佐介たちが麗王たちの助力によって島を脱出してから少し経ってのことだった
島の崩壊も落ち着きを見せ、周囲には静かさが漂っていた
そんな穏やかになった海の底から海面へと浮上する影が一つ
ボシァァァアアアアアアアン!!
勢いよく水面を突き破って現れた巨大な影、それは一台の潜水艦だった
直後、潜水艦のハッチが開き出した
「ふぅ〜……はぁ、空気が美味しいわ〜♪」
ハッチから顔を出したのは佐介たち同様に島から脱出した豹姫だった
息苦しい潜水艦の中から出て外の空気を吸いながら気分よく外へと出た豹姫は崩壊した島に目線を向ける
「随分と酷い有様になっちゃったね姫」
「アキ……えぇ、そうね」
いつのまにか自分の元にやってきた亜騎羅と一緒に島を眺める
「ところで零姫はいいの?」
「ん?…あぁ、私も思ったけど本人からああ言われたら止めることもできないから」
亜騎羅の不意の問いに豹姫はどこか不安そうにしていた
「……心配?」
「…うん」
「……っ」
「ふぇっ!?ちょ、アキ!?」
俯いている豹姫を亜騎羅がそっと抱き寄せる
急にこのようにされたものだから豹姫も驚いてしまっていた
「ごめん、こんな時になんて声かけたらいいのかわからなかったから」
「……まったく、あなたって本当に不器用なんだから」
「ご、ごめん」
「謝らないで、これはあなたに対する褒め言葉なんだから」
自分なりに気づかおうとしてくれる亜騎羅の優しさに豹姫は皮肉交じりに賞賛の言葉を送り
それに対して亜騎羅も「そっか」と呟きながら豹姫が満足するまで彼女を優しく軽く抱き寄せるのだった
♦︎
亜騎羅と豹姫が甲板で2人の時間を過ごしているその一方、零姫はというと潜水艦の医務室に来ていた
零姫の前にはメイドたちに手当てをしてもらった様子で医務室のベットの上で上半身だけ起こしている神姫、愛姫、愉姫の3人がいた
先の件があったが故に零姫に対して警戒をする神姫たちとの間でしばしの沈黙が訪れていた
「みんな…ごめんなさい!」
この沈黙を破ったのもまた零姫であり、開口一番に3人に対して謝罪の言葉を大きな声で告げながら深々と頭を下げた
いきなりのことで呆気にとられる愉姫と愛姫を尻目に神姫はじっと頭を下げている神姫を睨みつけていた
「どういう風の吹き回しかしら?」
「そ、それは…」
「…まさかとは思うけどそんな謝罪の言葉一つだけで私たちが納得するとか思ってないわよね?」
「――っ!」ビクッ
謝罪をする零姫に神姫は普段の口調とは違い、どこか怒りを孕んだような声で問いただす
その神姫の声を聞いた瞬間、零姫は全身が震えたような感覚を抱きながら恐る恐る彼女たちの方を見る
見るからにご立派な様子をその顔が語っていた
「(神姫、怒ってる……当然よね)」
彼女からしたら不意に自分に洗脳されていいように利用されたのだ
怒らない方が無理難題であると零姫もわかっていた
「もちろんこんなことで許してもらおうだなんて思ってないわ」
「だったらなんでそんなことをするのかしら?腹のどこかでそういう態度を取れば私たちが折れて自分を許してくれるかもって打算があったからじゃないの?」
「そんなことは」
「口では何とでも言えるわ。実際、あなたはその巧みな話術とその洗脳術で私たちを操り手籠めにしたんだものね」
まるで言い訳なんてさせないというかのように神姫が零姫に言葉の針を飛ばしていく
その一つ一つが零姫の心に深く突き刺さっていく、正直耐え切れないほどしんどく今からでも逃げ出したいと想いすらしそうなほどに
「…確かにそうよ。私たちはあなたたちを…いえ、戦姫衆全員を騙していた。己のエゴをかなえようとして自分以外の全てを利用してきた。そのせいであなたたちを巻き込んでしまった。私がしたことは決して許されることじゃない」
「そこまでわかってるなら理解できてるでしょ。いくら謝ったってあなたのしたことは変わらない、犯したことは許されることじゃないって」
「えぇ、十分わかってる。今こうしていることだって結局は私のエゴでしかない。だけど、それでもこれだけは言いたかったの。迷惑をかけてごめんなさい」
許されなくてもいい、それでも謝りたいのだと思いを告げ零姫は皆に謝罪を述べながら頭を下げた
たとえそれが自己満足だったとしても
「…愉姫。あなたはどう思う?」
「えっ、あ、あたし!?」
急に話しを振られたものだから愉姫はとても動揺しているようだった
「……正直言うとすごい複雑な気分なんだよね。あたしらを利用してたことについてはもちろんカチンときてはいるけど、零姫には命を救われた恩もあるし…」
