祭の秘密を告げることを語る
そうしてそれに伴い、彼女の招集によって半蔵学院の拠点に他のチームが集結した
招かれた他のチームにジャスミンは紅蓮竜隊に質問をする
さらに話しを続けるジャスミンは別の世界があることを佐介たちに告げた
彼女の口から語られた驚きの内容に佐介たちは驚愕するのだっだ
ジャスミンから平行世界の存在を聞かされたことで拠点内はざわめいていた
「話しは分かったけどさ、本当にそんな漫画みたいな話しがあるのかよ?」
ここで相馬が皆を代表する形でジャスミンに尋ねる
「お前たちも心のどこかで思ったことはあろう?もしかしたら別の世界があってそこでは別の自分が存在するかもしれないと」
彼女のその質問に皆は確かに思ったことがあるかもといった顔を浮かべる
「一見、信憑性のなく突拍子のない花際に聞こえるかもしれん。しかし平行世界は実在している」
嘘偽りなく語るジャスミンの言葉に一同は呆気にとられる
「世界の数だけお前たちも存在している。例えば紅蓮竜隊、お前たちで例えるなら半蔵にやられて自害する世界もあれば、お前たちが蛇女を再建する世界もある」
「もしかして、わたくしがお金持ちになる世界もあったりするということですか?」
「まぁ、可能性としてはあるかもしれんが、詳しくは知らん」
別の世界にいる自分たちのありように関して詠の質問にジャスミンは少々困ったように受け答える
「さて、話しを戻すが、他面々にも同じことが言える。例えばそう…相馬、お前さんなんかがいい例かね?」
「えっ?俺?」
ここで自分が名指しされると思っていなかった相馬は一瞬きょとんとした顔を浮かべる
「別の世界ではお前は病に侵されず、それにより忍になることもなく我々と関わらず一般人としての日常を押下している」
「俺が…忍にならなかった世界?」
相馬はもともと道元が企てていた強化人間製造計画の被験者であり、紆余曲折を経て今に至る
もし仮にジャスミンの言う通りだったとしたら別の世界の自分は忍学生としての生活を送ることなく
ただの一般人として今を生きていたということになる
「相馬?」
思い詰めた様子の相馬に雅緋が声をかける
「…そんな顔すんなよ。確かに俺だって何度もその可能性を考えたことあったけどさ、なんだかんだ言って今の生活も気に入ってはいるからな。だからこうなったことについて悔いはないさ」
心配そうに自分を見る仲間たちに相馬は今の人生もそう悪くなく
むしろ楽しく過ごしているから忍になったことに今更後悔はないということを皆に告げる
その言葉を聞いて雅緋たちは少し安心した様子だった
「あっ、でもちょっと待って相馬くん。もしかして、ということは別の世界では蒼馬くんはいないかもしれないってこと?」
「――っ!?」ピクッ
その最中、不意に両奈が思ったことを口にすると皆もそうだが、相馬が過剰に反応を示す
「もしそうだったら両奈ちゃん、ぜ~ったい寂しい気持ちになっちゃうよ~。そんな放置プレイは両奈ちゃん、ぜんぜん気持ちよくないよ~」
「バカね両奈ったら、ジャスミンが言ってるのは別の世界の両備たちのことなんだからそんなことあるわけないじゃない」
「う~ん、分かってるけど、話しを聞いてたら思っちゃったんだもん」
不安そうに語る両奈に両備が宥める
しかし相馬のほうは両奈の言っていたことについてを考えこんでいた
本来、蒼馬は存在しない架空の人物だ
研究所での地獄の日々から逃れたいと思った相馬が作り上げた別人格
だが別の世界の自分が一般人として何不自由ない日々を送っているのなら蒼馬が生まれるきっかけはできず
存在すらしないのだ
「っ…」
『そう思い詰めた顔をするなソウ』
「アオ…でも」
思い詰めている相馬に蒼馬が語りかける
『確かに俺はお前が作り出した存在で別の世界であれば存在すらしていないかもしれないだろう、だが、少なくともこの世界で俺はこうしてちゃんと存在している。故にこれからも俺たちが相棒であることに変わりはないさ』
「…へへ、なんだよそれ、なこと言われたら真面目に考えてる俺がバカみたいに見えるじゃねぇかよw」
『仕方あるまい、実際バカだしな』
「んだとこら!」
心配の気分を吹き飛ばすほどに相変わらずなやり取りをする二重人格コンビだった
「つまりだ。この海の向こうにはもう一人の私たちがいるってことか?」
「話しを聞く限りではそういうことになるのだと思います」
「いやいないぞ」
話しが戻り、焔はこの海の向こうに別の自分たちがいるのかと考えるもそれはジャスミンが即否定した
「というかこの世界にはお前たちも、飛鳥たちもいないぞ」
「どういうことなんだ?」
「ここは巨大妖魔が暴れまわった後の世界、ほとんどの国が水没し、残っているのはこの島だけじゃ」
「「「「「「――っ!?」」」」」
さらにジャスミンは続けざまにこの世界が巨大妖魔によってほぼほぼ壊滅させられており、この島だけが残されていると聞かされる
「じゃあこの世界に私たちがいないって言うのは…」
「その通り、この世界のお前たちは妖魔に破れ、殺された」
「「「「「「なっ!?」」」」」
「こ、この世界の僕らは…死んでいる、ですって…?」
追い打ちをかけるかのようにジャスミンは衝撃の事実を突きつける
この世界では自分たちが妖魔にやられて亡くなっていると聞かされ、驚きのあまり声も出ないほどだった
「なるほどな…ジャスミン、あんたの目的は理解した」
「ほう?じゃあなんだい?あたしの目的ってのは?」
「答えは簡単、俺たちを鍛え上げ、妖魔を倒させようとしているのだろう?そのために俺たちをこの世界につれてきた。そしてヤグラの争奪戦を嗾け、俺たちを争わせ、戦いを通して成長させるように促したわけだ」
一通りの話しを聞いた光牙がジャスミンの狙いを察し、それをここで説明する
「……っ」
「なにも反論がないということは図星ということか、しかしとんだお節介というものだな、強くなる修行は己の意思でするものだ。俺たちは俺たちの意思の元に強くなるために修行をするんだ。あんたの船頭は必要ない」
お膳立てなどしなくても自分たちは強さを求めて突き進むだけだと光牙はジャスミンに言ってのけた
「言ってくれるねぇ、ならば一つ問う。お前たちは情を捨てられるか?」
「「「「「えっ?」」」」」
「どういう意味ですか?」
ジャスミンは佐介たちに対して尋ねた質問を今度は光牙たちに問うた
「仲間の命と引き換えに妖魔を仕留められる状況になった時、お前たちはどうするつもりだ?」
「…仲間の命と引き換えに」
「妖魔を」
「仕留める…」
その問いを聞いた一同は思い悩んだように顔を曇らせるのだった