突如として楽しい都会観光を瑠莉奈によって奪われ、彼女の引き連れた忍集団によって結界の中に引きずり込まれてしまった
さらには戦いの中、雑兵たちに手を焼いている隙に瑠璃奈の策によって夕焼と那智と分断させられてしまった
助けに向かおうとする佐介たちを阻むように3人の手練れが現れ、これを妨害し
一方で夕焼たちもまた隔離された別の結界の中で瑠璃奈と交戦するも彼女の実力によって窮地に追いやられ
終いには封印術を施された水晶の魔具を用いて夕焼の中に封じられしそれを抜き出そうとする
すべての手を絶たれ、もはや万事休すという状況に追いやられかけたまさにその時
外より、結界の壁を突き破り、彼女たちの前に現れたのは極限魂の姿に身を包んだ佐介の姿だったのであった
「っ…」
「くっ」
突如として結界を突き破って乱入してきた佐介によって事態は思わぬ方向になった
両者は互いに警戒しつつお互いを睨み据えていた
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
その後ろでは間一髪のところで助けられた夕焼が息を切らしていた
「(…佐介さんが来てくれたことは不幸中の幸いだったわ)」
佐介の登場によって最悪の危機を免れることができたことに那智は内心ほっとしていた
「…おい」
「っ?」
「貴様、どうやってここに来た?お前たちは三忍衆が足止めしていたはず、それにこの結界は術師4人が作り上げた特別製のはず、なのになぜ?」
瑠璃奈はどうにも今ここに佐介がいることが解せないと言った顔を浮かべており
どうしてここに来れたのかを聞かずにはいられない様子だった
「大したことではありません、あの3人の足止めを牛丸さんたちが引き受け、僕に夕焼さんと那智さんの救出を頼んだんです。だから僕はここに来れたんです」
「くぅ、まさか忍4人が同時に作り上げたこの結界を抜けてくるとはなんてやつだ」
結界を超えてここにきた佐介に驚きを隠せない様子を見せていた
「瑠璃奈さま、申し訳ありません」
「わしらがいながらとんだ失態を」
「面目ねぇぜ」
「まったく、何というざまだ。貴様らそれでも私の親衛隊か!」
そこに3忍衆が瑠璃奈の元に舞い戻り足止め失敗についてを詫びるも
瑠璃奈はそんな彼らに失態についての罵声を浴びせかける
「仕方ない、一時退却するぞ」
「「「はっ!」」」
彼女からの命令を受けた3忍衆、および他の部下たちはその命令を聞き、頷いた
「さて、命拾いしたなお前たち?そこの佐介とやらの助けがなければ危うかったほどにな。だが、次はそうはいかん、またすぐにでもあの力をいただかせてもらうからな」
「はん、尻尾巻いて逃げようとしてる奴が何を偉そうに!」
捨て台詞を吐いていると捉えた九魅が瑠璃奈に物申す
「何か勘違いをしていないか貴様ら?すぐに会うことになると言うのはわらわたちが出向くからではない、お前たちがわらわの元に来るからと言う意味だ」
「「「「「「っ?」」」」」」
意味深な言葉を告げる瑠璃奈に皆が驚く
「それは…どう言う意味ですか?」
「簡単なことだ。お前たちはわらわの元に来ざらを得ないからだ。さもなくば……里の奴らがどうなることやらな?」
「「「「「「っ!?」」」」」」
その言葉を聞いた瞬間、一同は一気に凍りつく
「だ、どう言うことですか瑠璃奈義姉さん!まさか里を!?」
「あぁ、その通りだ。万が一、一度目で成功できなかった時の保険として里を先に制圧し、お前たちの逃げ場を封じていたのさ」
「そんな…」
里の者たちを人質にしていると聞かされ驚愕す?
「汚ねぇぞ!そんなことして恥ずかしくねぇのかよ!」
「なんとでも言うがいい、わらわは自身の野望を叶えること以外に興味などない、ましてやわらわたちを追放した奴らのことなどどうでもいいことだ」
人質をとることになんの迷いもなく平然と言う瑠璃奈に那智たちは正気を疑った
「さて、無駄な話しは終わりだ。そして里の奴らの命は既にわらわの手中にあることを忘れるな?」
「「「「「っ!?」」」」」
「3時間、里でお前たちが来るのを待つ、もし時間内にお前たちが来なければ、里の奴らは全員わらわの手でなぶり殺してやる」
不敵な笑みを浮かべながらおぞましいことを吐き捨てる
「三時間後を楽しみに待っているぞ…っ!」シュン!
