壮絶な拳打の奥州を繰り広げ、一度は優勢に立ったかと思いきやすぐに形成は逆転され、さらには重い一撃により追い詰められる
しかし仲間たちのために戦うという思いが佐介を奮い立たせ、反撃の一手を繰り出す
それによりついに佐介たちは長き死闘の末に亜騎羅の撃破に成功する
勝利したことにより駆け付けた飛鳥たちに手助けされながら勝利を喜ぶも
豹姫が苦し紛れの言い分を述べたりするという事態の中、そこに倒したと思っていた零姫が現れた
零姫はなぜ自分がここにいるのか不思議でならない佐介たちを他所に彼らが見ている状況で
この場に収められている妖魔の繭に手を振れ、羽化させようとするのだった
亜騎羅を倒して間もないというのにそれを狙ってか現れた零姫は妖魔の繭に手を触れ、羽化を促していく
彼女に触れられた瞬間から妖魔の繭が鼓動と脈動を強めていくのがわかる
「零姫、貴女どうして、忍たちはともかく何でアキや愛姫達のエネルギーまで吸い取らせたのよ!それは私達戦姫衆がこの世界を作り変えるために手に入れたものなのに、それなのに!?」
先程零姫が語った事が未だに信じられない豹姫は亜騎羅達も犠牲にして妖魔を復活させようとしている事を咎める
「…そんなもの、嘘に決まってるじゃない?」
「――えっ!?」
零姫が語ったその一言に豹姫は胸を刺されるような感覚に襲われる
「ど、どういうこと…?」アセアセ
「言葉通りの意味よ。私は最初からこの力を独り占めするつもりでいたのよ、私はこの繭に宿る妖魔の力を自分のものにするために貴女達に秘密にしながら密かに計画を練っていたのよ」
零姫はこれが最初から自分が計画していた事だったことを打ち明ける
「じゃあ最初から貴女はその力を手に入れるために私たちを欺いていたってこと?」
「そうよ。でもこの計画を遂行するためには課題は山住だったわ、この子の羽化を促進させるために必要な膨大なエネルギーの確保が必要だった。そこで大活躍してくれたのが亜騎羅くんだった」
話しをしながらちらりと零姫は倒れている亜騎羅のほうを見た
「ここまでくるのに亜騎羅くんは多いに貢献してくれたわ。手強い者たちも彼に任せればあっという間に蹴散らしてくれて、お陰で想像よりも早く、且つこんなにも繭にエネルギーが溜まったわ」
今度は再度視線を鼓動と脈動を繰り返す妖魔の繭の方に向けながら零姫は語る
今、妖魔の繭がこれ程の状態になっているのはひとえに亜騎羅が忍達を倒し、エネルギーを繭に還元させたからだ
それにより彼女の計画は予想以上の進展を迎えたのだ
「…だけど、それと同じくらいに亜騎羅くんはこの計画において最も危惧すべき障害でもあった。味方にすれば頼もしい彼も敵になればこれ以上ないほどの脅威になる。私にとってそれが1番の懸念点だった」
亜騎羅は皆が恐れ戦くほどに強い、計画を進めるにはとても頼りになるが
比例して自身がこの力を独占しようとして豹姫と敵対でもしようものなら自分が亜騎羅にやられてしまうのは目に見えていた
故に零姫は亜騎羅をどうするべきかをこれまで考えていた
「でも私はツイてるわ。まさか彼らが亜騎羅くんを倒してくれるだなんて、私の計算では倒せずとも弱った所を私が奇襲して瀕死に追い込み腕輪を嵌めてエネルギーを確保するつもりだった。でもこれは私にとって嬉しい誤算だったわ!」
零姫は高揚した様子で笑みをこぼす
今のこの状況は彼女にとってまさに嬉しい誤算だった
激闘の末に佐介達の手によって亜騎羅は倒された
「礼を言うわ忍学生たち、亜騎羅くんを倒してくれて、お陰でもう私の邪魔をする者は居ないわ!」
「くっ…貴様――っ!」
全ては彼女の手のひらの上で踊らされていたのだと知り、佐介達は憤慨した様子を見せる
ギュィン!ギュィン!ギュイン!!
