偶然にも芦屋の宗教介入の現場に居合わせてしまった光牙は
信者候補を逃がしてしまったからということで芦屋からしつこく入信を迫られていた
「…はぁ」
「あらどうしたの光牙くん?元気なさそうな顔してるけど?」
「なんでもない」
「そういう割には偉く疲れたって顔してるわよ?」
今、時間帯がお昼に差し掛かっており、たまたま会った春花と相席という形で食事をとっていた
どこか元気のなさそうな顔をする光牙に気づいた春花がそう訪ねてきた
なんでもないと言い張る光牙だが、なんでもなくないことは春花にはお見通しだった
「よかったら話しくらい聞くわよ?」
「じつは「おぉ、やっと見つけたぞ光牙よ!」…っ」
口を開こうとした直後、自身の名を呼ぶ声に気づいたとともに表情が一気に重くなりながらも視線を向けてみる
案の定視線の先には芦屋がいた
「ここにおったのか?随分と探し回ったぞ」
「あら、芦屋ちゃんじゃない?」
「おお、誰かと思えば春花か、しかしすまんの今我は大事な用があるから相手をしてる暇はないんじゃ」
「なんだか知らないけど振られちゃったみたいね?」
光牙を見つけるや否や早足で席に向かっていき、すごい剣幕で話しだしてきた
春花が声をかけ、軽く挨拶をするもすぐさま視線を光牙に戻す
「…食事くらいゆっくりと取らせてくれないか?」
「食事なんて後じゃ後!今日こそはお前を我が教団に入信させてやるんじゃからな!」
「勝手に決めるな、それに何度も言ってるだろ。俺はそんなものに入るつもりはない」
「そんなものとはなんじゃそんなものとは!」
食事中にもかかわらず懲りずに入信を迫る芦屋に対して光牙はもの申し
対して芦屋も一歩も譲らなかった
「(えっ?…もしかして光牙くん芦屋ちゃんに宗教介入させられてるの?)」
「(あぁ、厄介なことにな)」
芦屋の話しを聞いた春花が光牙が彼女に宗教の介入をさせられているのだということに気づき
耳打ちで尋ねると予想通りの答えが返ってきて苦笑いを浮かべていた
「(それは災難ね。彼女ったら己の宗教に賛同する信者を増やすためにあれやこれややってて学園のみんなも要注意してるほどなのよ?)」
「(いわれなくても実感している)」
自身の宗教に露骨に介入させようとするこの粘着性は誰もが困り果てるレベルであることは考えるまでもないほどわからされた
「(大変なことになっちゃったわね?ご愁傷様、光牙くん)」
「(他人事かと思って好き放題言ってくれる)」
かわいそうなものを見るかのような顔を向ける春花に光牙は少し不機嫌な顔を浮かべていた
「む~、2人してなにをこそこそ話しているのじゃ?我をのけ者にするでない!」
「ごめんなさいね芦屋ちゃん。別にのけ者にしてるつもりはないのよ」
「そうか、ならばよい。あっ、そうじゃ、これもいい機会じゃ、これを機に春花も入信せんか?」
ここぞとばかりに光牙のみならず春花までも介入させようとしてきた
「素敵な誘いね。でも残念だわ、私この後は下僕たちの調教があるの…だから、私の分も光牙くんにあなたの宗教のすばらしさを教えてあげて、というわけでじゃあね~♪」
それに対して春花は彼女らしい理由に加え、光牙を盾にこの場から離脱した
「な、ちょっとまて春花、貴様俺を売りやがったな!?」
逃げる口実として光牙は利用されてしまったのだ
「ふむ、春花には逃げられてしまったが仕方ない…さぁ、今日こそは入信してもらうぞよ」キュピン
1人取り逃がしてしまったことは惜しかったがすぐに気持ちを切り替えて光牙を入信させるという目的を遂行させに動いた
「(春花のやつ覚えておけよ…とりあえずこの場は、抜き足!)」
シュン!
