シノビマスターズ最後の試合、月光と閃光を相手に雪泉と飛鳥が挑んだこの戦い
壮絶な戦闘を繰り広げた両者だったが、最後に勝利の女神が微笑んだのは雪泉と飛鳥のチームだった
「うっ、うぅぅ……っ」
2人が勝利の喜びを分かち合う中、倒れていた閃光の意識が戻った
「負け…たのか、私たちが…?」
目の前にいる雪泉と飛鳥と地に伏す自分たち
この光景を前にして閃光は自分たちが勝負に負けてしまったのだと知る
「…バカな、私たちが…負けただなんて」
自分たちが負けたことが信じられず、閃光は凄まじい程のショックを受けてしまっていた
「ぅ……うっ…」
「月光!?」
するとそんな中、遅れて月光が意識を取り戻したのかうんうんとうなされるように声をあげる
それに気づいた閃光が急いで駆けつけ、月光を抱きかかえる
「大丈夫か、しっかりしろ月光!?」
不安そうな顔を浮かべながら必死にゆする
「せん、こう…?」
「…月光、よかった」
閃光の揺さぶりによって薄れていた意識を取り戻したことに閃光は安堵の表情を浮かべる
「閃光、勝負はどうなったの?」
「そ…それは…」
意識を取り戻した月光が閃光に勝負がどうなったのかを尋ねる
月光からのその問いかけを聞いて閃光は言葉に詰まってしまっていた
そして閃光は何も言えないまま視線だけを向ける
彼女の様子に気づいた月光がその先にいる飛鳥と雪泉が楽しそうに語り合う光景を目にした
「……ま、まさか?」
「…くぅっ」
飛鳥と雪泉の様子を見て全てを察した月光が閃光のほうを見るととても悔しそうにしていた
「…負けて、しまったのね」
自分たちが敗北したと知り、月光は酷く落ち込んだ顔を浮かべた
「月の正義になれ、それが黒影おじい様の最後の教えでした」
「…月の正義?」
「はい。月は太陽のような輝きはありません。ですが、月には月の輝きがある。夜空を優しく照らすその光のようなそんな正義を目指せと黒影おじい様は私たちに教えてくださったのです」
「「……っ」」
雪泉が敗北したことにより虚無感に苛まれている月光と閃光にかつて自分たちが黒影から教わった「月の正義」についてを語る
「私たちはこれからもおじい様のこの教えを胸に生きていくつもりです。そして同じ正義を信じるものとして、できうるならばお二人ともこの正義を共に極めていけたらと思っております」
「雪泉先輩…」
「っ…」
月の正義をこれからも信じ抜くことと、月光と閃光とも同じ正義を目指していきたいと雪泉は思いを告げた
「(見ておりますか黒影様、あれがあなたが僕らに教えてくださった正義の形なんですよね…)」
2人に寄り添おうと手を差し伸べる雪泉はまるで優しく輝く月そのもののようだった
紫苑はそんな彼女の行動こそ黒影の言った月の正義を体現していると感じていた
パチパチパチパチ!
「「「――っ?」」」
するとその直後、後ろの方から拍手をする音が聞こえてきたので音のする方に視線を向ける
「いや~素晴らしい試合だったな、まさかの状況から逆転してみせるとは大したもんだぜ」
皆が視線を向けた先には雪泉たちの元に歩み寄ってくるアピスがいた
「にしても、なんだなんだそのザマはよ~?」
「「うっ…」」
「あれだけ威勢よく短歌かっておいて無様に負けちまうなんてとんだお笑い草だぜw」
「「くぅ…」」
勝負に敗北した月光と閃光にアピスが容赦なくバカにしたような発言をする
結果的に言う通りのため2人は言い返そうにも言葉が見つからず苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる
「取り消してください!」
「ん?」
するとアピスに対して物申す声がする
声の主は雪泉だった
「なんだ?今何か俺に言ったように聞こえた気がしたが?」
「聞こえなかったのならもう一度言います、先ほどのお二人への罵詈雑言を取り消してくださいと言ったんです!」
雪泉がアピスに対して食い気味に突っかかった
「ほう、いうじゃねぇか、だがお前らにとってはそいつらは敵だぞ、にも関わらずわざわざ庇うってのか?」
「敵とか味方なんて関係ありません。月光さんも閃光さんもやり方も考え方も違いましたが、根本は私たちと同じ信じた道を進み、それに向かってひたすらに努力したはずです。そんな月光さんと閃光さんのことを笑うあなたを私は到底許せません!」
アピスの問いに雪泉は強い意志を持ってそう答える
彼女のその言葉に月光と閃光は心に来るものを感じていた
「耳障りもいいところな台詞をぬけぬけと、まったくもってそういうのは本当……反吐が出そうだぜ」ギロリ
「「「「――っ!?」」」」
そんな雪泉の言うことを聞いていたアピスがだんだんと苛立ちを覚えたのか
ぼそりとつぶやいた言葉はどこかドスが効いたような声色だった
さらにはその直後、声の後から発せられたプレッシャーが雪泉たちを襲う
雪泉たちはアピスが放つその威圧に冷や汗を流していた
するとその時だった
シュンシュン!シュタッ!
「「「「――っ!」」」」ピクッ
「ん?」
双方間に割って入るように二つの人影が降り立つ
「雪泉下がって…奴は僕らが相手をする」
「紫苑!?」
間に降り立った人影、それは今まで後方のほうから雪泉たちの活躍を見守っていた紫苑と佐介の2人だった
「ほう、お前らが俺の相手をするってのか?」
「そう言ったはずです。ここからは僕らが相手をします。覚悟しなさい!」
「面白れぇ、だったら見せてもらおうじゃねぇか?」
紫苑は向かい合うアピスに自分たちが相手をすると宣戦布告する
「――っ!」プルプル
「佐介くん?」
そんな中、隣から凄まじい怒りを孕んだ気配を感じ視線を向ける
気配の主は佐介だった。アピスを前にした瞬間、あふれんばかりの怒りを露わにしている様子だった
「そっちも気合十分ッてところか。ならさっそく始めるとしようか」ゴソゴソ
2人の意気込みを感じ取ったディラが勝負のための準備として懐からものを取り出す
「(なんだあれは…銃?)」
アピスが取り出したもの、それは拳銃のような形をしたものだった
今までに見たことのないものを目にした紫苑は不思議そうな顔を浮かべる
「気をつけてください紫苑さん、あれは…」
佐介が紫苑に警告をしようと声をかけようとした時だった
言いかけている最中にディラが先に動きを見せる
空いているもう片方の手に所持していた巻物をその銃のスロットに差し込んだ
≪[ Venemy!]≫
直後、銃から効果音が流れる
「…変装」
囁くようにつぶやくと同時に銃のトリガーを引く
放たれた弾丸が周囲を飛び回り、アピスに着弾
弾けると同時に液体がアピスの身体を包み込み、やがて姿が変化し始める
ブワァッ!!
「……っ」ギュィ―ン
次の瞬間、液体が四散し、その中から現れたのは装甲を纏ったアピスの姿がそこにはあった
「あれは…いったい?」
「「「「――っ!?」」」」
装甲を纏った異様な姿に驚く紫苑たち
そんな彼らの驚きに同調するかのように顔のバイザー部分が怪しく発光するのだった