今日もまた蛇女の一日が始まったのだが、今回はなにやらいつもとは違う雰囲気だった
一つは。珍しく忍部屋に鈴音先生が来ていたことだ
蛇女では殆どの場合は個人がそれぞれ自分なりの修行を行うのが殆ど
つまり教師が自ら顔を出すことは希なことである
そもそも、蛇女において教師というのは名ばかりが多く。実際の約割は上層部から言い渡される重要な指令を伝える存在なのである
そしてその鈴音がここにいるということは…
っと。この場に集められた選抜メンバーたちは十中八九気づいていた
これから自分たちに言い渡される任務は重要なことなのだと
「みんな。揃ったようだな?」
全員がいることを確認すると上層部から伝えられた任務の内容を鈴音が伝える
「……単刀直入に言う。お前達には半蔵学院に攻めこんでもらう。我々の目的は一つ、超秘伝忍法書の奪取だ」
ついに来たかと光牙や春花などは内心思っていた
「どうして超秘伝忍法書を奪わないとならないんですか?」
「より強い忍部隊を作り出すためだ。それ以上の詮索はするな、時間の無駄だ」
鈴音はきっぱり言った
「ふん…詮索など、どうでもいいことだ」
「光牙?」
「俺たちはただ与えられた任務をこなせばいい…忍とはそういうものだ」
「…そうだな」
焔も光牙の言葉に納得する
「では準備を終え次第、早急に任務に向かってもらう。各自しっかり準備するように」
そう言うと鈴音は部屋を後にした
そして選抜メンバーは自室にて出現の準備を終え、いよいよ出現の時が来た
各自自分たちの配下からそれぞれの小部隊を詰めていた
今回、最後に到着したのはいつもは遅れることのない光牙だった
「あら珍しい。あなたが遅刻なんて…何かあったの?」
「どうもしない…あいつらが自分たちを連れてけとうるさくてな」
光牙が向いた先には
「「「「天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!…我ら、光牙親衛隊!!」」」」
かっこいいと思っているのかやたらポージングを決める女子たちが
「…光牙くんも大変ね」
「全くだ…荷物にしかならん」
光牙は嫌そうな顔をしながらそう言うと光牙は気持ちを切り替え、この場に集まった全員に語りかける
「聞けお前たち。これから俺たちは半蔵学院を攻める。狙うは半蔵の奴らが保管している超秘伝忍法書を奪う事。だが半蔵学院とてそう安々と忍法書を奪わせようとはしないだろう…半蔵学院との忍との戦いが俺たちを待っている。そうなれば最悪の場合、命を落とす可能性もある」
それを聞いた各選抜メンバーの部隊の女子たちは唾を飲む
「俺たちは忍だ。いつでも死ぬ覚悟はできている」
光牙のその言葉に焔たちは忍としての覚悟を再確認した
「だが、それでも敢えて言わせてもらう」
そして光牙はそっと目を開き、不安がる彼女にこの言葉を送った
「…………死ぬなよ」
「「「「「「「「「「ウオォォォォォォォォォォォォーーー!!!!!!!」」」」」」」」」」
光牙のその言葉に勇気づけられた彼女たち全員が声をあげる
「では……いくぞ半蔵学院に!!!」
その言葉を合図に光牙を先頭とし一同は半蔵学院へと向かうのだった
そして一行は半蔵学院付近にまで到着した
「では、そろそろ作戦を確認するぞ」
他の選抜メンバーたちと作戦の最終確認を始める
「まずは焔、詠、日影、未来。お前たちには半蔵学院に正面から殴り込みをしてもらう」
光牙が焔たちにそうと
「おう!任せろ!」
「承知しましたわ」
「ほ~い」
「任せといて!!」
焔たちも内容を了承した
「次に俺と春花だ。俺たちの役目は陽動をかけている焔たちに半蔵のやつらがそっちに気を取られている隙に校内に侵入し、目的の超秘伝忍法書を見つけ出す」
「了解よ」
「見つけ次第合図を送る。合図を確認次第お前たちも速やかに撤退しろ」
「わかった!」
話しまとまった
「よし、任務スタートだ」
そして選抜メンバーたちが作戦を開始するのだった
「さあいくぜ!!」
「わたくしたちの力を思い知らせてやりますわ!!」
「いくでえぇ!!」
「ぶっ飛ばしてやるわ!!」
