小百合(ジャスミン)との戦いを経て未だ未熟であると悟った光牙が再び修行を開始する
しかしあれやこれや試してもなかなか成果を出せずにいることに思い悩んでいた
そんな光牙に声をかけたのは内に眠る光の竜だった
精神世界にて久しぶりに対話をする中、光牙はこれまでいろいろあったが
ピンチの時には力を貸してくれた彼女に心からのお礼を述べた
唐突なお礼に拍子抜けする光の竜だったが、同時にかつて自分が唯一心を許した者の言葉を思い出す
目の前にいる光牙こそ自分たちが待ち望んでいた存在なのだと確信する
そうして彼女は光牙に共に力を貸すことを約束し、光牙もまた彼女に感謝し、自ら封印を解除し、光の竜を解き放つ
光牙と光の竜は心を一つに真のバディとなったのだった
紅蓮竜隊の方で動きがあったように他のチームの方でも動き出す者がいた
「……っ」
静けさが漂うその場所の中心にて紫苑が佇んでいた
さらにその様子を見学しに雪泉も共にやってきていた
そよ風が吹きすさぶ
「…っ!」
刹那、佇んでいた紫苑が動きを見せる
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
全身に力を込め、大きな声を張り上げながら紫苑が集中する
やがて彼の体の左右から白と黒のエネルギーが浮かび上がる
十分に力を沸き上がらせるや紫苑は両手を組んだ
すると溢れ出ていた2色のエネルギーが交わりだす
「――っ!!!」
交わろうとしている二つのエネルギーを安定させるべく紫苑は奮闘する
だが、最初こそいい感じに交わりだした二つのエネルギーだったが、徐々に様子がおかしくなる
バビュゥゥゥゥゥン!!
「くぅっ!?」
「紫苑!?」
次の瞬間、二つのエネルギーは反発し、消滅するとともに衝撃波を発生させ、紫苑を吹き飛ばした
様子を見ていた雪泉が慌てて紫苑の元に駆け寄っていった
「大丈夫ですか紫苑!?」
「…う、うん。僕は大丈夫だよ。心配かけてごめんね雪泉」
不安そうにしている雪泉に紫苑は大丈夫だと彼女を宥める
修行を一時辞め、紫苑は雪泉とちょうどいい木下の木陰で休憩を取っていた
「……っ」
休んでいる最中でも紫苑は自身の手を見て考えていた
「またダメでしたね?」
「……うん。どうにもうまくいかないんだよね。最初こそ上手くできそうな気はするんだけど」
なんとか合併させようと必死に頑張ってはいるものの、最後の最後にバランスを保てず拡散してしまいあのような結果に終わってしまう
ここ最近で紫苑はそれを数十回は試みても結果は失敗に終わってしまっていた
「異なる相反する力を一つにする。いうだけなら簡単に見えますがいざやるとなるとなかなか難しいものなのですね」
相反する二つのエネルギーを一つにするには理屈で言うのは簡単でも実際にやってみるとでは話しはまるでちがうのだと考えさせられていた
「例え成功の確率が限りなく低くても僕はこの力を物にしなきゃならないんだ」
小百合(ジャスミン)との戦いを経験し、敗北したこともあるが
それと同様に光牙と相馬の2人と共闘した際に彼らもまたさらなる強さを手に入れるであろうことが考えられた
「今のままで満足しているようでは僕はきっとすぐみんなに追い抜かれてしまうと思う。だからこそ僕はこの力を使いこなせるようにならなければならない」
この先の千年祭を勝ち抜くためにも、それに伴い訪れるであろう彼らとの決着の時のためにも
紫苑は是が非でもこの二つの相反するエネルギーを統合し、自身の力にへと変えるつもりでいた
だが、ことはそう簡単にいかないのだと改めて思い知らされた
「…はぁ〜」
「紫苑?」
困ったようなため息を吐きながら紫苑は草の上に寝そべる
見上げればそこには青い空と白い雲が広がっていた
それらを眺めているとだんだん瞼が重くなりとうとうとし始めていく
やがて数秒も待たずして紫苑の意識は落ちていった
<「――っ!」>
うっかり横になった気持ちよさで意識が飛んでしまっていた紫苑が目をパッと開ける
<「いけないいけない、ついうっかりしちゃったな……ってあれ?」>
目を開けた紫苑が見た先は何もない真っ暗な空間だった
<「ここは?…もしかしたら僕、まだ夢を見てるのかな?」>
こんな空間にいるということは自分がまだ完全に目を覚ましてないのだと考え
