忍と妖魔……
遥か古来より双方の関係は切っても切り離せないような関係を続けてきた
二つの勢力はまさにやるかやられるか、食うか食われるか
双方の命を懸け、その数えきれないほどの数珀年月の中、幾多もの争いの歴史を築き上げてきた
そんな歴史によって積み重ねられてきた現代
動いていくときの中、歴史の波の中に埋もれ、その存在は人々の記憶から薄れていき
忍や妖魔という者たちの存在は伝承や言い伝えという風に形を変え、かすかに息づいていた
しかし現代の影の中で今も双方の陣営はこの時代を生き抜いていた
そして時代の変化とともに争うだけしかなかった忍と妖魔の関係に新たな兆しが生まれようとしている
…これはある一組の妖魔と人間の織り成すとある物語である
【日本 T県】
ここは日本のとある街
辺り一面人々であふれる活気づいた街である
「これと、これと…これもいいですね?」
そんな中、一軒の八百屋の前で店に並ぶ野菜を前にじっくりと品定めをする一人の女性がいた
「おい見ろよあの子?」ヒソヒソ
「あぁ、わかる。すげえ美人だ?」ヒソヒソ
「おまけに見ろよあの体、チョーナイスバディじゃねぇか?」ヒソヒソ
周囲を行きかう人達の視線が八百屋の前で品定めする女性に次々と向けられていく
無理もない、彼女の容姿はそれはとても美しかった
黄色の髪、エメラルドグリーンのように輝きを放っているかのような瞳という顔立ちをしており
おまけに男性たちが多く視線を向けるのは彼女の体に実っている豊満な二つの山である
着物越しでもわかるほどかなりの大きさを誇っていた
何よりほかにも注目を浴びたのは彼女の恰好である
はたから見ればその恰好は使用人のようにもとれる容姿をしていたのだから
「しかし誰だろ?あんな美人な子俺見たことないぜ?」
「あぁ、俺もそれ思った」
野次馬たちは彼女のような美しい女性を見たことがないのかそのような言葉を述べていた
「…よし、これで全部ですね」
そんな視線とひそひそ話しなどつい知らない女性は品定めがひと段落し
見定めた品を手に店主の元に
「店主様、お会計をお願いします」
「お、おう、決まったのかい?ほいよ会計ね」
店主もまた彼女に見とれていたのかハッと我に返ったと同時に慌ててレジを起動させ始める
「にしても嬢ちゃん随分とべっぴんさんだな?見ない顔だがどこから来たんだい?」
「まぁ、べっぴんさんだなんて、お上手な店主様ですわね…えぇ、ちょっと旅をしていまして」
「旅?…ほへ~そうなのかい?嬢ちゃんみたいな子が旅とはね~?偉いな~」
「いえいえ、そんな大したことはしておりませんよ」
おだてられたことに少々照れくさそうにする少女に店主は鼻の下がのびのびしていた
ポカン!
「痛って!?」
直後、店主が後ろからたたかれた
「こらあんた!いつまでたらたらと話してるんだい!あんまりお嬢ちゃんを困らせんじゃないよ!」
「ひぃ!?ご、ごめんよかーちゃん!?」
怒鳴り散らしながら現れたのは店主の奥さんのようで彼女に られた店主は親に然り付けられる子供のようだった
「ごめんなさいね~この人ったらしょうもない話ばっかりして、迷惑かけちゃったわね」
「いえ、そのようなことはございません。とてもいい人そうですし、これもきっと奥様があればこそなのでしょうね」
「あら、あらあらも~やだわこの子ったら、嬉しいこと言ってくれるじゃない♪そんなお嬢ちゃんには特別に…もう一品付けちゃうわ♪」
少女の言葉を聞いた女将さんは上機嫌になったようでお礼に一品袋に追加で入れてくれた
「…いいのですか?」
「いいのよ♪お嬢ちゃんにおばさんからのちょっとしたサービスよ♪」
「ありがとうございます。お優しいおばさま♪」
おまけをしてくれた女将さんに少女は感謝の意を示す
そうして店を後にする際に自分に向けられた視線に気づいたのか視線を送るものたちに笑みとともに軽い会釈をし、彼らを喜ばせるのだった
八百屋を後にし、少女は道を歩いていく
やがて少女はどういうことか人気のない路地裏に入っていった
