温泉施設での一日が過ぎた翌日のこと
月閃の面々は女学館にていつもの日常を送っていた
「……っ」
そんな中、紫苑は一人静かに精神を集中させ、瞑想を行っていた
「(シノビマスターズが始まるまであとわずか、大会の開催を宣言したあの2人の子たちは何者なんだろうか?あの2人の顔、どこかで見覚えがある気がするのだけれど未だにそれがどこだったか思い出せない。まったく歯がゆい思いだよ)」
紫苑は瞑想をする傍ら、自分たちの前に現れた2人のことについてを考えていた
施設内で初めて2人の顔を見た時、紫苑はどこか既視感を覚えた感じになったが未だに思い出せずモヤモヤもしていた
「(まぁ、あの子たちのことも気掛かりではあるけど大会が始まれば光牙くんや相馬くんたちと戦うことは必然。彼らに勝つためにもこうして精神を鍛えておかなければ)」
大会に参加する以上、紅蓮竜隊、蛇女子学園と戦うことになる
そうなった時のために紫苑は脳内で光牙や相馬たちとの戦闘で起こりうるだろう場面をイメージし、シミュレーションを行っていた
「(半蔵学院のみんなを助けるためにも負けられないな)」
シノビマスターズを勝ち抜いて斑鳩たちを助けると雪泉とともに飛鳥に誓った約束を胸に紫苑は決意を新たにしていた
「1・2、1・2、1・2。筋肉を意識して~!」
「ん?」
紫苑が精神統一に集中していると四季の声が室内に響き渡る
さらに見ると他にも雪泉、叢、美野里の3人は四季に誘われてエアロビクスに興じていた
「…///」
あくまで4人はエアロビクスをしているだけなのだということは理解している
しかしどうにもその体操の動きが目のやり場に困ってしまっていた
一瞬無視して精神統一を続けようかとも考えたが気が散りすぎてそれどころではなくなってしまった
「みんな、何してるの?」
たまりかね、紫苑が雪泉たちに声をかける
「あら、紫苑?」
声をかけたことで皆が紫苑に気づいた
「なんで急にエアロビクス?」
「はい、四季さんがやろうと言い出したので皆でやり始めたんです。シノビマスターズを前にした大事な時期には少々ぬるく感じますが、これも四季さんがなんらかの考えがあってのことだと思ったので」
「修行?なんのこと?」
「えっ?」
おもむろに紫苑がなぜみんながエアロビクスを始めたのかを問うと雪泉がシノビマスターズを前にしての四季の何かしらの作戦があるのだと語る
けれども当の本人は小首を傾げている様子で雪泉は困惑した
「だ、だってこれはシノビマスターズへむけての修行の一環なのでは?」
「ううん、もちダイエットだけど?」
「だ、ダイエット!?」
「そだよ。だってみのりちんはお菓子でむらっちはおもち食べちゃってたからさ、こうしてカロリー消費しないとやばいじゃん」
そして自分がやってたことはただのダイエットなんだと知って雪泉は唖然としてしまっていた
思ってもみなかったという顔を浮かべる雪泉の心中を察した紫苑は苦笑いしていた
「ところでさ紫苑ちん、紫苑ちんも一緒にやる?」
「えっ?いやいや僕はいいよ」
「そんなこと言って油断しているとせっかくの綺麗な体が台無しになっちゃうよ?」
「なっ、そんな舐めまわすように見つめるんじゃありません!それに別に僕はちゃんとそこらへん撤退しているから問題ありません」
エアロビクスを進めながら身体を舐めまわすように見てくる四季に紫苑が断固として断りを入れる
「それに太っちゃうかもって言うけどさ、みんなは元が綺麗でスタイルがいいんだからそんなの気にしないでもいいんだよ…僕はいつものようなみんなでいてくれればそれでいいんだ」
「「「「――っ///」」」」きゅん♪
普段通りの彼女たちが好きと告げる紫苑の言葉に雪泉たちは頬を赤らめる
「も、もう~紫苑ちんったらこの褒め上手~♪」
「僕は別に思ってたことを言っただけだから」
照れくさそうに四季が紫苑に突っかかる
紫苑のほうもそれに対して素直に思ったことを言っただけと主張していた
「紫苑、雪泉」
「「…っ?」」
そんな中、明後日の方向から2人を呼ぶ声が聞こえ、振り返るとそこには夜桜がいた
「夜桜、図書室に行ってたんじゃなかったっけ?」
「はい、その通りです。そこでこれを見つけました」
「…これは」
他の皆がエアロビクスをしている中、1人図書室に行っていたという夜桜がそこで見つけた一枚のノートを紫苑に差し出した
「はい。月閃の広報誌、女学館通信です」
夜桜が手渡したノート、それは学館のイベントでの出来事などを記事にした広報誌だった
「そこの左上の写真を見てください」
続け様に夜桜はその雑誌に載っている写真を見るように促す
「見たところ中等部のスポーツ大会の時のものですね?」
「これがどうしたの?」
「…奥のテントに写っている方を見てください」
雑誌に載っている中等部の競技大会の写真を見るようにと言った夜桜に紫苑たちは小首を傾げるも言われた通りにテントが写っているほうに目線を向ける
「――っ、こ、これは…」
「「「「――っ!?」」」」
するとそこにはとんでもないものが映りこんでいた
テントの中に写っていたのはなんと大会の運営として仕事をしていると思われる月光と閃光の姿だった
「あの2人って中等部の子なの?」
「マジ?」
「こうして写っている以上間違いはないだろうな」
「まさかこのようなことが」
2人が中等部のスポーツ大会の写真に乗っていたという事実に雪泉たちは驚きを隠せずにいた
「皆さんの気持ちも分かります。わしだって最初に見た際には驚きましたから」
皆の様子を見て夜桜も同じ気持ちであることを伝える
「して紫苑、いかがなさいますか?」
「…そうだね」
雑誌を見終えた紫苑たちに夜桜がこれからのことを尋ねる
紫苑は考えを巡らせる
この学館に彼女たちがいると言うのならある意味これはいろいろと情報を聞き出すチャンスである
彼女たちがシノビマスターズで何をしようとしているかや半蔵学院の面々をどこに隠しているのかなど捕らえることができればかなり有意義な情報が手に入る
「……よし、中等部に潜入してみよう。そして月光さんと閃光さんを見つけ出していろいろ情報を聞き出すんだ」
月光と閃光を捕まえるため紫苑は中等部への潜入を決める
「わかりました。やりましょう!」
「はい。任せてください!」
その指示を聞いた雪泉と夜桜は早くもやる気に満ち溢れる
「中等部に潜入なんてめっちゃ面白そうなんですけど!」
「わーい、潜入ごっこだー!」
「ふむ、中等部への潜入、まるでスパイ映画のようだ。実に興味深い!」
「こらこら、遊びに行くわけじゃないんだからね?そこのところ間違えないようにね」
一方で四季、美野里、叢に関しては若干目的とズレてるようで紫苑はやれやれと言った様子で3人に念押しを入れるのだった