楽しいはずの水族館は騒然となっていた
「きゃぁぁぁぁっ!?」
「ば、化け物だ!?」
突然水が人型へと変化した光景を目の当たりにしたことで周囲は困惑状態だった
「水が人の形に?…いったいなんなんだ?あれは?」
これには紫苑も驚きを隠せないようだった
「ふっ…」スッ
その様子を見ていた男?が紫苑に向けて手をかざす
【『…ッ!』】シュン!
「ぐっ!?」
【「~~…ッ!」】ドゴッ!
「うわっ!?」
合図を受けた水の怪物が紫苑に攻撃を仕掛ける
初段の攻撃を防ぐ紫苑に隙を生じさせない二段目の蹴りを繰り出した
さしものこれには対処できず大きく後方へと吹き飛ばされた
「お、おい、襲われたぞ!やべぇぞ!に、逃げろ!」
「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」」
これを見ていた人たちは危険と判断し一目散に逃げていった
「……」
その様子を見ていた男?はまるで汚物でも見るようなしかめっ面をしていたがすぐに興味をなくし
紫苑が飛んでいった方に視線を向け直す
「っ、ぐぅ!」グヌヌ
水の怪物によって蹴り飛ばされ、壁にめり込んでしまった紫苑は抜け出そうと力を込める
「…っ」
【『…ッ!』】バッ!
再び男?からの命令を受けた水の怪物が紫苑に迫りくる
【『ッ!!』】グニュニュ~ン!
「っ!?」
間合いに入るや否や水である性質を活かし、右腕を鈍器状のものに変え、そのまま突き出す
ドゴォォォォン!
衝撃と爆音が響き渡り、土煙と砕け散った壁の破片が辺りに散らばっていた
「…っ?」
シュン!シュタッ!
刹那、土煙を突き破り、男?の頭上を跨ぐように宙を舞い、地に降り立つ影が
「…っ!」キリッ
そこには忍装束に転身した紫苑がいた
「…ふふっ」ニコッ
紫苑のその眼差しを目にした男?は嬉しそうに笑みを零す
【『っ!!』】
「ふっ!」
襲いかかってきた水兵の攻撃を受け止めるとともに鍔迫り合いに発展する
「はっ!せい!」
【『ッ!?』】
しかし、先とは打って変わり転身した紫苑が巻き返すように攻めに転じたため、水兵は一旦主である男?の隣に戻る
「君達が何処の誰かは知らないけどこれ以上の被害を出させはしない!」
そういうと同時に紫苑が素早く印を結ぶ
「忍結界!…はあっ!!」
印を結び、術を発動させると特殊な空間が発生し、紫苑と男と水兵を包み込んだ
「…っ?」キョロキョロ
「ここなら被害もなく存分に戦える。…さぁ、行くよ!」
「…」スッ
【『ッ!』】
ドゴォォォォン!
結界を張り、思う存分戦えることで紫苑も気合い十分で飛び出し、それを迎え撃つように男?からの指示を受けた水の怪物とぶつかり合うのだった
一方その頃
「……どうしたのでしょうか紫苑は?」
紫苑が飲み物を買いに出向いた後も雪泉はずっと彼の帰りを椅子に座しながら待っていた
でもいくら待っても紫苑が返ってくる気配はない、さすがに少し不安を抱いてきたそんな時だった
「っ?」ピクッ
ふとここで雪泉が何かに気づいたように顔をハッとさせる
「(これはもしや忍結界?)」
忍結界が発動する気配を察知し、雪泉が心をざわつかせる
するとその直後、近くの方から慌ただしい声がすることに気づいた
「なんでしょう?」
少し気になった雪泉がその声のする方に向かっていった
「…これは?」
現場に着くと大勢の人が園の従業員達に何か訴えを起こしており
従業員達もその対応に追われていた
「あの、何かあったのですか?」
「いやそれがね、なんでも向こうの方で化け物が出たんだとか?」
「化け物?」
向こうの方といえば丁度紫苑が自分達の飲み物を買いに行った方向だった
「(この騒動といい忍結界の気配といい…もしや紫苑に何かあったのでは!)」
先ほどの化け物というワードから雪泉は考えを模索し
何らかのことで妖魔が現れ、それを迎え撃つために紫苑が対応に追われているのではないかと推察した
「(だとすればこれは由々しきじたいですね)」
妖魔が現れたとあっては黙って見過ごせない、しかし今、他の者達は都合によって居らず、呼び出しをかけたとしても時間が掛かり過ぎるのが現状
なればこそ出る答えは一つだった
「…っ!」
雪泉は考えを纏めるとさっそく行動を開始する
「…よし、ここなら問題ありませんね」
人目に付かない場所を見つけそこに身を隠した
「忍、転身!」
巻物を取り出し発動の言葉を呟く
刹那、巻物から光が発生(もちろん誰にも気づかれない程度に)し、雪泉の体を包み込む
一瞬、生まれた時の姿を晒すも巻物が瞬く間に輝き、次の瞬間、雪泉はその身に忍装束を纏っていた
「っ!」
転身を完了させた雪泉はすぐさま動き出し、誰にも見られぬように素早く建物の上や木の上を飛んで紫苑がいるでろう法に向かっていった
「(待っていてください、紫苑!今行きます!)」
紫苑のことの身を案じる雪泉の足は次第に速くなっていくのだった
そんな中、紫苑が張った結界の中では
「ふっ!てぇいっ!」
【『っ!!』】
相対する水の怪物と凄まじい体術戦を繰り広げる紫苑が居た
「やあっ!」
【『ッ!』】ザブン、シュルルルル!
「なっ!?」
勢いよく蹴り込んだ紫苑だったがそれに水の怪物が対し手を伸縮させ足に絡ませる事で勢いを殺し身動きを封じた
【『ッ!!』】ドゴッ!
「がはっ!?」
捉えるやそのまま紫苑を地面に向かって勢いよく叩き伏せる
ドゴンドゴンドゴンドゴン!
しかしそれだけでは終わらなず、幾度となく地面への叩き付けを連発していく
「ぐふっ!?」
何度も地面に叩き付けられ、そのダメージがどんどんと蓄積していく
【『…ッ!』】
直後、再度紫苑を地面に叩き付けようと掴んでいる手を上に振り上げる
「…いい加減にしろ!」
持ち上げられた紫苑が水の怪物が叩き付けるよりも先に印を結んだ
ゴゴゴゴ…バキキキキ!!
次の瞬間、地面から槍のように盛り上がった岩が水の怪物を突き刺した
それによって足を拘束していた水の怪物の手が離れた事で自由の身に
「っ!」
すぐさま距離を取り、間合いを離した
一定の距離まで後退した紫苑が再び視線を敵に向ける
術が解け、槍状の岩に串刺しにされた水の怪物がよろよろとしていた
「…っ?」
しかし、即座に水の怪物に変化が起き、両肩についている瓶が光りだし
そこから水が出てきたと思いきやその水が水の怪物の体をみるみる再生させ
者の数秒で元の状態に戻ってしまい、再び戦闘態勢を取っていた
「…再生能力とは、厄介な」
ダメージを瞬時に回復してしまう敵を相手に紫苑は苦戦を強いられるのだった