作戦通りに焔たちが半蔵学院に正面から殴り込んでいる中で
光牙達は、裏門を飛び越え、校舎に侵入した
焔たちが陽動をかけてくれてるとは言え、探す時間は限られている
時間を気にしつつ、急ぎ光牙たちは超秘伝忍法書を探し続ける
「ありました!忍法書です!!」
声のするほうを見ると光牙親衛隊の子が巻きものを手にしていた
その横では先を越されただの手柄がだのと泣き叫ぶ春花の部下たちがいた
「見つけたのか?」
「はい、こちらです」
見せられた忍法書は 豪華な刺繍が施され、神々しいオーラを放っている
「間違いないわね」
「超秘伝忍法書だ」
見つかったことを喜ぶ部下たちだが
そんな彼女たちとは逆にこんなにも簡単に秘伝忍法書が発見できるものなのだろうかと二人は内心疑いを向けていた
「あっれ~?春花様。この巻物何も書いてありませんぜ?」
そんな時、不覚にも春花の部下が秘伝忍法書を開いてしまった
「なっ!?なにをしてるのこのバカ犬!!」
春花が部下を怒鳴ろうとした、その時だった
「なっなんだ…これ…」
部下たちが一斉に苦しみだした
徐々に徐々にと顔から血の気が引き、目から生気が失せていく
「こう、が…さ、ま……逃げ…て」
突然部下たちが武器を手にし主である光牙たちに襲いかかる
「くっ!どういうつもりなの!?犬の分際で!!」
「かっ…からだが…勝手に…!」
徐々に迫り来る武器を構えた部下たち
「どうやら敵の罠にハマったみたいね…光牙くんは大丈夫?……光牙くん?」
「はぁ…はぁ…はぁ…問題ない」
そうは言うがどう見ても今の光牙の状態はまずいようだ
「も、もう…だ、め…です」
部下たちは正気を失い、意思のない壊れた機械のように手にした剣を無造作に振り回す
「こっ…ころ…して…」
最後の抵抗と言わんばかりに力を振り絞り自らの身体を押さえ込み自分たちを殺すよう言ってくる
それに春花は戸惑っていた
しかしそれを待たずしてついに部下の1人が襲いかかってきた
躊躇していたせいか春花は隙が生まれて反応が間に合わなかった
だが
ザシュン!!
ドサッ…
「こう、が…くん?」
「大丈夫か春花……」
息苦しさをこらえているかのような辛そうな声で春花に光牙は尋ねる
「光牙くん。あなた…その子は」
先程、光牙が斬ったのは秘伝忍法書を探し当てたあの子だった
「…わかっているだろう。…こいつらを救う手はない。俺たちに出来ることは、早くこの苦しみからあいつらを開放してやることだけだ」
光牙は現実を受け止め、自分が今、してやれる最大限のことをしていた
「……まだこの犬たちに、ご褒美、あげてないのよ」ナキ
春花の悲しみの思いもむなしく
なおも部下達は奇声を上げ、容赦なく襲いかかる
彼らの耳にはもう自分の声なんか届かない
部下を想う春花は劇薬の詰まった試験管を壊れるような勢いで握り締め
「このバカ犬共がーーーっ!!!」
春花は涙を流しながら部下たちに引導を渡すのだった
その後も光牙と春花は脱出の為に同じように狂ってしまった仲間たちをなぎ倒していく
「もう少しで逃げ切れるわ!!」
「そうだな!」
あと少しでここを抜け出せる。そうすれば任務を完遂することができる
二人はそう思っていた…だが
ドックン…
グアァァァウゥゥゥゥ!!!
「ぐっ…がはっ!?」
「どうしたの光牙くん!?…まさか、光牙くんまで!?」
しかし、光牙のそれは部下たちの時とは違っていた光牙の体から凄まじい力を秘めた白いオーラが湧き出てくる
「(これはもしや!?……いや。そんなはずはない、父さんの施した封印術が弱まっているはずがない!)」
光牙はなんとかして理性を保とうと踏ん張っていると徐々にオーラは収まった
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「光牙くん、今のはなに?」
「…説明は後だ…ともかく今は逃げることが先決だ」
「…わかったわ」
苦しむ光牙を抱えながらも春花はどうにか脱出に成功し、半蔵学院を離れた
他のみんなは無事だろうとは思ってはいるものの
この作戦での犠牲はあまりにも多かった……