早く目覚めないとと内心思っていた
『…おん…し…ん』
<「ん?誰?」>
その最中、紫苑は自分のことを呼ぶ声に気づいた
あたりを見まわしながら声がどこから来ているのかと
すると紫苑の前方のほうがピカピカと発光だした
眩しさに耐えかね、紫苑は目をぎゅっと閉じる
やがてその眩しいのが収まりを見せ、紫苑が恐る恐る目を開く
「…っ!?」
次の瞬間、紫苑はあり得ないものを見たといった顔を浮かべる
紫苑の前に現れたのは褐色肌と黒髪などの違いはあれど外見が雪泉瓜二つといっても過言ではない少女が現れた
『ふふっ、久しぶりね紫苑?』
自身の目の前に現れた雪泉のそっくりさんが紫苑の名を呼ぶ
一方の紫苑の方も彼女のことを知っていた
〈「きっ、君は夜泉!?」〉
彼の前に現れた彼女は夜泉
この世界に来る少し前に紫苑の前に現れ、かつて闇の力を使い、世界に恐怖を与えた者の1人
だが、紫苑との戦いによって敗北し、最後は紫苑に思いを告げ消滅した彼女が目の前にいるのだ
〈「どうして君が…もしかしてこれも夢なのかな?」〉
突然の夜泉の登場に紫苑は脳の処理が追いつかない様子だっだ
『紫苑、あなた随分と思い悩んでいるわね?力を上手く使いこなせないことに』
<「ど、どうしてそれを!?」>
『うふふ、言ったでしょ、あなたのことは私が一番理解してるって』
悩んでいることを言い当てた夜泉に紫苑は驚く
しかし昔の紫苑を知る彼女はさも当然だというかのように誇らしげにしていた
「…うん、そうなんだ。どうしても上手く力を統合できないんだ」
困惑しつつも紫苑は夜泉に悩みを打ち明ける
『なるほどね、あなたが力を一つにできない理由、私にはわかるわ』
<「えっ、本当に!ど、どうしてなの!?」>
力を一つにできないわけに気づいたという夜泉に紫苑は食いつく
『なら教えてあげる。それはね、あなたがまだ闇を扱いきれていないからよ』
<「…えっ?」>
夜泉から帰ってきた答えは紫苑の想像の斜め上を行くものだった
<「ど、どういうことなの?僕が闇を扱い切れていないなんて?」>
これまで幾度も闇の力を使ってきて最初こそ難はあったが、今はそれなりに操れるようになったと自負していた矢先のこの一言だった
『確かにあなたは闇の力を再び使った。でもね、やはりあなたは心のどこかで闇の力を制御しきれないのではないかと無意識に力を抑え込んでしまっているのよ』
<「――っ!?」>
紫苑は夜泉の指摘にハッとなる
確かに自分は今もどこかでいつか闇の力に飲まれてしまうのではないかと考えている節はあった
彼女の指摘を聞いて紫苑は愕然とする
『情けないわね。私の知るあなたはこんなことでへこたれるような人じゃなかったわ』
<「…や、夜泉?」>
見かねたように夜泉が紫苑に語りかけ、紫苑の身体に手を振れる
『怖がる必要なんてないわ。かつてあなたは強大なこの闇の力を御しきっていたのよ。自信を持ちなさい、今のあなたには闇と光、二つの力を宿している。それはどちらもあなたの力なのよ』
<「――っ!?」>
夜泉のその言葉に紫苑はハッとなる
どちらも自身の力なのだと彼女が紫苑を諭したおかげで
<「……ふっ君の言う通りだね。僕ってばどこか焦っていたのかもしれないね」>
この言葉のおかげで紫苑は考えを改めることができたことを感謝する
<「ありがとう夜泉、おかげでなんか行ける気がするよ」>
『そう、ならば見せて頂戴ね、あなたが見つけ出す力の先を…』
そう言うと同時に彼女の身体が眩い光に包まれ、紫苑もまた飲み込まれていった
「…っ?」
「あっ、紫苑。置きましたね」
「……雪泉?」
目を覚ますとそこには自分を見降ろす雪泉の顔が
「…って、これ?」
気が付くと紫苑は雪泉に膝枕されていた
「紫苑が眠ってしまったので少しでも寝心地がよくなるようにと思いまして」
「ありがとう雪泉」
雪泉の優しさに心が洗われるようだった
「…さて、休憩はおしまい、そろそろ再開しなきゃ」
いつまでもこの気持ちよさに現を抜かすわけにもいかないと紫苑は立ち上がり背伸びする
「…雪泉」
「はい?」
「…僕、絶対にやり遂げてみせるよ。みんなのために、僕自身のために」
「紫苑……はい!」
今までよりもどこか自信に満ちている紫苑の顔を身て雪泉も紫苑を全力で応援すると決めたのだった