遠野の里から都会にやってきた夕焼たち遠野天狗ノ忍衆
しかしながら幾度か里から都会に来たことのある九魅、里の収入源確保のために行き来してる牛丸や那智はいいが
今回が都会最初の訪れになる夕焼と深里は見慣れないものばかりのことばかりでついていくのがやっとの様子だった
そのことで九魅と深里が言い争いを始めようとしたり、それを止めようと都会にも拘わらず刀を手にしようとする夕焼を止めようとしたりとごたごたが発生してしまったりしていた
なんとかこの場を収め、事なきを得たが、まだ深里は都会を回ることに不安を抱いている様子だった
だがここでそれを予知していた那智が皆に案内役を頼んでいることを説明する
案内役の存在を知らない夕焼たちがキョトンとする中で彼女たちの前に現れたのはなんと佐介だったのである
「しっかし驚いたぜ。那智がいきなり案内役を頼んであるって言った時はどういうことだって思ってたけどまさかお前が来てくれるなんてな?」
「えぇ、僕も驚きましたよ。今朝がたに那智さんから連絡をもらって何かなと思っていたら、皆さんが街に来てるって聞いて、それで街の案内役を引き受けてくれないかって言ってくるんですもの」
「えっ?ということは…那智さん、最初から?」
「うふふ。えぇ、ちょっとしたサプライズといったところかしらね♪」
今日の日に佐介を呼ぶことは既に彼女の計画の内だったことを明かされる
「でも嬉しいです。私たちと里を救ってくれたあの時からもう二ヶ月たったわけだけど、こんなにも早くまた会えるだなんて思ってもみなかったわ!」
「そうですか?僕も皆さんにまたこうしてお会いできて嬉しいです」
「私も嬉しいですよ~」
「わっ!?う、牛丸さん!?」
佐介が来たことで皆気分が向上していた
牛丸に至っては佐介を見るなり抱きついてきた
「う、ううう、牛丸さん、ちょ、ちょっと!?」
「すんすん…いい香り♪」
「あ、ああああ、あにょ、は、はははははにゃれてくだしゃい!?」
「お顔が真っ赤、トマトみたいです~」
抱きつかれたことであたふたする佐介を他所に彼の顔をトマトみたいだと称して話しを聞いてくれてない様子だった
「ちょ、ちょっと、ダメだようーちゃん!佐介さんが困ってるから!?」
「ゆーちゃんも一緒にどう?佐介さん、とってもいい匂いがするんだよ~」
「えっ?えぇっ!?」
止めに入ろうとする夕焼だったが牛丸からの提案を聞くなり顔を赤らめた
「そ、そそそ、そんな、そんなこと…」もじもじ
「も~、ゆーちゃんったら…ほらほら♪」
「わっ、うーちゃん!?」
右往左往する夕焼を見てしびれを切らした牛丸が半ば強引に夕焼を引き寄せる
牛丸から引き寄せられた勢いで夕焼は牛丸の隣、佐介の空いているもう片方のほうにダイブする
「っ…?」
胸に飛び込んだ夕焼はその際、耳に音が聞こえる
ドクンドクンという鼓動音を
「(これ、佐介さんの…心臓の鼓動?)」
耳元で響いてくる佐介の心臓の音がリズムを刻むように聞こえる
「(…なんだろう?なんだかこうして音を聞くだけで妙に落ち着く…)」
鼓動の音が妙に心地よく、そして何よりどこか安心感を抱かせるような感じがする気がしてならず
この音を聞くという愉悦にしばし浸りたいとすら思っていた
「…き、さん…ゆうやきさん!」
「っ!」
しかし、突如として発せられた声に夕焼はハッと我に返り、顔を見上げるとそこには顔を赤らめてとても恥ずかしそうにしている佐介の顔が見えた
「ゆ、ゆうやきさんまで、こ、困ります…」
「……〜〜〜ご、ごごごごごめんなさいっ!?」
佐介の羞恥心で困り果てた顔を数秒眺めているうちに自分の状況を思い出したと同時に顔を赤くしながらすぐに彼から離れた
「(はぅぅ〜!私のバカ!なにをやっているのよ!?)」
「ゆーちゃん?どうしたの?」
「も、もう、うーちゃんのせいだよ!」プンプン
「ふぇっ?」
不可抗力ではあったものの、佐介の心臓の音に心奪われ。夢心地を抱き、そのせいで佐介のことを困らせてしまったことを恥じ
なし崩し的にこのような状況を作った牛丸に夕焼が文句を言うのだった
ちょっとしたトラブルはあったものの、気を取り直して一行は佐介の案内の元、都会の様々なところに赴いた
洋服やジュエリーショップ、雑貨や家具などを回り、小腹を空かせた一行はその足で飲食店で食事に興じ
思う存分お腹を満たした
「はぁ~、美味しかった~」
「都会の料理、どれもこれも美味しかったね~♪」
「でも私からしたらどっちって言われたら里の料理のほうが好きだわ」
「うふふ、確かにそうとも言えるわね♪」
都会での初めての料理を満喫した夕焼たちは各々がそれぞれの意見を述べていた
初めて食べる都会の味を堪能したことを喜んだり、しかしながら故郷の味ほうがよかったりというように皆それぞれの感想を述べ合っていた
「…那智さん。すみませんね、僕もご馳走になってしまって」
「あら、そんなにお気になさらずに、元々都会を案内してもらう代わりにご飯をご馳走するという約束でしたから」
「えっ…えぇ、まぁそれはそうなんですけど〜」
那智が案内役として佐介にその役を引き受けて欲しいと提案した際にかなりの報酬金を弾むと言ったが
それは佐介が丁重に断ったこともあり、これに関して両者は少々揉めたが
最終的に佐介が折れる形となったがその代わりに現金ではなく街の料理屋でご飯を奢ると言う約束を交わしていたのである
「なに遠慮してます〜って顔してんだよw?」
「うわっ!?く、九魅さん?」
「1人であんだけ平らげておいてよく言うぜw」
「あ、あぅ〜」
九魅からのその指摘になにも言い返せず恥ずかしむ佐介に皆が微笑ましそうな笑みを浮かべる
「さぁ、気を取り直して見物の続きをいたしましょう、佐介さん案内お願いしますね」
「は、はい」
気分も上々に佐介たちは次なる場所に向かおうとする
「っ?」
「どうしました佐介さん?」
「急に立ち止まってどうしたんだよ?」
唐突に立ち止まった佐介を不思議に思った夕焼たち
何かと思いながらも佐介の向ける視線の方を向いてみる
「っ!?」
刹那、那智は酷く驚いた顔を浮かべる
佐介たちが向ける視線の先にはこちらに向かって歩み寄ってくる1人の女性がいた
「ようやく見つけたわよ」
「あ、あなたは」
「久しぶりね。元気だったかしら那智?」
那智の名を呼び、不敵な笑みを浮かべる女性の登場に一同に戦慄が走る