激闘に次ぐ激闘により、一時は窮地に追いやられるも
散会していた他の者たちが加勢に入ることで形成を逆転し、勝利を収めた
一方。その事実を知り、大将である豹姫自らが動き出そうとしている中
またも何やら暗躍めいた動きをする零姫が亜騎羅を焚きつけ
豹姫よりも先に彼を戦場に送り込んでしまったのだった
そうとは知らぬ忍たちはというとようやく残りの面々と合流を果たしていた
しかし時を同じくして保身のために単独行動をとっていた不良チームの前にまさかの亜騎羅が現れたのだ
恐怖で戦慄する不良チームに対し、亜騎羅はまるで獲物を狙う捕食者のように無言の圧をかけながら大剣をギラつかせるのだった
忍たちが行動を開始し、不良チームが亜騎羅に遭遇している頃だった
場所は変わり、ここは島のどこかの洞窟
波の音がする以外はとても静かなそんな場所にて海上に打ち上げられている人影があった
一方その頃のことだった
「ん…んん…こ、ここは…痛つつ……」
先の亜騎羅との戦いで1人城外へと吹き飛ばされ、生死不明となっていた相馬が意識を取り戻した
「俺は…そうだ。戦姫衆とかいうやつらに騙された挙句化け物みたいな野郎と戦って吹っ飛ばされて湖に落ちたんだ…」
まだ少しぼんやりとしているもどうにか記憶を思い出した
「どこだここ?」
あたりを見るとそこはどこかの洞窟らしきところであり、上を見ると天然の亀裂から流れ落ちている滝があった
『目覚めたようだなソウ』
「アオか?」
『あぁ』
困惑する中、脳裏から聞こえてくる声に気づいた相馬は語りかけてきた蒼馬と対話する
「なぁ、俺たちなんでこんなところにいるんだ?」
『生憎俺も気が付いたのは少し前なんだ。まぁ、状況からある程度推察するにどうやら湖に落ちたが流れに巻き込まれた際に運よくここにたどり着いたといったところか?』
湖に落ちた自分たちが今この場所にいて生きているということはそういうことなのだろうと蒼馬は考えた
「なるほど、つまりはアレだ。これは俗にいう水落ちってやつだな」
『水落ち?』
「よくアニメとかドラマとかであるんだよ。ピンチの時に海とか川に落っこちる奴ってなんだかんだで生き残ったりするんだよ。それが水落ちってやつ、でもまさか自分がそれを体感することになるなんてな♪や〜やっぱり日頃の行いがいいからかな?あっはっは♪…って、痛ちち」
どこが日ごろの行いがいいのだろうかと蒼馬は内心思った
『大丈夫かソウ?まだやつから受けたダメージが抜け切れていないんだろう?まぁ、それに関しては俺も同じではあるがな』
魂は分かれていても身体は一心同体、当然ダメージも同じく受けていた
「たくあんにゃろめ~!!今に見てろよ~!次会ったら今度こそギッタンギッタンのボッコボッコにしてやる〜!」
体に痛みを覚えながら相馬は自身をこんな目に合わせた亜騎羅に恨みつらみを晴らしてやると意気込んだ
『気合いを入れるのはいいが、これからどうしようものか?』
「ん?なにが?」
『とぼけている場合か?俺たちが意識を失ってどれだけ立っていたのかもわからんし、何よりみんながどうなったのかもわからないんだぞ?両奈たちのこと気掛かりにならないのか?』
「うおっと、そうだった!それを早く言えよアオ!!こうしちゃいられねぇ、早いところ出口を探してみんなと合流だな!」
諭されてようやく気づいた様子の相馬に蒼馬はやれやれと頭を抱える
「まずはこの洞窟を抜けねぇとな」
『気をつけろ。何が起こるかわからんからな』
「わかってますって、んじゃ行こう!」
蒼馬から注意を促されながら相馬はシノヴァイザーを起動させ、懐中電灯代わりにし、暗い洞窟内を進んでいく
ごつごつした足場のためなるべく足元に気を付けながら進んでいった
道中入り組んだ洞窟内のために何度か分かれ道にも出くわしたり
コウモリだとかに遭遇してびっくりして驚いてしまったりといろいろありつつも相馬は前に前にと進む
「ひゃ~くたびれた。どこまで続いてんだよこの洞窟~。なぁアオ〜、ちょっと休憩〜」アセアセ
『またか?ソウ、俺たちに休んでる暇はないんだぞ。早くここから出て状況を確認しなければ』
「わかってるよ。でももうしばらく歩いて足もくたくただし、腹も減ったし。だいたいさ、洞窟内を当てもなく無暗に動いても疲れるだけだろ?それにいざみんなと合流して敵に出会した際にヘロヘロな状態じゃまともに戦えやしないだろうが」
『っ…一理ある』
先の戦いのこともあり、仲間たちのことが気がかりだった故に急ぎ過ぎていたかもと蒼馬は反省する
「てなわけでちょっと休憩しよう。そうしよう!」
『…仕方ないか。5分休んだらまた出口を探すからな?』
「おっしゃ決まり!ひゃ〜、歩き続けて足もへとへとだったぜ」
