宇宙は一つではなく無数に他にも存在するかもしれないということからこの名は存在する
無論それは忍の世界にも存在する
これはそんなマルチバースによって起こったとある事件の物語である…
――
「…ふぅ、よし、綺麗になったわね」ガタッ
真夜中の時刻、場所は月閃女学館の保健室
そこで椅子に腰掛け、一息吐く女性が居た
「さて……綺麗になったは良いけどどうしたものかしらねこれ?」
女性は何か悩んでいる様子でじっととあるものを見ていた
視線を向けるそれは指輪だった
「調査忍務で出向いた際に見つけてあれよあれよといううちに思わず持ち帰ってしまったわけだけども」
思わず持ち帰ってしまったことに多少の罪悪感を抱きながら女性はこの指輪をどうしたのかと頭を抱えていた
「まぁ、せっかく持ってきたわけだし一回くらい嵌めてみようかしら」
好奇心からか女性は指輪を右手の人差し指に嵌めこんだ
自分の人差し指に嵌る指輪を目にし、思わずうっとりとしていた
その時だった
キュィィィイイイン!
「えっ――な、なにっ!?」
どうしたことか指輪が突然光を発し始めた
全く予想外の出来事に困惑していると事態が更なる変化を起こす
ピィイイイイ!!
指輪から一筋の光が放たれたのだ
放たれた光によって何もない場所に靄のようなものが出現し始めた
「こ、これは、なんなの?」
突然として現れた靄に女性は警戒をする
するとその時だった
ビュォォォオオオオオ!!
「な、なにこれ!?す、吸い寄せられて!?」
更に靄が周囲の物を吸い寄せ、女性もまたそれに巻き込まれてしまう
女性は吸い込まれまいと必死に抵抗を試みる
「~~~――しまっ、きゃぁああああ!?」ブワッ!
だが、その抵抗も虚しく女性は靄の中に吸い込まれてしまった
彼女を吸い込んだ事で靄が消滅し、誰も居なくなった保健室だけが残ったのだった
――
冬を迎え、寒空が肌を伝う季節
「ごきげんよう!」
「あら、ごきげんよう」
月閃女学館は今日も平和な日々を送っていた
学館に登校する生徒達が互いに挨拶を交わしていく
「あっ……もし、あれをご覧ください」
「――あれはっ」
すると生徒たちが皆一同に一点に視線を集中させる
彼女達の視線の先、そこには1人の人物が歩いていた
朝日の光に反射して輝く銀色の髪を靡かせ、その場に居る者達全員を虜にする可憐なる美顔、溢れるばかりの凛々しさ
それらを併せ持ち、月閃女学館の選抜メンバー筆頭にして学館の憧れの的である人物……「紫苑」である
「見て、紫苑様よ!」
「本当だわ!」
女子生徒達は紫苑の姿を見るなり全員が憧れの視線を送る
「紫苑お姉様、ごきげんよう!」
「はい、ごきげんよう」
「「「「きゃぁああああ♪」」」」
1人の生徒が挨拶し、紫苑がそれを返すと黄色い声援が木霊する
「では皆さん。今日は一段と寒いですから体にお気を付けてくださいね」
「は、はい!ありがとうございます!」
生徒達に一声掛け、一礼すると紫苑はその場を後にした
「紫苑お姉様、今日もお美しかったわね~」
「本当本当、あぁ、お姉様~♪」
紫苑の去った後も生徒たちはうっとりとした表情を浮かべていたのだった
一方、生徒達に挨拶を終えた紫苑はその後、忍部屋に到着した
「はぁあ~~…」ぬぼ~ん
「しおんちゃん?」
「どうしたんですかそんな盛大なため息なんてついて?」
部屋に着くなり、暗い顔をして座り込んでいる紫苑に皆が視線を向ける
「そりゃため息だって吐きたくなるでしょうが、だんだん男子に戻れる道が遠ざかっていくような気がして不安しかないよ」
