双方ともに限界寸前にまで追いやられながらも互いの意思と信念が2人を戦いに駆り立てる
そんな殺伐とした戦況の中、豹姫が乱入し、零姫に必死に訴え始める
最初こそ拒もうとする零姫だったが、豹姫の諦めない訴えにこれまでの思い出がフラッシュバックしていた
二つの思いの狭間に揺れ動く零姫の心に豹姫の声が響き渡るのだった
亜騎羅と零姫の熾烈を極める戦いが豹姫の介入によって予想外の展開へと発展していた
「うっ、ぅぅぅ――っ!?」
「零姫、もうこれ以上私達が争う必要なんてないわ。だから、お願い!!」
決死の訴えで豹姫が零姫の心に語り掛ける
その言葉により零姫は恨みと憎しみに染まり切っていた心に豹姫たちこれまで過ごしてきた日々の思い出が溶け込み出し
揺れる狭間に零姫は苦しみを感じていた
「私は…私は…」
苦悩を抱く零姫が不意に視線を向けた先には自分に微笑みを浮かべ、手を差し伸べようとしている豹姫の姿が映った
「…姫……っ」
すると徐に零姫の手が豹姫の差し伸べる手を震えながら取ろうとするかのように差し出そうとし始める
豹姫も彼女が自分の手を取ろうとする姿に希望を見出し始めていく
しかしその時だった
零姫の体から邪悪な気を孕んだ靄が発生しだした
「こ、これは!?うぐっ…ぐううぅぅ!?」
「零姫!?」
突如として起こった事態に豹姫と亜騎羅はもちろんの事だが、その光景を目にしていた佐介達もまたこの光景に驚いていた
皆が驚愕している最中でも零姫は溢れ出す靄の影響からかとても苦しそうにしている
「大丈夫零姫、しっかりして!?」
「ひ、…姫!?」
自分を呼び掛ける豹姫に零姫が反応し、彼女の顔を見る
だがその時、零姫の視界に映っている豹姫の姿が歪み始める
直後、視界に映っていた豹姫の姿が別の人物に変わった
「――っ!?」
その人物の姿を見た瞬間、零姫はこの上ない程に驚いた顔を見せる
「そ、そんなまさか……!?」
彼女の目の前に現れたのはどう言うことか零姫と瓜二つと言っていいほど酷似した少女だった
《「零姫……何をしているの?あなた、私に約束してくれたわよね?私の敵を撃つためにこの世の忍たちを皆殺しにするって、なのにどうして迷っているのかな?」》
「ち、ちが…私は…っ!?」アセアセ
責められる圧に零姫の精神は大きく揺らいでしまっていた
《「私のことなんてもうどうでも良くなっちゃったの?私と一緒に過ごした日々よりこいつらと過ごした日々の方がよかったの?」》
「そ、そんな…私はそんなこと!?」
《「だったら示してよ……私の敵、取ってくれるんだよね?ねぇ、零姫?」》ニヤリ
「――っ!?」
いつのまにか目の前まで来ていた少女が重々しく零姫に強烈な圧をかける
「あっ…あぁ………っ」ガクッ
「零姫!?」
何が起こったのか分からずにいる豹姫は突如として狂い出し、そしてだらんと俯いてしまった零姫の様子に困惑する
不安を抱きつつ様子を伺っているとしばらくして零姫の体がぴくりと動きだす
「…ぼす」
「えっ?」
「ぼす…全てを、滅ぼす!」
「「――っ!?」」
鎌首をもたげた零姫の顔を見た瞬間、豹姫と亜騎羅は戦慄する
その顔は至る所に血管が浮かび上がっており、目は怪しい眼光を放っている
「零姫、どうしちゃったの!?」
「うるさい、黙れ…貴様らを一人残らず滅ぼしてやるぅぅぅぅぅぅ!!!」
発狂のような声をあげるとともに零姫の身体から禍々しい気があふれ出る
するとその直後だった
彼女を中心に周囲に異変が起こりだした
見渡す限り血のような赤色に島も空も覆われてしまった
「こ、これはまさか!?」
「あぁ…この嫌な感じ、間違いない」
赤く染め上げられてしまった世界、佐介たちには既視感のある光景だった
そしてその既視感を裏付けるかのように事態が動きを見せる
ギュゥゥゥゥン!!
