都会へと遊びにきた遠野天狗ノ忍衆の面々
那智からの頼みで佐介が案内役としてやってきたことに一同は驚きを隠せなかった
佐介の案内の元、夕焼たちは都会へと繰り出す
いろんな店を周り、そこで里ではあまり体験できないような楽しいひと時を満喫することができた
周り疲れて昼食を取り、一休みをしたところで一同は再び街を周りに行こうとした
だが、そんな一行の前に1人の女性が現れ、その姿を見た那智はもちろん、夕焼たちもまた驚いた様子を見せていた
遠野天狗ノ忍衆たちがこのような顔を浮かべる彼女は一体何者なのか
ただならぬ空気が周囲を包み込んでいくのだった
「「「「「っ…」」」」」
「ふふふっ♪」
「…っ?」
突然現れた彼女の登場によって場の空気は一気に張り詰めていた
事情を知らぬ佐介はこの状況を何事かと思いながらも交互にチラッと視線を向けたりしていた
「久しいな那智、本当に久しいぞ。こうして会うのは何年ぶりだろうか?」
「どうしてあなたがここにいるのですか?瑠璃奈義姉さま?」
「義姉さん?」
那智が恐る恐る自分たちの前に現れた女性、瑠璃奈に問うた
この時、佐介は那智が瑠璃奈のことを義姉さんと呼ぶことに驚きを見せていた
「まさかこんなところでてめぇと出くわすなんてな。せっかくの楽しい気分が台無しになったじゃねぇか!」
「相変わらずの物言いだな。体は成長しても頭のほうはあの頃のままか」
「なっ、てめぇにだけは言われたくねぇよ!」
瑠莉奈の馬鹿にする言い分にカチンときた九魅は反論する
「落ち着きなさいよ九魅、いくら図星を突かれたからって」
「なっ、おいこらアホ深里!お前どっちの味方だよ!」
「仕方ないじゃん事実だし」
フォローを入れるどころかおちょくるようなことを言う深里に九魅はムムッとなる
「お前も大概だぞ深里よ」
「えっ?」
「昔から自称天才軍師だとか歌っているが、正直お前ごときの知恵で天才軍師だなど腹を抱えて笑ってしまうほどのレベルだぞ」
「んんっ!?」
しかし瑠璃奈が深里にも物申しだし、天才軍師を自称するだけで自らはそれほどすごくはないと言われて顔を真っ赤にする
「たっはっはっは〜!確かにな!やーい、お前も人のこと笑えねぇなアホ深里〜?」
「うっさいわよバカ九魅!」
「九魅さん深里さん、落ち着いてください」
結局は双方ともバカにされてしまっていたことを知ってまんまと瑠璃奈の話術に乗せられてしまう有様で、佐介が2人に歯止めを効かせるのだった
ひとまず2人を落ち着かせ、状況を再度確認する
瑠璃奈が現れてから皆の顔を見てみても絶対に歓迎してる様子はないのは丸分かりだ
「夕焼さん、あの人はどなたなんですか?皆さんあの人を知っている様子のようですが?」
「はい、あの人は瑠璃奈さんと言って那智さんとは従兄弟の関係で立場としては義理の姉になるんです」
彼女のことが気になった佐介が夕焼に尋ねる
それに夕焼は彼女が那智にとって従兄弟で義姉であることを教えてくれた
「あの方が那智さんのお義姉さん?」
夕焼からの説明を聞いた佐介はもう一度瑠璃奈に視線を向ける
おっとり、ゆったりしている那智とは対照的で、義理とはいえ姉である彼女はいかにもかちきな性格であるように伺え、こうも違うものなのかと感じていた
「おい。そこの男」
「っ?」
「見知らぬ顔だな?里の者にお前のようなものはいなかったはず…何者だ?」
佐介の存在に気が付いた瑠璃奈が問うた
「僕は佐介、夕焼さんや那智さんたちの友人です」
「ん?佐介…佐介、どこかで聞いた名だな?ん~?何だったかな?」
何やら瑠璃奈は佐介の名を聞いた瞬間どこかで聞いたようだと記憶を思い返しているようなそぶりを見せる
「瑠璃奈義姉さん。そろそろ教えてください、いったい何のようなのですか?」
「あぁ、そうだったな。では単刀直入に言わせてもらう。私の目的は…お前だ夕焼!」
「えっ?」
「「「「「っ!?」」」」」
瑠璃奈が自身の目的は夕焼であると告げられたことに一同は驚きの顔を浮かべる
「わ、私を?」
「どうして夕焼さんを?」
夕焼を瑠璃奈が狙っていると聞いて佐介は疑問を抱く
「…正確に言うとわらわの目的は夕焼自体ではなく夕焼の内に秘められしものをだ」
「っ、瑠璃奈義姉さん!まさか!?」
「あぁ、そのまさかだ。わらわは今ここで夕焼、お前の中に封じられし妖魔の力をもらい受ける」
「妖魔!?」
佐介は瑠莉奈の口から妖魔という言葉が出たこと、さらには妖魔が夕焼の中にいることを知らされる
「夕焼さんの中に妖魔が?」
「どういうことだよそれ?」
那智と夕焼以外のメンバーたちもその話しを聞いて驚いた様子だった
「知らぬのも無理はあるまい。本来これは里の者の中でも長の地位を持つものとその側近であった一部の者たちしか知らぬことだからな、なぁ那智?」
「っ…」
思わせぶりな言葉を告げながら瑠璃奈が那智に問うと那智は苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべる
「…先々代のころより夕焼の一族は我々の一族に使えていた。そうしてある時里を襲った未曾有の危機に直面した際に夕焼の一族は重大な役目を担うこととなった」
「重大な役目?」
「それはな。自らの体に妖魔を封じることだったのだ。そうして今、その役目を担っているのが…お前というわけだ夕焼」
「「「「っ!?」」」」
かつて夕焼の先祖が里を危機から救うために自らの体に封じ込めた。
そうして時代を重ねて今、子孫である夕焼がその身に妖魔を封じ込められているのだ
「…私の、中に?」
「じゃあもしかして刀を手にした時の夕焼さんの様子がおかしくなるのって?」
「その妖魔が関係しているってことか?」
自身の体に妖魔を宿していることを知らずにいた夕焼は驚き
他の者たちはここで夕焼が豹変する理由が妖魔にあることだと知った
「(そうか、あの時…夕焼さんから抱いた違和感の正体はそれだったのか?)」
さらに佐介もまたこれまでの話しを聞いて夕焼と初めて出会った里での出来事を思い出す
普段の夕焼からは特に何も感じはしなかった
しかし刀を抜いた時に性格が豹変している彼女からは微かながら妖魔の気配を感じていた気がしたことがあった
「(夕焼さんの体に妖魔が…)」
戸惑いを見せている夕焼を佐介は見つめる
「さて、話しが少々脱線してしまったな、ともかくそういうことだ。さぁ、無駄な抵抗はせず大人しく夕焼をわらわに差し渡すがいい」
「「「「「「っ!」」」」」」
夕焼の身柄を引き渡すように言ってきた瑠璃奈と佐介を含めた遠野天狗ノ忍衆のいがみ合いは続く…