今佐介たちの現状を一言で表すとしたら絶体絶命という言葉が似あうといっても差し支えなかった
「「うっ、うぅぅ――っ!?」」
アピスの毒によって体を蝕まれ、光牙と紫苑が苦しみに悶えている
しかも厄介なことにアピスの毒は今までに見たことないような新種の毒であり、現状では手の施しようがなかった
「(これは、この状況は非常に不味い、春花さんでもどうにもならないとなれば光牙くんたちに残っているのは…)」
考えたくないが考えざるを得ない答えが佐介の脳裏を過る
「ぐぅっ――っうああっ!?」
「光牙、光牙しっかりするんだ!?」
「うぅっ――っ、ぐうぅぅっ!?」
「気をしっかり持って、負けちゃダメよ紫苑くん!?」
それを自重させるかのように光牙と紫苑の苦しみは増すばかりだった
手立てがない以上どうすることもできない状況が佐介たちを絶望へと叩き込もうとする
「まだ、終わってねぇ!」
「「「「――っ!」」」」ピクッ
突如、会場内に響き渡る様な大きな声がした
次の瞬間だった
ボォォオオオオオオ!!
「うぉぉおおおおおお!!」
「あれは!?」
「相馬!?」
声の主、それは相馬だった
いつの間にか絶・秘伝忍法で転身し、上空に飛びあがっていた相馬がジェット噴射で急降下をする
その先に待つのはアピスだった
「雪通華――っ!」バッ!
「うわっ!?」
「――っ!」バッ!
「っておい!?」
相馬が迫りくるのを見た雪不帰たちはすかさずアピスを見捨てて後方に向かって飛ぶ
置いてけぼりを食らったアピスは逃げるタイミングを逃してしまう
「チャンスだ。行くぜアオ!」
『あぁ!』
逃げ遅れたアピスを見て好機到来というかのように相馬たちはスパートをかける
≪DUAL・FLAME・SLASH!≫
間合いに入る直後、相馬が手にしていたデュアルガンフレードのスロットに巻物を刺し、トリガーを引く
火炎と蒼炎の二色の炎が燃え上がり、刀身をエネルギーで満たす
直後、発生したエネルギーによってガンフレードが大きくなり、二色の炎で彩られた刃となる
「おりゃぁぁああああ!!」
エネルギーが限界まで高まると同時に相馬が超強化されたガンフレードを振るう
対するアピスもそれに備えるべく防御姿勢をとる
ブォン!ブッピガァァァン!
「ぬ、ぬぁあああっ!!?」
刹那、相馬の一撃がアピスを襲う
「うぉぉぉおおおおお!!」
「ぐっ、ぬぅぅぅぅ!?」
追い込みをかける相馬と必死に堪えるアピスの鍔迫り合いが数秒間繰り広げられる
「おんどりやぁぁぁぁぁ!!」
「〜〜〜―――っ!?」ビュゥゥゥン!
「――っ!?」
「なっ!?」
ドドォォォォン!ドサッ!
攻めと守りのせめぎ合い、その勝負を制したのは相馬だった
アピスは相馬渾身の一発を凌ぎきることができずにそのまま後方の雪不帰と羅刹を追い越すようにその先にあった柱に体をぶつけた
「おっし!」
渾身の一発を決めたことで相馬はしてやったりと言った顔を浮かべる
「――っ!!」シュィン!
