ではどうぞ
ある日のこと、佐介と飛鳥は2人で山々に囲まれた場所を訪れていた
「佐介くん。まだ目的地にはいつ着きそう?」
「う〜ん。地図の通りだともう少しかな?」
「はぁ〜、結構歩いたのにまだ先は遠い…か〜」
「あはは…でも結構なところまでは来ただろうし、あと少しだろうから頑張ろう。ねっ?」
歩き始めて早、1時間、一向に先の見えない山道を歩き続けた飛鳥は少しへとへとな様子だった
「早くお使いを済ませないと、半蔵さまが今か今かと待ってるだろうしね」
「うん。そうだよね。頼まれたからにはしっかりとやり遂げないとだよね」
「その粋だよ飛鳥ちゃん…、じゃあ先を急ごうか」
「うん」
2人が山を上っているのには理由があった
それは数時間前のことだった。佐介と飛鳥は突然、半蔵に呼び出しを受けたのである。た 2人がそれについて尋ねると半蔵は理由を伝えた
内容はお使いである。というのも先ほど丸薬や兵糧丸に使う調合素材が底をつき、新たに作ることができなくなってしまったからである
しかもそれらはなかなかに希少なものでなかなか入手が難しい代物である
だが、入手困難なそれらの素材を入手する宛に心当たりがあった
それは山深くにある里であり、外界との接触はあまりせず、独自の文化で生活している忍達の村である
山奥に住んでるだけあり、今回のお目当ての薬草やその他の希少な素材も数多くあるという
幸い、半蔵はその里のものとパイプラインで繋がっており、場所を知っていた
「でもこんな山奥で生活してるなんてすごいよね佐介くん」
「うん。隠れ里らしいから半蔵さまがくださったこの地図が無ければ到底来られなかっただろうしね」
「本来ならじっちゃんが行けば簡単なんだけどね」
「仕方ないよ。半蔵さまは今ごろ、善忍のお偉方に会う予定になってて手が回らなかったようだし」
だからこそ2人にお使いを頼んだのである
「……うん。もうすぐ目的地みたいだよ、飛鳥ちゃん」
「本当?よかった~」
目的地にもうすぐ到着と聞いて飛鳥もようやくかというかのように安堵の表情を浮かべていた
ドガァァァァァン!
「「っ!?」」
だが、そんなのどかな雰囲気は何かの爆発の音で一気に消し飛んだ
「佐介くん、今のって?」
「どうやら近くで争いが起こっているみたいだね?」
聴きとった音から推察し、近くで戦闘が起こっているであろうと結論づける
「どうするの佐介くん?」
「行ってみよう。なにが起こっているのか確かめなきゃ!」
「うん!」
佐介と飛鳥は急ぎ、現場に向かった
◆
しばらくして2人は現場に到着した
「このあたりだよね?」
「……あっ、飛鳥ちゃん。あれを見て!」
「っ!?」
物陰に隠れながら佐介たちは様子を伺う
向こうの林は今まさに激しい戦場と化していた
「「「「「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」」」」」
そこには傷つき、ボロボロになった5人の少女たちがいた
さらにその周りには奇っ怪な面を被り、まるで意思のない人形のような忍たちが取り囲んでおり、もはや彼女たちに逃げ場はなかった
「うぅっ、ど、どうしよう。もう逃げ場がないよ?」
牛柄の装束を身にまとう少女、牛丸は逃げ場を失われ不安に苛まれながら言葉を漏らす
「くそっ、テメェら!!」
怒りを顕にする九尾の如き9本の尾を生やし、その尾に武器を携える少女九魅は忍達に癌を飛ばす
「み、みんな。慌てちゃダメよ!ともかく那智さんを守るわよ!那智さんが奪われたらその時点で私たちの敗北は決定版なものになってしまうんだから」グヌヌ
葉扇子を手にした少々深里はこの状況を前に歯がゆい思いを感じていた
「このまま大人しく仲間を渡すことなんかできるか!必ず那智を守るぞ!」
「「「おー!」」」
「み、みなさん…」
彼女達のリーダーである夕焼も深里と同意見であり、みんなで那智を守る、その想いで彼女達はひとつになる
そんな彼女達はを見て那智は嬉し涙を流す
「無駄な騰きはよせ、那智」
「っ!」
すると忍達の中を潜り、リーダー格らしき男とその隣に佇む男が現れた
夕焼たちは那智を必死に庇おうとする
「もう鬼ごっこは終わりにしよう」
男たちは顔を隠していた布を取り、素顔を晒す
「へっ、平太夫おじ様!?それに田吾作さん!?」
「「「「っ!?」」」」
信じられないものを目の前にしたかのように那智が現れた人物の名を叫ぶ
「久しぶりだな。大きくなったな」
「どうして、どうしてですか平太夫おじ様と田吾作さんが!?どうしてこんなことを!?わたくしには信じられない、平太夫おじ様が里を襲った一味の黒幕なんて!」
那智は余りにも信じがたい現実を目の当たりにし、気持ちが絡まっていた
「…決まっている。里の未来の為だ」
「「「「「っ!?」」」」」
平太夫の言ったその言葉に夕焼達はひどく驚いた様子だった
「さ、里の未来の為?」
「そうだ。我々には力がある!外の者共を屈服させ、従わせられる程の力が!今こそ私が頭首となり、皆を導き、我々こそが頂点に君臨するのだ!…さぁ、那智よ。私とともに来い。そして里長の座を譲るのだ。そうすればこれまでの全て不問にする。お前の仲間たちも助けようではないか?」
そういうと平太夫は手を差し延べる
「…わ、わたくしは」
那智はどうすべきか考えていた。しかし、幼馴染の深里や九魅、夕焼や牛丸のことを考えれば自ずと答えは決まった
「っ…」
意を決して平太夫ものとに行こうとする那智
「聞くな那智!」
「ゆ、夕焼さん?」
だが、そんな彼女を夕焼が止めた
「そうよ那智さん、行ってはダメよ!」
「お前が行っちまったら里はアタシたちが知る里じゃなくなっちまうんだぜ!?」
「嫌だよそんなの!…私、今のままの里のほうが好き!」
「で、ですが…」
夕焼に続いて自分を止めようとする深里達の想いが那智の胸を打つ
「ええい!せっかくの慈悲を無下にするとは愚かな奴らよ!…田吾作っ!」
「はっ!兵士ども!!」
痺れを切らした平太夫が田吾作に指示を出す
田吾作が合図を送り、部下達が一斉に仕掛ける
シュンシュンシュンシュン!
