半蔵学院に皆が集結し、それに伴い彼らが連れてきた梨璃、夢結、楓の3人と無事にアムは再会を果たすことができた
その後、話し合いの場が設けられ、佐介たちはアムたちから詳しい情報を聞いた
自分たちが直前まで覚えていたこと、自分たちが元の世界ではどういう人物だったのか、自分たちがどのような立場に置かれた人間なのか、自分たちが何をするために戦っているのかなど
答えられることをあらかた説明し、一応の信頼を勝ち取ることができたのだった
話し合いが終わりしばしの時間が流れた
「ねぇねぇ、梨璃ちゃんは何か好きなこととかある?」
「好きな食べ物は?」
「何か趣味とかあるの?」
「えっ、えっとみなさん少し落ち着いてくださいよ順番、順番に応えますから」アセアセ
梨璃は飛鳥たちと身の上話しに花を咲かせる
「でもすごいよね。莉理ちゃんたちって魔法が使えるなんて、まるでおとぎ話しみたい」
「それを言ったら飛鳥さんたちだってそうですよ。私、皆さんが忍だって聞いてとても驚きましたし」
「確かにね。でもさ、あたしたちより年下なのに戦ってるんでしょ?莉理ちんたちは偉いね~♪」
「はぅ…きょ、恐縮です~」
皆から褒めに褒められて梨璃は少し照れくさそうな顔を浮かべる
「てやぁぁっ!」
カンカン!
「やるな!ならばこちらも!」
カンカンカンカン!
訓練用の武器を用いて焔と夢結が演習を行っていた
「ほう、あいつ、なかなかやるな」
「あぁ、元の世界で化け物どもと戦っていたというだけあるな?」
焔を相手に一歩も引くどころか負けずに応戦する夢結の技量に見学している外野は感心の目を向けていた
「…あら、この紅茶とてもおいしいですわね」
「喜んでいただけて光栄です」
茶の間にて楓が数名とともに和やかなティータイムを楽しむ
「わたくしこのような素敵なティータイムを過ごせるなんて夢のようですわ♪」
「うふふ、楓さんったら、それは少々オーバーではございませんか?」
「だって、皆様のようなお美しいお姉さま方とともにこのような時間を過ごせているんですのよ?気持ちが高揚しないはずがございませんわ」
自分たちのことを純粋に褒めてくれる楓に皆も悪い気はしなかった
「そう思いませんか紫苑お姉さま♪」
「う、うん…そうだね」アセアセ
一方で半ば強制的に隣席に座らされた紫苑に楓がすり寄ってくる
「すっかり懐かれてしまったみたいですわね」
「もう、他人事だと思って」プンスカ
自分がお気に入りの様子の楓に懐かれてしまって少々困る紫苑だった
「うわっ、すごっ!腕とかは固いのにそれ以外は柔らかい、ほんとに人間の皮膚みたい」
「さっきので大体の話しは分かったつもりだったが実に摩訶不思議といったところだな?」
「でしょ~、村正ちゃんとどこか似てるところがあるんだよね。すごいよねアムくんは」
「そ、それほどでもない」
アムのほうはというと皆から人とも機械ともとれるちょっと異質な姿に興味深々な目を向けられ、おさわりなどされて少し照れくさそうな顔を浮かべる
「しっかしほんと何なのかねあいつ?まぁ、ああいう類はもう日常茶飯事みたいなもんだから今更感がある気もしなくはないが?」
「えぇ、村正ちゃんと少し告示してますが相違点があるとすれば彼はバッテリー充電機能以外に人の作る料理を食すことでそれをもエネルギーに変えてることですね」
自分たちも彼に似た存在である村正のこともあって理解はそう難しくはなかった
彼女もまたアムに類するところがあり、機械でありながら感情表現も多様であり、まるで人のような存在であると思わずにはいられない子だ
そんな彼女の存在があったからこそアムのこともすんなりと理解できたというとこもあるのだ
だがそうだとしても彼の存在は謎である
「アオはどう思う?」
『ふむ、あくまで俺の見解でだが当初は俺たちのように改造手術を施されたかと思っていたんだがどうにもそうではないようだ。これでは皆目見当もつかんよ』
「そっか~…そうだよな~」
どうにか秘密を知りたいものではあるがアムとともにいる梨璃たち、挙句は本人ですらわからないというアムの謎を佐介たちが解き明かすことなどできるはずもないと半諦めを決め込んだ
アムたちとの楽しい交流が続く
「きゃぁぁ!!」
『「っ!?」』
だが、それを壊すかのように悲鳴が聞こえた
「どうしたんだ梨璃!?」
声を聴きつけたアムとそれに続くように佐介たちが外に出る
「な、なんだこれは!?何がどうなっているんだ!?」
「こ、これは!?」
「…っ?」
外に飛び出した佐介たちが見た先には
世界が、空間が異様な気配のするものへと変わった景色が広がっていた
「何っ、いったいなにが起こってますの!?」
「どうして?なんで空がこんなに!?」
「2人とも落ち着いて!」
いきなりのことで驚いた様子の梨璃と楓を夢結が宥める
「…佐介、これは何なんだ?」
「えっ?」
「…君たちはこの常態を知っているんじゃないのか?もしそうなのだとしたら教えてくれ、何がどうなっているのか」
一方でアムはこの現象が起こった時から佐介たちの反応が自分たちと違うことを見て彼らはこの現象を知っていると感ずき、これを問うた
「これは…十中八九妖魔の仕業です」
「妖魔?」
「うん。妖魔とはアムくんたちにわかりやすく伝えるならこの世界のヒュージ的な存在といったところです」
「この世界のヒュージ…なるほど、この世界もそんな厄介な存在がいるのか」
佐介から事情を聞いたアムはそれに納得する
「…おかしい」
「どうしたんですか?」
最中、光牙がおもむろにつぶやき、夢結が尋ねる
「これが妖魔の仕業なのは間違いないはずだ。…だがそれにしても肝心の妖魔の姿が見えないのはどういうことだ?」
世界がこのようなことになっているのは間違いなく妖魔の起こしたことなはずなのにそれを発生させたであろう肝心の妖魔の姿がどこにも見えないなどということがあるはずがないと佐介たち忍勢は疑問を抱いていた
「あっ!」
「どうした未来!」
「あっ、あれ!」
未来の指さす先に目を向けると
ギュゥゥゥゥゥン!
