激しい死闘の末に亜騎羅を倒し、勝利を手にすることができた佐介たちだったが
豹姫と一悶着があった直後、突如として倒されたと思っていた零姫が現れたことにより事態は急変する
零姫はこれまでのことが自身のシナリオどうりであることや佐介たちの働きによって
一番の障害であった亜騎羅の無力化という嬉しい誤算も含めて自身の計画を最終段階に移行させる
手始めに満を持すように繭から妖魔を誕生させることに成功させた零姫は次なる行動として
自身の能力である「瞳術」によって妖魔を洗脳することに成功させ
そして命じることで零姫は妖魔との融合を始めるという全員の度肝を抜かせる行為に走るのだった
皆が刮目する中、妖魔を零姫が自身の体に取り込み始める
巨大だった妖魔が少しずつ零姫に吸収されていく
ただその光景を眺める事しかできず、佐介達が歯痒い思いを抱く
数秒後、妖魔が零姫に完全に吸収される
「……う――っ!?ぐうぅ――っ!?」
「れ、零姫!?」
妖魔を吸収した直後、零姫は途端に苦しみ出し、呻き声を上げ始める
豹姫はただ事ではないであろう零姫に呼び掛ける
しかし零姫は返事を返さず、苦しみに踠きながらも耐え忍んでいく
「…あっ、あぁぁぁぁあああああああ!!??」
ゴォオオオオオオオ!!!
刹那、一際大きな叫び声をあげると共に零姫の身体から謎の光が発生した
「「「「「――っ!?」」」」」
周囲を覆い尽くす程の光は場に居る全員の視界を視界を奪った
軈て光が徐々に弱くなると共に視界が回復し始める
一番最初に視界を回復させたのは豹姫だった
「れ、零姫は?どうなったの?」
豹姫は一目散に零姫の方に視線を向ける
「――っ!?」
だが次の瞬間、豹姫は信じられないような光景をその目に刻む事となった
そこに居たのは妖魔をとの融合を果たし、異形の容姿に風貌を変えた零姫の姿があった
着ていたドレスは殆ど原型を留めていないくらいに破れきっており、露出された胸と谷間には眼の様な模様などが浮かび上がっていた
更に一際目を奪われたのは背中から展開された蝶の様な大きな翅だった
翅にも胸にあるのと同じような眼を彷彿させる模様が浮かび上がっていた
「……はぁ~――っ」
変身が完了したのか落ち着きを取り戻すように零姫はゆっくりと一呼吸をすると
浮かび上がっていたその身を地に着地させる
「あ、あれが……零姫?」
妖魔と一体化した零姫の姿を目にした豹姫が困惑した様子で彼女を見つめていた
「…これが、あの妖魔の力……うふっうふふふふふ、素晴らしい、なんてことなの?体の奥から力が溢れ出てくるようだわ!」ギュィィン!
自分の変化とそれにより獲得した想像を絶するエネルギーを感じ、零姫は正に幸福の絶頂とも言える瞬間だった
「これよ、この力さえあれば全ての忍達を葬り去る事ができる。遂に悲願を叶える時が来たのよ!」
悲願を叶えるだけの力を手にしたと歓喜に震える
「…おい」
「――んっ?」
最中、喜びに浸っていると呼び掛ける声がする事に気付いた零姫が振り向くとそこには焔に支えられながらも豹姫の近くにまで歩み寄ってきた光牙がいた
「あら、あなた随分と辛そうね?誰かに支えてもらえないくらいボロボロの身で何しに来たのかしら~?」ニヤリ
「はぁ…はぁ…俺の事は良い、それよりも教えろ。貴様の目的を…仲間すら裏切ってまで手に入れたその力でお前は何をするつもりだ?」ガタガタ
ボロボロなその身の事を煽るように指摘する零姫の言葉には耳を貸さず
光牙は淡々と零姫にここまでの事をする目的が何かを問うた
「…そんなに知りたいの?良いわ、貴方達のお陰で私の計画が無事に達成できた事だし、冥途の土産に教えてあげるわ。何故私が貴方達や姫達を利用してこの力を手に入れようとしたのかをね」
計画が上手く運んだ事からの高揚と愉悦感からか気分を良くした零姫は光牙の問い掛けに応じ、自らの計画の全貌を語る事にした
「まず初めに言っておくわ。そもそもの話、私は…“人間“じゃないわ」
「「「「「――っ!?」」」」」
「人間じゃ…ない?」
最初からいきなりの爆弾発言に一同は驚愕する
「何だと……まさか、貴様は!?」
「勘が良いのね。そうよ、実を言うと私もまた”妖魔”なのよ」
「よ、妖魔だって――!?」
光牙が勘付いた様子を見せる中、続け様に零姫が自分が妖魔である事を明かす
「バカな、あり得ない、妖魔だったとしてこんなにも人と区別がつかないだなんて!?」
佐介達が驚くのも無理はない。本来、妖魔とは先程零姫に吸収されたのも含めて
人ならざる異形の怪物であることが通説だった
過去に人に近しい容姿をしていた妖魔も居たがそれは一部であり、それ以外は妖魔の要素が殆どを占めている
故に零姫が自身を妖魔だと語っても見た目からしても完全に人間の姿となっているケースなど前例がなかった
「確かに嘗ての私は貴方達の言うように異形の存在の姿をしていたわ」
「ならどうしてお前は?」
「大した事じゃないわ。この肉体は元々私の物ではないからね」
「この肉体……だと?」
どうしてこうも妖魔である彼女が人間の形をしているのか光牙は問い質す
それに対して零姫は肉体がそもそも自分の物ではないというこれまた衝撃的な返答だった
「そうよ……この肉体は私の”亡き友から譲り受けた物”あの子の無念を晴らす為にも私は忍達を駆逐する。手に入れたこの力でね!」
意味深な言葉を告げ、忍達へ復讐を零姫が宣言した
「さぁ、話しはここまでよ。そろそろ試させてもらいましょうかね。この力がどれ程の物なのかを!」
「そうはさせ…痛っ!?」
「光牙!?」
話しを斬りやめ、いよいよその鉾を振るおうとする
それを見て光牙が動こうとするも亜騎羅との戦闘のダメージのせいで思うように動けない
このまま手をこまねいてみているしかないのかと一同は悔しむ
「うふふ、安心なさい。私は意外と優しいの、だから攻めて痛みを感じる間もなく一気に消してあげるわ!」
せめてもの情けをかけると豪語し、いよいよ零姫が仕掛けるべく一同に向かって突っ込んだ
成す術もない、まさに万事休すの一同に零姫が迫る
バキュゥゥゥゥゥン!!
「―っ!」カキン!
「「「「「――っ!?」」」」」
しかしその直後、零姫目掛けて一発の弾丸が飛んできた
零姫は羽根でそれを防ぐも、動きを止める
弾丸が飛んできた方に皆の視線がいく
「っち、もう少しであんたの身体に風穴を開けられたのに反射神経が良いのね?」
「りょ、両備!?」
「それに詠、四季、春花に斑鳩まで!」
視線の先には銃を構えた両備、更にはその横に他の者達も居た
「はぁい、みんな無事かしら?」
「遅くなり申し訳ございません。助けに参りました!」
「みんな、来てくれたんだ!」
増援として駆け付けた斑鳩達が一斉に構え、臨戦態勢に入るのだった