「な、なんじゃっ?…ってあれ!?光牙がいない!?」
芦屋が気がついた時には光牙の姿も消えていた
「ど、どこじゃ!どこにおるんじゃ!出てこい光牙!…ムキー!!」
「(お前如きでは俺を捉えることは不可能だ、残念だったな?)」
相手の無意識領域を利用して自身の存在が消えたと錯覚させる移動術、それが抜き足である
こうして光牙はまんまと抜き足によって芦屋を巻くことに成功し、見つからない内にこの場から去っていくのだった
それから数分の時が経った
「くぅ〜!またしても光牙に逃げられてしまったわい!」
食堂を後にした芦屋はぶつくさと愚痴をこぼしながら廊下を歩いていた
いいところまで追い詰め、入信まで漕ぎ着けられそうだと思っていたのに結局は光牙に出し抜かれてしまったことを芦屋はひどく悔しがっていた
「じゃがこれしきで諦める我だと思うなよ〜、次こそは、次こそ必ずや我が教団に入信させてやるぞ、ふふふふふふ」
またも失敗したが、まだまだ芦屋は諦める様子を見せておらず、次は光牙を入信させてみせると意気込み
次なる手を打つべく思考を巡らせていた
「あ、いたいた。ねぇちょっと」
「っ?」
最中、芦屋は自分に語りかけているであろう声に気づき、その声のする方に視線を向ける
視線の先には3人の生徒が
「ぬっ?お主らは」
芦屋はその生徒たちの顔を見てハッとなる
なぜなら自分に声をかけてきたのは以前芦屋が教団に入信を迫った際に断ったり逃げた者たちだったのだから
「お前たち我に何か用か?」
「実はさあんたにお願いがあってね」
「お願いじゃと?」
「私たちあんたの教団に入信しようと思ってね」
その言葉を聞いた瞬間芦屋はわが耳を疑った
「き、聞き間違いかの?…いまなんと?」
「だから、私たちあんたのやってる宗教に入りたいの」
「…っ!!!」
二度確認をして聴き間違いではなく、本当のことであると知るや芦屋は漫勉の笑みを浮かべる
「うむうむ、そうかそうか~!ようやく我の思いをわかってくれたんじゃな!よし分かった我に付いてくるがいい!」
「えぇ……お願いするわ」ニヤリ
芦屋はこの時気づいていなかった自分の後をついてくる生徒たちが邪な笑みを浮かべていることに
「さぁ、入るがいい!ここが我が使っている神聖な場じゃ!」
しばらくして芦屋は生徒たちを自分が秘密裏に漬かっている学園内にある廃墟となった建物の中に案内する
「ではこれより入信に際しての儀式を行うからの、早速取り掛かるぞ!」
張りきった様子で新たな信者を迎える準備に取り掛かる
少しして準備が整った
儀式用の衣装を身にまとい、床には陣が描かれていた
「さぁ、皆の者待たせたの~!早速儀式の開始じゃ!」
準備が完了したことで入信に際しての儀式を始めだした
「おお神よ、その壮大なる力もて我が願いを聞き入れよ」
陣を四方に囲み、芦屋が目を閉じ、集中し祈りを込めた呪文を始める
最中、他の三人は互いの顔を見合わせる
そして全員が頷くことで意思疎通を行う
「神よ。我が願いを…っ?」
「「っ!」」
「な、なんじゃ!?うわっ!?」
芦屋が気づいた時にはもう手遅れであり、3人中2人に拘束されてしまう
「こ、こら離せ!いったい何のつもりじゃ!?」
状況がつかめず混乱する
「はっ、まんまと引っかかったわねこの間抜け、私たちの目的は最初からこれだったのさ」
「なんじゃと、どういうことじゃ!?」
生徒たちが自身の目的が芦屋だったことを告げる
「どうしたもこうしたもない、散々あんたにこんなくだらない宗教話に付き合わされて迷惑してたんだよ。あんたの信じる神なんざ興味ねぇんだよ。なのに毎度毎度しつこく入信を迫られてさ…たまったもんじゃないんだよ!…だから私たちは考えたのさ、あんたの信じる神とかそういうのを目の前で踏みにじってやろうってね」
自分たちの思っていることを告げるとともに儀式のための用意していた物を次々と蹴り飛ばす
「やめろ!やめてくれ!」
「うっさいわ、なにが666番目の神の使いだよ?頭のネジ飛んでんじゃねぇの?いもしない神を信じるなんてほんととんだ大馬鹿だよお前は!だからこんな簡単な手に引っかかるんだよ…っ!」
「なっ、やめろ!返せ!」
主犯格の生徒は芦屋の持っていた本を奪い取る
「こんなもの…なんの価値もねぇんだよっと!」
「っ!?」
さらには奪い取った本を地面に叩き付け、地団太のごとく踏みつけた
「やめろ…もうやめてくれー!!」
必死に懇願するも、芦屋の願いは聞き入れられず、部屋の中は散々に荒らされた
「…っ」
「これでわかっただろ?お前の独りよがりに付き合うやつなんざいねえんだよ。これに懲りたらもうこんなくだらない介入はやめることだな?フハハハハハ!」
芦屋を罵るだけ罵り、2人を連れて主犯格の生徒はその場を去っていった
残されたのは芦屋と荒らされた部屋だった
「…神よ。我は、どうしたらいいのですか?」
信じるものを貶しに貶され、芦屋の心はズタズタだった
そして悔しさと悲しさに打ちひしがれて涙をこぼした時だった
【「泣いてはいけないよ。うら若き少女よ」】
「っ!?」
突然の売りに声が響く
「だ、誰じゃ!?」
【「私のことがわからないのかな?」】
「ま、まさか…我が君、なのですか?」
【「そう、私はお前の信ずる神だ」】
脳裏に語り掛けてくる声の主は自分を芦屋が信じる神であると告げる
「おお、神よ!ついに我が声に応えてくれたのですね!」
【「いかにも、苦しむ汝を救ってやるべく脳裏に話しかけているのだ」】
「なんと…なんと慈悲深きお心使いじゃ、この芦屋、感服でございますじゃ」
悲しむ自分の前に念願の神が語りかけてくれたことに芦屋は心底嬉しそうだった
【「娘よ。私がお前に力を貸してやろう、その代わりにお前の体に私を憑依させよ。私は今、訳あって肉体を持てぬゆえな」】
「さようでしたか、しからば我が体をどうぞお使いください、この身、御身とともに」
【「よい心がけだ」】ニヤリ
体に憑依させることを持ち出し、芦屋がそれに従った際に神はどこか不敵な笑みを浮かべ
そのまますかさず彼女の体に憑依した
「おおぉ、おお!」
【「では行くぞ、これより我らの宿願を果たすぞ」】
「御意のままに」
こうして芦屋と神の新たなる行動が始まろうとしていた