仮面の忍の策略によってまんまと夜桜を刺した犯人に仕立て上げられた紫苑は琴羽を連れて逃亡していた
「「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」」
「こ、ここまでくれば大丈夫でしょう」
ある程度逃げた先で荒くなった息を整えていた
「…なんで私を助けたのよ?私を助けたところでなんの得にもならないのに」
「…損得とかそんなものは関係ありませんよ。あのまま捕まっていたら敵の思うツボですし、なによりあなたが助かる見込みも薄くなりそうでしたから」
腕についている今も爆発までのタイムリミットを刻む腕時計に目をむける
「私を助けようとしてるの?なんでよ?善忍なんて所詮は」
「あなたが善忍をどう思うかは勝手です。でも少なくとも僕や雪泉たちは自分たちの信じる正義のために戦っている。…あなたは確かに罪人です。でも罪人だから死ぬべきなんて考えは間違ってる。もしこのままあなたを見捨ててしまったら僕はまたあの時のような誤ちを起こしてしまう…僕はもう絶対に間違えたりはしないと心に誓ったんです」
そう言いながら紫苑は握りこぶしを作った
「でも僕としたことが、まんまと敵の術中にハマってしまうなんて……そのせいで夜桜が」ウルウル
紫苑は夜桜が自分のせいで傷ついたことに深い後悔と哀しみを感じていた
「…さっき見てて思ったよ。彼女たち必死に君を庇おうとしてた。君、相当慕われてるんだね」
「…えぇ、彼女たちは僕にとって大切な家族ですから」
「家族…か」
琴羽は悲しむ紫苑にわずかながらの慰めの言葉を贈る
彼の仲間を想う心に琴羽も共感出来るとこがあったからだ
「さて、これからどうしましょうか、ここにいても拉致が飽きませんし」
「…だったらさ、少し行きたいとこがあるの。時間がないことはわかってる。私の体が木っ端微塵になるかもしれないってことは、でも、だからこそ行きたいところがあるの」
「…わかりました。では行きましょう」
琴羽の提案を聞き入れ、紫苑たちは駆け足で移動するのだった
「…おや?……あれはっ?」モクモク
彼女に連れられてやってきたのはどこかの孤児院だった
「ここは?」
なぜここに来たのかわからないという顔を浮かべていた
「もしかしたらこれが最後になっちゃうかもだしさ」
すると琴羽は懐から封筒を取り出しポストにいれた
封筒の仲見、それは盗品を売って替えたお金が入ったものだった
封筒をポストにいれる最中、琴羽は残念そうな顔を浮かべていた
「琴羽さん…あなたは」
「…もう用は済んだから行こうか」
若干名残惜しそうな顔を浮かべながら立ち去ろうとした時
「「「「うわ~い!!」」」」
「こらこら、そんなにはしゃいじゃダメよ」
孤児院の庭で遊ぶ子供たちと女性が出てきた
「あ~!ことはおねえちゃんだ~!」
「わ~本当だ!琴羽お姉ちゃ~ん!」
「っ!?」
帰ろうとした琴羽を見つけた子供たちが一斉に駆け寄ってきた
「ことはおねえちゃん!ことはおねえちゃん!」
「みんな……元気してた?」
「うん♪」
子供たちは琴羽の姿を見るなり満遍な笑みを浮かべていた
そんな子どもたちの頭を柵越しに琴羽は1人1人余すことなく撫でてあげた
「…琴羽?」
「…お姉ちゃん」
「心配してたのよ。お父さんとも連絡がつかないし、あなたもいなくなるしで」
「ごめんちょっといろいろあって」アセアセ
さらにそこに孤児院のエプロンをつけた女性が心配そうな顔で琴羽に語りかけてきた
「でも本当によかった。元気そうで…ところで琴羽、そちらの綺麗な女の子は誰?」
「おっ、おぉっ!?」ビクッ!
「あぁ、彼女は紫苑さんって言って、ちょっとした知り合いよ」
「そう…初めまして、私、この子の姉の琴美と申します。妹がお世話になっているようで」
女性はぺこっと頭を下げるが紫苑は女の子扱いされたことに顔を引きつらせていた
「じゃあお姉ちゃん。私たちそろそろいくね」
「えっ?琴羽、何処へ行くの?せっかく戻ってきたのに?」
「……ごめんね。まだ仕事の途中だから…さぁ行くわよ」
そう言って女性の静止を振り切り、琴羽は固まった紫苑を連れて立ち去って行ってしまった
孤児院から逃げるように去った2人は公園のベンチに座っていた
「は~…マズったな~。お姉ちゃんたちに会うなんて…これさえなければいつものように夜に送れたんだけどな~」
残念そうな顔を浮かべながらぶつくさとつぶやく
「女の子…僕が女の子…」ブツブツ
「って、さっきから何をブツブツ言ってんのよ?」
暗そうな顔を浮かべながらブツブツとつぶやく紫苑に琴羽は尋ねる
「毎度のことながら女の子扱いされるのはどうにも…」シクシク
「はっ?えっ?どゆこと?」
「…ふぇっ?」
紫苑の言葉を聞いた瞬間、琴羽は目が点になる
カッコー!説明中~♪
「…えっ、えっ、えっ、えぇぇぇぇぇ!?ああああ、あんた男だったの!?」
「…そうですよ」ムス~
「うっそ!?そんな成りで!?」
「悪かったですね!」プンスカ
どうも琴羽も紫苑が女性だと思っていたのかものすごい驚いている様子だった
「でも驚きましたね。どこに行くのかと思っていたらまさか孤児院に行くなんて」
「私やお姉ちゃん、あの子達は園長であるお父さんに拾われたんだ」
「えっ?じゃあ、あなたたちは」
「そう、私もみんなと同じ孤児でね。行くあてもないところをお父さんに拾われたんだ。お父さんは忍としての仕事をこなす傍ら園長として私たちを育ててくれた。忍務で得た報酬なんかは全部私たちの生活資金に充ててくれて、私はそんなお父さんが大好きで、なんとか力になりたくてお父さんが忍だってことを知り私も忍になった。お父さんには反対されまくってたけどね」
琴羽は自分のことを語り、自分がなぜ忍を目指したのかを打ち明けた
「お父さんはとてもすごい忍でみんなから信頼されてて、私もそんなお父さんが自慢だったんだ」
「琴羽さんはお父さんが大好きなんですね…なんだか親近感がでますね」
「えっ?」
「僕たちもみんな孤児でしてね。行く宛もないそんな僕たちを拾ってくださったのが我らが恩師黒影さまでした。黒影様は孫である雪泉とともに僕たちにも分け隔てなく愛情を注ぎ僕たちを育ててくれました。そんな黒影さまから僕たちは正義とはなにか、善忍とは何かを学び、いつかこの世を争いのない平和な世界にしたいと思っているんです」
その言葉を聞いた瞬間、琴羽は紫苑の後ろ姿に父の重かけを見た
「……君のその言葉、私のお父さんもよく言ってた。いつか世界が平和になるようにって」
琴羽は父の抱いた志に共感していたようであった
「でもあの事件のせいでお父さんは…」
「ある事件?」
辛い顔を浮かべながら琴羽は紫苑に自分のこれまでの成り行きを語り始めるのだった