【【【【【「キシィィイイイイ!!」】】】】】
周囲から黒いトンネルのようなものが発生し、そこから次々と妖魔たちが現れ始めてきたのだ
このタイミングで零姫が妖魔を召喚すると思わなかった一同は動揺を隠せなかった
「やってくれたなあの女!」
「どうしましょう光牙くん?」
召喚された妖魔を放っておけばどうなるかわかったものではなかった
「…戦える者は俺に続け!これより妖魔どもを殲滅させる。そうでない奴らは危ないから隠れていろ!」
光牙は覚悟したようにこの場にいる全員に告げる
ここで押さえておかなければ厄介なことになると判断してのことだった
「光牙くん、僕も戦います!」
「私だって戦えます!」
「わたくしも!」
すかさずそこに一番に佐介と飛鳥、斑鳩が名乗りを上げた
「抜け駆けはさせませんよ佐介くん、僕達だってこの状況を見過ごすわけにはいきません」
「わたくしたちも全力でサポートします」
続くように紫苑と雪泉も参加の意思表明を示す
「待て、私達も居るぞ。当然私達もやらせてもらう」
「両備達の見せ場はこれからよ」
「うんうん、両奈ちゃんも頑張っちゃう~♪」
当然というかのように残る雅緋たちも参加をすることを告げる
「…で、なにしれっと「俺関係ない」みたいな感じを出しているんだ貴様は!?」
「ひえっ!?」ビクッ
不意に雅緋が視線を向けるとそ~っと輪から離れようとしている相馬に怒鳴り声を上げる
「い、いや~。だって戦える者は続けって言ってたから僕ちんもうくたびれちゃって戦えn「いいからあんたもやるの!」ひぃ~~!?」ズルズル
1人さぼろうとしてもそうは問屋が降ろさんと両備に襟を捕まえられ強制的に参加する羽目に
「光牙さん。わたくしもお供しますわ」
「私は後方支援を担当するわ」
「詠、春花…わかった」
全員が打って出ることを決めた
「よし、全員突撃、妖魔どもを殲滅するぞ!」
「「「「「「おーー!!!」」」」」」
光牙の号令を合図とし、忍学生たちが妖魔に向かって突っ込んでいった
一方の亜騎羅達はというと
様子からしても今の零姫が普通じゃないことは明白だった
「うぁぁぁぁああああ!!」
「――っ!?」
叫び声を上げ、零姫が豹姫を襲うとする
「うおぉおおおっ!!」
「ぐぅっ!?」
「アキ!?」
だが、間一髪のところで亜騎羅が零姫に仕掛け
不意を疲れた零姫は大きく後方に吹き飛ばされた
「下がって姫、ここは危険だ」
豹姫の前に立ち、彼女に逃げるようにと亜騎羅は告げる
「で、でもアキ、零姫が!」
「…もう、零姫じゃない」
「――っ!?」
零姫のことを放っておけない豹姫がそれを拒もうとするが亜騎羅の呟いた一言に言葉が出なくなってしまった
最中、豹姫の目に映ったのは起き上がりこちらに憎しみの眼光を向ける零姫の姿
「滅ぼす、生きとし生けるもの全てを葬り去ってやる!」
その姿はもはや同じ言葉を繰り返すだけの獣のように見えた
復讐という名の獣と成り果ててしまった零姫を見て自分がなっていたかもしれない姿が重なる
「…アキ、お願い。零姫を…零姫を助けてあげて…そして、できることなら……」
苦渋の決断を選択した豹姫は悔しさを抱きつつ、それと同時に僅かな希望を亜騎羅に託す
「わかった……――っ!!」
豹姫からの命を受け、亜騎羅が動き出す
「滅びろぉぉぉ!!」
「―――っ!!」
憎しみの力に支配された零姫に亜騎羅が向かって行くのだった