麗王たちが宇宙船の持ち主であるメイとの対話に興じている頃のことだった
「チュ…チュチュ…」カサカサ
夜の月夜に照らされている森の中、一匹の山ネズミがエサを求めて駆けずり回っていた
グニュ、グニュニュ~
「――チュ?」ピクッ
最中、エサを探していた山ネズミが何かを感じ取ったようにピクリとしていた
その時だった
バッツ!ベチャァァッツ!!
「チュチュチュ――!?」
山ネズミが反応するよりも早く謎の黒い液体のようなものが頭上から落下してきた
囚われた山ネズミが必死に脱出しようと抵抗するもその液体が次の瞬間に体内に吸収されていった
「チュ――ッ」ギュィン
液体が全て体内に吸収された瞬間、山ネズミが動きを止めると同時に黒色だった瞳が一瞬赤色に染まるとどこかに走り去って行ってしまうのだった
森の中でちょっとした事件が起こっている中、アウリア星の少年、アスタを連れて麗王たちが学園に戻ってきていた
「うわぁ…っ」キラキラ
アスタが目を輝かせるのには訳があった
彼の目の前には麗王が手配した料理がずらりと並んでいた
「こ、これが地球の食べ物…本当に食べていいのかい?」ゴクン
「はい構いませんよ。さぁ、冷めないうちにお召し上がりください」
「そ、そうか…じゃあ、い、いただきます!」
目の前の色とりどりの料理に舌鼓をしつつ
ナイフとフォークを手にし、一番手前にあるハンバーグを切る
フォークに刺した肉厚のハンバーグをそのまま口に運び、口に入れる
「うっ…うまい!?」
ハンバーグを口にしたアスタの開口一番のセリフだった
「それは良かった。お口にあったようで何よりです」
「――これも、これも!どれもすごくおいしい!?」
アスタはそこから野菜やスープ、魚などを順に食し、その全てに驚きと至福を覚えていた
「当然ですわ。これらの料理は麗王様お抱えのシェフたちが腕に寄りを振ったものですから、そこいらの高級レストランにも引けを取りませんわ♪」
銀嶺がこの料理がいかにすごいかを自慢気に語る
「しゅごい、じぶぅんこんなにおいひいりょうひたふぇたのはじめふぇだ!」モグモグ
「いや口に入ったもの飲み込んでから喋れ!?」
「――っ!」ゴックン
口いっぱいに料理を頬張りながら喋るアスタに紅葉がツッコミを入れる
「いやでも本当に美味しいよ。こんな料理は今までに食べたことがないもの」
「では普段はどのようなものを食されているのですか?」
あまりにも振舞った料理を賞賛しているので玉響はアスタがいつも何を食べて生活しているのか気になったのか質問をする
「自分、こう見えて仕事でいろんな星を旅しているんだ、それで訪れた星によってはそこの料理を食べたり、動植物を狩って食料にしたりしてたね」
「へ~。ねぇねぇ、じゃあどんなもの食べたりしたの?」
質問に対してアスタが答えると藍夢も質問をする
「そうだな、惑星グラレスに言った時には住民たちからガドルドンを倒したお礼にダイオークの肉を使ったシチューを食べさせてもらったりしたし、惑星マリーンでは要人を守った際にそこの名物の魚料理をふるまってもらったりもしたな」
アスタはかつて廻った星の料理を思い返しながら説明していた
「あっでも毎回美味しいものばかりってわけじゃなくて例えば惑星サハーラに調査に行った時は思いのほか長引いちゃって備蓄している食料が底をついてしまったから現地で調達したんだけどそこに住んでいる原生生物、特にスコルピコーンの味ときたらもう…」ズ~ン
その中で嫌なことも想いだしてしまったようで苦い顔をしていた
「あ、アスタさんって本当にいろんな星を巡ってたんですね」
「うん。自分はこう見えてそこそこ名の知れた政府公認のバウンティーハンターだからね、おかげでそれなりにいい仕事も任せてもらってるからね。はむっ…」
「政府公認、ですか…宇宙にもここと似たような社会が形成されているということでしょうか?」
「そうだよ。あんまり詳しくは言えないから省くけど宇宙にもちゃんと法と秩序はあるんだよ」
地球の外にもしっかりとした秩序やルールがあるのだと知って麗王たちはアスタの話しに魅了されていった
こうして楽しい食事会はしばらくの間続いていった
「さぁメイさん、今夜はこちらの部屋でお休みください」
「…うわっ、すごいな?」
食事を終えたアスタは麗王と銀嶺に連れられて一室に案内された
「寮の部屋が1つ開いておりましたので今日はこの部屋を使ってくださいな」
学園の寮の一室が空いていたため、麗王たちはそこにアスタを案内したのだ
「でもいいのか?こんなに良くしてもらって?」
料理だけでなく部屋まで貸してくれる麗王たちにアスタは申し訳なさそうに訪ねる
「構いません、こちらとしてもこれを機にアスタさんと友好関係を築ければと思っております。」
「そうですよ麗王様の言う通りです。どちらにしてもメイさんの宇宙船は今のままでは航行もできませんから帰ることもままならないでしょう?ですから遠慮しないでください」
「…レオ、ギンレイ」ウルッ
故障してしまっている以上、今のままでは宇宙船で星を立つこともできはしないので帰ろうにも帰れないのが現状だ
自分に対してここまで優しくしてくれた麗王たちにアスタはすっかり感謝していた
麗王たちが去った後、アスタは寝間着に着替え、室内に備え付けられたベットの上に横になる
「すごい。ふかふかだ…こんなにふかふかな布団で寝るなんていつ以来だろうか?」
いつもは船内の固い寝床で寝ていたためここまで寝心地の言いベットに横になるのも久しぶりのことだった
「でもそうそうゆっくりもしてられない。一刻も早くあれを回収しなければ」
大の時になり、天上を見上げながらアスタは自分のすべきことを思い返していた
「そうと決まればしっかり寝て体調を万全にしとかないとね」
思い立ったアスタは即座に布団を被るのだった
一方、その頃。時刻は深夜を回っている頃だった
「…ッ」テクテクテクテク
あの謎の液体に侵食されたネズミが森の中を駆け抜けていく
巧みな動きでネズミは木に登って行き、その内の一本の枝まで上る
木に登り終えるとネズミは遠くの方に視線を向ける
そうしてネズミが視界に捉えたのは夜の闇に輝く街の灯り
「…――ッツ!」
街を一瞥するとネズミは街に向かって駆け出して行くのだった