やっと休めると相馬はウキウキしながら近くにあった岩に腰掛け休憩する
「水水〜♪」
相馬は岩場に腰掛けるといそいそとボトルを取り出し、キャップを開けて水を飲もうとする
「……あり?」
しかしいくら待とうとも水は出てこない
「あのアオさん、水が出ないんですけど?」
『何をふざけているんだ?水なら前にお前が休みたいって駄々をこねた際に全部飲み干してしまっただろうが』
「………そうでしたーー!!??」
水がないのは先の休憩の時に飲み干してしまったからだと指摘を受け、そのことを思い出した相馬は途端に慌てふためき出した
『まったく、だからあれほどセーブはしておけよといったのに…』
「うぅ~…面目ない」シュン
『まぁ、こんなところで慌てていても意味はない。水がない以上、是が非でもここから出てみんなと合流しなければ最悪は死ぬだけだ』
「よしアオさん、善は急げだ!早く行こう!」
危機的状況に陥っているとわかるやいなやさっきまでとは打って変わった態度にやれやれと頭を抱える蒼馬だった
そうして脱出を目標に洞窟内を相馬が進んでからしばらくのことだった
「…あっ、おいアオ、見ろよ!」
『…ここは』
進んでいった先で相馬たちは大きな地下水を発見する
「うっひょ~!水だ~!!」
『待て待て待て、ちょっと待てソウ!』
「んだよ?」
『よく見ろ水の色を、あの色。明らかに普通じゃないだろ』
蒼馬が指摘するのも無理はない、相馬たちの前にある地下水は普通の色ではなくピンク色をしていたのだから
『何があるかもわからん。ここは慎重に「…ぷは~♪」…って聞けよ!!?』
慎重に調べるべきだと主張する蒼馬を他所にいつの間にか水を飲んでいる相馬にツッコミを入れた
忠告も聞かず、水を飲んで喉を潤した時だった
「ん?」キュピ~ン
『っ?』
突然、身体が光り輝きだしたことに相馬たちが驚きを見せる
さらに驚くことに光り輝くと身体中の傷がきれいさっぱり完治したのだ
「おぉぉ!なんだよこれ?すっげー!?傷が無くなったし、おまけになんか体が軽いぞ!!」
『な…これはいったいっ?』アセアセ
目の前で起こっている異変に相馬は感極まったようにはしゃぎ、蒼馬はこの事態に困惑する
『本当に何ともないのか?』
「おう、それどころかさっきまでの疲れがウソのように元気になっちまってるぜ!」
調子が戻ったことに相馬は大はしゃぎだった
『いったいどうして……ん?』
「どうしたアオ…ん?」
しかしそんな中、不意に蒼馬が視線を晒し、相馬もその方に目を向ける
それは天井のクレバスから降り注いでいる月の光に照らされる黄色い花畑だった
不思議そうに花を眺めている中、蒼馬はあることに気づいた
月明かりに輝く花たちが花弁から湖の色と同じ色の蜜が流れているのだ
『…ひょっとしたら』
「どうしたアオ?」
『ソウ。からのボトルはいくつ余ってる?』
「えっ?ちょっとまってくれよ。え〜っと…全部で4つくらいか?」
蒼馬に指示されるがままに相馬が空のペットボトルを確認する
数えてみたところボトルは全部で4つあった
『よし、ならばソウ、今すぐその空ボトルにこの湖の水を入れるんだ。これを使えばきっとみんなを救う手立てになるはずだ』
「そうか。そういう事なら」
思いもよらぬ出来事だったが、これはいいものを見つけたと2人は気持ちを高ぶらせる
その最中、クレパスから降り注がれる月の光が薄れ始めていくのが見えた
きっと月が雲に隠れだしたのだろうと考えていた
「お、おいアオ、あれ見ろ!?」
『どうしたソウ…っ!?』
突然慌てた様子で花園のほうを指さす相馬に続いて蒼馬も視線を向ける
視線の先に映った光景は花園の花たちが枯れ始めて行く光景だった
「何がどうなっているんだ?どうして?」
『まさか?……いや、だが間違いない。月の光が当たらなくなった花から枯れだしている。つまりあの花は月の光の元でしか咲いてられない花なんだ』
月が消えた途端に枯れだしているところを見るにそういうことなのだろうと蒼馬は分析していた
「おいおいアオ、見ろ!」
相馬が次に指示したのは湖のほう、湖の色がピンクから自然体である透明色に戻りだしているのだ
『まずい、花が枯れたことで蜜が出なくなって湖が元に戻ろうとしているんだ』
「やべーじゃん。やべーじゃん!?」
湖の水が元に戻ったらきっとさっきみたいな傷を治す力も無くなってしまうことは容易に想像できる
『ソウ、急いでボトルに水を汲むんだ!』
「お、おう!」
咄嗟に蒼馬が指示し、相馬が湖の水をボトルに注ぎ込む
その間にも湖野水が元に戻っていく
『間に合ってくれ…』アセアセ
「~~~っ!!」アセアセ
なんとしてもこの水を手にするという思いで相馬たちは逸る気持ちでボトルに水を汲むのだった