夕焼達に向かって忍達が攻撃を仕掛けてきた
多数の手裏剣や苦無が彼女達に襲いかかる
「そんなもの!」
迫り来る苦無や手裏剣に真っ向から向かっていく
駆け出す最中、夕焼は手にしている2つの刀を構える
「……っ!!」
シュン!ザシュン!!ボトボト…
「これ以上、やらせはしねぇぞ!」
目にも止まらぬ速さで飛んで来た苦無や手裏剣を粉々にした夕焼は飢えた獣のような鋭い眼光を向けていた
それが口火となり、夕焼達と平太夫達の那智争奪戦が繰り広げられる
なんとか五分五分の戦いを繰り広げる夕焼達だったが、やはり数の勝る平太夫達に徐々に追い込まれていく
「ぐっ!ちぃっ!」
カサカサ!シュパッ!!
「しまっ!?」
フォン!ザシュ!
「がはっ!」ドサッ!
「み、深里さん!?」
深里が隠れていた伏兵の手によって倒れてしまった
「深里!」
「っ!」
慌てて彼女のもとに駆九魅がけつけ、夕焼も後を追うも間に忍が割って入り、それは阻止されてしまった
その間にも九魅は忍達の間を掻い潜り、深里のもとにたどり着いた
「おい、しっかりしろよアホ深里!」
「ちょ、ちょっとドジッたみたい…わ、わたしのことはいいから早く那智さんをつれて…」
「何馬鹿なこと言ってんだアホ深里!こんなとこで終わるなんて許さねぇぞ!絶対に死なせたりなんかしないからな!」
傷ついた深里を守るように九魅は忍達に向かっていった
シュン!ザシュン!
「ぬあっ!……はぁ…はぁ…はぁ…」
「があぁぁっ!……ぐっ、クソったれ~!」
「うっ、もう、ダメ…」
「み、みなさん」
だが、疲労とダメージの筑瀬により、とうとう那智以外、全員がやられてしまった
「大人しく従っていればよいものを……さぁ那智、これで邪魔をする者はいなくなった。さぁ、私に里長の座を渡すのだ」
平太夫がゆっくりと那智に向かっていく
「な、那智!?」
「や、ヤベェ…」
「このままじゃ」
「もう、ダメなの?」
最悪のシナリオが頭をよぎり、もうダメだと思った時だった
ヒュン!
「「「「「っ?」」」」」
突然どこからか玉が転がってきた
そして次の瞬間
ポン!ピカァァァァン!
「っ?な、なんだ!?」
「「「「「っ!?」」」」」
玉が爆発したと同時に強烈な光が発生し、その場にいた全員が視界を奪われた
「な、なんなのこれ「ちょっと失礼しますね!」えっ?きゃあっ!?」
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
「うにゅ!?」
夕焼たちは突然の声と同時に自分たちが抱えられた感覚に襲われたことに驚くのだった
「ぐぅっ!……ぐうぅぅぅ~~!?」
奪われた視界が徐々に開け、平太夫が目を見開くと
「っ!?那智!那智はどこに消えた!?」
先ほどまで目の前にいたはずの那智の姿はどこにもなかった
「平太夫さま」
「おのれ~!伏兵を忍ばせていたとは一杯食わされたわ!…そう遠くには行ってないはずだ。探せ!必ず見つけ出せ!」
「はっ、直ちに…者ども!山を隈なく探せ!那智さまを見つけ出すのだ!」
田吾作の命を受け、忍たちが一斉に捜索に向かった
「必ずや発見してみせます」
「うむ……どこへ行こうと絶対に見つけ出す。待っていろ那智!」
そうつぶやくと平太夫たちはその場を去ったのだった