そうして瑠璃奈はその場を去り、後を追うように三忍衆たちもそのばを去っていった
「ど、どうすんだよ!3時間以内に夕焼を連れてこないと里のみんなを殺すだってほざきやがったぞあいつ!」
「ちょ、落ち着きなさいよ九魅、気持ちはわかるけど!」
「確かにね。しかし困ったことになったわね。里のみんなのことが心配だけれどみんなを助けるには夕焼さんを連れて行かないといけないわ」
「だけどそんなの仲間を売るみたいなもんじゃねぇか、そもそもあの野郎がそれですんなりと里のみんなを解放するかもわからないんだぞ!」
里の皆が人質にされていることを知り
尚且つ3時間以内に夕焼を連れて戻らなければ里の皆の命も危ういと言うこの状況の中、どうすればいいのかと手立てを検討し合う
「ゆーちゃん、大丈夫〜?」
那智たちが議論を重ねている中、牛丸は瑠璃奈に襲われて以降、ずっと地面に座り込んでいる夕焼の元に駆け寄り
心配そうに顔を覗かせる
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「ゆーちゃん?」
「牛丸さん、どうしたんですか?」
「佐介さん、ゆーちゃんが変なの、どこか具合でも悪いのかな?」
夕焼の辛そうな姿に牛丸は不安そうにしていた
「(お、オレは……っ!?)」
その最中、夕焼は頭に痛みを覚える
さらにその時、脳裏に断片的な映像がフラッシュバックしていく
脳裏に過った映像は3つの人影、そのうちの2人はどこか夕焼と那智に酷似した姿をしており
2人が微笑みを浮かべる先には3人目の人物
人物といってもそれは姿形が少々人間に近しいというだけであり
手や足はまるで鳥…烏のイメージを抱かせる異様な存在であった
「(こ、これは……なんだ?)」
3人が他愛ない様子で笑いあい、仲睦まじい感じに過ごす光景が脳裏に浮かんで行くことに戸惑いを隠せない
だが、ここで映像に変化が起こる
穏やかな風景は一瞬にして焼け野原に変わり、その中心にはあの異様なる存在である彼女が佇んでいた
燃え盛る光景が広がる中。彼女が振り返る先には夕焼と那智に似た者たちがこちらを誓えていた
そして双方は互いに武器を手に激突した
「(……!?)」ドックン!
映像が終わると同時に夕焼は自身の体が脈動するのを感じた
「夕焼さん、大丈夫ですか?」
一方、そんなことが起こっているとはつい知らず、見かねた佐介もまた夕焼の安否を確認すべく顔を覗かせようとした
「夕焼さん?」
呼んでも返事を遣さない夕焼に困惑していると彼女が体をピクピク震わせはじめた
「……っ!」
「「っ!?」」
刹那、俯いていた顔を上げたと思いきや、夕焼の表情はとても険しそうな顔を浮かべていた
「ゆ、夕焼さん?」
「っ、うぉぉぉぉぉ!!」
「なっ、ぐぅぅぅ!?」
「ゆーちゃん!?」
獣の如き唸り声を上げるとともに夕焼が視界に捉えた佐介に攻撃を仕掛けてきた
「くぅ、ふん!」
「っ!?」
押し出されるも佐介はなんとか体勢を変えてそれを回避して距離を取る
「やめてください夕焼さん、どうしたんですか!?」
「ふふっ、ふふふふ、あははははははは!」
いきなり攻撃を仕掛けてきたことを問う佐介だが、夕焼は何やら愉悦に浸っているようにも狂ってるようにも見える笑い声をあげる
「いい、いいぜ!やはりオレの見立ては間違ってなかった!」
「えっ?」
「お前との戦い、最高に沸るぜ!」
「ぐっ!?」
意味深な言葉を吐くとともに再び夕焼は佐介に向かっていき、二刀で斬りかかる
「ゆーちゃん!?」
「何やってんだよ夕焼!?」
「やめて!夕焼さん!なんで佐介さんを!?」
「うるせぇ!オレの愉悦の時間を邪魔するな!」
仲間たちが必死に静止しようと試みるも今の夕焼は聞く耳を持たず、佐介との戦いをやめようとはしなかった
「ぐっ!?」
「オラオラ!どうした!何遠慮してやがる!本気で来やがれ!フハハハハハ!」
夕焼を攻撃できない佐介はただただ追い込まれることしかできず、どうしようもない状態だった
「おらっ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ついに佐介は夕焼によって後方まで吹き飛んだ
「もう終わりか?だったら…死ねぇぇぇぇぇ!!」
佐介に止めを刺そうと夕焼が突っ込む
皆が騒然となる
「っ!!」ザザァァ!
「ん!?」
「那智さん!?」
「っ!?」
だが、その間に那智が割って入る
「なんだテメェ!邪魔だ!!」
「那智さん、危ない、早く逃げて!」
「大丈夫です…はぁぁぁ!!」
那智が力を入れた時だった
「ぬぁっ!?」
突如として夕焼が動きを止める
「な、なんだこりゃ!?」
「夕焼さん、正気を取り戻しなさい!封・秘伝忍法!!」
「ぐ、ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
術が発動した瞬間夕焼を中心に光の柱が発生し、それに飲み込まれた彼女は断末魔のごとき叫びをあげる
「お、おの…れ!?」
「…はぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?…あぁ…」
刹那、術が終了した直後、意識を失った夕焼が倒れだす
「ゆーちゃん!」
慌てて牛丸が彼女の元に駆け付け、支えになる
「っ…」
「那智さん!」
今度は那智が倒れかけ、それを佐介が支える
「大丈夫ですか那智さん?」
「えっ、えぇ…ちょっと疲れただけです
「那智さん、ゆーちゃんは?」
「術は成功したと思うから大丈夫ですよ」
その言葉を聞いて牛丸は安堵する
「…しかし、困ったことになったわね」
「あぁ、どうしたらいいんだよ?」
里の危機だというのにこの状況、どうしようものかと皆は考えるのだった