亜騎羅が豹姫の術によって力をセーブされ、しばし戦闘継続が不可能になったのもつかの間
その彼と交代で零姫と愛姫が現れ、続けざまに戦闘となる
だが、その先頭の最中に雅緋が愛姫の不意打ちの一撃で負傷してしまった
雅緋が抜けたものの残る三人は再び襲い掛かってきた愛姫と交戦し
連携を駆使して愛姫を追い込む
そうして大きな隙ができた愛姫を屠るチャンスを掴んだ焔が一気に畳みかけるために接近する
しかし、そんな彼女の前に零姫が割って入り、彼女と対面する
すると突然焔が身動きが取れなくなってしまったことに気づき、それが零姫の仕業だと知るのだった
「ぐっ、ぬぅ!?」
「うふふ」
佐介たちと飛鳥、雪泉が見据える先にて動けない焔と零姫がにらみ合いをきかせる
「この術はいったい、なんだ?」
「知りたいなら教えてあげる。これは私の瞳に宿る力「瞳術」よ」
「瞳術だと?」
「えぇ、そうよ」
零姫が自分の保有する能力の名称「瞳術」のことを明かす
「…瞳術、聞いたことのない術だ?」
「そうなのか?」
「あぁ、少なくとも俺は知らん」
長らく道元の下で動き、様々な忍たちを見てきた光牙も零姫のいう瞳術のことは知らなかった
「もしや秘伝忍術の一種ということですか?」
「おそらくその可能性はある」
「秘伝忍法の瞳…もしかしてひばりちゃんの持つ「花眼」のようなものということでしょうか?」
「おそらくはな」
雲雀もまた一族固有の秘伝術の一つであり、その両目に刻まれた花の紋章を浮かび上がらせた目術「花眼」を保有している
故に雲雀のように特殊な瞳を持つ零姫もまた彼女のような存在ではないかという考察ができた
「なるほど、つまり焔さんが動けないのはあなたがその瞳の能力で焔さんを金縛りにしたというわけですね!」
後方の佐介たちのやり取りを聞いていた雪泉は零姫に対して瞳の能力が対象を金縛りにすることだと考え、それを問いただす
「うふっ、考えは見事だけど惜しいわね。この瞳の能力は敵を金縛りにするものじゃないわ」
「なんですって?」
だが、零姫は雪泉の指摘に対して能力に対するその考察は違うということをはっきりと告げる
それを聞いた雪泉と同じく能力についての考えを巡らせていた佐介たちは困惑する
「で、でも、なら金縛りじゃないならどうして?」
金縛りでないのなら焔が動けないのはどういうことなのかと飛鳥は疑問を口にする
「それは…」ニヤリ
零姫がにたりと笑いながらおもむろに手を顔の位置まで持ってくると中指と親指でぱちんと指を鳴らす
「っ!?」ドックン
刹那、焔が自身の身に異様な感覚を覚える
ザザッ…ザザザァ…
「な、なんだこれ!?体が勝手に!?」
『「っ?」』
さらにそう思っているのもつかの間、今度は体が自分の意思に関係なく動き出し、身を反転させ佐介たちのほうに向けられる
「…いきなさい」
零姫が焔にそう囁く
「な、…うわっ!?」
それと同時に焔が自分の意思とは関係なく炎月花を構えて飛鳥たちのほうに突進した
ブォン!