「――っ!?」
だが浮かれていられたのは一瞬だった
羅刹が瞬時に間合いを詰めて攻撃を仕掛けてきていた
防ごうにも先のアピスへの一発に神経を注ぎ込んでいたため、相馬にこの攻撃に対処する方法はなかった
「ふっ、はぁああああ!!」
「がふっ!?うがぁあああああ!?」
次の瞬間、羅刹の剛腕が相馬の腹部に炸裂する
そしてその勢いにより体が宙を舞うようにして浮かび上がると、そのまま勢いよく地面に落下して地面に叩きつけられてしまった
「うっ、がはっ!?」
「相馬く~ん!?」
「相馬!?」
地面に倒れた蒼馬の元に両備と両奈が駆けつけていった
「…いつまで寝ているんですか?さっさと起きたらどうです?」
「おいおい、それが壁に叩きつけられて負傷した奴にかける言葉かよ?ちっとは心配してくれても罰は当たらないと思うんだがね~?お~痛てて」
相馬を吹っ飛ばした羅刹は後方にいるアピスに声をかけると
打ち付けた頭を抑え、自分にかける言葉に心配も気遣いもなにもない羅刹にディラは拗ねたような口ぶりで物申す
「油断をしたあなたが悪いのですよ」
「手厳しいこって」
塩対応な羅刹にアピスはやれやれと言った態度を見せていた
「まずいですわね。どうしましょう焔ちゃん?」
「どうしようって言われてもな…」
既にここまででこちらの主戦力の半数が軒並み戦闘継続不可能になってしまっている
この状況であの3人を倒すのはかなりきつい、しかしだからと言って悠長にしていれば
毒を受けて苦しむ光牙と紫苑の命が危ない
八方塞がりのこの現状をどうすればいいのか焔たちは自分たちの不甲斐なさを恨んでいた
「う、あぁああああ!?」
「し、紫苑ちゃん!?」
「ぐ、ぐぁあああああ!?」
「光牙、光牙どうした!?」
そんな中、今まで以上に苦しみに満ちた断末魔を紫苑と光牙があげる
「どうやらそろそろ限界のようだな。この様子じゃあと数分も持たずに俺の毒でそいつらの命はつきるな」
「「「なっ!?」」」
「なんですって!?」
紫苑と光牙がもうじき毒により命を落とすと言ったアピスの一言に佐介たちは絶句する
もはや打つ手がなくこのまま2人が死ぬのを黙って見ているしかできないのか
回避することのできない現実が絶望という形で佐介たちにのしかかろうとしていた
「まったく、しょうがないな~」
「「「「「――っ!?」」」」」
しかしその時だった
絶望感が支配する場に聞こえてくる声に佐介たちは視線を向ける
するとそこにはいつの間にか観客席から会場に降りてきていたかぐらがいた
「ここはわたしが手を貸してあげちゃおっかな」
「かぐら…さん?」
「大丈夫だよ。この子たちはわたしが助けるから、だからそんな悲しい顔しないで、ねっ”蓮”♪」
「…へっ?」
自信あり気に2人のことを任せろというというとともに絶望感に苛まれている佐介に対してかぐらは語りかけるのだった
「さてと、じゃあささっと始めちゃおっか」
「な、何をする気だ?」
「安心していいよ。私が助けてあげるから、雅緋ちゃんは光牙くんが暴れないように抑えておいて」
「わ、わかった。光牙、少し我慢してくれ」
何をしようとしているのかと不安を抱きながらも雅緋はかぐらの言う通りにしたがい行動を見守る
「…――っ!!」ギュィン!
直後、かぐらは光牙の胸に手を当てると同時にそこから自身のエネルギーを注ぎ込んでいく
数秒間それが続くと次第に苦しんでいた光牙の表情から苦悶の表情が消え、大人しくなった
「ふぅ…これで大丈夫だよ」
「ほ、本当か?」
「うん。さてとじゃあ次はあっちだ――っ!」バッ
光牙の容体を確認し終えるとかぐらは次に紫苑の元に駆け付ける
「春花ちゃん、その子を抑えておいて」
「えぇ、わかったわ」
先ほどの雅緋同様に春花が紫苑を抑えこむ
「…――っ!!」ギュィン!
そうしてかぐらは光牙の時と同じように力を注ぐと紫苑の表情からも苦悶の顔が消えた
「…よし、これで2人とももう大丈夫だよ」
「ほ、本当に?」
「うん♪」
「…よ、よかった…良かった~」
2人の死が免れたと知り、佐介たちは安堵の表情を浮かべるのだった