襲われていた少女たちを救った佐介と飛鳥は里の領主である那智から今起こっていることのあらすじを知らされる
那智から領主の座を奪おうとする平太夫率いる軍勢が里を襲ったこと、そこへなにも知らない自分たちが偶然にも巻き込まれた形となり今に至ることを
どうにかして平太夫を止めたいと思う夕焼や那智の思いに共感し、この現状をどうすべきかと思案を巡らせる中、佐介が何かを閃いた
果たしてそれは……
◆那智邸
「ええい、田吾作のやついつまで待たせる?まだ那智を見つけられんのか!」
那智を見失い、付近を捜索させてるにも関わらず一向に発見できていないことに平太夫はイライラを募らせていた
そんな時だった
ワーワー!ガヤガヤガヤガヤ!
「っ?」
突如、静かだった外が騒がしくなってきた
「親方さま!」
そこへ慌てた様子の田吾作がやってきた
「どうした?」
「はい、お喜びください、先ほど捜索に出ていた兵士から連絡があり那智様を引き連れた小娘どもを発見し見事捕まえました」
「なに!…そうか、でかしたぞ田吾作!」
「勿体無きお言葉でございます」
待ちわびたと言わんばかりに平太夫は田吾作とともに那智の下へと急いだ
「ぐっ、くそっ…!」グヌヌ
「離しなさいよ!」グヌヌ
平太夫達が駆けつけるとそこには背後に佇む1体の兵士に拘束され、縄で縛られても尚、抵抗する九魅と深里、それとは真逆に大人しく座り込む夕焼と牛丸、そして那智がいた
「さんざん手間をかけてくれたがいよいよ年貢の納め時だな。観念するがいい」
「んだと!ふざけたこといってんじゃねぇぞこのジジィ!」
「あんたたちなんかに那智さんは渡さないんだから!」
「貴様ら!平太夫様に対して無礼だぞ!」
敵意むき出しの眼光を向けながら平太夫に暴言を吐く
「九魅さん、深里さん。気持ちはわかるけど相手を怒らせちゃダメだよ」アセアセ
「そうだよ2人とも~」アセアセ
そんな二人の態度を見た夕焼と牛丸が慌てて二人を言い止めようとする
「ふん。そっちの小娘どもは自分たちの立場を弁えてるようだが~?…身動きの取れない状況でよくもそんな口が聞けたものだな?」
「「ぐぅ!」」グヌヌ
平太夫のその言葉に九魅と深里は先ほどの言い分を覆されそれ以上なにも言い返せなかった
「おじ様!」
「っ?」
「もうおやめください!どうしておじ様はこのような酷いことをなさるのですか?どうしてそこまでして領主の座を欲するのですか?…私にはわかりませんわ」
那智はその哀しさとともに平太夫に訪ねた。同じ里の人間であり自分にとって身内である人が里の人々を監禁し、自分から領主の座を奪い取ろうとするのか那智にはどうしてもわからなかった
「……お前たちが素直に俺の計画に協力するのなら手荒な真似をする必要はなかったんだがな」
「計画?」
ボソリと呟いた平太夫の言葉に那智たちは耳を疑った
「け、計画とはいったいなんなのですか?」
「…俺はな那智、外の世界から離れひっそりと暮らすだけの里のやり方に疑問を抱いていた。俺はこの里には力がある、外の奴らにも負けないくらいの力があるのだということを外の奴らに見せつけてやりたいと思っていた。しかし里の奴らはそんな俺の考えに耳を貸そうとしなかった。争い事などしたくはないとな…俺は里の連中の負抜けた根性を叩き直そうと兄者と領主の座をかけて競った。しかし結果はご覧の有様…俺は領主になれず兄者の掲げる姿勢に賛同する者は後を立たなかった。そして俺は里の外へと飛び出す決心をした。全ては生ぬるいことばかり語り俺の考えを否定する腑抜けものの兄者たちを見返して力こそが正義だということを知らしめるためだった……だが、現実はそうはいかなかった」
苦虫を噛んだような顔で拳をギュッと握り締めながら平太夫は続けた
「里を出た俺を待ち受けていたのは圧倒的な力の差だった。俺は幾度となく外の世界の奴らに打ちのめされ、その度に何度も罵倒され惨めな想いをしたことか」
「……」
平太夫が内に秘めた想いを語る中、ともに歩んできた田吾作がその想いに共感を受けた
「そして俺は誓った。いつの日か誰をも屈服させられるほどの力を手にし、その力で里の連中や外の奴らをひれ伏させ全てを支配してやるのだと…そして俺はついにその力を手にした」
すると平太夫は左眼を隠している眼帯の紐を解く
『っ!?』
「…これが、俺の手にした力だ」
眼帯が外れ、露になったのは明らかに自身のものではない眼球だった
「そ、それはいったい?」
「この魔眼には特殊な術式が込められていてな、所持者に絶大な力を及ぼすものだ。これによって俺は通常の5倍もの身体能力を引き出すことが出来るのだ」
不敵な笑みに好悪するかのように左眼が怪しく輝く
「さて、無駄話はここまでだ。…那智、お前には明日、里の者たちの前で領主の証を俺に渡してもらう」
本題に移った平太夫は那智に領主の証を差し出すよう要求する
「…おじ様」
「お前から領主の座を受け継ぎ、俺は里の者たちに宣言する。今日より新しき領主はこの平太夫であると」
「はっ、何馬鹿なこと言ってんのよ?たとえ那智がそれに応じてそうしたところで里のみんながあんたみたいなやつを領主だと認めるわけがないじゃない?」
「認めてもらうのではない"認めさせるのだ"…俺の力でな。そして里の奴らを一から鍛え上げ最強の忍軍団とし外の世界を支配してやるのだ!」
深里の言い分にももの動じず、逆にそれをねじ伏せるかのようにそう言い放つ
「那智以外の奴は他のやつ共々牢へ連行させろ」
「かしこまりました」
平太夫が田吾作に命令を下す
「さぁ那智、こっちへ来るのだ」
そう言って平太夫が那智に手を伸ばそうとした…その時だった
パシューーーン!バン!!
