夕焼たちとユウとの間で些細なゴタゴタか起こっていた頃の事だった
「そら!えいっ!」
「なんの!つえい!」
山の中で子供達がボールを使ってサッカーのようにして遊んでいた
「パス!」
「よーし、いくぜオイラの必殺技!シュート!」
1人の少年が全力の蹴りでボールを蹴り飛ばす
「はっ、速い!?」
「届かないよ!?」
少年の蹴りがあまりに強く他の子達はボールをキャッチできなかった
そうしてそのままボールは蹴り飛ばされたまま、まっすぐ飛んでいった
「へへっ…あっ!?」
「「っ!?」」
だが、ボールの飛んでいった先がいけなかった
ボールが向かう先には一体のお地蔵さんが立っていた
ヒュウウン!ペチン!!グラッ!!
「「あっ!?」」
「やっ、やっべぇっ!?」
飛んできたボールが当たってしまい、その衝撃によって地蔵の頭がゴトっという音を立てて地面に転がり落ちてしまった
「おっ、お地蔵様の頭が垂れちゃった!?」
「どどどど、どうしよう!?このままじゃ母ちゃんに怒られちまうよ!?」
地蔵の頭が取れてしまったことに子供たちは大慌てでどうしたらいいのかと錯乱してしまっていた
「…ねっ、ねぇ?」
「どうしたの?」
「なんか急に寒気がしてきてるような気がするんだけど…気のせいかな?」
「確かに言われてみればなんとなく肌寒いような?」
すると地蔵の頭が取れて程なくしてあたりに何か冷ややかな風が吹いて来ることに子供たちは気づいた
一体なんだろうと子供たちは不安に駆られる
そんな時だった
グララララララッ!!
「「――っ!?」」
「じっ、地震だ!?地震が起こった!?」
肌寒い風が吹いたかと思えば今度は凄まじいほどの地震による揺れが発生する
「いっ、いったいどうなってるの!?」
次から次に起こる異常現象に子供たちは困惑しっぱなしだった
ズモォオオオオオオッ!!
「な、なんだ!?どうしたんだ!?」
地鳴りに加え、突如としてどこかですごい音がするのに子供たちは気づいた
「あっ、みんなあれ見て!?」
1人の子供が指差す方に皆が視線を向ける
そして皆の視界に映ったのは森の奥からこちらに向かって駆けてくる野生動物の大群だった
「な、なんだあれ!?」
「こっ、怖い!?」
押し寄せる動物の大群を目にした子供たちが恐怖に駆られる
「みっ、みんな早く逃げろ!?」
「「わぁああっ!?」」
咄嗟に取り仕切り役の少年が他の子供達に逃げることを指示する
野生動物の波の中を少年たちも必死になって逃げていく
怖い思いを抱きながらも少年たちは必死に森の外に逃げていった
「はぁ…はぁ…はぁ…こ、ここまでくればもう大丈夫」
「ねっ、ねぇあれ見て!?」
再び子供の1人が指差す方に皆が視線を向けた
次の瞬間だった
ドゴオオオオオオン!!
