夜も更け、犬の遠吠えが静かな世界に木霊する
半月が照らす空の下、闇に溶け込み、潜む人影がそこにはあった
人影の正体、それは抜忍集団「焔紅蓮竜隊」の面々だった
「お前たち、準備はできているか?」
紅蓮竜隊のリーダーである光牙が仲間たちに声をかけると皆が一斉に頷いた
「俺たち紅蓮竜隊にとって久しぶりの忍務だ。失敗は許されない、気を引き締めて望むぞ」
光牙が呼びかけを行っていき、その声により皆が忍務に対する意識を強めていく
「じゃ、作戦の確認ね。車が門の前に来たら光牙くんがタイヤを狙撃して動きを止める」
「あぁ、分かっている」
春花が作戦の第一弾の内容を伝えると光牙が弓矢を構えながらこれを承諾する
「屋敷の警備員は詠ちゃんと愛花ちゃんが、車内にいる護衛を日影ちゃんが、そして光牙くんと焔ちゃんで標的の確保を行い、そして最後に私がこの自白剤で不正の全てを自白させる」
次に春花は他のみんなにその後の段取りについてを確認していき、他の者たちもそれを承諾する
「あとはあたしがその様子を撮影してネットにあげれば忍務完了ね」
最後に未来がスマホを構えながら最後の〆を確認する
「…っ、来たようだな?ではみんな、作戦の開始だ」
「「「「「…っ」」」」」コクン
向こう側からタイヤの音とライトの光が見えた
標的が屋敷に戻ってきたことを確認し、光牙たちは忍務を開始する
車が屋敷の入り口に近づいて行く中、木の上から弓矢を構え、狙いを定める光牙
得物を待ち伏せし、狙う狩人の目で狙撃対象をしかと捉える
「……――っ!」パシュン!
次の瞬間、引き絞っていたトリガーから手を離すと同時に矢が放たれる
シュトン!プシュゥゥゥゥ!!
矢が命中したとともにタイヤがパンクし、車が右は左へと乱れながら進み、しばらく先まで行ってようやく動きを止めた
すると運転席と助手席から護衛のガードマンが出てきた
「……日影」
「わかっとる…よっ!」
「「がっ!?……っ」」ドサッ
しかしその直後、背後から現れた日影が1人目、さらに間髪入れずに2人目を襲い意識を奪う
「なっ、なんだ!なんの騒ぎだ!?」
物音を聞きつけるや屋敷の中にいたガードマンたちがゾロゾロと押し寄せる
「「――っ!!」」シュンシュン!
「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」」」」
だがその直後、どこからともなく現れた詠と愛花が一瞬にして雑兵たちを蹴散らしていった
「な、何事だ。どうなっとる!?」
次々と部下たちがやられる様を目の当たりにした今回の標的の男が右往左往する
「そう慌てるな」
「う、うわっ!?い、いつの間に!?」
「死にたくなければ大人しくすることだ」
「ひ、ひぃぃいいいい!!??」
気づかぬうちに隣の座席に座っている焔を見て男は慌てふためき、彼女の忠告を無視して車外に飛び出す
無我夢中で男は逃げる
「はーい、そこでストップよ~」
「――っ!?」
逃げようとする男の前に立ちはだかるのは春花だった
目の前に現れた春花に驚いた男が腰を抜かしてしまう
「おとなしくしててね。痛くしないから…ねっ」
不適な笑みをこぼし、自白剤の入った注射器をちらつかせながら春花が男に近づこうとしたその時だった
バキュン!バリィィィン!
