紫苑side…
熾烈を極める戦いを繰り広げる4組だったが、いよいよ勝負はクライマックスに突入しようとしていた
全員が全員を見据える
「行きます。はぁぁぁぁぁ!!」
「負けてられるか、行くぜアオ!」
「あぁっ!」シュィィィン
「…っ!」
佐介を始め、相馬と蒼馬、光牙が次々と己の力を高めていく
高めれば高めるほど彼らから発せられる威圧感は増していった
「絶・
「
「
高らかに口上を叫んだと同時に3人が最強の姿へと転身していった
3人とも転身したことでその威圧感はさらに勢いずいていた
一方、紫苑は転身する3人のその様子を見ていた
直接戦わずともわかる以前よりも増しているパワー
ぶつかればどれ程のものかもわからない
自分はこれからそんな彼らと雌雄を決しようとしている
今の彼らと渡り合うには習得した闇の力を今以上に扱いこなさなければならないだろう
しかしまだ扱えるようになったばかりで完全なるコントロールに至っていない
それを考えると紫苑は心の中に不安を抱いていた
「(紫苑が不安がっている。……紫苑)」
彼の様子に気づいたのはこの戦いを見守っている雪泉だった
雪泉は両手をぎゅっと握りながら心の中で願っていた
「…っ」
不安で紫苑は心が潰されそうだった
『「大丈夫よ菊冦。不安そうな顔をしないで」』
「…っ!?」ピクッ
するとその時、紫苑の脳裏に声が聞こえる
同時に後ろから優しく寄り添われている感覚を感じる
「(…夜泉?)」
この声と感覚から紫苑はすぐにそれが誰なのかを悟った
背中に寄り添っているのは夜泉だった
『「そうよ菊冦。私よ」』
『「…夜泉、僕、不安だよ。佐介くんたちはとても強い、修行によってみんな以前とは比べ物にならないほど力を増している。それに比べて僕は未だに両方の力を使いこなせていない半端者だ。でもね、それでも僕はみんなのためにも負けたくないんだ」』
自分に寄り添ってくれている夜泉に紫苑が心の内を伝える
『「菊冦、心配はいらないわ、一度は闇を捨て光を得て、そして再び闇を手にした今のあなたならば新たな道を見いだせるはずよ」』
夜泉の言葉に紫苑はハッとしたような顔を浮かべる
『「そうだね…僕には大切なのがある。雪泉たちからもらった愛と光、君からもらった愛と闇。この二つが僕の力であり、支えになってくれる。ありがとう…僕はもう大丈夫だよ」』
『「…そう、なら見せて頂戴。あなたが生み出すその先を」』
そう囁くと夜泉は粒子となって消えた
『「分かってるよ……っ!」』キリッ
紫苑は背中に残る彼女の温もりをしっかりと感じ取るとともに意識を再び3人に向ける
「すぅ~……ふぅ~……」
大きく深呼吸し、紫苑は心を整え、意を決するように身構える
「(雪泉、夜泉…みんな、僕に力を貸してくれ!)」
心の中で彼女たちのことを思いながら言葉をつぶやく
キュピン!
「――っ!!」ギュオォォォォォォォ!!
「「「――っ!?」」」
刹那、紫苑を取り巻くようにあふれ出す
とめどなく湧き上がる光と闇の力に紫苑以外の物たちは恐れおののく
そんな者たちを他所に紫苑は光と闇が渦巻く中心で構えを取る
「……
紫苑が口上を叫んだ瞬間、渦巻いていた光と闇が一つに重なる
光と闇、相反する二つの力が混ざり、溶け合い、新たなる力へと昇華する
一つとなったその力が紫苑を飲み込む形で覆いかぶさる
一同が唖然としている中、紫苑を飲み込んだそれが液状から結晶化し、その結晶に亀裂が走るや一瞬で粉々になる
粉々になった破片と煙が舞う中、その中心には紫苑らしき人影が見えてきた
やがて煙が晴れ、飛び散る破片が無くなり、隠れていた紫苑の姿が佐介たちの前に現れた
現れた紫苑の姿はどこかいつもと違っていた
白を基調としていた紫苑の服のところどころに黒が追加されており、雰囲気もどことなく違っているように見えていた
「……はぁ~」
力んでいた力を抜くように紫苑は一呼吸をする
「お待たせしました。さぁ、始めましょうか皆さん」
「「「…っ?」」」汗
紫苑のその言葉に3人はすぐに臨戦態勢をとる
警戒をしながら出方を伺う
沈黙が場を支配する
「……っ!!」ギュイ!
