この場から逃げ果せようとした妖魔の核が全速力で宙を舞う
「―――逃がすか!!」
だがその行動も亜騎羅が捕まえることに成功したことで失敗に終わる
「――っ!!」ドスゥゥン!
勢いよく地面に着地した亜騎羅は自分の手に握られている妖魔の核を睨む
≪【――ッツ!?】≫グニュニュニュ
すると妖魔の核がぐにゃぐにゃとし始める
「(こ、こいつ――っ!)」
亜騎羅の手から必死に逃げ出そうしている様子だった
暴れ狂う妖魔の核を必死に抑え込もうとする亜騎羅だが
思いの外妖魔の核が暴れて抵抗してくる
このままでは拘束を解いて逃げてしまうことが想像できる
その時、亜騎羅は自分ができる最善の手を思いついた
「がぁっ!!――っがぁぶっ!!」ガブリ
「「「「「「――っ!?」」」」」
あろうことか亜騎羅は拘束していた妖魔の核に勢いよくかぶりついたのだ
バキッボリッという咀嚼音に加えて食べられている苦痛と恐怖からか妖魔の核から悲痛の叫び声が聞こえる
周囲も亜騎羅のまさかの行動に戦慄する
皆の視線など気にせず亜騎羅が妖魔の核を食らい続け、そして最後の一口を終え、ごくりと飲み込んでしまった
静かなる沈黙が場を支配する
「―――っ!!」ゴォォォオオオオオオ!!
次の瞬間、亜騎羅の身体から零姫の時と同等かそれ以上の禍々しい気があふれ出す
ものすごいプレッシャーがこの場にいる者たち全員にのしかかる
いきなりの出来事に一同は困惑するしかなかった
その間も亜騎羅から発せられる気がドンドンと膨れ上がり、周囲には雷のようなエネルギーも発生し始めていく
「――――~~~っつツツツ!!!」
ボバァァァァアアアアアアアン!!!
刹那、高まり続けた気によって亜騎羅を中心に大爆発の如き衝撃波が巻き起こった
「痛つつ…みんな大丈夫ですか?」
先の衝撃波によって吹き飛ばされてしまった佐介が
同じく吹き飛ばされてしまっていた他の面々に呼びかける
「だ、大丈夫…っ」
「あぁ、何とかな――っ」
佐介の呼びかけに答えるかのように皆が次々と集まっていった
「さっきの衝撃波、凄まじかったですね?」
「一瞬核爆弾でも爆発したのかと思ったぜ?」
衝撃波の凄まじさについて佐介たちは思い思いの意見を述べ合っていた
「…零姫、大丈夫?」
「え、えぇ…なんとか」
同じく爆発に巻き込まれてしまった豹姫たちもお互いを気遣う
「そうだ。アキ、アキはどうなったの!?」
爆発の発生源となってしまった亜騎羅は果たして無事なのか
豹姫は亜騎羅の安否に不安を感じていた
「あっ…姫、見て!」
「――っ?」
何かに気づいた様子の零姫が慌てながらに豹姫に自身が指差す方を向くように促す
零姫が指さしたのは爆発の発生源である亜騎羅がいた場所
爆発により発生した煙がもくもくと立ち込めているその中で徐々に浮かび上がっていく影が見えてきた
「アキ…アキだわ!」
煙の中から見える人影を見た豹姫はそれが亜騎羅だと確信し、喜びの笑みをこぼす
やがて風が吹き荒れ、煙がそれによりかき消え始めていく
そうして煙の中が露わになった時だった
「「「「「「――っ!?」」」」」
一同はその目を疑うほどのものを目の当たりにする
風によりかき消えた煙の中心に佇んでいる後ろ姿があり、亜騎羅であろうことは分かってはいるものの
明らかにその姿は異質だった
いったい何が起こっているのかと困惑していると煙の中に見える亜騎羅らしき影が何やら元に戻っているような様子を見せる
するとその直後風が吹いて煙を吹き飛ばしていった
煙がかき消え、顕になったのは見慣れた亜騎羅の背中だった
「あ、アキ……っ?」
「…っ?」ピクッ
恐る恐る豹姫が声をかけるとその声に反応した亜騎羅が振り返る
数秒間の間、亜騎羅と豹姫が互いを視界に捉えたまま固まってしまい
それを見ていた他の面々は何が起こるのかと不安を抱えながら息を吞む
「――っ!!」バッ!