気まずそうに零姫のことを思う愉姫はその際に自分がかつて彼女に助けられたことを思い返す
「当時おちこぼれでチームからのけ者にされてた時にそいつらと共に妖魔に襲われて生死の境を彷徨う瀬戸際のあたしを見つけて助けてくれたのも零姫だったから」
昔助けてもらったことを愉姫は今でも感謝しているが故に今回の件は彼女にとってとても複雑だった
「愛姫、あなたはどうなの?」
愉姫の心境を聞き終えた神姫が今度は愛姫に話しを振る
「…別に、何も」
ここにきて意外な回答をするので皆が面食らったような顔を浮かべる
「あら、あなたは言いたいこととかないの?」
「零姫から、後悔と罪悪感の臭い…する。零姫の言葉に噓偽りはない、それに…姫も亜騎羅くんも、許したのなら…もういい」
心から反省と罪の重さを実感しているのだと感じた愛姫は豹姫たちが彼女を許したのならこれ以上は何も言う気はないと告げた
愛姫のその言葉を聞いて戸惑いを見せていた愉姫も先ほど述べたこともあった手前、一先ずこれ以上は咎めないことにした
2人のその様子を見ていた神姫は少し呆れたようで同時にくすりとも笑うという複雑な顔を浮かべた
「…ねぇ、零姫。一つ教えてほしいの、”あなたにとって私たち”ってなに?」
そして神姫は唐突に零姫に質問をする
見ると質問を問われた零姫は目を見開きながら自分を見ていた
質問に対してどう答えていいのか一瞬迷ったものの、零姫は意を決するように口を開く
「最初は利用するだけの存在でしかなかった。でも今は違う。私にとってあなたたちは”大切な人たち”よ」
零姫は質問に対して嘘偽りない自分の思いを告げる
「あんなことしておいてどの口がって言われたらそれまでかもしれないけど、これだけは嘘偽りない私の気持ちよ」
今まで後ろめたさからかおどおどしていた零姫だったが、この回答においてははっきりときっぱりと答えた
「…はぁ、まったく。これじゃ私の方が悪者みたいじゃない」
「ご、ごめんなさい」
「しょうがないから今回だけは大目に見てあげる」
ぶつくさと文句を垂れる神姫だったが最終的には愉姫と愛姫同様零姫の所業に目を瞑ることにしたようだった
「あ、ありがt「まってお礼を言うのはまだ早いわ」っ!?」
感謝の言葉を言おうとする零姫だったが、直前に神姫がそれを静止する
「大目に見てあげるとは言ったけど、だからって何もしないとは言ってないわよ」
「えっ?えっ?」
「2人とも~ちょっと耳貸して~」
すると神姫は愉姫と愛姫を招き、何やらひそひそと話し始める
「という感じで行こうと思うんだけどどうかしら?」
「なるほど、それはいいわね」
「…っ」コクコク
どうやら話しが纏まった様だった
「「「っ…!」」」キュピーン
「――っ!?」ゾクッ
次の瞬間、3人が一斉に零姫のほうを向く
彼女たちの視線を目にした瞬間、零姫は背筋がぞわっとする感覚に襲われる
直後、不敵に笑いながら目をぎらつかせる3人が零姫に歩み寄る
「み、みんなどうしたの?目、目が怖いんだけど?」
「「「ふっふっふっふ~」」」ニヤニヤ
「ちょ、ちょっと待って、い、いったん落ち着きましょう、話し合いましょうよ。そうすれば分かり合えるはずだから…ね、ねぇ、だから話しを…あっ、あぁ……あぁぁああああああああああ!!??」
説得の甲斐も虚しく怪し気に目を光らせる3人に囲まれた零姫はただただ恐怖に顔を引きつらせていき
その叫び声が潜水艦全体に響き渡るのだった
その出会いは宇宙から始まった
ドドォォォォン!!
「何かが墜落した模様です!?」
「確かめに行きましょう!」
基立星十字学院の元に墜落した謎の飛行船
「人です!?」
「速く医務室に運びましょう!?」
船内にて発見された謎の少年
「…ダノモニナハチタエマオ!?」
「「「えっ?」」」
「何を言っているのでしょうか?」アセアセ
目覚めた少年に驚きを隠せない麗王たち
「自分の名はアスタ、自分には成さねばならないことがある」
少年アスタの語る成さねばならぬこととは?
【「――ッツ!!」】ギュニャァア!!
影から人々を襲う破滅への序章
「例えこの身がどうなろうともこいつだけは!?」
「私たちも参ります。共に戦いましょう!」
傷つき、ボロボロになるアスタに手を差し伸べる麗王
「みんな、行こう!」
「「「「「「「――っ!!」」」」」」」
【「ピギュアァアアアアア!!」】
今、宇宙より飛来した少年アスタと麗王たちゾディアック星導会による地球の存亡をかけた戦いが始まる
新章開幕!「the Visitors from space」
近日より投稿開始!