蟲髑と梧桐の激しい戦いが佳境を迎えようとしていた
2人の体からは凄まじい闘気が漏れ出していた
椎奈たちが固唾をのんで見守る中、ついに状況は動き出す
「さぁ、行くぜ。この一撃で全て終わらせてやるぜ!秘伝忍法『絶破断裁』!!」
技の名を叫ぶとともに点に掲げている愛刀の太刀で地面に振り下ろす
刀身が触れた地面が一気に亀裂を走らせ、さらにその亀裂から衝撃波が沸き上がった
【「――ッツ!?」】
次の瞬間、その斬撃が蟲髑を襲い、想像を絶するダメージが全身を駆け巡る
「旦那さま!?」
「見ろ!梧桐隊長の大技だ!」
「あれを食らっちまったらいくら上位の妖魔でも一溜まりもないぜ!」
「やっちゃってください隊長!!」
この光景を前に椎奈は絶句し、梧桐の部下たちは勝利を確信したようにはしゃぎ声を上げる
「……っ!?」ピクッ
だが、一方の梧桐は感じ取ったように砂煙の舞う方を見ているとそこにきらめく赤い光が
【「…ッ!」】
「…おいおい、嘘だろ?」
あまりのことに梧桐は思わず苦笑いを浮かべる
砂煙の中から蟲髑が現れたからだ。
先の大技でダメージこそ受けているが、それでも蟲髑は梧桐を見下ろすように眼光を向けている
【「…少々驚イタゾ。ヨモヤ貴殿ノ技ガ俺ノ技ニ類似スルモノダッタトハナ」】
「なにっ?」
【「貴殿ノ技ニ敬意ヲ称スル。ソシテ受ケテミヨ。我ガ一撃ヲ!妖魔術『豪乱怒涛』!!」】
意味深な言葉を告げるとともに蟲髑が手にしている戦斧を勢いよく地面に叩きつける
すると先ほど梧桐が放ったそれよりもさらに大きな切れるが地面を走った
そして次の瞬間、亀裂からあふれ出した衝撃波のエネルギーが梧桐を襲った
「ぐ、ぐぅうううう!?……み、見事…だぜ…」
衝撃波の渦に飲み込まれる直前、梧桐は蟲髑に対して敬意の言葉を送り、数秒せずに渦の中に飲み込まれた
【「…ッ」】プシュ~
何か思うようなそぶりを見せつつも衝撃波の柱に背を向けて蟲髑は口から息を吐くのだった
やがて衝撃波の柱が勢いを落とし、見る影もなく消えていく
場はしーんと静まり返り、衝撃波によって発生した煙が周囲を覆っていた
「ゲホ、ゲホッ…だ、旦那さまは?」
モクモクと立ち込める煙に蒸せながらも椎奈は状況を把握するべく視線を蟲髑と梧桐がいる方向に向ける
「…あっ!?」
そこで目にした光景に椎奈は視線を奪われる
彼女の視界に映っていたのは大ダメージを受けて戦闘不能な状況に落ちった梧桐が大の字で地面に横たわっており
倒れている梧桐を見下ろす蟲髑の姿がそこにはあった
「勝った…旦那さまが、勝った!」
蟲髑が梧桐を破ったのだと知り、椎奈は急ぎ足で駆け付けていった
「旦那さま~!!」
【「…――ッツ」】グラッ
「だ、旦那さま!?」
するとその直後、蟲髑が力が抜けたように倒れるので椎奈は驚愕する
「大丈夫ですか旦那さま!?」
【「…問題ナイ。タダ少シ、アイツカラ受ケタダメージガ残ッテイタヨウダ」】
跪いて倒れる蟲髑曰く梧桐の攻撃によるダメージが残っていたようである
「はっ…ははははは!」
「――っ?」
【「……ッ?」】
するとその時、隣で倒れている梧桐が急に盛大な笑い声を上げてきた
「はぁ…まいった。流石に完敗だぜ、まさかあんな技を繰り出してくるなんてな」
やられたにも関わらず、何故かとても嬉しそうに自分の敗北を認める
「いい勝負をさせてもらったぜ。こんなにも楽しい勝負は久しぶりだった。礼を言うぜ」
【「…貴殿コソ、ナ」】
「…へ、そう言ってもらえるなら嬉しい限りだぜ」
自分を負かしたことに敬意の言葉を送る梧桐に蟲髑も同じ思いだということを明かす
蟲髑のその言葉を聞いた梧桐は本当にうれしそうな顔を浮かべていた
だが、2会話に気を取られたせいで3人は気づいていなかった
3人の様子を見つめる者の存在に
「――っ!」パチン
「「「「――っ!!」」」」シュンシュンシュンシュン!
「えっ、なに?」
次の瞬間、指を鳴らす音が響いたと思ったらそれに好悪するように4つの人影が四方に別れて椎奈たちを取り囲む
さらに彼女たちを取り囲む4人が同時に印を結ぶ
ズゥウウウウウン!
「なっ!?」
【「ヌゥゥウウ!?」】
そして術が発動し、椎奈たちを囲むようにして足元に円陣が発生した
椎奈と蟲髑はその中に閉じ込められた
さらには近くに倒れている梧桐までもが巻き添えをくらってしまっていた
「だ、旦那さま!?こ、これは…いったい!?」
【「ワ、分カラヌ!?」】
円陣の中に閉じ込められた椎奈と蟲髑はとても苦しそうなうめき声をあげている
「ほーほっほっほつほ!かかりましたね!」
「――っ!?」
【「――ッツ!?」】
するとその時、明後日の方向から声が聞こえてきた
声のする方に椎名が視線を向けてみるとそこには1人のスーツを着こなし
頭にはスーツと同じ柄の帽子を被り、左手にステッキをぶら下げるぱっと見ジェントルマンのような格好をした男がいた
「あ、あなたはいったい?」
「らっ、
「
その時、梧桐が現れた男の顔を見るや
「いや〜しかし、ものの見事にかかってくれましたね〜?これもそこの妖魔さんが梧桐殿と戦って消耗してくれたおかげですね〜?」
「ではこれはあなたが!?」
「えぇ、そうですよ。私の指示です」
「よ、よくも!?」
蟲髑を苦しめる陣を発生させたのがこの
「そんなに睨みつけたところで状況は好転しないのです。残念でしたね~?」
「ぐぅっ…!?」
「
椎奈たちのみならず自分までも陣の中に閉じ込めると言う所業を行う楽喜に梧桐が問いただすように声をかける
「あ〜ら、梧桐殿いらっしゃったのね〜?一緒に術に巻き込まれちゃってかわいそうに〜w?」
「て、てめぇ…」
口ぶりからしてもどこかわざとらしく、それでいて梧桐を見下しているような言葉を投げかけていた
「まぁ、そこで大人しく見ていてくださいな、あなたが倒そうとしていたこの獲物は私が貰っちゃいますから♪」
「な、なん…だと!?」
「ふっふふふふ」
そういうと楽喜はその憎々しい顔を蟲髑の方に向けるのだった