閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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いつまでも、どこまでも 

蟲髑から血を受け取り、それを取り込んだ瞬間に輝きを放つ椎奈

 

 

そしてその光が収まり、全員が見据えた視線の先には異形の姿へと変貌を遂げた彼女の姿があったのだった

 

 

 

「なっ、なに?なんなのよあれ!?人が妖魔になっちゃったわよ!?」

 

 

目の前で起こっていることが信じられず、驚愕する

 

 

「ちょっと何をぐずぐずしてるの!?結界を強めなさい!奴が暴れる前に身動きを封じるのよ!」

 

 

「「「「はっ、はい!」」」」

 

 

呆気に取られる中、ハッと我に帰り部下たちに指示を飛ばす

 

 

部下たちはその命令に従い、術の威力を最大まで上げ始めた

 

 

【「グ、グウウッ!?」】

 

 

術の威力が上がり、その中に閉じ込められている蟲髑が苦悶の声を上げる

 

 

「いいよその調子!これてやつも…えっ?」

 

 

蟲髑が苦しんでいるのを見てすかさず視線を椎奈に向けるも、その表情が固まってしまう

 

 

彼が目にしたのは結界内で苦しい表情を浮かべながらも少しつづ立ち上がる椎奈の姿があったからだ

 

 

呆気にとられているを他所に椎奈が完全に立ち上がると即座に身構える

 

 

【「――っ!!」】

 

 

 

ビュオオオオオオッ!!

 

 

 

椎奈が両手を左右に大きく振りかぶった瞬間、直後に衝撃波が発生し、結界内を駆け抜ける

 

 

 

バシン!ジジジジジジッ!

 

 

 

衝撃波が結界に直撃し、エネルギーとエネルギーのぶつかり合いが起こる

 

 

「「「「ぐぅう!?ふぅううううん!!」」」」

 

 

4方を囲む忍たちは結界を壊そうとする凄まじい力に抗おうと力を込める

 

 

【「はぁああああ!!」】

 

 

 

ピキ…ピキキキキキ…バリィイイイイイン!!

 

 

 

「「「「ぐああああああ!?」」」」

 

 

「はぁあっ!?」

 

 

【「――っ!!」】

 

 

しかし、椎奈の放った衝撃波の威力はそんなことで止めることはできず、程なくして結界は見るも無残に破壊されてしまう

 

 

さらには勢いを押しきれなかった衝撃波の余波が忍たちを吹き飛ばしてしまうのだった

 

 

「ちょっと待って嘘でしょ!?け、結界が破られるなんて!?」

 

 

信じられない光景を目にした楽喜(ラッキー)はあまりのことに絶句してしまう

 

 

【「……っ」】

 

 

するとその最中、結界を破壊した椎奈が俯いていた顔をあげ、その顔を見せる

 

 

「お、お前たち何をしているの!あの化け物をやっちゃいなさい!?」

 

 

「「「はっ、はい!」」」

 

 

椎奈の目を見て自分たちへの報復をせんとしていると感じ取った楽喜(ラッキー)が忍たちに彼女を討つように命じる

 

 

【「…椎奈?」】

 

 

【「旦那さま、ここはわたくしにお任せください。すぐに片を付けて参りますから…」】

 

 

【「……ッ」】

 

 

蟲髑は自分のほうを向き、自分に任せるように嘆願する椎奈の自信に満ちた瞳を目にした

 

 

【「分カッタ…任セル、好キニ暴レテ来ルガイイ」】

 

 

【「ありがとうございます…では行きます!!」】

 

 

そして会話を終えると同時に椎奈が自分に向かってくる忍たちに応戦するべく突っ込んで行った

 

 

「「「「はぁああああ!!」」」」

 

 

互いに間合いを詰めるや忍たちが一斉に椎奈に斬りかかろうとする

 

 

【「――っ!!」】シュン!

 

 

 

ドドドドドドドッ!!