その先に見える空の一部が激しい歪みを生じさせていた
「な、なんだあれ?」
困惑する忍勢
「…まさか、有り得ない」アセアセ
「アムくん?」
しかしそんな中、アムたちだけはこの状況に思い当たる節があるようで驚愕の顔を浮かべる
その時だった
グウゥゥゥゥ!
『「っ!?」』
空に発生しているその歪みの中から手が飛び出してきた
最初に右手、次は左手が飛び出す
さらに飛び出たその両方の手で空間を掴みながら力いっぱい残った部位を引き上げていた
【「グォォォォォォ!!!」】
『「っ!?」』
そしてついにそれが空間の狭間から姿を現す
「なんてバカでかい咆哮を上げやがるんだ!?」
「でもなんですかあれ!?あんな妖魔見たことがありません!」
確かにパット見ると妖魔の要素はあるように見える
しかしながらそれと同じく自分たちの知る妖魔の姿には違和感を抱くところも多々あった
「…なんてことでしょう」
「どうしたの夢結ちゃん?」
ここで不意に言葉をもらす夢結に飛鳥が問うた
「あの空間を抜けて現れる能力、そして私たちが知る要素がところどころにある。このことから察するに……あれはどちらかというなら「ヒュージ」に近しいでしょう」
「ヒュージって夢結ちゃんたちが言ってた怪物のことだよね?」
「馬鹿な!そうだとしたらなぜヒュージが私たちの世界に?」
「じゃあさしずめあれは、そうだな~ヒュージ妖魔ってとこか!」キュピン!
「名前なんて今どうでもいいだろう!?」
いるはずの存在がないことに全員が困惑する
【「グォォォォォォ!!」】
そうこうしているうちにも怪物ことヒュージ妖魔は抜け出ていない下半身を引き上げようとしていた
「まずい、このままでは!?」
このままではヒュージ妖魔が狭間を抜け出し、この街に降り立ってしまう
「霧夜先生!後のことは頼みます!」
「何をする気だ!?」
「決まっている。奴を止めるのさ!」
「あっ、こら待てお前たち!」
霧夜が止めようとするもそれを無視して佐介たちは向かっていく
建物を飛び越え、ヒュージ妖魔の元へと急ぐ
「お前たち、いいか?これから俺たち全員の力で結界を発生させ奴を閉じ込める。そして閉じ込め次第奴を全力で打ち倒す!」
『「了解!」』
光牙の指示で作成は決まった
そして佐介たちはヒュージ妖魔の近くに到着した
「よし、始めるぞ!」
『「おー!」』
「忍法」
『「忍結界!!」』
全員が集中し、印を結ぶと術が発動し、周囲の空間を捻じ曲げ、今いる場所とは別の空間が姿を見せる
結界が張られたのだ
これによってこの空間にいるのは佐介たちとヒュージ妖魔だけになった
「さぁ、やるぞお前たち!」
『「おー!」』
「「「「おー!」」」」
『「えっ?」』
掛け声を上げる中、掛け声の数がいつもより多いので振り返るとそこにはいつも間にかアムたちがいた
「お前たちなぜここに?」
光牙が驚く皆を代表して尋ねる
「相手がヒュージだとわかった以上放っておく理由はありません」
「それにみなさんの世界までヒュージの好きにはさせません!」
「お姉さま方との素敵なティータイムを台無しにした罪は万死に値しますゆえ、制裁を加えてやりますわ」
「ヒュージを倒すのは僕たちの使命だから!」
アムたちは強い意思のもと戦う思いを告げる
「わかりました。ともに戦いましょう!」
「あぁ!」
佐介たちとアムたちは一致団結し、目の前の敵に視線を向ける
【「グォォォォォォ!!」】ズボッ!!
ドスゥゥゥゥゥゥン!!
それに合わせるかのようにヒュージ妖魔が空間から残っていた下半身を引き抜き、地面に着地する
【「……グォォォォォォ!!!!!!」】
『「っ!?」』グヌヌ
地面に降り立ったヒュージ妖魔が今まで以上に力強い咆哮を上げる
「よし、では改めて…準備はいいか?」
『「っ」』コクッ
「…行くぞ!!」バッ!
『「おー!!」』バッ!
光牙の合図とともに全員が一斉にヒュージ妖魔目がけて駆け出すのだった