凄まじい轟音と共に森の奥が爆発した
巨大な砂埃がまるで柱のように立ち上る
「いっ、いったいなんだ?」
「みっ、見て!?」
少女が怯えながらに皆に砂埃への注目を促した時だった
立ちこめる砂埃の奥から見えたのはギラリと光るもの
あれはなんだと少年少女たちが驚愕している最中、直後に土柱に動きが
土柱の向こうから見える赤い光が見えたそのすぐ後に巨大な影が現れる
【「グオオオオオオオオ!!」】
そしてそれは土柱を弾き飛ばして少年少女たちの前に現れた
「な、なんだありゃ!?」
「猪?でっかい猪の化け物だ!?」
「こっ、怖いよ!?」
自分たちの目の前に現れた猪の化け物を前に子供たちが恐怖する
【「…ッ?」】ギロリ
「こ、こっちを見た!?」
「逃げろ!?」
「「うわぁあああ!?」」
猪ににらまれたことに戦慄した子供たちが一斉に逃げ出していった
【「グルルルル…グォオオオオオオオ!!」】
逃げる子供たちに気づいた猪の化け物が唸り声を上げるのだった
時は騒動が起こる少し前に遡る
夕焼たちの必死の説得により先生から見学の許可をもらったユウが少し離れた位置から皆の授業を見ていた
組手や体操、ランニングなど皆が各々の修行を行っているのをユウが眺める
やがて皆がひとしきり修行をし終え、一息入れようとしていた
「……っ」
彼女たちのその様子に気づいたユウがいそいそと隣に置いてあるクーラーボックスを開け、そこに入っている飲料水を取り出す
「ねぇねたちお疲れ様!はいこれ!」
そして両手いっぱいに飲料水を抱えながらユウが夕焼たちの元に駆け寄る
「おっ、サンキューなユウ、気が利くじゃねぇ♪」
「ありがとう」
九魅と深里の2人が最初にユウが持ってきた飲料水を受け取る
「はい、牛丸ねぇねと那智ねぇねも!」
「あら、ありがとうございます」
「嬉しいです~♪」
続いてユウが牛丸と那智にも飲料水を手渡していく
「はい、夕焼ねぇね。これ、ねぇねの分♪」
「ありがとうユウくん」
最後に残った一本をユウが夕焼に渡す
皆がユウから渡された飲料水をぐびぐびと口から喉を伝って体の中に流し込んでいった
時季と修行による火照った体に冷えた飲料水はこの上ない程に気持ちよく、そして美味たる味であった
夕焼たちの喜ぶ顔を見てユウも自然と笑みがこぼれた
楽しいひと時の時間がこの場に流れていた
ゴゴゴゴォオオオオオ!!
「「「「「「――っ!?」」」」」」
しかしその最中のことだった
突然の地鳴りによってその和やかな空気が一気に消え去ってしまった
「な、なんだこの揺れは!?」
「山の方からです~!?」
「あっ、皆さんあれを見てください!?」
不意に那智が見る方に皆が視線を向ける
【「グォオオオオオオオ!!」】
ユウたちが視界に捉えたのは山の中から現れ出でる巨大な猪の化け物だった
「なんじゃありゃ!?」
「猪さんです~!?」
猪の化け物を見るや九魅と牛丸が声を上げて叫んだ
「う、嘘でしょ?」汗
「深里さん、どうしたんですか?」
すると深里が信じられないものを見るかのような顔をしているのに気づいた夕焼が訊ねる
「山ほどの巨大な猪、間違いない。あれって昔読んだ古文書に描かれてた大化猪よ!?」
「大化猪!?」
深里はあの猪が古文書に記された怪物であることを示唆する
「聞いたことがあります。確か大昔前にご先祖様が決死の覚悟で山の中に封印したと」
「そんな怪物がなんで今目の前にいるんだよ!?」
「この状況を察するになんらかの理由で封印が解かれたとしか」
突然の事態に皆が困惑してしまっていた
【「グォオオオオオオオ!!」】
その直後、猪の化け物は咆哮を挙げると共に地鳴りの如き足音を立てて里に向かってきていた
「見て、あいつ里に向かってる!?」
「まずいぞ!?このままじゃ里が!?」
猪の化け物が迫りくれば里は大打撃を受けることになるのは誰の目からも明らかだった
「みんな、あいつを止めよう!」
「「「「――っ!」」」」コクン
里を守るべく猪の化け物を止めることを決める
「ユウくんはここにいて、私たちは里をそして君を守るから!」
「あっ!?」
「「「「――っ!!」」」」
「ねぇねたち!?」
ユウの静止も聞かず、里を守るべく夕焼たちは猪の化け物に向かって行くのだった