 

 

 

「「「「ぐああああああ!?」」」」

 

 

しかし、その直後に椎奈がカウンター攻撃を決め、その攻撃を受けた忍たちは瞬く間に吹き飛ばされてしまった

 

 

「う、うそ…冗談でしょ!?」

 

 

部下たちがあっという間にやられる光景に楽喜(ラッキー)が愕然とする

 

 

【「――っ!」】ギロリ

 

 

「ひぃっ!?」

 

 

するとその時、忍たちを蹴散らした椎奈の視線が楽喜(ラッキー)を捉えた

 

 

【「……っ」】

 

 

楽喜(ラッキー)を次なる標的に据えた椎奈が一歩一歩と彼の元に歩み寄っていく

 

 

「く、来るな。来るんじゃない!?」

 

 

ゆっくりと近づいてくる椎奈を前に楽喜(ラッキー)は完全に腰が引けてしまっていた

 

 

「うっ、ううう…うぉおおおおお!!」

 

 

恐怖に気が狂ってしまった楽喜(ラッキー)が手にしていた斬馬刀を振りおろした

 

 

【「ふん!!」】ガキン!

 

 

「なっ!?」

 

 

だが、椎奈が斬馬刀を妖魔の肉体となって硬化能力を得た腕でガードする

 

 

攻撃を受け止められてしまい、楽喜(ラッキー)は激しく動揺していた

 

 

【「よくも旦那さまを苦しめてくれましたね。これはそのお返しです…お覚悟を!!」】

 

 

「ひぃっ!?ぐぁあああああああ!?」

 

 

そして攻撃を防いだ椎奈が反撃の一撃を繰り出し、それにより楽喜(ラッキー)ははるか後方まで吹き飛ばされ、程なくして意識を失うのだった

 

 

【「……っ」シュゥ~

 

 

楽喜(ラッキー)が気を失ったのを確認するとそれに好悪するようにして椎奈の姿が人の姿へと戻った

 

 

「旦那さまやりましたよ!」

 

 

【「アァ…見事ダッタゾ」】

 

 

「…い、いえ///」

 

 

勝利を報告するべく駆け寄り、蟲髑の褒めの言葉をもらった椎奈は頬を赤らめながらに嬉しそうにしていた

 

 

「こいつはオッたまげたぜ。まさか人間が妖魔になっちまうとはな?」

 

 

「――っ!?」

 

 

【「…ッ?」】

 

 

すると後ろから声が聞こえ、振り向くとそこには同じく結界から解放され、動けるようになった梧桐がいた

 

 

「旦那さま、ここは私が!」

 

 

梧桐を前にした椎奈が蟲髑を守らんと身構える

 

 

「落ち着け、そうカリカリしなさんな…行きな」

 

 

「えっ?」

 

 

戦いを覚悟していた椎奈にとって梧桐の発言は意外なものだった

 

 

「ど、どういうことですか?」

 

 

「どうもこうもねぇよ。不甲斐ない部下のせいでせっかくの楽しい喧嘩も興が削がれちまったからな。その詫びもかねてお前らを逃がしてやろうと思ってな」

 

 

部下が邪魔をしたからその詫びとして2人を見逃すと進言してきた

 

 

「…っ」

 

 

「信じられないって面してやがんな?無理もないが、今ここにいる奴らは俺らを除いてみんな伸びちまってる。今なら誰にも見られねぇ、逃げるのにこれ以上のタイミングはないと思うぜ?」

 

 

信用できないという表情を見せる椎奈に梧桐が付け加えて促しをかける

 

 

【「…椎奈、行クゾ」】

 

 

「旦那さま。しかし…」

 

 

【「ドノ道、手負イノ状態デ増援ニ遭遇スルノハ得策デハナイ。イイカラ行クゾ」】

 

 

「…はい。分かりました」

 

 

懸念点が残るものの、椎奈は蟲髑と共にこの場を離脱するのだった

 

 

「蟲髑に椎奈ちゃんか…いつかまたどこかで会おうぜ」

 

 

この場から去っていった2人に向けて梧桐は静かに再会の願いを呟くのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旦那さま。お身体の方は大丈夫ですか?まだ痛むところかありましたら言ってくださいね?」

