佐介と子供が待ち合わせ場所に向かおうと動き出していた頃のことだった
同じく待ち合わせ場所に行こうとしていた紫苑たちは自分たちの前に現れたコートを羽織った謎の人物と接触していた
「ねぇ雪泉ちゃん。何だろうあの人、急に現れたみたいだけど?」
「そう、ですね…しかし何でしょう、あの人以前どこかで見た記憶が?」
「えっ?そうなの?」
突如として現れた得体のしれない存在に警戒を強めている中
雪泉が自分たちの前に立つ存在に見覚えがあるような気がすると発言していた
「よ~、久しぶりだな。そこのお二人さん?」
「「「――っ!?」」」
すると雪泉の言葉を裏付けるようにまるで知人と再会したといったノリでコートを羽織った人物が話しかけてきた
「なんだなんだ。反応が薄いな?もしかして俺のことを覚えてない感じか?おいおいそりゃねえだろ。あの廃屋のビルでのことを忘れちまったのか?」
「廃屋のビル…っ!」ピクッ
「――っ!」ピクッ
コートの人物のその一声により紫苑と雪泉はハッとなった
「雪泉ちゃん、どうしたの?」
「っ、す、すみません…飛鳥さん。さっきので確信しました。私と紫苑はあの人と以前会っています」
「そうなの?」
「はい。飛鳥さんたちと出会う前、まだ私たちが悪忍たちを狩っていた頃に私たちはあの人と出会ったんです」
長らく忘れていたがようやく思い出した雪泉が自分たちとコートの人物との接点を飛鳥に説明した
※詳しい内容はEXバトルの章「月閃女学館 空白の過去4」をご覧ください。
「ようやく思い出したようだな。しっかし自分で言うのもなんだがそれなりにインパクトのある容姿してんだからすぐに気づいて欲しかったな」
怪しげな風貌をしているのだから一目見ればわかると踏んでたが当てが外れてしまったようで若干悲しそうにしていた
「…まさかこんなところで再会することになるとは思いませんでしたが、いったい僕たちになんの用がおありまんでしょうか?」
警戒態勢をとりながら紫苑はコートの人物に話しかける
「お~お~。思い出すね~?初めて会った時もお前さんそんな風に俺を睨んできたっけな?」
紫苑の鋭い目つきを見てコートの人物はどことなく懐かしさを感じているようでしみじみとしていた
「話しを逸らさないでいただきたい、こちらの質問が終わってない」
「相変わらず生真面目ちゃんだね~?…まぁいい、そんな大したことじゃないさ、知った顔を見かけたから声をかけたってところさ」
質問をしているのはこちらだと紫苑がコートの人物に威圧的な物言いで問いただす
コートの人物はそんな紫苑の様子を見てやれやれと言った素振りで自分が話しかけたのは単に2人を見かけたから声をかけたという理由だと主張する
「本当にそれだけですか?正直、あなたはどうもきな臭さを感じずにはいられないんですが」
「ひっどいこと言うね~?…まっ、何にもないっていやぁ嘘になるからその点に関しちゃ間違ってはいないぜ」
この発言からやぱりかと紫苑はより一層警戒を強める
「そう警戒するなって、ちゃんと話してやるからよ。デジャヴな話しになっちまうんだが、お前ら俺の連れをどっかで見てねぇか?」
「あなたの連れ?」
「そうそう、俺の連れだ」
コートの人物の言う連れというワードを聞き、紫苑は脳裏を巡らせる
「確か、小さい子供……だったような?」
「正解!…まぁ、情けない話しだが、そいつがまた迷子になっちまったみたいでな、今俺はそいつを探してるってわけだ。お前らに声をかけたのも以前あいつを見つけたことがあったからだ。で、どうだ?」
「いやどうだって言われても…」
「今回は私たちもお探しの方の存じ上げませんね」
思い出しこそしたものの、今回はその子を見かけたことがないので尋ねられても答えようがなかった
「なんだよくそ~、当てが外れちまったな。しかしそうなると困っちまったな、どこにいるんだあいつは?宅、見つからないと俺が文句言われちまうってのに呑気なもんだぜ」
自分が探している者の行方を紫苑たちに聞けば分かるかもと踏んでいたコートの人物だったが、予想が外れてしまったことで頭を抱えてしまっていた
「仕方ねえ、知らないって言うんだったらこれ以上ここでお前らと話しをしてても意味はなさそうだ。そんじゃ俺はここらで行かせてもらうぜ」
要件は済んだとコートの人物が去ろうとする
「待ちなさい!」
「あん?」
直後、紫苑がコートの人物に止まるよう声を上げる
その声を聞いたと同時にコートの人物が再度紫苑たちのほうを向く
「何勝手に立ち去ろうとしてるんですか。このままみすみす行かせるとでも?」
紫苑がそういうと同時に雪泉と飛鳥が身構える
「何の真似だ?」
「あなたには以前聞きたいことを聞く前に逃げられてしまってますからね。ここで会ったからにはもう同じ轍は踏みません。あなたが何者なのか何をしにこの街にきたのか知ってることを話してもらいます」
言い終えると同時に紫苑も2人に続くように身構える
「なるほど、だが残念だな、それは聞けない相談だ。俺にも都合があるんでね。こんなところで油を売るわけにはいかない。じゃっ、そういうことで」
しかしコートの人物は紫苑の言葉を聞いても尚、この場から去ろうと再び歩き出した
「行かせないと言っている!!」
すかさず紫苑が地面を蹴って飛び込んでいく
「――っ!」シュン!
「あっ!?」
「消えた!?」
「――~っ!?」ザザァァァ!!
踏み込みによる加速で一気に間合いを詰めた紫苑がコートの人物を掴もうと手を伸ばすも
手が触れる直前にコートの人物の姿が一瞬にして紫苑たちの視界から消えたのだ
辺りを見回しながら行方を追う
「俺はここだぜ」
「「「――っ!?」」」
声のする方に視線を向けるといつの間にかコートの人物はビルの上に立って3人を見下ろしていた
「いつの間に!?」
「危ない危ない、もう少し遅かったら捕まっちまうところだったぜw」
「何を白々しいことを!」
気配を悟らせず、一瞬にしてあのビルの高さまで移動する能力を見せびらかしておきながら
わざとらしくさもギリギリのところだったというようなことを言うコートの人物に紫苑たちは悔しさを抱く
「さっきも言ったが、俺はこんなところで油を売ってる訳には行かないんでね、ここで失礼させてもらうぞ」
「に、逃がすわけには!」
「そう焦るなって、どうせ”近いうちにまたお前らと会う”ことになるんだからよ」
「何、どういうことだ?」
コートの人物の意味深な発言に紫苑たちは疑問を浮かべる
「いずれ分かるさ…そんじゃ、また会おうぜ。cheerio~♪」
「あっ、待て!?」
別れの言葉を口にし、コートの人物は去って行ってしまった
「くぅ、またしても」
紫苑たちは結局コートの人物を取り逃がしてしまい、暫しの間、その場に呆然と立ち尽くしてしまうのだった