ドドォォォォン!
するとその直後、沈黙を破るようにして亜騎羅が颯爽と豹姫たちの元に駆け寄ってきた
大きな音を立てながら豹姫の前に落下する
「――…っ」
「――っ」アセアセ
異形の姿をした亜騎羅を前に豹姫も不安を感じつつも、ただただ展開に身を任せる
「……ひっ」
「…っ?」
「姫……どうしたの?」
「あ…アキ?」
すると亜騎羅が変化の影響からかたどたどしい口調で豹姫に声をかける
それに対してやや困惑を感じる豹姫だったが、見れば見るほど姿は変化してもその実は亜騎羅なのだと感じられた
「………いえ。呼んだだけよ」アセアセ
「……そっか」
どう言うことなのかと思考が追いつかなかったが
少なくとも目の前にいる亜騎羅は普段と変わらないのだと確信が持てた
ならばさっきのあれはいったいなんなのか
考えれば考えるほど考えが追いつかなかった
唯一わかることがあるのだとすれば零姫に宿っていた妖魔が亜騎羅によって食い殺されたことのみだった
亜騎羅に何が起こったのか謎を呼んでいる時のことだった
ゴォォォオオオオオオ!!!
「「「――っ!?」」」
突如島全体に大きな地震が起こりだした
揺れの勢いからしてもかなり大きいことが感じられた
振動の大きさのせいもあってか立っているのもやっとなほどだった
「な、なに今の揺れは?何が起こっているの!?」
想いもよらぬ事態にこの場にいる全員が動揺を隠せずにいる時だった
「お…お嬢様!」
「――っ?」
訳も分からず、困惑しているとそこに意識を取り戻したとみられる爺やと総メイド長がこちらに向かってくる様子だった
「爺や、それにメイド長も!!」
2人の姿を目にした豹姫が彼らの元に駆け付け、亜騎羅と零姫もその後を追う
「2人とも意識が戻ったのね!」
「はい、ご迷惑をおかけいたしました」
「ですが今はそんなことを言っている時ではございません。大変なことが起こっているのです!」
「その様子だと何か知ってるのね。教えてちょうだい?」
口ぶりからしてこの事態に心当たりがある様子を見せる2人に豹姫は問うた
「単刀直入に言いますと島が沈みかけているのです!」
「「「――っ!?」」」
島が沈みかけていると言う想像を遥かに超える物騒な言葉に豹姫たちは戦慄する
するとその時だった
ビギギギギギギ!!!
その言葉を裏付けるように地面に亀裂が走った
近くにいた佐介たちが慌てふためきだす
「おおい、ヤベェぞ!?地面が裂け出してる!?」
「みんな、気をつけて!?」
ドドォオオオオン!
「今度はなんだ!?」
さらには上の方からは亀裂によって砕け散った岩の破片が落ちてき始めもしたりと異常事態の加速が止まらない
「いったいこの島に何が起こってるの爺や!?」
「原因はおそらく先の戦いによるエネルギーに島の地盤が耐え切れず崩壊をしているのだと思われます」
島が沈没しかかっているのは島がここまでで発生した戦いのエネルギーに耐え切れなくなったからだと爺やたちが豹姫たちに説明をする
「な、なんてことなの」
「私のせいね、妖魔の力を取り込んで暴れたばかりに島の地盤が崩壊してしまったのね」
原因が自分にあるのだと悟った零姫は申し訳なさそうに呟いた
「…零姫」
自分を卑下する零姫を目にした豹姫が複雑な心境を浮かべるのだった