月閃との決戦に備え、光牙たちとの修行や、己を鍛える日々を送る半蔵学院の選抜メンバーたち
刻一刻と迫るその日に向けてそれぞれの思いを胸に抱く彼らの戦いが幕を開けようとしていた
ドガアァァァァァン!
シュン! ボバババババババ!
バキィィィィィン!
「「はぁ…はぁ…はぁ…」」
朝、早朝にて半蔵学院の修行場では佐介と光牙が最終決戦に向けて互を鍛え合っていた
「さすが光牙くんです。何度戦っても強い」
「貴様こそ、随分"新しい力"を使いこなせるようになったな」
「いえそんな。まだまだですよ、えへへ」
「相変らず謙虚なやつだな」
ライバルである互いの強さを再確認するとともに友としていられることを嬉しく思う二人
「あっ、佐介くんに光牙さん、おかえりなさい」
「今朝早くから随分と派手にやってたみたいだな」
忍部屋に戻ってくると飛鳥と焔が自分たちを出迎える
「みんなは何してたんです?」
「久しぶりに会えたわけだしいろいろおしゃべりとかしてたの」
あの戦い以来あまり合う機会がなかった分、再会出来たことでいろいろ話したかったり、こうしていられることを喜んでいるようだった
「が~はっはっはっは~、そこらかしこにいろんな山があっていい眺めじゃわい」
「こ、この声は!?」
聴き慣れた声がするとともに桜吹雪が吹き荒れ、そこから半蔵が現れた
「は、半蔵さま!」
「じっちゃん!」
「ふむふむ、いや~周りはみずみずしいボインちゃんばかりで目移りしそうじゃわい~♪」
飛鳥たちの豊満なそれを眺めながら呟く半蔵にその場にいる全員がドン引きする
「…おじい様。ふざけるのも大概にしてもらえませんか~?これはオシオキフルコースですかね~?」フフフフ
「い、いや!落ち着け落ち着け!わしが悪かった!じゃからお仕置きフルコースら勘弁してくれ!」((;゚Д゚)ガクガクブルブル
ニッコリと笑ってはいるもののその顔のドス黒さに周りのみんなは凍りつき、それを身をもって体験している半蔵はあまりの恐怖に震え上がる
「ゴッホン…気を取り直して、ほれ、お前さんたちに寿司の差し入れじゃ」
そう言うと半蔵は作ってきた寿司を皆に振舞った
「うわ~い!久しぶりのまともなごは~ん♪」
「おっしゃ!全力で食うぞ~!」
紅蓮竜隊のみんなは寿司を見るやいなや目を輝かせ、一目散に食らいつく
「ほっほっほ~。いい食べっぷりじゃの~」
それを見て半蔵もほっこりとしていた
「ところでじっちゃん。どうしてここに?」
「…飛鳥、この間の話を覚えとるか?」
「うん。じっちゃんの友達だった人のことでしょ?」
「っ?なんの話です?」
半蔵と飛鳥の話を耳にした佐介が尋ねる
それに釣られて他のみんなの視線も一斉に向いた
「わしのかつての親友……名を黒影という」
「黒影。…それって」
名を聞いて佐介はハッとなる
それもそのはず、その名は紫苑たちの口から何度も語られていたからだ
「すでに気づいているじゃろうが、月閃女学館の6人は…あやつの愛弟子じゃ」
「「えっ!?」」
黒影という人物の正体を知り、佐介たちは驚く
そして半蔵は語る。かつて自分たちにあった出来事の全てを
「…そんなことが」
「あぁ、やつは行きすぎた正義に囚われたことで道を見失ってしまったんじゃ。…わしは最後まであいつを止めることができなんだ」
「半蔵さま」
「じっちゃん」
黒影のことを語る半蔵はとても悲しげな顔をしていた
そしてその話を聞いて佐介は思った
紫苑たちがやろうとしていることはまさに黒影と同じ道をたどることだった
このままでは紫苑たちにも同じ運命が待ち受けていることだろう
「半蔵さま」
「っ?」
「僕は紫苑さんを月閃のみんなを助けたいと思ってます。このままじゃダメなんです!僕にどこまでのことができるかはわかりません。でもそれでも僕は救ってあげたいんです!」
