⦅忍結界内⦆
ドゴォォォォン!
【『ッ!』】
「ぐっ!?」
張り巡らせた結界の中で襲い来る水の怪物との戦闘が激化をたどっていた
「ちぃ!…っ!」パン
猛攻を受ける中、負けじと紫苑が反撃をせんと印を結ぶ
「秘伝忍法【烈風のソナタ】…えぇぇい!!」
ビュオォォ!ズシュシュシュ!
【『ッ…ッ!?』】ガクガク
紫苑の放った風の刃が水の怪物の体を切り刻んだ
それによって水の怪物の体がボロボロになった
「はぁ…はぁ…はぁ……あっ!」
やったと思ったのもつかの間、先の攻撃の時と同様に水の怪物の両肩から水が噴き出しその身を覆う
そしてそれが切り裂かれた部分を見る見るうちに回復させ、ものの数秒で元通りになってしまった
【『…』】キュピン!
「ま、またっ!?」
【『ッ!』】プシュァァァァァ!!
「っ!?」
またも回復された事に驚く紫苑の隙をつくかのように水の怪物が口から水を吹き出した
「まずい!【クリア・ウォール】!!」
キュィィン!
攻撃を受ける最中、紫苑は咄嗟に防御系の術を発動させ攻撃を防ぐ
「ぬぅっ…ぐぅぅ!?」
しかし敵の技の威力は凄まじく、防御してもしきれないくらいの威力だった
徐々に防壁を強いて尚、紫苑が押されていき
そうはさせじと堪えるもそれは変えられない
【『ッ!』】ブシュゥゥゥゥゥ!
ピキッ…ピキキキキ!!
「なっ、ぐぅぅ!?」
しびれを切らした水の怪物が力を加えて水を一転に集中させ貫通力を上げていった
見る見るうちに壁に亀裂が走っていき、それはどんどんと広がる
【『ッ!』】
バリィィィン!ズシュ!
「痛っ!?」
次の瞬間、亀裂の入ったクリア・ウォールは粉々に砕け散り、その水の余波が紫苑の頬をかすり、頬を血の色に染め上げた
「ぐぅ…っ、うぅぅ…」
想像を絶するダメージによって紫苑は一気に劣勢に追いやられた
【『ッ!』】
「なっ!?」
ドガバキドゴゴン!
そこから更なる追撃が
殴る蹴るなどの止まらない猛攻が紫苑を苦しめていった
「うっ…ぐぅぅ」ドサッ
遂にダメージがピークを越えてしまい、倒れたと同時に転身すらも解けてしまった
「ま、まだ…まだ…だ…」
必死に身を起こそうと紫苑は踏ん張りを見せ、再び忍転身を使用と巻物を構えようとした
【『ッ!』】ドゴン!
「ぐぅっ、がはっ!?」
だが、そこへ容赦のない蹴りが炸裂し、今一度紫苑を地に横たわらせた
倒れた拍子に手にしていた巻物が彼の手から離れ、地面をコロコロと転がり、水の怪物の足にぶつかり
それを水の怪物が拾い上げる
「っ、か、返せ!」
巻物が奪われたことに気づいた紫苑が取り返そうと這いずるように足を掴む
しかし当然のごとく振り払われてしまう
「っ…」
【『ッ!』】キュピーン
刹那、水の怪物が男?からの指令を受信した
【『…ッ!』】ゴボボボボッ
「な、なにを!」
指令を受けた水の怪物が手にしている巻物をそこから湧き上がらせた水状の球体で包み込んだ
水の球体の中に閉じ込められた巻物がその中で発生しているであろう水圧によってどんどんとぺしゃんこにされていった
「や、やめろぉぉぉ!」
それに気づいた紫苑が必死にやめさせようとする
しかし、言葉だけではどうにもならないこともある
ザバァァァン!
【『ッ』】ギュッ
「…」ニヤッ
「あっ、あぁ…」アセアセ
紫苑の思いもむなしく水の怪物が手をぎゅっとした瞬間、水ははじけ飛び
それにより紫苑の巻物は滴る水とともに跡形もなく消滅してしまった
「そ、そんな…」
巻物を消されてしまったことで紫苑は忍転身が出来なくなってしまった
「ぐっ、うぅぅ…」
地面に倒れる紫苑を見下ろすように水の怪物が眺める
「(どうする?巻物を消された以上僕は忍転身が出来ない、転身が出来なくなったこの状況下でこいつを相手にするのは至難の業だぞ?)」
これほどまでの境地に立たされ、紫苑はどうすべきかを必死に考える
「(でも今ここで僕がやらなきゃいけない、もし僕がやられて結界が消えてこいつを操っている奴が人々を襲うなんて事態になったら!?)」
結界の外、すなわち現実世界で水の怪物が見境なく暴れでもしたら被害はとてつもないことになるかもしれない
果ては雪泉たちに牙をむいたとしたらと想像するだけで震えが走るとともに断固としてそんなことはさせられないという思いが紫苑の思考を染め上げる
「(こいつはここで倒す。この身にかけて、絶対に!)」グヌヌ
意を決した紫苑が底力で立ち上がり、対する水の怪物をにらみ据える
そんな中、これまでの戦いを見ていた男?がニヤリと笑みをこぼすとともに懐から何かを取り出す
次の瞬間、どういうわけか取り出したそれを紫苑めがけて投げつけた
「えっ?うわっ!」ガシッ
それに気づいた紫苑が反射的にそれをキャッチしてしまった
恐る恐る確認してみるとそれは巻物だった
自分が持っていた白い巻物とは対照的な黒い巻物を
「どうして?」
なぜ自分に巻物を、しかもいきわたるようにして投げつけてきたのか不思議でならなかった
訳も分からずで紫苑が困惑している時だった
「…使いなさい」
「えっ?」
直後、信じられない一言が紫苑の耳に入る
この空間の中で自分以外に声を発せられるのは1人しかいない
それを踏まえて声のするほうを向く
案の定声の主は水の怪物を操り自分を苦しめているはずの男?だった
不敵な笑みを浮かべながらこちらを見ている男?が先ほど自分に手渡したであろう巻物を使えと言ってきた
なぜそんなことをさせるのか、仮に自分が使ったとしたら形勢が逆転してしまう恐れだってあるのに
どうしてそんなリスクを犯してまで使うように促すのか紫苑には理解できなかった
「ふふふっ」
「(っ!…ま、惑わされちゃだめだ僕、どういうわけか知らないけどこんなの明らかに罠に決まってる!)」
冷静に考えたら敵側がそんなことをするなんて十中八九罠である可能性は非常に高い
「騙されるものか!この巻物を使ったら何か罠が発動するに決まってる。そんな手には乗らないぞ!」
紫苑がそう言って巻物を捨てようとした
「だったら捨てればいい、もっともその時はあなたは亡き者にされこの世界がどうなってしまうのかもわからないけどね」
「っ!?」
しかし直後に語った男?のその一言で紫苑の手がぴたりと止まる
「この世界が、どうなるかだって?」
「すべてはあなたの決断にゆだねられている。さぁ、自らの意思で選びなさい、運命は今あなたの手の中にあるわ」
「っ!?」
運命がかかっているその言葉の重みが紫苑に重くのしかかるのだった