そうして紫苑たちのところは愛姫との戦闘に発展していた
雪泉たち増援が駆けつけると自身の不利を補うべく人形を生み出させ
他のものたちの相手をその人形に任せ、自身のほうは紫苑と対峙する
最初こそ何度も何度も傷つく度に再生を繰り返す人形や愛姫が紫苑を追い込むなど場の流れを支配していた
しかし、その最中に紫苑が起死回生の一手を繰り出すことで一気に状況をひっくり返す
それは人形と戦う彼女たちにも恩恵をもたらさせ
愛姫が深手を負うと同時に再生能力に低下し始めた隙を突いて他の者たちが必殺の一撃を繰り出すと人形は跡形もなく消えた
残る愛姫も盤面を覆そうと仕掛けるも紫苑が放ったカウンターの光波に全身を飲み込まれるのだった
「超・秘伝忍法……
ビュオォォォォ!!!
凄まじいエネルギーを浴びた光波が天へと向かって伸びている
紫苑の放った技がどれほどのものか、この光景がそれを物語っている
「〜〜〜……っ?」
「―――っ!!」バッ、ガシッ!
「なっ、なに!?」
刹那、現在進行形で放たれている光波の中から手が飛び出してくるとともに紫苑の手を掴む
さらにその直後、光波の中から抜け出そうとしている影が
「うっ、ぅうぅぅ〜〜〜〜―――っ!!!!」
エネルギーの波に抗いながら突破してきた愛姫が紫苑の目の前に現れる
大技をまともに食らったが故にもう全身はボロボロだった
「ぅぅ…むぅぅ~~―――っ!!」
「っ!?」
そんな体になってまでも執念からかこうして紫苑の前に出てくるとともに彼に向かって包丁を突き出そうとする
思いもよらぬ事態に紫苑はただただ絶句し、攻撃途中であるが故に紫苑にこの攻撃をかわす手段はなかった
愛姫が包丁を突き出そうとする
まるでスローモーションにでもなったかのようにゆっくりとその時が訪れようとしていた
しかしその時だった
ビュゥゥゥゥン!ドゴォォン!!
「~~っ……っ!?」
刹那、紫苑を襲おうとする愛姫に向かって飛んできた何かが彼女を直撃する
ぶつかってきた者の正体、それは氷
それを見て何かを察した紫苑が後ろに視線を向ける
視線を向けた先には氷塊を打ち出したと思われる雪泉の姿があった
「今です、紫苑!!」
「雪泉……っ、はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「〜〜〜〜〜〜っ!!!?!?!?」
雪泉の援護により愛姫が無防備となる
ここぞとばかりに紫苑はありったけの力で愛姫を再び光波の波の中に飲み込まれた
数秒後、光波が消えた
「……………っ」
身構えたまま紫苑がその場に立ち尽くす
さらに彼の視線の先には全身ボロボロで地に横たわる愛姫の姿があった
「やっ、やった!やったよみんな紫苑ちんが!」
「戦姫衆の1人を倒したんですね!」
「すごい!すごいよ!」
紫苑が愛姫を倒したと戦いの様子を見ていた雪泉たちは自分たちのことのように喜び合う
「紫苑ちーん!」
「っ?」
居ても立っても居られないと言った様子で紫苑の元に四季たちがかけつける
「さすがですね紫苑さん」
「あの厄介な戦姫衆の1人を倒しちゃうなんて」
「しおんちゃんはやっぱり強いね!」
「みんな…ありがとう」
皆からの心からの声援に紫苑は心がばかっとする
「……っ」ピクッ
「…っ!?」
しかし、皆が喜び合うのもつかの間、紫苑は気づく
「どうしたの紫苑ちん?顔色が悪いけd……っ!?」
浮かない顔をする紫苑に声をかけようとする四季だったが、彼女の視線は紫苑の先の方へと向かった
倒れていた愛姫の身体がぴくりと動きを見せたことに
「うっ…っ……」ズル、ズルルル
倒れていた愛姫が意識を取り戻したのか必死になって立ち上がろうとし始める
「えっ?…ちょ、ちょちょちょ、みんなあれ見て!」
「「「「っ!?」」」」
遅れながらに他の面々も愛姫の様子に気づいた様子で浮かれ気分が一気に冷めていった
そうこうしているうちにも愛姫はとうとう立ち上がってみせたのだ
「―――~~~っ」ガクブル
だが、立ち上がって見せてはいるものの、本来なら立ち上がることもできないほどのダメージを受けた身
もはやまともに立つことも容易ではない
生まれたての子鹿のように足はガタガタと震えていた
「あいつまだ!」
あの強烈な一発をもらって尚、立ち上がってくる愛姫のタフさに一同は恐怖すら覚える
「はぁ…はぁ…はぁ………っ――っ!!」
刹那、愛姫が駆け出す
がたがたに震えた足で一歩一歩前に駆け出していく
目の前にいる紫苑たちに向かって
そして間合いに入る直前まで迫ってきた
紫苑たちは警戒する
だが、次の瞬間だった
キュピ~ン!
「っ!?~~っ……」プツン
ドザァァ!
「「「「っ!?」」」」
手首部分が光ったとともに、痕が尽きた様子で紫苑たちを目前に愛姫は彼らの前で地面を引きずりながら倒れた
「…っ」
「し、紫苑?」
「危ないよ紫苑ちん!」
雪泉たちが静止するも聞く耳を貸さず、倒れた愛姫に紫苑が近づく
そして恐る恐る光った個所である彼女の手に触れる
見ると彼女の手首には何かを包み込んでいるように不自然に盛り上がっている包帯が巻かれている
意を決するように紫苑が愛姫の手に巻かれている包帯を取り外す
「っ、こ、これは!?」
「どうしたの?」
「なんだなんだ?」
明らかに驚いている紫苑の様子を見た皆が駆けつける
「「「「っ!?」」」」
「おいおいこれって?」
「えぇ。間違いありません」
険しい表情を浮かべる紫苑たちの視線に映ったもの
それは今自分たちが手首につけられているものと同じエネルギー吸収装置だった
「ど、どういうことなんだ?なんでこいつまでこれをつけているんだ?」
この装置の目的はこの島に誘い込んだ者たちからエネルギーを吸い取り
集めたエネルギーを島の中心に設置されている妖魔に吸収させ、誕生させること
具体的な量は定かではなくとも妖魔を誕生させるためだけならばこの島に連れてきた自分たちのエネルギーだけでも事足りるだろう
故に彼女がこの腕輪をつけるメリットはどこにもないのだ
「うっ…うぅ…」
「っ、まずい!みんな手を貸してこの子、やばいかもしれない!」
先のダメージでもう限界を迎えていたにも拘わらずエネルギーを吸収された
下手をしたら命すら危ないと紫苑は察した
「なにをいっているだ紫苑、そいつらのせいでボクたちは」
「忌夢さんの気持ちは分かります。だけど経緯はどうあれ目の前で死に賭けてる人を放っておくことなど僕にはできません」
手当てを試みる紫苑に異議を唱える忌夢だったが、目の前で死ぬかもしれない彼女を見捨てられないという紫苑の思いにぐうの音もでなくなった
「紫苑、私も手伝います」
「あたしも!」
「みのりも!」
「みんな。ありがとう」
紫苑の意思を組んだ雪泉たちも助力を申し出るとともに愛姫の介護に取り込むのだった