「なっ!?」
突如として春花の持っていた自白剤入り注射器が粉々に砕け散った
この事態に驚きつつも春花が視線を向ける
「あっ、あなたは!」
春花が自身の視界に入った人物を見て驚きの声を上げる
視界に映る人物、それは春花に向けて専用忍具「シノヴァイザー」のガンモードの銃口を向けている蒼馬がいた
「蒼馬くん、どうしてここに?」
「…俺だけじゃないぞ」
この場にいることについてを春花が問うと蒼馬がここにいるのが自分一人ではないことを告げ、視線を逸らした
恐る恐る春花とその様子を見ていた光牙たちが蒼馬が見る方向へ視線を向ける
するとそこには屋根の上からこちらを見ている複数の人影があった
「雅緋、それに他の連中も!?」
「な、なんであんたたちがここにいるのよ!?」
蒼馬を含めた蛇女子学園が現れたことに紅蓮竜隊の面々は驚きを隠せない様子だった
「無論、忍務だ」
未来の問いに対して雅緋が自分たちがここにいるのは忍務のためであることを告げる
「なるほど、つまり姉さんたちはこいつの護衛役ということか?」
木の上から降り立ちながら光牙が状況を見て蒼馬たちがここにいる訳を察した
「な、何を悠長に会話をしている!早くこいつらをなんとかしろ!?」
さっきまで怯え切っていた男が蒼馬たちが現れるなり自分を守るようにと上から目線な発言で言ってきた
「そんなこと…っ!」
「――っ!」
ガキィィン!
「言われるまでもない!!」
次の瞬間、瞬時に移動する蒼馬とそれに合わせるように同じく動き出した光牙がぶつかり合う
空中を舞台に光牙と蒼馬、両者の鍔迫り合いが巻き起こる
「邪魔をするな光牙。俺たちの目の黒いうちは貴様らに好きにはさせん!」
「言ってくれるな蒼馬…だがな!」キィィィン!
「ちぃっ!?」バッ!
数回ものぶつかり合いを繰り広げる中、光牙が弓刃を力いっぱい振りかぶり蒼馬を吹き飛ばす
「――っ!!」ポチッ
≪[Shinobi Charge!]≫
後方へと飛ばされる最中、蒼馬がシノヴァイザーにセットされた巻物を押し込むと必殺技の待機音コールが鳴り響く
同時にシノヴァイザーの銃口に蒼い炎のエネルギーが湧き上がっていく
「食らえ!!」
≪[Blue Flare Blast!]≫
トリガーを引いたと同時に必殺のエネルギー弾が光牙めがけて飛んでいく
「(まずい!?)」
思わぬ反撃を前に光牙がすかさずシールドマントを前面に展開させこれに備える
直後、エネルギー弾がシールドマントと激突し、激しいぶつかり合いに発展する
「ぐぅぅ…っ――!!」パシィィィィン!!
「――っ!?」
一瞬押されそうになったものの、踏ん張りを見せた光牙がエネルギー弾を跳ね返した
それにより弾かれたエネルギー弾は空高くへと消えて行ってしまった
「光牙、大丈夫か?」
「あぁ、平気だ」
「蒼馬?」
「こちらも問題ない」
光牙と蒼馬の空中戦が終わり、両者は互いの陣営の元に戻った
されど両陣営は未だ闘志を秘めた眼光を睨みつけ合っていたその時だった
パシュン!!
「「――っ!?」」
どこからともなく二本の矢が飛んできた
すかさず光牙と蒼馬がそれをキャッチする
「なんだ?」
矢が飛んできたことに蒼馬が驚きを見せる
「何者だ!」
光牙のほうは矢が飛んできた方向に向かって叫ぶも反応はなかった
「…気配を感じないところを見るともうこの場にはいないようだな…くそっ」
いきなりこのようなものを送り付けてきて逃げ去ったであろう犯人に光牙は苛立ちを抱いていた
場の空気が変化を見せる中、雅緋が雇い主である男の元に歩み寄る
「おい、これからすぐに記者会見を開いて自分のやってきたことを包み隠さず話せ」
「な、なんだと!?き、貴様どういうつもりだ!私は雇い主だz「黙れ」――っ!?」
雅緋に抗議をしようとするも彼女が一言言った瞬間に他の4人が男を拘束した
「我々はこいつの命を守った。お前たちはこいつの悪事を暴いた。これで互いに忍務は全うしたことになる…それで手打ちとしようじゃないか?」
「…確かに悪くない話しだが、いいのか?」
手打ちを申し込んできたことを光牙が問うた
「あんな小物。蛇女の誇りをかけるには値しない」
それに対して雅緋はこう答えた
「だが忘れるなよ次もこのように上手くいくとは思わぬことだ」
「ふん、それはこちらのセリフだ!」
振り返りざまに雅緋が忠告するように物申すとそれを焔が突き返した
「…行くぞ」
戦いが終結したことで蒼馬たちは雅緋の指示の元、男を連れてこの場を去っていくのだった