家に帰ったら見知らぬ少年がいて、しかもその子が昔自分たちが可愛がっていたイタチの変幻した姿だと知って驚きの絶頂に包まれた日から一夜明けた日のことだった
朝の訪れを抑えるかのように外から小鳥たちの唄う声が聞こえてきた
「…ん、んん…っ?」
小鳥たちの声につられるかのように夕焼が目を覚ます
「……ふぁ〜」
目を覚ました夕焼が大きなあくびをする
「……あっ」
その時、夕焼の視線が自分の隣に向く
「…むにゃむにゃ♪」
夕焼の隣にはまだすやすやと寝息を立てているユウが寝そべっていた
「…夢じゃ、なかったんだ?」
ユウを見るや夕焼はボソリと呟く
未だ心のどこかで昨日のことは夢だったのではないかとそう思っていたのだが、そんなことはなかった
現に目の前にはユウがいるのだから
『あぁ、残念だが夢じゃないぜ』
「夜叉さん…いえ、残念って言うことはないんです。でもまさかこんな形でユウくんと再会することになるなんて思いもしなかったものでしたので」
夜叉が夕焼に少し皮肉めいた問いかけをする
しかし、夕焼的には別にそんなことはなく、むしろいなくなってしまったはずの友達にこうしてまた会えたのだから嬉しさの方が勝っていた
「…って言うか、どうしてユウくんが私の隣にいるのかな?」
不思議に思いながら夕焼が目線を逸らし、ベットのほうに視線をむける
昨日の事、あれからいろいろあってどうにか母親には勉強に集中したいからとそれっぽい理由をならべて部屋で夕食を食べることになった
夕焼持ってきた夕食を振舞うとユウはそれを嬉しそうに食べてくれた
そうしてご飯を食べ終えた2人は明日に備えて寝ることにし
ベットをユウに譲り、自分はクッションを枕にし床で寝ることにしたのだが
「…っ」
いつの間にかユウが自分に抱き着いて気持ちよさそうに眠っていた
『そいつときたらお前が寝て少しした後に目を覚ましてな、もの欲しそうな顔をして隣に潜り込んで今に至るって訳だ』
「な、なるほど…」
夜叉から事の成りを聞いて夕焼は納得したという顔を浮かべる
「うにゅ…ねぇね~♪」
するとユウが眠ったままの状態で夕焼の身体をギュッと抱きしめる
「…まったく、ユウくんは本当に甘えん坊さんなんだから」
昔と変わらず、自分にべったりするユウのこの仕草に夕焼はどこか懐かしさを感じていた
『ところで夕焼、時間は大丈夫なのか?』
「えっ…あっ!?」
そんな中、夜叉がおもむろに訊ねると夕焼はハッとした顔を浮かべて時計に視線を向ける
時計を見てみるともう学校に行かなければいけない時間になってしまっていた
「やばいやばい、急がないと!?」
学校に遅れてしまうと夕焼が急いで着替え始めていく
「…ん、ん?ねぇね?どうしたのそんなに慌てて?」
慌てて着替え始める中、バタバタしてしまっていたがために騒がしい音でユウが目を覚ました
「あっ、ごめんねユウくん。起こしちゃったね」
「大丈夫だよ…どこか行くの?」
「うん、私今日これから学校だから行かないといけないの、だからユウくん、私が帰ってくるまで大人しくここでお留守番しててね」
起きたユウに自分が学校に行くこと、それまでの間、家で留守番をするようにと夕焼が言い聞かせる
「ボクも行きたい!」
「ダメだよ。今のユウくんをみんなに見せたら驚かれちゃうからね。大人しく家で待ってて」
「そ、そんな…むぅ~」
一緒に行きたいのにそれを拒まれてしまったことにユウは頬を膨らませ、もの悲しそうな表情を浮かべていた
「大丈夫、すぐに帰ってくるから。ねっ?」
「ぷぅ〜」
言い聞かせようとするもユウさまだ不貞腐れた様子で頬を膨らませていた
「…あっ、もう時間だ。それじゃあ私行ってくるからいい子で待っててね。あともう少ししたらお母さんも出かけると思うから、もしお腹が空いたらお台所の方に菓子パンが置いてあるからそれを食べてね。またねユウくん」
「あっ、ねぇね!?」
伝えることを伝えると夕焼は学校に向かって行ってしまった
「……むぅ〜」
夕焼がいなくなった部屋の中でユウは膨れ面を見せていたのだった
ユウに留守番を任せて夕焼は学校に向かっていった
「ぎ、ぎりぎり間に合った」
なんとか急いで向かったおかげでなんとか時間ギリギリではあるものの、学校に到着することができた
「おっ?夕焼じゃん、なんだよ遅刻か?」
「あっ、九魅さん。それにみんなも?」
声をかけられ、顔を上げるとそこには訓練のためにジャージ姿で外に出ているみんなが声をかけてきた光景だった
「珍しいわね?夕焼さんが遅刻寸前で来るなんて?」
「どうせ小説とか読んでて夢中になりすぎて夜更かしでもしちまったんだろw?」
「まぁ、そうなんですか夕焼さん?いけませんよ。夜更かしはお肌に悪影響を及ぼしてしまいますから」
「えっ、えぇ。そんな感じです。以後気を付けます」汗
皆からの言葉に若干思うところあったものの、ユウのことをむやみやたらにいう訳にも行かないのでここは軽く流そうと夕焼は考えた
「…ところでゆーちゃん、ちょっといいかな~?」
「なにうーちゃん?」
すると唐突に牛丸が問いかけてきたので夕焼はどうしたのだろうとその声に耳を傾ける
「あのね、ゆーちゃんの”後ろにいる子は”誰なのかな~?」
「……えっ?」
牛丸の質問に夕焼は一瞬固まる
そして言われるがままに恐る恐る後ろを振り替える
「…えへへ」
「ゆ、ユウくん!?」ガビーン!
直後、夕焼は激しく動揺を見せた
自分の後ろに家で留守番しているはずのユウがいるのだから
「ど、どうしてここにいるの!?」
「だって、ねぇねがいないと寂しいんだもの…」
「だ、だからって」
悲しげな顔を浮かべるユウの気持ちもわからなくないため、強く言い出せない夕焼だったが、現状はとてもまずい状況だった
ハッとなって皆のほうに視線を向けてみると案の定、こちらに集まっていた
「あ、あの夕焼さん、その子はいったい?」
「はて、見かけない子ですね?」
ユウを目にした皆が困惑している
「ちょっと待て、そいつの特徴…噂の不審者じゃねぇのか!?」
「「「――っ!?」」」
「(ま、まずい!?)」
九魅がユウが不審者であると勘付き、皆が疑いの目を向け始め、夕焼もまずいと感じてしまっていた
どうしたらいいのかと夕焼が頭を抱えていた
するとその時、ユウが前に出ると皆の元に歩み寄っていく
唐突な行動に皆が何事かと思った時だった
「わーい!九魅ねぇねに深里ねぇね、那智ねぇねに牛丸ねぇねだ♪」
「「「「えっ?」」」」
「ねぇねたち、久しぶり~♪」
「「「「――っ!?」」」」
ユウは皆を見るや夕焼の時と同じように嬉しそうに飛びつき、全員が困惑するのだった