夜の月灯の下、平太夫と田吾作によって占拠されてしまった里を取り戻すべく佐介と飛鳥そして里の住人である夕焼たちが里を取り戻すための戦いが始まった
囚われていた里の民たちも解放され、反撃の狼煙とともに里は大乱戦
そして偽りの衣を脱ぎ捨て、平太夫達の前に佐介と飛鳥が立ち向かうのだった
「この里をあなたたちの思い通りにはさせません、あなたたちの野望はここで潰えさせてもらいます」
民達の怒号が飛び交う中、佐介は目の前にいる平太夫達に宣言する
「貴様らこの里のものではないな!?」
「えぇ、僕たちは半蔵学院のものです」
「な、なぜそんな奴らがこの里にいるんだ!?」
「う~んと、なんていうか…お使いに」
佐介と飛鳥にとっては本来の目的ではあるものの見ず知らずの平太夫達にはぽか~んとなるかのような理由だった
「ぬぇ~い!外の奴が紛れ込んでいるとは…なんとも不愉快な!」
呆気に取られていた平太夫だったがすぐに我に帰るとともに里の外からやってきた佐介達に怒りを露にする
「外の奴らが俺の里を汚すなど許されぬ!」
「ここはあなたのものではない!」
「そうだよ!ここは夕焼ちゃんや那智ちゃんたちが平和に暮らしてただけなのにその平和を壊したあなたこそ里を一番汚してるよ!」
「黙れ!貴様らとの話し合いなど無意味なこと、今ここでねじ伏せてくれる!見るがいい!俺の手にした力を!!」ギュオォォォ!
平太夫が高らかに叫ぶと目に差し込まれた石が光を放ち、それと同時に光と同じ色のオーラが平太夫の全身から湧き出る
「さぁ、貴様らを我が刀の錆にしてくれるわ!」
そして平太夫は腰にさしている刀を手に取り、鞘からその刀身を露にさせた
「飛鳥ちゃん、この人は僕が相手をするよ」
「うん、じゃあ私はこっちだね!」
平太夫の相手は佐介に任せ、飛鳥は田吾作と正面を切る
「小娘がいきがりおって、この平太夫さまの懐刀である田吾作を舐めるでない!こうなれば私も奥の手を使わせてもらう!我がもとに集え兵士たちよ!」
すると田吾作のもとに戦闘に参加してない兵士達数体が集まった
「数としては少し役不足だが、まぁそれでもお前如きこれで十分よ…我が忠実なる仮面の兵士どもよ!今ここに集い、渦巻く闇に溶け込み、我が新たなる力と生まれ変われ!忍法・統合合体!」
田吾作が術を発動させ自分と兵士達を一つに束ねた
そして渦の中から現れたのは束ねた兵士達を自らの鎧と化し纏った田吾作の姿だった
「が、合体した!?」
「ぬはははは、これでお前は終わりだ!さぁ覚悟せよ小娘、叩きのめしてくれるわ!」
田吾作が強気な発言で飛鳥と対峙する
「負けられない!やあぁぁぁ!!」
カキィィィン!
「なっ!?」
「効かぬわ!」
ブゥゥン!
「きゃあっ!?」
兵士達を纏った田吾作の力は今までの兵士とは比べ物にならない程だった
「ふははははは!どうだ?手も足もでんだろう?」
「くっそ~」
「これで止めを刺してくれるわ!」
勝ち誇るかのように田吾作が飛鳥に止めをささんと刀を振り上げる
飛鳥が殺られる自分を想像し思わず目を瞑った
「ふん!!」
田吾作が勢いよく刀を振り下ろす
カキィィィン!!
すると突然、金属と金属とがぶつかり合う音が鳴り一向に痛みが来ないことにおかしさを感じた飛鳥が恐る恐る目を開けると
「ぬぅぅぅぅ!!」
「き、貴様!?」
そこには田吾作から飛鳥を守るように立ちはだかる夕焼の姿があった
「ゆ、夕焼ちゃん!?」
「へっ、雑魚相手ばっかで物足りないと思ってたら随分と歯ごたえのありそうな奴がいたじゃねぇか?体中が疼いて仕方ねぇ!」
パキィィン!
