夜桜殺傷の容疑者というあらぬ疑いをかけられてしまい、琴羽と共に紫苑は逃走した
行動を共にする中で彼女が孤児院の出身でそこに寄付する金を手に入れるために盗みを働いていたこと
かつて孤児院の院長で忍だった義父と善忍として活動していたことなどを知るのだった
夜桜殺傷の容疑者というあらぬ疑いをかけられてしまい、琴羽と共に紫苑は逃走した
行動を共にする中で彼女が孤児院の出身でそこに寄付する金を手に入れるために盗みを働いていたこと
かつて孤児院の院長で忍だった義父と善忍として活動していたことなどを知る
そして琴羽は紫苑に自分のこれまでの経緯を語り始めるのだった
「…あの日、私とお父さんは別々の任務をこなしてた。そして私は任務を終えていつものように集合場所でお父さんを待っていた。でも私の前に現れたのは傷だらけで息も絶え絶えなお父さんの姿だったの」
自身に起きたことを語る中で琴羽の脳裏にあの時の光景が浮かび上がる
『はぁ…はぁ…はぁ…』
『お、お父さん!?』
重症を負い、倒れ込む彼の元に慌てて駆け出し抱き寄せよる
『何があったの!?』
『はぁ…はぁ…、こ、琴羽。今すぐここから逃げるんだ』
『な、お父さんを置いていけるわけないじゃない!』
『頼む。ここにいてはお前まで消されてしまう。…それと、これを持って行きなさい』
そう言って手渡したのは何かの鍵だった
『それはこの近くのコインランドリーの鍵だ。その中にあるものを善忍の本部に届けてほしい…やってくれるね?』
『っ…』
訳がわからないまま鍵を受け取った琴羽
その時だった
トントンとこちらに向かって歩いてくる足音が
『まずい、琴羽今すぐ隠れなさい!』
『でも』
『いいから!』
父の言うとおりに物陰に隠れる
そのすぐ後だった
目の前に現れたのは仮面の忍であった
『やっと見つけたぞ。まったく手間をとらせおって』
『なぜだ。なぜあんなことを!我々は陰から人々の平和を守るべく、正義の理念を持って戦う存在なんだぞ!』
『正義のために?…ふん、古臭い考え方だな。いいか所詮この世は弱肉強食、善だろうが悪だろうが関係ない、ようは"自分"がすべてだ。そのほかの奴らなどは取るに足らん。そう、いうなれば奴らはただの"ゴミ"でしかないのだよ』
『なんということを、己さえよければそれでいいなど善忍の風上にも置けん!…お前は私が止めて見せる!』
仮面の忍の態度に琴羽の父は怒りに満ち溢れていた
『どう喚こうが秘密を知られた以上、生かしておくわけにはいかん。ここで消えてもらうぞ!』
『っ!?』
『やあぁぁぁ!』
ザシュゥゥゥゥゥン!
『…子供たちよ。すまん』ドサッ
『ふふふふ、あ~はっはっはっはっは~!』
死闘の末、奇しくも琴羽の父の命は仮面の忍の手によって奪われた
その光景を目の当たりにした琴羽は深い絶望に包まれたのだった
「やつの手によってお父さんは命を奪われた…しかも後日その事件はお父さんが逃走中の抜忍と遭遇して返り打ちにされたという内容に書き換えられていた。私は何度も講義した。でもそれは聞き入れられなかった…私はそんな善忍のやり方に絶望して抜忍になった…これが私のこれまでの行きさつよ」
「(…)」
この時、紫苑は思っていた仮面の忍の行いはかつての自分たちの思想と似ていた
悪忍はこの世界にとっては害悪、滅ぶべきだと考えていたあの頃の自分たちと
「…じゃあもしかしてあいつがあなたに要求したのって」
「たぶん、そのコインロッカーにあるものだと思う」
やつが指示した物が父が琴羽に託した鍵のロッカーの中にあることを察した
「そのブツは今どこに?」
「どうせ隠蔽されるに決まってると思ってまだロッカーの中にあると思う」
「…ともかく、それを取りに行きましょう。もうあまり時間もありません」
「……うん」
父の言っていたコインロッカーを目指して2人は急ぐのだった
コインロッカーのある場所にたどり着くと託された鍵でロッカーを開けた
中に入っていたのはUSBメモリだった
「USBメモリ?」
「なんでこんなものが?」