「「――っ!?」」
「っ…」
先んじて沈黙を破ったのは光牙だった
弓の弦を引きながら矢先を天に向かって掲げる
「秘伝忍法【
パシュン!
天に向けられた矢先から矢の形状のエネルギーが飛ぶ
キュィィィィン!バシュシュシュシュシュ!!
ある程度の高さまで飛んだそれは眩い光を放つとともに破裂する
直後、複数の龍を模った光が紫苑たち目掛けて降り注ぐ
「うわぁっ!?」
「どぁぁぁぁ!?」
着弾と同時に炸裂する攻撃によって佐介と相馬はダメージを受けていた
残る光が紫苑に向かって飛んできた
このままでは佐介たち同様、紫苑までもがやられてしまう
誰もがそう思っていた
「…
対する紫苑が微動だにすることなく両手を合わせると同時にささやくように術の名を唱える
ズゴォォォォォォオオオオオオ!!
次の瞬間、紫苑の後ろ側の地面がすごい勢いで盛り上がっていく
さらにその地面を突き破るように巨大な日本の腕が出現する
黒石のように漆黒を思わせる黒い腕が
片方は迫りくる光のエネルギーから紫苑を守るように覆い
もう片方の腕でその光を薙ぎ払っていった
「なにっ!?」
見たことのない技で攻撃を防がれたことに光牙は驚かされる
光の雨が止むとともに紫苑を守っていた日本の腕が粉々に砕け散り、土へと帰っていった
「はぁ…はぁ…、し、紫苑さんのあんな技、今まで見たことありませんよ?」汗
「ていうか俺らだけ食らってあいつだけ無傷かよ」汗
なんとか攻撃を耐え抜いた佐介と相馬が先の紫苑の技について意見を言い合う
「くっ、ならば…これでどうだ!」
再び光牙が弦を引くとともに今度は紫苑単体に向けて矢先を向ける
すると光牙が今度は右手に力を込める
光牙の右手に宿る聖剣の力が溢れ出す
そうして光牙はその手で弓を引く
矢先に聖剣の力が加わり、凄まじいエネルギーを放出させている
紫苑はこれを見て光牙が全身全霊の大技を放とうとしているのだと理解し
自身もまたそれに合わせるように身構えると両手の掌に力を集約させていく
混沌の力を宿した地、水、炎、風の四大元素の力が一つに溶け込んでいく
「食らえ紫苑!絶・秘伝忍法!【アルテミス!!】」
技の名前を叫んだ地同時に光牙が弦から手を離す
次の瞬間、溜め込んだエネルギーが紫苑目がけて飛んでいく
凄まじい勢いと速度で瞬く間に紫苑の目の前まで迫りくる
再び紫苑に危機が押し寄せる
「…【
刹那、紫苑もまた両手の中に溜めこんでいた力を解き放つ
十字を描いた両手から光牙の放つそれは紫苑の必殺技である
パワーもそれに負けず劣らずのエネルギーのだった
紫苑の放ったエネルギー波が光牙の放ったエネルギー波と衝突する
二つのエネルギーがぶつかり合う
「ぐっ、うおおおおおおおぉぉぉぉ!!」
「――っ!!」
両者の技と技のせめぎ合いが続く
光牙は掛け声を挙げながら畳み掛けるべくさらに力を込める
それにより少しずつだが光牙の技が押し始める
スパートをかけるかのように光牙が全力のフルパワーで挑む
「………はぁぁぁぁぁ――っ!」
しかしそんな空気が紫苑の一声で変わりだす
紫苑がさらに力を込めると混沌の力を宿した四大元素のエネルギーが勢いを増していき、光牙のエネルギー波を押し込んでいく
「ぐっ、ぐぅぅぅ――っ!?」
必死に光牙が抵抗を試みる
「――はああああぁぁぁ!!」
ブオオオオオオォォォォ!!!