「私もだよじっちゃん!そして私たちの思いを雪泉ちゃんたちに伝えるんだ!」
佐介と飛鳥は自分の気持ちを訴え、他のみんなも同じく頷く
「お前たち……ふふふ、お前たちならきっとできる。わしが出来なかったことをやってみせてくれると信じとるぞ」
半蔵は佐介たちの思いを聞いて絶大の信頼と期待を載せるのだった
「大変だ!」
「霧夜?」
「は、半蔵さま、いらしたんですね」
忍部屋に入ってきた霧夜が何やら難しそうな顔をしていた
「霧夜先生どうされたんですか?」
「あぁ、すまないちょっと急いでいたものでな」
「おおよそ察しはつく、月閃から何か送られてきたのじゃろ?」
「えっ、えぇそうです。諸君、これを見てくれ」
霧夜は手にしていたものを佐介たちに差し出す
「こ、これは!?」
差し出されたのは書状だった
そしてそれが書き記すものは
佐介たち半蔵学院との決着を付けるべく月閃女学館にて待つと言う紫苑たち死塾月閃女学館からの挑戦状である
「この手紙の内容を見る限り、既に向こうも準備ができたようだ」
「いよいよこの時が来たんだな。うっしゃ!腕がなるぜ!」
「月閃の皆さんに強くなったわたくしたちを見せてあげましょう!」
「おー!」
遂にやって来た決戦の時を迎えたことに感極まる一同
「……とうとうこの日が来たんだ」
「佐介くん」
「心配しないで飛鳥ちゃん、もう僕は負けたりしない、みんなと一緒に必ずこの手に勝利を掴む。そして紫苑さんたちに教えてあげるんだ。悪だからと言う理由だけで切り捨てるような考えは間違ってるって…僕らはみんなこの世界に生きるものなんだって」
「…うん。そうだよね!私も全力で雪泉ちゃんたちに伝えなきゃ!」
悪の中にもいい人がいる。悪の中にも正義を貫くものがいる。光牙や焔たちのように夢に向かって進んでいるものたちがいるのだと
自分たちが歩んでいた道筋、それを彼らに伝え、証明する。この戦いはそれも意味するものでもある。
故に佐介たちはこの戦いに絶対に勝つとその言葉を深く胸に刻んだ
「では各自、月閃との戦いに備えろ!」
『はい!』
霧夜の号令のもと、佐介たちは決戦に向けて紫苑たちと戦う準備に取り掛かるのだった
佐介たち一向は月閃女学館へと到着した
学館へ着くやいなや、皆決戦ということもあり、少し緊張していた
おそらく既に学館では自分たちをそれぞれの配置場所で待ち構えているであろうと容易に想像できた
「ふぅ…」
佐介は月閃近くの広場にたどり着いた
この場所にて紫苑との因縁にけりをつけることになる
目を閉じればまるで昨日のことのように鮮明に思い出す
紫苑になすすべもなくやられ、力の差を思い知らされたことを
びゅ〜!
その刹那、強く吹きすさぶ風にあおられる
「っ!」
直後、風が止むとともに背後からバリバリと感じる見知った強力な気を感じ取った
「……来ましたか、佐介さん」
「紫苑、さん」
振り返ると木の陰から自分を観察している紫苑の姿がそこにはあった
「この時をどれほど待ち望んでいたことか…ここで君を倒せば真に黒影さまの理想こそが正しいと言うことを証明することができる。だから、僕はこの勝負絶対に勝たせてもらいますよ」
「この勝負僕も負けられない。紫苑さん。あなたたちは間違ってます!善だけ世界を作ることなんて出来ません!仮に作れたとしてもそれは真の平和とは言えません!」
「ふ、何を言うかと思えば戯言を…悪のいない世界に平和が無いわけがないでしょう。僕たちが作り上げるのは争いのない、秩序の世界だ。そのためにも世界の異物である悪忍は全て根絶やしにします」
「させない、僕はこの戦いであなたやあなたの仲間を救ってみせる。この思いを拳に乗せて!」
互の思いを胸に、今、佐介の月閃…否、紫苑との最終決戦が幕をあける