「…そうだ。私、タブレット持ってるから、これで」
琴羽はUSBコードがついているタブレットを取り出し、そこにメモリを射し込んだ
そして中身を確認してみるとそこには仮面の忍であろう男と悪忍達との取引の様子が写っていた
「…なるほど、それで仮面の忍は琴羽さんを必要以上に狙っていたんですね。これが明るみに出れば自分の身が危ないと踏んで」
「…お父さん」
「立派な人ですねあなたのお父さん。自らの危険を顧みず悪と戦おうとする姿勢、尊敬に値します」
「…」
紫苑のその言葉を聞いて琴羽も気が晴れるような気がした
そんな中、琴羽の腕輪のタイムリミットが刻一刻と迫ってきていた
「もう時間がありません。行きましょう。大丈夫です。何があってもあなたを守りますから」
「…ありがとう」
「だから、一つだけ約束してください、この事件が解決したらもう二度と窃盗はしないと…そのほうがあなたやみんなのためにもなる。犯罪で得たお金ではなく、真っ当なお金を送ったほうが孤児院のみんなのためにもなるし、なによりお父さんも喜んでくれるはずです」
「……」
紫苑の言葉を聞いた琴羽は深くそのことを考えた
確かにいくら稼げたとしても所詮は盗んで得た金。バレてしまえば孤児院に多大な迷惑をかけてしまう
なにより自分たちを育ててくれた父の顔にこれ以上泥を塗りたくないと思った
「わかった…約束するよ」
「ありがとうございます…では行きましょう!」
紫苑と琴羽は指定場所に急いだ
そんな中、ふと琴羽は胸元に手をかけた彼女のその中には紫苑から奪った巻物が入ったいた
「(後でちゃんと返してあげなくちゃ)」
巻物を返す。そう内心思う琴羽だった
ようやく指定場所にたどり着いた2人は仮面の忍が来るのを今か今かと待っていた
「爆発まであとちょっとしかない、どうしよう?」
「落ち着いてください、絶対に来るはずですから」
タイムリミットが近づく中で紫苑は焦る琴羽を元気づけていた
その時だった
「見つけたぞ!」
「「っ!」」
2人の元に阿道が現れた
「阿道さん。やはりあなたが」
「っ!」
「ぐあっ!」
阿道は現れるなり、紫苑に暴行を加える
「やめて!これが欲しいんでしょ!渡すからそれ以上はやめて!」
琴羽はUSBを見せびらかし、阿道にやめるよう説得するが阿道はそれに見向きもしなかった
その時だった
ブゥゥゥゥゥ…キキィィ!
「ご苦労様だね阿道」
「影丘さん?それに小黒たちも?」
「……"後は任せたよ"。この抜忍は私が連れて行く」
「「はい」」
そう言うと影丘は彼女の手を掴んで連れ去ろうとする
「待ってください!彼女には爆弾が!」
「っ、貴様は黙ってろ!」
「ぐふっ!」
待つよう申し出るも阿道が邪魔をする
「よろしく頼むよ阿道……私はこの"ゴミ"を処分するという役目があるのでね」ボソッ
「…まさか」
不適切な笑みを浮かべる影丘を見て琴羽は察した
「さぁ、行こうか」
「っ!」
「おおう!?」
連れさられようとした瞬間、琴羽は影丘を押しのけ、紫苑に抱きつく
「琴羽さん?」
「…っ」ゴニョゴニョ
「っ!」
「何してるんだ!」
それを見ていた阿道が2人を引き剥がし、紫苑に再び暴行を加えた
「あんまり手こずらせないでもらえないかな?…おとなしくさっさと来るんだよ」
若干、イラついた様子で影丘が琴羽に手錠をはめ、そのまま車で連れ出す
「紫苑!」
「っ!」
そして琴羽はまんまと影丘に連れてかれてしまった
「…琴羽さん」
紫苑は先ほどの彼女の言葉を思い返していた
『犯人は阿道じゃない、影丘よ』
その言葉を思い返すとともに彼女が咄嗟に懐にいれたものを見てみるとそれはUSBメモリだった
「よそ見してんじゃねえぞ!」
阿道が紫苑を突き飛ばす
「おい、お前らも手伝え!」
紫苑を捕まえるべく交戦の中、小黒たちに応援を要請する
すると小黒たちは互いに頷くとともに刀を取り出す
そしてゆっくりと近づく
「っ!?阿道さん!」
「何を!」
「危ない!!」
「ぬあっ!?」
何かに気づいた紫苑が阿道を突き飛ばしたその瞬間
シュイン!