「眉が――っ!?」
「あぁ…遂に!」
直後、妖魔の繭がより一層不気味に輝き始める
「――っ刮目しなさい!そしてその目にしかと焼き付けるといいわ!あなたたちから奪い取ったパワーを糧に産まれる妖魔の姿を!」
この光景を見ている者たちに向けて零姫は妖魔の誕生の刻を告げた
次の瞬間だった
妖魔の繭が内側からピキピキと音を経てると共に亀裂が大きく広がる
やがて亀裂の中からどんどんと盛り上がる物体が繭の中から現れ始める
ファサッ!!
刹那。繭の中から出てきたのは巨大な翅だった
さらに翅が出てきたのを皮切りに足や胴体が出てくる
みるみるうちにその全貌が明らかになる
そして遂にその時は来た
【「ギュィィィィィイイイイイ!!」】
「「「「「っ!?」」」」」
恐ろし気な産声を挙げながら遂に妖魔がこの世に顕現した
強大なる邪悪のオーラを体から溢れ出させている妖魔に対し、佐介達は驚きのあまり言葉を失ってしまった
やがて妖魔の身体に付いている巨大な翅が乾き、形もより洗練されたものへと変わった
【「ギュィィイイイイイイ!!」】ファサッ!
咆哮をあげながら妖魔は完全な状態となった翅を羽ばたかせ始める
数回ほど羽ばたかせたところで妖魔の身体が浮かび上がり、そのまま宙を舞い始める
宙へと飛んだ妖魔は周囲をぐるぐると回るように旋回している
「うふふ、あはははははは!遂に、遂に産まれたわ、最強の妖魔が!」
産まれ出た妖魔に零姫は歓喜の声をあげ、佐介達の方は不穏な顔を浮かべていた
「あ、あれが…?」
「あの繭に眠っていた妖魔だと!?」
繭から誕生した妖魔を目にした佐介達はその姿に恐怖を覚える
「…さて、無事に羽化もしたことだし、そろそろ最後の仕上げにかかるとしましょうか」
「最後の仕上げ?零姫、貴女まだ何かする気なの?」
意味深な言葉を告げる零姫に豹姫はどういうことかと疑問を抱く
そうこうしているうちに飛び回っていた妖魔が零姫の前まで戻ってきた
「妖魔よ!」
【「ッ?」】
「私を見なさい。この私の瞳を!」
【「…ッ……」】
妖魔が言われるがままに零姫の目を見つめる
互いに目を見合わせたまま沈黙が続く
すると次第に妖魔の様子がおかしくなっていく
見つめ合って数秒後に妖魔はふらふらとなり始める
「……平伏しなさい」
【「キュイィッ」】
零姫が笑みを浮かべながら命じるとなんと妖魔は彼女の命令に従った
命じられるままに妖魔は零姫の前に平伏した
「そうよ。いい子ね……さぁ、あなたの力を私に捧げなさい。私の一部となるよ」
【「キュイ、キュイイイイ!!」】
自身に平伏す妖魔に零姫は命じた
我が身と一つとなることを
その命を受けた瞬間、妖魔は咆哮を上げながら再び羽ばたき、宙へ浮かび上がると零姫に向かって突っ込んだ
零姫はそれに対して逃げるそぶりを見せず、妖魔の到来を受け入れる
次の瞬間、零姫の体に妖魔が触れると同時に邪悪なエネルギーが彼女達を包み込んでいく
発生した風圧が周囲に広がる
「れ、零姫!?」
飛ばされそうになるのを堪えながら豹姫は異常自体の渦中にいる零姫の名を叫ぶのだった