「っ?なんだ?」
突然、上空に狼煙が放たれた
平太夫と田吾作が気を取られた時だった
【】キュピーン
スッ!バッ!!
「っ!?」
【ッ!】バキィィン!
「ぐはっ!?がはあぁぁぁぁ!!!」
ドガァァァァン!!
「お、親方さま!?」
なんと夕焼達の背後に立っていた兵士が狼煙が放たれた瞬間、平太夫に突進し、腹部に強烈な一発をお見舞いし、後方にある建物へと吹き飛ばす
「しっかりしてください親方さま!?」
「ぬぅ…き、貴様!何をしている!?」
動揺しながらも平太夫が自分をぶっ飛ばした兵士に尋ねるも兵士は答えようとはしなかった
「よし!みんな!行動開始よ!!」
『おー!』
それが口火となり、縄で拘束されていたはずの夕焼たちが一斉に縄を解き四方の敵めがけて突っ込んだ
「行くぜ反撃開始だ!」
「病み上がりなんだからあんたは大人しく引っ込んでたらどうなの~?」
「はん、その言葉、そっくりお返ししてやるっての、こいつらはあたしが片づけてやる!」
「「でぇぇぇい!!」」
ドバァァァァァン!
先陣を切るように九魅と深里が自分たちの前に立ちはだかる兵士たちを蹴散らす
「お二人共張り切ってますわね」
「那智さん。私たちも…」
「えぇ、そうですわね。…行きますわよ牛丸さん!」
「「え~い!」」
シュンシュンシュンシュン!ブォォォン!
那智の釣竿と牛丸の鞭によるトリッキーな戦法が兵士たちを蹴散らす
「私も負けてられない…っ」スッ
仲間たちの勢いに乗るべく夕焼が背負っている刀に手をかける
【【【ッ!!】】】
それを見ていた兵士達が夕焼を切り捨てようと剣を振り下ろす
「…っ!!」
カキィィィン! ギギギギギ
「…へっ、こんなやわな攻撃がオレに通じるかよ!!」
シュン!ザシュシュシュシュシュシュ!!
竜巻の如く荒々しい斬撃が兵士達を切り裂いていく
「馬鹿な!?奴らどうやって縄を!?」
「こ、これはいったい、ど、どういうことだ?」
予想もしない光景を目の当たりにし、驚きを隠せない
「き、貴様ら!こんなことをしたらどうなるかわかっているのか!?」
こちらには捉えている民達がいる。それらが人質となっている以上自分たちに手をあげることは人質たちの身を危険に晒す事、そう忠告を口走る
【…ふっ、ふふふ】
「「っ!?」」
【残念ですが、その脅しはもはや意味を持ちません……なぜなら】
兵士?がそう囁いていると徐々に後ろからいくつもの足音が
「あっ、あれは!」
「な、馬鹿な!?」
皆が視線を向ける先には身を武装に包み、こちらに向かって駆け出しているこの里の民達が
「平太夫!田吾作!よくも俺たちを牢屋に閉じ込めてくれやがったな!」
「お前たちみたいな奴らにこの里を好きにさせてたまるか!」
「覚悟しなさいよ!」
「…みんな!」
民たちは一眼になって迎撃に出てくる兵士達と交戦に入る
もはや周囲は大乱闘状態だった
「馬鹿な、那智達以外の奴らは全員捕らえた、那智達もここにいるというのにどうやって牢から出たというのだ!?」
次から次に起こる予想もしない出来事にただただ驚くことしかできない
「佐介くん!」
【飛鳥ちゃん、うまくいったみたいだね】
「うん」
2人は事が上手く運んだことを喜ぶ
「き、貴様らはいったい?」
【僕たちですか?…僕たちは】バサッ!!
兵士?が沈黙のまま肩に手をかけ、纏っていた衣服を脱ぎ去る
そして顕になったのは兵士に変装していた佐介だった
「半蔵学院の忍学生です。…さぁ、舞い忍ばせていただきます!!」