「「っ!?」」
二つの斬撃が振り下ろされる
紫苑の機転によってそれは防がれた
「っ!」
「な、なんだ…っ?」
いきなり斬撃が飛んできたことに不信感を覚え、恐る恐る見るとそこには斬撃を繰り出したと思わしき刀を地面に突き刺している小黒達がいた
「お、おい!お前らなんのつもりだ!こいつならともかくなぜ俺まで!」
紫苑を狙うならいざ知らずなぜ自分にまで斬りかかってきたのかを問いただす
「…なるほど、そういうことでしたか」
2人の行動から紫苑は悟った
「阿道さん。すいませんでした。今の今まで僕はあなたが犯人ではないかと疑っていました」
「あっ?何を言って?」
「でもそれは違ったんです。信じられないかもですがこの事件を起こした犯人は影丘であり、この2人は共犯者のようなんです」
「な、…お前、何をふざけたことを!」
阿道の反応は当然といえば当然だった
「信じられない気持ちはわかります。ですが現に彼らは僕のみならずあなたまでも手にかけようとした。なぜならあなたはあのUSBメモリを見てしまったから」
「あのUSBメモリがなんだと言うんだ?」
「貴方にとってはさっぱりなことですが、あれにはかつて影丘が行ったある事件の記録映像が入っており、影丘はその映像をみられること、知られることを何より恐れている。故に僕らによってUSBメモリの存在を知ってしまった阿道さんもこの騒動に乗じて消そうと影丘は考えているんです」
「…そ、そんな」
未だに信じられない感は否めないが紫苑の目は嘘偽りないものだった
「…余計なことをペラペラと」
「もはやお前たちを生かす理由は一つもない。…ここで消えてもらう」
さらにそれを立証させるように小黒たちは2人を始末すべくどこからともなく仮面を取り出しかぶり、構えた
「くっ、急がなければならないというのに」
厄介なことになってしまったことにどうすべきかを模索している時だった
シュン!バッ!!
「「「「っ!」」」」
「やあぁぁぁ!!」
ドスゥゥン!
「「っ!?」」
ザザァァァ!
突然の攻撃によって小黒たちは距離を取る
舞う土煙の中に立ち上がる人影が一つ
やがて、土煙が晴れた先に立っていたのは
「さ、佐介さん?」
「紫苑さん無事ですか?」
そう佐介だった
「佐介さん、どうしてここに?」
「街中で紫苑さんが見知らぬ女生と一緒にいたのを見かけてただならぬ気配を察知して勝手ながら後をつけてまして、で、今に至るわけです」
佐介は紫苑たちに理由を伝える
「さて、ともかく話しは後です。紫苑さん、ここは僕に任せて彼女を追ってください」
「で、でも」
「早くしないと手遅れになるかもしれないんですよ!」
確かに佐介の言うことも一理あるが、しかしこのままというわけにはというように紫苑は拱いていた
「…行け」
「えっちょ、阿道さん?」
するとそこに更なる後押しをするかのように阿道が語りかけるとともに紫苑に何かを投げ渡す
それは阿道がここまでやってきた際に使っていたバイクのキーだった
「いいんですか?」
「勘違いするな。俺はまだお前を疑っているんだからな…だが、もしお前の言ってることが本当ならこのままにしていいはずがない…悔しいが今の俺にはなんの力もない、だからお前に託す……裏切ったら承知しないぞ」
「……はい。ありがとうございます!阿道さん、佐介さんも感謝します!」
「いいんですよ!」
この場を2人に任せるや紫苑は急ぎ、影丘を追うべくバイクに跨り、追うのだった
「(待っててください、琴羽さん!)」
彼女を救うべく、紫苑はバイクの速度を上げるのだった