秘伝忍法によって自らに強化を施した梧桐の攻撃が蟲髑を襲う
「おらららららららっ!!」
【「――ッツ!?」】
怒涛の追い込みにより蟲髑はどんとんと劣勢に追い込まれていく
「(そ、そんな…最初はあんなにも優勢だったはずなのに今は旦那さまのほうが追い込まれている!?)」
序盤とは全くの真逆になってしまった状況に椎奈は絶句してしまう
【「……ッ」】ゼェ…ハァ…
「へへっ、まだ立っていられるとはな。思った以上にタフだねぇ~?」
「旦那さまをあそこまで…能力を上昇させる術の類いなのでしょうか?」
ここまでの以上なまでのパワーアップに椎奈は梧桐の術の正体が能力を向上させるものであろうと考察する
【「イイヤ、ソレハ違ウ」】
「えっ?」
だが、その椎奈の考察を否定したのはまさかの蠱髑の方だった
【「コノ男ノ術ハ自ラヲ強化サセルモノデハナイ…コレハ恐ラク自ラニ課シタ制限ヲ解ク術ダ」】
「なっ!?」
蟲髑が直に感じ取った術のからくりについて告げると椎奈はそれに驚く
「ほう、よく気が付いたな…正解だぜ」
梧桐が蟲髑の指摘に正解だと答えたことで彼の考察は当たっていたことを知った
「普段俺はこの強すぎる力のせいで周りの奴らに多大な迷惑をかけちまう、だから腕利きの封印術師からこの術を教わった。この闘刀魂はな、術者の任意によって自らの力を抑え込むこともその枷を外すことも可能にする代物でな。要するに枷を外したこれが俺本来の力ってわけさ」
梧桐は今まで自分が自らにリミッターをかけていたこと、蠱髑と言う強者に会えたが故に封じ込めていた力を解放し、全力を尽くすことにしたのだと語る
「そ、そんな…では今まで枷をかけててあの強さだったということですか!?」
力を術で抑え込んで尚且つ蟲髑と今の今まで互角に戦っていたのだと知って椎奈は驚きを隠せなかった
「ふっ、そういうこった……てなわけでぼちぼち続きを始めようぜ?」
【「…ヨカロウ」】
梧桐が構えるとともに蟲髑も身構える
「いいね~……そうこなくっちゃな!」
【「――ッ!!」】
刹那、梧桐が突っ込んできた
「おりゃぁぁぁぁ!!」
ガキィィィン!!
【「――ッ!?」】
互いの武器がぶつかり合い、凄まじい衝撃が起こる
だが、術により本来の力を解放させた梧桐の力が蠱髑を押し込んでいく
「まだまだいくぞ!」
【「ヌ、グゥッ!?」】
いきつく暇もなく梧桐が刀を振り回し、蟲髑をぐいぐいと追い込んでいった
「どうだ!俺の本来の力の威力は!スゲーだろ!!」
【「ヌゥゥ!?」】
攻撃を繰り出しながら挑発をしてくる梧桐に対し、なんとか防ぐのがやっとの様子だった
「いいぞ隊長!」
「あの妖魔、隊長に手も足も出ないぜ!」
「そのまま一気にぶった切っちゃってくださいよ!」
梧桐の優先によって部下たちも彼の勝利を確信していた
「っ…旦那さま!?」
磊梨花は蟲髑のやられる姿を前に言葉を失いかける
無理もない、見るからに蟲髑が追い込まれているのだから
それだけ今の梧桐は強いのだ
「(このままじゃ旦那さまが…こうなったら私も加勢に!)」
このままではまずいと感じた磊梨花が加勢に入ろうとしようとした時だった
【「来ルナ!」】
「――っ!?」ズザァァ!
突然の蟲髑の荒声に磊梨花は突きだそうとした足を止める
【「邪魔ヲスルナ。コレハ俺トコノ男ノ決闘ダ。正々堂々ノ舞台ニ加勢ナドト無粋ナコトヲスルノデアレバ俺ハオ前モ斬ル!」】
「…っ!?」ゾクッ
敬愛する者からのその言葉に磊梨花はぞっと寒いものが走るような感覚に襲われる
「いいこというじゃねぇか。こいつの言う通りだぜ、俺たちは今血沸き肉躍る戦いを楽しんでんだ。せっかくのお楽しみを邪魔するなんて無しだぜ?」
梧桐も共感した様子でそう言い放つ
「…旦那さま、あなたの気持ちはわかっているつもりです。私のしようとしていることが無粋なことだということも…でも、それでも私にとってあなたはやっと出会うことのできた大切な存在なんです!だから私は!」
蟲髑のことが心配で仕方ないのだという思いを椎奈は不安交じりの声で告げる
【「…椎奈」】
「――…だ、旦那さま。今、私の名前をっ?」
するとその時、今まで椎奈の名を呼ばなかった蟲髑が初めて彼女の名前を口にする
【「オ前ハ俺ノコトヲ信ジテイルカ?」】
「…はい、もちろんです!」
唐突に尋ねられた蟲髑の質問に驚きを抱きつつも直後、冷静な顔つきを見せ即答する
【「ナラバソコデシッカリト見テイロ。俺ハコンナトコロデ負ケハシナイ――ッ!!」】ググググ
「なっ、こいつ!?」
磊梨花に信じるよう言い聞かせると蟲髑は梧桐のほうを向くと力を籠め始める
梧桐は徐々に押される感覚を得物から体中に伝達された感覚を覚えた
【「ハァッ!!」】
「うおっ!?」
振り絞った力で振るわれた戦斧によって押し負けた梧桐が後方にへと後ずさりを余儀なくされた
「…おうおう、なんだよお前。まだこんなにも力を隠してやがったのか?もったいぶりやがって」
押し返された梧桐はそれを悔しむどころか目をギラギラさせていた
「しっかしすごい力だな?まだ手がしびれを訴えてやがるぜ?」
【「貴殿ガ全力ヲダシテクレタトイウニ私ガソノママトイウ訳ニモイクマイ、故ニココカラハ私モ全力デ貴殿ト相マミエヨウゾ」】
「…面白れぇな!」
全力を尽くす。蟲髑のその言葉に梧桐はこの上ない高揚感を覚えた
【「…イザ、参ル!!」】
「こいや!」
蟲髑がどしん、どしんと地面を踏みしめながら梧桐に向かって駆け出す
対する梧桐も愛刀を身構え、受けて立つ構えを見せる
【「フン!!」】
「でりゃっ!!」
次の瞬間、互いの得物がぶつかり合い、激しい怒号と衝撃波を生み出す
さらには一秒一秒ごとに金属と金属の激しいぶつかり合う音が響き渡り、2人は目で追うのがやっとなほど壮絶な斬り合いを繰り広げる
「ははははは!楽しい、楽しいな!!」
【「――ッ!!」】
互いの全力の斬りあいが続き、下手に横槍をすれば間違いなくこちらが殺されるというのを全身で感じていた
そうこうしているうちに数分間の斬り合いから互いにいったん距離を取った
双方ともこの戦闘で疲労が見て取れる
「このままじゃ拉致があかねぇな……そろそろ決めるか?」
【「望ムトコロダ」】
ついにこの戦いに終止符を打つべく2人が最後の一撃を放つべく身構えるのだった