「ばっ、馬鹿な!?」
だが、それも無意味に終わり、エネルギー波を消し飛ばされた光牙を紫苑の技が飲み込んだ
ボバァァァァァァァン!!
次の瞬間、凄まじい爆発が巻き起こり、黒煙が広がる
やがて黒煙が晴れていくとそこには転身が解け、地べたに横たわる光牙の姿があった
「こ、光牙!?嘘だろ、光牙がやられるなんて!?」
焔は目の前でやられる光牙の姿を困惑しながら見ていた
「っ…」
光牙を倒したことで紫苑が構えを解く
シュンシュン!!
「…っ!?」ピクッ
「「はあぁぁぁぁぁぁ!!」」
しかしそれもつかの間、紫苑に向かって左右から襲い掛かる二つの影
佐介と相馬だった
先の光牙の攻撃を受けてやられていたかに思われた2人だったが
どうやら軽傷で済んだようで二人同時に紫苑に仕掛けてきたのだ
一気に間合いに入るとともに佐介は拳を、相馬はデュアルガンフレードを振るい、紫苑を攻撃する
刹那、紫苑は身構えるとともに洗礼された動きで2人の攻撃をいなすようにかわす
「うわっ!?」ごちーん!
「のわっ!?」ごちーん!
攻撃をいなされた際に佐介と相馬が正面衝突してしまった
「痛ちち…んにゃろ!!」
「――っ!!」
ぶつけられた痛みを返してやるというかのように再び紫苑に向かっていく
対する紫苑は両手に混沌の力を宿した風を生み出す
さらにその風は形を変え、刺突武器のような形状に様変わりした
「はぁっ!」
「おらっ!」
「――っ!」
仕掛けてきた2人を前に紫苑はアクロバティックな動きを繰り出す
その際に風の刃の刀身が地面を削っていた
直後、相馬と紫苑の得物と得物のぶつかり合いが幕を開ける
佐介の方はというと風の刃の存在を知り、突をやめ、一時距離を取る
「【
距離をとった佐介は両手に気の爪を展開させる
「はぁぁぁぁぁ!!」
爪を展開するなり、交戦する2人に割って入る
2人を相手にしながら紫苑は応戦する
回数を重ねる度に佐介と相馬は攻撃の手をより激しくさせる
だがここでも紫苑の先例された動きが輝きを見せ2人の攻撃をかわし、そうでない攻撃は風刃で防ぐ
「やぁあっ!!」
「ふっ!はあっ!!」
「うわあっ!?」
尚も挑みかかる佐介の攻めを躱すと同時に
紫苑は勢いをつけた蹴りを繰り出し、佐介を吹き飛ばす
「どりゃぁぁぁぁぁぁ!」
何度目かの攻撃の中、相馬がデュアルガンフレードを振り下ろす
「紫苑!」
「…っ?」
すると後ろから声が聞こえるので振り返るとそこには意識を取り戻した様子の相馬が既に構えを取っていた
「ぐっ!?」
さしもの紫苑も不意打ちに対し、咄嗟にガードするのが精一杯でそのまま吹き飛ばされる
「こいつで決めてやるぜ!はぁぁぁぁぁぁっ!」
最大の好機を得たと判断し、二色の炎のエネルギーを纏ったデュアルガンフレードを構え、相馬が勢いよく駆け出す
それを目にした紫苑がすかさず身構える
「絶・秘伝忍法!【デュアルフレイム・スラッシャー!!」】」
紫苑がそうしている間に相馬が間合いに入る
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
勢いのままにデュアルガンフレードを振り下ろす
「超絶・秘伝忍法…【
術の名を唱えるとともにちゃぽんと滴り、波紋が浮かび上がる
バシャァァァァァァァァ!!