「くそっ!?」
夕焼とのつばぜり合いに押し負けた田吾作が一度距離を取る
「飛鳥、コイツの相手はオレに譲ってお前はそこで休んでな!」
「う、ううん!そんなわけにいかないよ!私だってまだやれるんだから!」
飛鳥は負けてられないという思いからすぐに立ち上がるとともに夕焼の隣に並び立つ
「へっ、そうかよ?…だったらよう、どっちがこいつを倒すか勝負しようじゃねぇか!」
「望むとこだよ!」
「貴様ら…わしをさんざんコケにしよって、もう許さんぞ!」
怒りを露にする田吾作を前に2人は互いに愛刀である二刀を構えるのだった
一方、平太夫と向かい合う佐介はゆっくりと構えをとった
「ふん、そんな構えをとったからと言って俺に勝てるとでも思っているのか?」
「勝てるかどうかはやってみなければわからないことです」
「ならば教えてやる、貴様ではどう足掻こうと俺には勝てないということを!てやあぁぁぁ!!」
平太夫は高らかな声を上げ、佐介に向かって剣を振り下ろす
「ふん!」
「はあっ!!」
カキィィィン!
佐介は剣が迫り来る直前、両腕の篭手を盾にしてそれを防ぐ
受け止めた佐介だが、平太夫の持つ魔眼の力が彼の力を高まらせているのか徐々に押されていく
「ぐっ…っ!?」
「ふふふふ、どうだ?俺にはこの魔眼がある。この力の前ではお前程度の忍など雑魚同然なのだ!」
「がはっ!?」
腹部に蹴りを入れられ地面を抉りながら後方へと下がらされる
「これで終わりにしてやる喰らえ!刀力斬!!」
この戦いを終わらせるべく平太夫は自身の大技である地を走る巨大な斬撃波を放った
「っ!?うわぁぁぁぁぁ!!!!」
その斬撃をモロに受けてしまった佐介は悲鳴とともに地面に叩きつけられた
「ふん、所詮外の奴らなど力を手にした俺の敵ではないのだよ。この力さえあれば今まで俺を認めようとしなかった奴らを見返せる。俺を馬鹿にしてきた外の奴ら、平和ボケした里の奴ら…そしてそんな甘っちょろな考えを里に広めた兄者に俺の正しさを証明できるのだ!ふはははははは!ふははは!」
「…間違ってる。あなたは間違ってる!」
「っ?」
勝ち誇るかのように高らかな笑いをあげる平太夫だったが、それと同時に倒れていた佐介が立ち上がる
「間違ってるだと?笑わせるな!この世は力こそが全てなのだ!力さえあればなんだって手に入る。地位も明誠も、逆らう者は屈服させる。それこそ力を手にしたものの特権なのだ。所詮この世は弱肉強食、弱き者は強者に支配されてればいい、そう俺という強者の前にひれ伏すことこそ弱者に相応しいことなのだ!」
「…そんなんだから里の人たちはあなたを否定したんだ」
「何?」
「夕焼さんや那智さん達、そしてこの場に駆けつけてきた里の人たちは皆、1人1人がみんなのために結束し力を合わせ戦っている。それはみなさんがそれだけ硬い絆で結ばれているから…でもあなたは里のためと言いながら本当は自分の強さを知らしめることしか頭にない、自分の力を見せつけたいという独りよがりの考えしか持ってない、それを知ってるからこそ里の人々はあなたを認めなかったんだ」
「だ、黙れ!里の者でもない貴様が偉そうなことをほざくな!結束?力を合わせる?そんなものは弱い者ののすることだ!本当に強くなるのであれば絶対なる力を持つものの指示のもとそれを忠実に行えばいい、そんなちゃちなものは必要ないのだ!」
あくまでも自分の信じるものしか頭に無いようだった
「なら見せてあげます。貴方の言うちゃちな力が何れ程のものなのか」
「何だと?」
「忍、超・
佐介が唱えると炎が佐介を覆い、そこから現れたのは
「な、何だその姿は!?」
「これは僕が飛鳥ちゃんや多くの仲間たちの支えによって生み出した力。
「馬鹿な!?此れ程までの力を秘めていたとは…ぬう!だが負けぬ!刀力斬!!!」
負けじと技を放つ平太夫だったが
「ふん!」
ポシュン!
「な、なに!?」
「こ、こんなことが…」
「独りよがりの力なんて所詮はこの程度、誰かのことを思わない、守ろうとしない、そんな力なんかに負けたりなんてしません、僕があなたに真の力を見せてあげます。はぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
佐介は気を高める
「はっ!てやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ぶほっ!?ぐぉっ!?ぐぉおおぉぉぉぉぉ!!??」
先ほどとは打って変わり平太夫は佐介の攻撃に為すすべもなかった
「お、親方さま!いかん!親方さまを救わなければ!」
平太夫の危機を察知した田吾作が向かおうとする
「おっと、何処へ行く気だ?」
「私たちはまだピンピンしてるわよ?」
「えぇい!どこまでも邪魔する小娘どもが!そこをどけぇぇ!!」
行く手を阻まれたことに苛立つ田吾作は飛鳥達に攻撃を仕掛ける
「へっ!怒りに我を忘れすぎだ。動きが見え見えだぜ!!」
「なにっ!?」
「うらあぁぁぁぁ!!」
ザシュザシュン!