路地裏に入って数歩歩いたころだった
「よぉそこの姉ちゃんちょっといいかい?」
「…っ?」
突然の声に振り替えるとそこには見るからにガラの悪い数人の男がいた
男たちは少女に近づいてあっという間に彼女を取り囲んだ
「どなたでしょう、私に何か御用でしょうか?」
「あるよ御用大有りさ」
「なぁなぁ、嬢ちゃん。もしよかったら俺たちとこれから遊ばね?」
口ぶりからしてあからさまなナンパである
少女は表情や言葉にこそ出さないがその内心では
はぁ…っとあきれたようにため息を漏らした
「ありがたいご提案ですけど、申し訳ございませんが人を待たせておりますのでまたのご機会にでも」
刺激しないような低調な言葉と立ち振る舞いでその誘いを断り、この場を去ろうとする
「え~、そんなけち臭いこと言わないでよ~。少しだけだからさ」
「そうそう、絶対楽しいからマジで!」
「損はないよ~」
それでも尚も食い下がるかのように先を行こうとする彼女についてくる
うっとおしいことこの上ないほどしつこいものだ
さらに一人が彼女の前に立ちゆく手をふさぐ
「…どいてくださいませんか?」
「どいてあげたいのはやまやまだけどさ、俺たちど~しても君と遊びたいんだよ~…だから、なっちょっとだけでいいからさ~」
性懲りもなくナンパを仕掛け、さらにはおもむろに手を伸ばし、彼女の手に触ろうとしてきた
男の伸ばした手が少女の手に触れようとした
まさにその時だった
「…何ダ?随分ト騒ガシイナ?」
「――っ?」
「「「――っ!?」」」
路地裏のさらに奥からこちらに向かってくる足音が聞こえてきた
そして路地裏の闇の中から現れたのは全身をローブに羽織った謎の存在だった
「な、なんだテメェは?」
「旦那さま!」
男たちが怪しげな雰囲気を醸し出すその者に対して不信感を抱く中
少女だけはその姿を見るなりローブ姿のその人物をご主人様と呼び笑顔を見せる
「ヤレヤレマタカ…何度モ言ッタハズダ。オレハオ前ノご主人ナンカデハナイゾ”女”?」
「いいえ、私にとっては旦那様が私のご主人様何です!それから私の名前は女ではございません、私には
「…ドウシタライイノダロウカ?」
自分をご主人様呼びする少女にその呼び方を病めるように懇願するローブの男だったが
そんな意見を少女、
「おいテメェ!」
【「…ッ?」】
「お前だよお前、いきなり割り込んで何してんだよ。こっちはカワイ子ちゃんをいいところに連れてこうとしてんだ。邪魔すんじゃねえよ!」
ナンパしてきた男組がローブの人物に突っかかる
【「…ダソウダガ?」】
「いいえ、私は遠慮しているのにこの方たちが帰してくれないんです」
【「……ッ」】
男達の言い分を聞いてローブの人物が確認を取ると
【「済マナイガ連レガ困ッテイルヨウダ。ココハ諦メテハモラエナイカ?」】
「おいおいおっさん話聞いてたのかよ。邪魔すんじゃねぇって…言ってんだろうがよ!」
しびれを切らした男の1人がローブの人物を殴った
「いいぞ!」
「やれやれ!」
ローブの人物を殴るのを見て仲間たちがエールを送る
「ひひっ…ぃいいいい痛ぇええええええ!?」
だが、その直後、悲鳴を上げたのは殴りかかった男の方だった
見ると殴ったはずの男の拳は曲がってはいけない角度に曲がっていた
腕が折れた男の様子を見て仲間たちが怖気づいていた
【「モウ一度言ウゾ…諦メテ消エテハクレナイカ?」】
するとローブの人物は男達に居なくなるように頼み込む
その時、ローブ越しから眼光が見える
「「ひ、ひいいい!?化け物だぁあああ!!」」
「まっ、待ってくれぇえええ!?」
恐怖に刈られた男の仲間たちが逃げ出し、男もそれを急いで追いかけるのだった
「ありがとうございました旦那さま、おかげで助かりました」
【「…感謝サレルヨウナ事ハシテイナイ。面倒事ニナッタラ厄介ニナルト思ッタダケノ事ダ」】
ローブの人物はそう言うとその場を去るべく歩き始めた
「あっ、お待ちください旦那さま!」
場を去ろうとするローブの人物を少女は慌てて追いかけるのだった