するとそこから凄まじい勢いの水流が湧き上がる
「うおっ!?」
突如巻き起こった水によって相馬は攻撃は防がれ、そのまま飲み込まれる
「がぼぼぼっ!?」ゴボッ
水の牢獄に閉じ込められた相馬は身動きを封じられた
「超絶・秘伝忍法…っ!」
動きを封じているうちに紫苑が決めにかかる
右手に白き光を、左手に黒き光を発生させる
そのままゆっくりと円を描くように手をかざしながらその両手を相馬に向けてつきだす
「【
ビュオオオオオオオォォォォォ!!
技を唱えたその時、白と黒の光のエネルギーの波が解き放たれ、相馬目がけてまっすぐに飛んでいく
「――っ!?」
水の檻に閉じ込められた相馬に逃げ道などなくその光に飲み込まれた
数秒後に見えたのはこの技によって戦闘不能となり、地面に倒れる相馬の姿が
「そ、相馬がやられた…っということは」汗
不意を突いて決めにかかったにも関わらず、それを返り討ちにする紫苑に雅緋が驚愕する
「はぁあああ!」
「――っ!」
相馬を倒した紫苑が直後、聞こえてくる声に反応し、視線を向けると
そこには最後に残った佐介が自分に向かってくる姿だった
「たぁああああああああ!!」
勢いをつけた佐介が拳を振るおうとする
「ふっ、はあっ!!」
「うわっ!?――っ!?」
しかし紫苑はこれに対して衝撃波を繰り出す
予想外の攻撃を受けた佐介は後方に吹き飛ばされた
「くっ、はあっ!」
「――っ!」
奇襲は失敗に終わったが、即座に気爪を振るい、再度紫苑に攻撃を仕掛ける
されど紫苑は無駄のない動きで防ぎ、いなすと言った回避で佐介を翻弄する
「はっ!てやぁぁぁ!」
埒が開かないと感じた佐介が畳み掛けるべく突っ込んだ
「ふっ!はっ!」
「ぐぶっ!?」
だがそれがいけなかった
紫苑は佐介の動きに合わせてカウンターを繰り出し、それによって佐介は顎にヒットしたことで脳が揺れ、動きがぐらつく
相手が身動きを取れない隙を突くように紫苑は次なる一手を仕掛ける
「…超絶・秘伝忍法」
ギュィイイイン!
「こ…これ、はっ!?」
手を佐介の足元に向けてかざすとそこに紋章が浮かび上がる
危険を感じとる差助だったが、肝心の身体が怯みのせいで言うことを聞いてくれなかった
「混沌の織り成す炎に抱かれて、眠りなさい!
紋章が出現して数秒後、紫苑がゆっくりと地面にかざしていた手を吊り上げる
ブオォォォォォォォォ!!!
「――っ!?」
次の瞬間、紋章から舞い上がった混沌を纏いし炎が佐介を包み込んだ
やがて炎が止むと飲み込まれていた佐介が姿を見せる
「……っ」ドサッ!
「さ、佐介くん!?」
転身が解け、力尽き、佐介は崩れるようにその場に倒れた
光牙に続いて佐介が倒された
「……ふぅ」
それを見て紫苑は力を抜き、一呼吸をする
「勝った…紫苑が勝ちました!」
「「「「やったーー♪」」」」
紫苑の勝利を目の当たりにした雪泉たちが彼の元に駆け寄る
「やったね紫苑ちん!」
「流石だ。我もほれぼれしたぞ」
「わしは紫苑が勝つと信じていましたよ♪」
「かっこよかったよ紫苑ちゃん♪」
集まった皆が紫苑に労いの言葉をかけていく
それに対し紫苑は嬉しそうにお礼を述べる
不意に紫苑は雪泉に視線を向ける
雪泉は嬉しさと安堵に満ちた表情を浮かべていた
「…お疲れ様でした。紫苑」
「…ありがとう、雪泉」
互いに言葉を交わすと雪泉は紫苑の胸にそっと寄り添うように抱きつき
紫苑もまたそんな彼女の頭を優しくなでるのだった