「ぎゃああぁぁぁ!?」
しかし冷静さを欠いてしまっている田吾作の攻撃は通じず逆に間合いに入られ、夕焼の大太刀の斬撃をまともに受けてしまった
「飛鳥!」
「うん!行くよ!二刀繚斬!!」
シュン!ザシュン!!
「がはあぁぁぁぁ!…お、親方さま…がふっ」
二人の連続攻撃を受けた田吾作はその場に崩れ落ちた
さらにそれにより周囲に変化が
「みなさん、まだまだ頑張って行きましょう…ってあら?」
【【【】】】シュ~~
「な、なんだなんだ?」
「兵士たちが?」
術者である田吾作が倒れたことにより彼によって生み出されていた兵士たちが次々と消滅していった
これを見た里の人たちは歓喜した。そして残るは…
「な、なんだと!?まさか田吾作のやつやられたのか!?」
「みたいですね。これで残るはあなた一人です。もう貴方の野望は潰えたんです」
佐介の言うとおりこの状況は明らかに平太夫の敗北へと傾いていた
「……ふふふ、あははははははははは!!」
「っ?」
「俺が……俺が諦めない限りまだなにも終わってはおらん!貴様が絆や信頼などで強くなるというのならそれすら凌駕する力でねじ伏せてくれるまでよ!!うおぉぉぉぉぉ!!!」
平太夫がそう言うと魔眼に再び力が
「いくぞ小僧!!」
「っ!」
「ふん!!」
「ぐっ!?」
先ほどよりもパワーがアップしていることを佐介は感じた
「まだだ!」
「くぅっ!?」
さらに魔眼で力を高める平太夫
「まだまだぁぁぁ!!」
「うわっ!?」
ついにその力で
「これが最後だ!!!」
平太夫はそこからさらに力を底上げしていく
「喰らえ!刀力斬!!!!」
ザシュゥゥゥゥゥン!!
「ぐっ!ぐぅぅぅぅぅぅぅ!!!」ザザァァァァァ!
限界まで底上げした平太夫の放った刀力斬は佐介を吹き飛ばすほどのエネルギーだった
佐介もなんとか踏みとどまろうとする
「ぐっ、うわぁぁぁぁぁ!!??」
「佐介くん!?」
だが、とうとうその力に押し負けた佐介は吹き飛ばされてしまった
「はぁ…はぁ……ふ、ふふふふふふふ、ど、どうだ?これが俺の真なる力よ!」
激しい披露によって顔中に汗をかきながら平太夫は告げる
「大丈夫佐介くん!?」
「う、うん。なんとか」
慌てて駆け寄る飛鳥に佐介は弱々しい声で答えた
「…さぁ、止めをさしてや、っ!?」ドックン
「「っ?」」
「グッ…ガアァァァァ!?」
「おや、かたさま?」
止めを刺そうと一歩踏み出した瞬間、平太夫は突然断末魔を上げた
苦しそうな声が周囲に響き渡る
「あが!?…ぎゃああぁぁぁ!!??」
「おじ様?…おじ様!?」
悶え苦しむ平太夫を見た那智が慌てて駆けつける
「おじ様!しっかりしてください!?」
倒れ込もうとした平太夫を支える那智は必死に呼びかける
「な、なち…お、おれ…は」
「っ!?」
すると徐々に平太夫に異変が起こり、少しずつ平太夫の体が老化し始め、髪も白髪に染まり、よぼよぼの老人と化した
「お、おじ様?」
「こ、これは…いった、い?」
自らの身に起こったことが理解できず平太夫は困惑する
「…なるほど、そう言うことでしたか、なんと恐ろしい」
「佐介くん、なにかわかったの?」
「きっとあの魔眼は使用者に力を与える代わりにそれに合う対価を要求するものなんだよ。…そしてその対価とは自身の生命力、もしくは寿命」
「な、…なん、だと…」
ドーピングによって上げられた力の反動、魔眼の力のデメリットも知らずそれを使い続けた結果、平太夫はそれらを魔眼に吸われ肉体は激しく衰弱し、もはやまともに立てる体ではなかった
「い、いやだ……おれはまだ、しにたくない……たすけ、て」
「おじ様」
「く、ぐるじい……だず、げ……」シュゥゥゥ~~
「っ!?おじ様?おじ様ぁぁぁ!?」
その刹那、最後の言葉も告げられず平太夫は力の代償として生命力を全て吸われ灰化消滅した
残ったのは平太夫の命を奪った魔眼だった
「へ、平太夫さま…うっ、うぅぅぅ」
「……」
悲しむ田吾作に憐れみの視線を向けた後、佐介は那智の元に来ると魔眼を手にした
「……こんなもの!」パキィィン!