 

 

【「案ズルナ。コノ程度シバラクスレバ治ル」】

 

 

「…そうはいっても心配な物は心配なんですもの」

 

 

蟲髑の受け答えに不満気な顔を磊梨花は浮かべる

 

 

「しかしこれでよろしかったんですか梧桐を見逃して?」

 

 

【「良イモ悪イモナイ。結局、俺モ奴ト同ジダ。奴トノ戦イハイイモノダッタ。仮ニ再ビ挑ンデキタナラバソノ時ハマタ戦エバイイダケノ話シダ」】

 

 

「そういうものなのですか…私にはまだわかりかねます」

 

 

あの後、梧桐を打ち倒した蟲髑ではあったが命までとることはせず、部下たちが彼を連れて行くのを見逃した後は再び旅を再開したのである

 

 

「旦那さま。次はどちらに向かわれますか?」

 

 

【「無論、風ノ向クママ、気ノ向クママダ」】

 

 

「うふふ…はい、お供しますよ旦那さま♪」

 

 

他愛ないやり取りをしながら磊梨花と蟲髑は次なる場所に向けて旅路を行くのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして時刻は夜にへと変わった頃…

 

 

 

「そうか、あの梧桐がな」

 

 

「はい。左様でございます」

 

 

「神楽衆の一角がそれほどまでにやられるとはな、流石は上位種の妖魔と言ったところか?」

 

 

雷雲覆う曇り空の下、ビルの執務室内にて2人の人物が会話を交わしていた

 

 

不適な笑みを零しながらメガネを人差し指と中指でくいっとあげる死童と椅子に座す彼を見つめる秘書の女性の2人である

 

 

「それで、そいつらの行方は?」

 

 

「申し訳ございません。梧桐を倒した後、その混乱に乗じてまんまと逃げ仰られたようです。現在再度行方を追っている最中でございます」

 

 

死童の質問に苦虫を噛み潰したように秘書の女性は申し訳なさそうに謝罪をしていた

 

 

「構わん。今はまだ泳がせておけ…それより、例のものの進捗のほうはどうなっている?」

 

 

だが、死童は秘書に問題ないと告げるとともに話題を別のものに変える

 

 

「はい、そちらの方に関しましては現在、幾らかの培養に成功しております」

 

 

「ふむ、それで?」

 

 

「さまざまな被験態を使い、研究をしておりますが…」

 

 

「状況は芳しくない…か?」

 

 

会話の途中で秘書の歯切れが悪くなったのに気づいた死童が察したかのように問う

 

 

「はっ、はい…結論から申しますと、やはり培養体では十二分に力を発揮できないようでして、同調を試みた憑依した実験体と被験体との間に拒絶反応が起こり、結果、被験体もろとも実験に使ったサンプルは死亡してしまいました」

 

 

「…なるほど」

 

 

秘書の口から実験が未だ芳しくはないことを知り、死童は何か考えるような表情を浮かべながら雨の降りしきる窓の外を眺めていた

 

 

「重ね重ねご希望に添える成果を果たせず申し訳ございません」

 

 

「問題ない。実験に犠牲はつきものだ。被験体などいくらでも補充はできる。引き続き科学班には研究を怠るなと伝えろ、いいな?」

 

 

「…はい、かしこまりました」

 

 

死童からの命を聞いた秘書は一礼すると部屋から去っていった

 

 

「ふっ、退屈が絶えんな。実に面白いことになっているじゃないか」

 

 

部屋に1人となった死童は自席に座ると机の上に並べられた資料に目を通していた

 

 

内容はここ最近で起こったことの報告書だった

 

 

書類の中にはアスタとゾディアック星導会や遠野の里に関する事件の報告書や今回の事件に関する報告書が揃っていた

 

 

「さて、次はどんな事件が起こるんだろうな?」

 

 

不敵な笑みをこぼしながら死童は雨の降り頻る窓を眺めていた

 

 

そんな中、死童のデスクの上にあるノートPCがとある何かの見取り図のデータを写しているのだった

 

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