そんな皆に紫苑が胸の内を愚痴った
「大丈夫だよ紫苑ちん、紫苑ちんはもう立派な”女の子”だから♪」
「僕の話聞いてた!?」ガビーン
するとそんな紫苑に対して四季から励ましの…ではなく追い打ちを掛けるような言葉を告げられショックを受ける
「なんで僕が気にしてるって言ってるのにそんなこと言うのさ!」
「もう紫苑ちんも懲りないね?いい加減に認めよ、紫苑ちんは可愛いんだから」
文句を言う紫苑に呆れた様子で四季が物申す
「そうだぞ紫苑、四季の言う通りだぞ?」
「まったくです。せっかくそんなに美しいのにそれを捨てるなんてもったいないですよ!」
「しおんちゃんは今のままでいいんだよ♪」
更には他の皆も四季同様に紫苑が女の子であれという考えを推す
「女装して女の子の振りをする今のままで良いなんてこと認めてたまるか!!」
「もう、強情なんだから~」
紫苑はそれでも尚、自分はこのままで言い訳がないと意思を貫いていた
四季達は頑なに否定する紫苑に困ったものを見るような目を向けていた
「元気を出して下さい紫苑」
「ゆ、雪泉」
するとそこに雪泉が声を掛けてきた
優しく声を掛けてくれる雪泉を見て紫苑は期待と信頼の視線を向ける
「大丈夫です紫苑、自信を持ってください、あなたは……”今もこの上なく美しいですから”!」
「――っ」パリーン
だがその期待はあっさり裏切られ、紫苑の中の何かが砕け散った
「紫苑、どうかしましたか?」
雪泉がその様子に気づいて徐に尋ねる
「ぴっ…」
「「「「「ぴ?」」」」」
「ぴやぁあああああ――っ!!」
「「「「「――っ!?」」」」」
直後、紫苑が途端に泣き始めた
「そうやっていつもみんなして僕のことを煽って面白がって!もうやだ~――っ!!」ピエーン!
「あぁ紫苑!?」
心に傷が付いてしまった紫苑が泣きながら部屋を飛び出して行ってしまった
呼び止めようと声を掛けようとする雪泉達だったが、その暇もなく紫苑の逃亡を許してしまうのだった
忍部屋を抜け出した紫苑はそれからどうしたかというと学館に通じる階段に腰掛けていた
「うぅ~、みんな、なんでぇ…どうして~」グスン
いつものこととは言えさしもの紫苑も溜まっていたストレスが一気に爆発し、鬱になりかけてしまっていた
そうして一人ポツンと座り込んでいる時だった
「――っ?」
急に風の流れが変わったのを紫苑が感じとる
ギュゥウウウウウン!!
「な、なんだ!?」
困惑していると何もない空間に突然歪みのようなものが出現する
何事かと紫苑が様子を窺っていたその時だった
「ん?何か……見える?」
歪みの奥から何かが見えてきた
注意深くそれを紫苑が見る
「――ぁぁぁあああああああ!?」
「――っ!?」
するとその直後、歪みの奥から何かが叫び声のようなものを上げてこちらに向かって飛んできた
「「――っ!?」」ゴチィイイイン!!
刹那、飛んできたものと紫苑が衝突し、頭をぶつけた
「――っドサッ
「痛たた――っ!?…もう、なにが…っ!?」
突然のことに事態が飲み込めず、ぶつけた箇所を摩りながら目を向ける
紫苑がそこで目にしたのは先の衝突により倒れたと思われる女性が倒れていた
どうやら打ちどころが悪かったらしく気を失ってしまっていた
「た、大変だ!?保健室に連れて行かないと――っ!!」
気を失ってしまっている女性を抱え、紫苑は保健室に急ぐのだった
今回から数週間にかけて麻婆豆腐メンタルさんとのコラボ回を投稿させていただきます。
よろしくお願いいたします。