雅緋たちと壮絶な戦いを繰り広げた
しかしそれはあくまで前座であることを知らされ、驚く紫苑たちに対し、アピスたちは次の対戦者が自分たちであることを明かした
「はいはい、お前ら自慢話しはそこまでにしておけ、いい加減そろそろ待ってるのも退屈になってきちまったからよ」
「…黒影様の崇高なる教えを説いている時だというのにアピスさんときたら」ムスッ
自分たちの崇拝する黒影のことを語っているのにそれを強引に中断させるアピスに月光はムッとなる
「落ちつけ月光、確かにアピスの言うことも一理ある。私たちがどれだけ黒影様の素晴らしい教えを話したところで今の先輩たちには無意味なことだ。ここはひとつその身に直接教え込んでやった方が早い」
「閃光がそう言うのならわかったわ。ならそれも含めて先輩たちに教え込んであげませんとね」
言い聞かせも相まって月光がムスッとした顔をやめ、気を取り直したように切り替える
「紫苑、どうしましょう?」アセアセ
「…っ」アセアセ
雪泉が困惑した様子で紫苑に尋ねる
まともに戦えるのが自分と雪泉くらいしかいないというこの状況の中でもはや戦うことは避けられなかった
故に紫苑もこの現状に不安と焦りを抱いていた
「待って!」
「「「「「「…っ?」」」」」」
するとその直後、会話に横入りする声が聞こえるとともに雪泉たちの元に降り立つ影が
「あ、飛鳥さん!」
この場に降り立ったのは観客席でこれまでの試合を見守っていた飛鳥だった
「雪泉ちゃん、紫苑さん。私も戦うよ一緒に!」
「えっ?」
「私たちと一緒にですか?」
会場に現れて早々に飛鳥が紫苑たちと共に戦うと申し出てきた
彼女の思わぬ一言に皆驚いていた
「ここは最強の忍を決める場所ですよ?招待されてない方がしゃしゃり出てこないでください」
「そうだ。お前は大人しく観客席でそいつらのやられる様を見ているんだな?」
しかし当然ながら突然の乱入など彼女たちが見逃すはずがなかった
月光と閃光は飛鳥に引っ込むように物申す
その時だった
室内にも関わらずどこからともなく一輪の風が吹く
ビュォォォオオオオオオ!!!
「「「――~~っ!?」」」
次の瞬間、そよ風くらいの勢いがいきなり強風のように吹き荒れる
数秒後、その強風が収まり、紫苑たちは視線を戻す
するといつのまにか自分たちの目の前に見知った人物の背中が見えた
「――まさか?」
「…佐介、くん?」
「……っ」
紫苑たち背を向け、雪不帰たちのほうを見上げているのはこれまで消息不明だった佐介だった
突然の佐介の登場に誰もが驚きを隠せなかった
「佐介くんどうしてここに?」
「…紫苑さん、飛鳥ちゃんを連れて離れてください。”奴ら”とは僕が戦います」
質問を投げかける紫苑だったが、佐介はそれを無視して自分の主張を優先した
自分が雪不帰たちと戦うから飛鳥を連れてはなれるようにと
心なしか雰囲気と言い口調といい、いつもの佐介とはどこか違っている様子だった
「ど、どういうことなの佐介くん、なんでそんな!」
佐介のその言葉に納得のいかない飛鳥は当然抗議する
「奴らのせいで斑鳩さんも、かつ姉さんも、柳生ちゃんもひばりちゃんも、みんなみんなやられてしまった。だからせめて君だけは守る。だからここは僕が戦う」
それに対して佐介はこれ以上仲間が傷つくのを見たくないという思いから飛鳥を戦いから遠ざけようとしているのだ
「何を勝手に話しを進めているんだ」
「さっきも言った通り招待状を持っていない部外者がしゃしゃり出てくることなど許可できませんよ」
すると月光と閃光がここで横槍を入れてくるとともに先ほど飛鳥に言ったように佐介に参加権はないことを告げる
「ふっ」
「何がおかしい?」
その話しを聞いた瞬間、佐介は2人に対して鼻で笑うような態度を取った
「…怖いんですか?」
「な、なに!?」
「あなたたちは2人はあの時僕に手も足も出せず、挙句の果てにはそこにいる仮面の男に助けられる羽目になってしまった。だから僕が参加するのをルールにかこつけて阻止したいんですよね?”再び負ける”のが怖いから」
「「――っ!!」」カチーン
佐介は続けざまに2人を煽って見せ、その言葉を聞いた月光と閃光はこの上ないほど屈辱に顔を真っ赤にしていた
「貴様!言わせておけば!」
「あなただってアピスさんに手も足も出せなかった癖に!」
「図星を突かれたからって他の人のことを拭き合いに出すだなんて、まるで虎の威を借りる狐ではないですか?」
怒りに満ちた月光と閃光が佐介がアピスに負けたことを引き合いに出すが
逆にそれについても自分たちのしたことではなく第三者が行ったことで月光と閃光が言っていいようなことではないことを指摘した
月光と閃光はさらに屈辱に身が焦がれるような気持になった
「お~い、そこまでにしておけよお前ら、つまらねぇ言い争いはこれでおしまいしとけ」
最中、収拾がつかないと思ったのかここでアピスが仲裁に入った
「いいじゃねぇの参加させてやれば、俺は別に構わないぜ。それに数もこれでちょうどいい感じになってるみたいだしよ?」
アピスは佐介と飛鳥の参加を承諾する旨を告げる
紫苑と雪泉に加えて佐介と飛鳥が加われば人数的にも五分五分の数になるからという理由を添えて
するとアピスがおもむろに佐介のほうを向く
仮面越しではあるものの感じからしても自分をあざ笑っている様子が見て取れ
佐介もそれを感じ取ったのかムッとした顔でアピスを睨みつけていた
「お仲間の1人からお許しが出てるみたいですけど?どうするんですか大会運営者さん?」
それを聞いた佐介が雪不帰に語りかける
「ふ、雪不帰様」
「いかがいたしましょうか?」
思わぬ事態を前に月光と閃光が雪不帰に意見を求める
「…一つあなたに問います」
「…っ?」
「できますか?”全てを知ったあなたに”?」
しばし沈黙していた雪不帰が口を開くとともに佐介に意味深な問いを投げかける
「全てを知ったからこそできる。だから僕はここに来たんです」
その問いに対して佐介は確固たる意思の元に自分の答えを告げる
「……いいでしょう、そこまで言うのであれば見せてください。あなたの覚悟を」
「っ…」
雪不帰の許可を得たことで佐介は参加の権利を得たのだった