激戦の末、紫苑が暗を倒したのと同じ頃
場所は変わり、島へと続く海上にて動きがあった
広く広がる海の上で移動する複数の物体が島に向かって進んでいた
物体の正体、それは「氷」だった
「皆さん、ちゃんとついてこれてますか?」
「えぇ、大丈夫です。全員ついてこれてますよ」
「でもちょっと寒いねやっぱり」
「申し訳ございません。もう少しの辛抱ですから」
先頭を行くのは雪泉、彼女が生み出した氷を足場にして海上を進んでいく
「もうすぐ島に付きそうだよ」
四季が島との距離がもう僅かであり、あと少しすればつくところまで来ていることを皆に伝える
「(紫苑、待っていてください、もうすぐ行きますから)」
島への上陸が迫る中、雪泉は心の中で紫苑への思いを募らせるのだった
一方そのころ、紫苑のほうはというと
暗を倒した後、再度夜泉の元に向かうべく行動を開始していた
「…っ?」ピクッ
しかしその直後、紫苑は何かを感じとると足を止め、あたりを見渡す
その直後だった
「ヒヤァァァァ!!」
「っ!?」
紫苑の背後を狙って襲い掛かってきたのは夜泉のもう一人の側近である「冥」だった
非堂は素早い動きで一気に詰め寄り、鋭い爪の手刀を突き立て紫苑に襲い掛かる
咄嗟に紫苑は回避をするも掠った頬からは血が滲み出ていた
「ちっ…まぁいいわ。こんなんでやられたらかえって興醒めだものね…ちろっ…」
「っ!」
攻撃をかわされ、少し不満を漏らす冥だったが、楽しみがすぐに無くなってはつまらないからとすぐに考えを改めながらその際に腕にこべりついた血を舐めとった
その仕草を見て紫苑は一瞬背筋に寒いものが走る
「シャァァァ!」
直後、奇声を上げながら冥が再び攻撃を仕掛けてきた
急ぎその攻撃を回避する
紫苑が回避を取ったことで標的を失った冥はそのまま数メートル先で止まる
「ふん、シャアっ!!」
しかし冥も転んでもただは起きるわけもなくすかさず右手に力を込めるや、紫苑に向けてその手を突き出す
刹那、突き出された冥の手の先から衝撃波が放たれた
危険を感じ取った紫苑は横にバク転しながらかわす
その直後、紫苑の背後にあった岩に斬撃波は直撃する
本来硬いはずの岩がまるで紙同然というかのように粉々に切り裂かれた
「ハアッ!」
冥はそこから斬撃波を紫苑に向かって連続で繰り出していく
紫苑も負けじと炎のエネルギー弾を冥に向かって放つ
だが、冥の俊敏な動きに紫苑の攻撃が当たるはずもなく次々とかわされてしまう
「っ!?」
「この裏切り者が!死ねぇぇぇぇ!!」
次はこちらの番というかのように冥は手にエネルギーを込めるとそれを勢いよく紫苑に向かって放つ
咄嗟にかわす紫苑だったが、エネルギー波が着弾した地面には大きなクレーターができていた
「シャアっ!」
「っ!?」
直後、間髪入れずに冥が仕掛けてきた
素早い動きから繰り出される蹴りを主体とした奥州を前に紫苑は苦戦を強いられるのだった
一方その頃、紫苑がピンチに陥っていることなど知らない雪泉たちが上陸していた
「こんなところに本当に紫苑ちんがいるのかな?」
「侵害だぞ四季、小太郎たちが今まで追跡で失敗したことなどない、この島のどこかにいるのは間違いないはずだ」
なんとかやってきた一同ではあったが、本当にここに紫苑がいるのかとやや半信半疑な四季に叢が物申す
「(紫苑、待っていてください、今、参ります)」
他の皆が今後についてを話し合っている中、雪泉はこの島のどこかにいるであろう紫苑のことを思いながら心の声でつぶやくのだった
その頃、冥の怒涛の追い込みによって苦戦を強いられている紫苑はというと
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
やはり非堂の攻撃が応えている様子で披露が見て取れていた
「ヒヒヒッ、もう虫の息みたいね。ならばそろそろ終わらせてあげるわ!」
とどめを誘うと冥が再び右手にエネルギーをチャージする
万事休す、絶望的な状況に置かれる
〈-紫苑-〉
「っ?」
するとその時、紫苑の脳裏に声が響く
「(今の声、まさか?)」
聞こえてきた声の方に視線がいく
「この状況でよそ見とはいい度胸ね!余裕ぶいてんじゃないわよ!死ねぇぇぇ!!」
「っ!?」
しかしそれによって隙ができてしまい、さらには自分を前によそ見をするという態度が冥の逆鱗に触れたようで
チャージが完了するなり即座にエネルギー波を放った
放たれたエネルギー波が紫苑に直撃する
「ぐぅっ!?」
「ヒャハハハハ、死ねぇぇぇぇぇぇ!!」
直撃を受け、苦悶の声を上げる紫苑を見て機嫌をよくした冥は
紫苑を亡き者にすべく一気に畳み掛ける
だが、紫苑も負けじと踏ん張り、攻撃を耐え続ける
するウとその時だった紫苑の身体が一瞬発光する
「っ?…てぇぇぇぇぇい!!」
冥もそれに気づいたが構わず最大パワーで仕留めにかかる
しかしフルパワーでエネルギー波を繰り出すも先ほどまでとは打って変わり、紫苑の顔から苦悶の表情はなくなっていた
その直後だった
キュピィィィィィン!!
「な、なんだ!?」
攻撃を受け続けていた紫苑の身体が再び発光しだし、先ほど以上の輝きを放つとともに冥の攻撃はかき消された
やがて光が止むとそこには暗の時と同じく、それでいて姿に変化を見せた紫苑の姿があった
「なっ…」
冥もこれには驚きを隠せない様子だった
その隙を突くように紫苑が身構える
右手に水を、左手に風のエネルギーを生み出し両方の掌でそれらを包み込む
「っ、させるか!」
反応が遅れたものの技の発動を阻止しようと冥も技を繰り出そうとする
「…はぁっ!」
しかしそれよりも早く紫苑の技が放たれる
水と風、二つの力を宿した斬撃波が冥目掛けて飛んでいく
「キエッ!?」
次の瞬間、紫苑の繰り出した技が冥に直撃する
身体全体にそのエネルギーが迸る
ボバァァァァァァァン!
そしてその直後には冥の身体は大爆発を起こした
爆煙が経ちこむとともに周囲はシーンと静まりかえっていた
やがて煙が晴れていき、視界の向こう側が見えてきた
視界が回復して見えてきた先にはその場に大の字で倒れ込んだ冥の姿が
おもむろに紫苑は冥の元に歩み寄る
「ゼェ…ハァ…ゼェ…ハァ……キ、キヒヒヒ…よ、よくもやって、くれやがった…な。暗や夜泉のことならいざ、知らず…あんたの…そういう、ところ、あたしは大嫌い、だったぜ…だから、あんたを消すいい機会、だったのに…へっ、この座間だよ。やるせないねぇ」
もう動けない冥は紫苑に対して本心をぶちまける
「これで勝ったとは思わないでよね…この先にはまだ夜泉が残ってるんだから、せいぜい足掻いてみせなよ。キシシシ、キシシシシシss……」しゅ~…
最後の最後に紫苑を嘲笑いながら冥は灰化、消滅した
「……っ」
暗に続いて冥に対してもどこか複雑な面持ちを浮かべながらも紫苑は前に進むのだった