「ちょ、焔ちゃんなにを!?」
「どうして飛鳥さんに攻撃を!?」
「ち、違う!体が勝手に!?くそっ!?」
何が何だかわからないまま突然襲い掛かって焔に飛鳥はたちは困惑する
一方の焔もこれは本意ではなく自分の意思に関係なく仲間たちに切りかかろうとしてしまうことに苦痛を感じていた
「どういうことだ?あいつの術は相手を金縛りにする能力じゃなかったのか?」
「そんなものあなたたちが勝手に人の能力を勘違いしただけではなくて?」
「…まさかお前のその目の能力は?」
「そうよ、私のこの目に宿っている能力は相手を金縛りにする能力じゃない。この目の能力は視界にとらえた者の体の支配権を奪い、思うがままに操る能力よ」
それを聞いた佐介たちは驚く、それでいてその説明によって合点も行った
焔が動かなくなっていたのも今こうして飛鳥たちに刃を向けているのもすべては零姫と目が合った時すでに彼女の術によって体の支配権を奪われてしまっていたからだ
「き、貴様!?」
「キャンキャンやかましいわよ?今のあなたは野良犬じゃなくてこの私の忠実なしもべなのよ…っ」
「うわっ!?くそっ、また体が!?」
「ぐぅ!?」
零姫が銅さをするとそれに伴って再び焔が動きを操られ、飛鳥に刃を向ける
どうにか抵抗しようとするもやはりどうすることもできずにいた
「ならば!はっ!」
「雪泉!」
この状況を見ていた雪泉が零姫に向かっていった
「こういう効果が持続するタイプの術は相手を倒すか解除に追い込むのがセオリー。故に焔さんを開放するためにも私があなたを!」
「なるほどね?でも忘れてないかしら?」
焔を呪縛から開放すべく術者である零姫に雪泉が向かっていく
「たああぁぁぁぁぁぁ!!」
カキィィン!!
「なっ!?」
「っ!」
「うふっ♪」
零姫に攻撃が届くよりも先に愛姫がその前に立ち彼女を雪泉の手から救う
「…零姫?」
「問題ないわ。ありがとう愛姫ちゃん」
「ん…っ!」
「またしても!?」
雪泉の邪魔をした愛姫がそのまま戦闘に入る
「ぬぅぅぅ!!」
「ぐぅっ!?」
一方で未だに零姫によって操られている焔と飛鳥の戦闘は続いていた
「…飛鳥、遠慮はいらん、私を倒せ!」
「な、何を言うの焔ちゃん!?」
「どの道このままではどちらかがやられるまで、いや最悪共倒れになるまで戦い続けることになってしまう。私とお前が共倒れになれば私たちから抜き取られたエネルギーがあの妖魔の繭の餌になってしまう。どうせ座れるならリスクは低いほうがいいだろう」
「そ、それは…でも」
確かにあの繭にエネルギーが注がれて妖魔が孵化でもしようものなら大変なことだ
しかしだからといって仲間である焔を自分の手で倒すことに抵抗があった
「(随分とお悩みのようね?仲間を手にかけることをためらってるのね…ふふっ)」
2人の様子を見ていた零姫が何かを思いついた
「傍若なる雄々しき獣、狡猾と騒乱、糸紡ぐ者よ。踏む歩を進める意を拒み、妨げよ。結び巻け【戦姫術9番、縛】!!」
零姫が詠唱を唱え、飛鳥たちのほうに向かって手を突き出した
「なんだ?」
「なにっ?」
同時に飛鳥と焔が異様な何かを感じる
その時だった
ギュィィィィィン!シュシュシュン!
「…っ!?」ガシャン!
「飛鳥!?」
「な、なにこれ!?」
『「っ!?」』
異様な気配がした直後に発生した禍々しい無数の光が飛鳥を拘束する
「これであなたは身動きが取れない」
「ぐぅっ!?」
「お友達を倒すのが嫌なのでしょう?ならそんなの簡単よ。あなたがやられればそれで済む話なのよ」
零姫が不敵にそう述べる
「さぁ、私のしもべ、その子をやってしまいなさい」
「貴様!」
「…っ」キュピン
「がっ、くそぉ!?」
術の力によって焔の体が勝手に動き、身動きを封じられている飛鳥に向かっていく
そうして焔が飛鳥の前に来るとともに炎月花を振り上げる
「や、やめろ!」
「っ!?」
「これでこの子も終わりね。さぁ、引導を渡してあげなさい」
「く、くそおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ザシュゥゥゥン!!!
振り下ろされた刃の音が木霊するのだった