佐介は平太夫にあのような死を与えた魔眼に憎しみの目を向け、その手で握りつぶしたのだった
予想もしない結果で事件が幕を閉じた
あのあと慕っていた平太夫を失なった田吾作は那智の配慮もあって投獄を免れ、彼女から永久追放を言い渡されそれを飲み里から去っていった
その後ろ姿は余りにも哀れだった
それからしばらくして里に平和が戻り、里を救ってくれた2人をもてなすべく壮大な宴が行われた
みな飲めや歌えやの大さわぎだった
「佐介さん、飛鳥さん、本当にありがとうございました。お二人のおかげで里の危機はさりました」
「ううん、でも那智さんのおじさんが…」
「えぇ、残念です。おじ様ともっと早くわかり合えていたら…」
そうすれば結末は違ったものになっていたかもしれなかったと思わずにはいられなかった
「くよくよしてても仕方ありません、今はお二人に感謝です。今日は盛大に楽しんでってください」
「うん、ありがとうそうさせてもらうよ。ねっ、佐介くん」
「うまうまうま~♪このお肉最高でしゅ~♪これも美味しい!あっ、これも♪」パクパク
「さ、佐介くん」アハハ
デカイ骨付き肉を一瞬で平らげ、あまつさえ他の料理も豪快に食べる佐介に飛鳥は苦笑いしていた
「うふふ、見事な食べっぷりですね…ところで飛鳥さん、ものは相談なんですけど~」
「なに?」
「佐介くんをお譲りして頂けませんか?」
「……はぁっ!?」
那智からの突然の提案に飛鳥は驚く
「い、いきなり何を言うの那智ちゃん!?」
「うふふ、佐介さんの凛々しいお姿を見ていて私、どうにも彼を欲する気持ちが抑えられないのです。いかがでしょうか?もちろんお礼はいくらでもお出ししますよ♪」
「だ、ダメダメ!佐介くんはものじゃないんだから!そんなのダメに決まってるよ…ねっ、佐介くん!」
飛鳥が佐介に同意を求めようと向いてみると
「佐介さん、とってもお強いんですね」キラキラ
「ほんとスゲェよな。得にあの
「どうすればあれ程まで強くなれるの?」
「いえ、僕はただ強くなろうと必死に修行をしていただけでして」
いつの間にか夕焼たちから質問攻めを食らっていた
「私も佐介さんみたいな頼れるリーダーになりたいんですよければ秘決を教えてください」
「ひ、秘決って…こ、困りましたね~」
期待に胸膨らませたような目で自分を見つめる夕焼に困惑していると、不意に横から袖を引く感触が、見てみるとそこには牛丸がいた
「えっと、どうしました?」
「はい、これ牛丸の牧場で作ったミルク、飲んで」
「あっ、はい。ありがとうございます」
佐介はお礼を述べながら牛丸のくれたミルクを飲んだ
「…美味しいですねこれ」
「…うん♪」
その言葉を聞いた瞬間、牛丸はぱぁっと笑みをこぼす
すると直後佐介の腕に擦り寄る
「う、牛丸さん!?」
「「「「「っ!?」」」」」
「牛丸ね。お兄さんのこと気に入っちゃった。お兄さん、ここに残ってほしいの…そうしてくれたら牛丸、なんでもしてあげるよ?」
牛丸が上目使いで佐介に言い寄る
「お、お気持ちは嬉しいですが僕は「ずるいようーちゃん!」」
「そうだぜ独り占めはよくないぜ!」
「勝手は許さないわよ!」
「あらあら、うふふ…佐介さん、みなさんもこういってらっしゃいますし改めてお願いしますが、ここに残ってはいただけませんか?…もちろん相応のお礼はしますよ?」
気が付くと佐介は夕焼たちに詰め寄られてしまっていた
「あ、あの…み、みなさん少し近いです///」
いつの間にか夕焼達に囲まれていた
「……もう!佐介くんのおバカあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
飛鳥の嫉妬の混じった怒鳴り声が里中に響き渡った
その後、無事薬品を受け取り半蔵の下へと戻る佐介達だったが、それからしばらく佐介は機嫌が直るまで飛鳥に口を聞いてもらえなかったという…