圧倒的な力の前に倒れてしまった雪泉たちの敵を取るべく紫苑が力を解放し、勝負に挑む
然れど淡雪《あわゆき》はそんな紫苑と互角かそれ以上の力を示し、徐々に追い込んでいた
辛くも防御壁を突破する事に成功した紫苑が追撃として雨雲を生み出し、斬時雨《きりしぐれ》を放つ
「――っ!!」ギュィン!チャポポポン!!
「なにっ!?」
しかし紫苑の仕掛けた攻撃を淡雪《あわゆき》は吸い取ってしまい、自身の技として繰り出した
全ての水を吸収したそれはまるで蛇の様な動きで紫苑へと押し寄せる
反応よりも速いその動きに紫苑は対処が間に合わなかった
ジャババシャァアアアアン!!
「――っ!?」ゴボォォ!
次の瞬間、水に飲みこまれた紫苑にまるで激流の如き勢いが襲い掛かる
水圧と無酸素状態に陥られ、紫苑は苦悶の表情を浮かべる
「…――っ!!」ギュィン!
ジャポポポ~ン!!
するとその直後、淡雪《あわゆき》が思念を送ると送るとそれに好悪するように水が動きを見せる
鎌首を上げるような仕草を取ると水が一気に地面に向かって紫苑を叩きつけようとする
バジャバババァアアアン!
刹那、衝撃と水が破裂するような音が響き渡り、その音のする場合には凄まじい力で叩き付けられたダメージによって倒れる紫苑の姿があった
「ぐぶっ、ぶふぉ!?ゲホッ!ゲホゲホッ!?」
打ち付けられた痛みと飲み込んでしまっていた水を吐き出した紫苑は苦しそうに悶絶していた
「少しお痛が過ぎてしまったわね」
蒸せて咳き込んでいる紫苑に淡雪《あわゆき》が近いてきた
「ぐっ…ぬぅぅ!?」
淡雪《あわゆき》が歩み寄ってきているのに気付いた紫苑はまだダメージの残っている体に鞭を打ちながら立ち上がり、身構える
「……もうやめましょう紫苑。これ以上私達家族が戦う必要はないわ」
そんな紫苑に淡雪《あわゆき》が戦いを止めるように打診してきた
自分たちが戦う必要はないと
「はぁ…はぁ…ちっ、違う!あ…あんたは家族じゃない。僕の家族は…雪泉たちだ!」
だが紫苑は淡雪《あわゆき》の言葉を全力で否定する
あくまでも自分にとって家族は雪泉達であり、淡雪《あわゆき》はそうではないと
「どうして…どうして!!」パシュシュシュン!
「ぐぁっ!?」
存在を否定され、淡雪《あわゆき》はたまらず気弾を放つ
直撃を受けた紫苑は後方へと吹き飛ばされてしまう
「せっかく会えたのに……再会できたのに、私を貴方が否定するなんて……」
受け入れられない現実に淡雪《あわゆき》の心はざわつき、平常心ではいられないようだった
「あぁ…そうか…雪泉たち《あいつら》と一緒に暮らしてたからそこまで毒されちゃったんだぁ…可哀そうな私の天使ちゃん」
すると淡雪《あわゆき》は突然どこか腑に落ちた様子でぼそりと呟く
同行は開き、狂ったような笑みを浮かべて紫苑を見ていた
「じゃあやっぱり、私が綺麗にして元に戻してあげないとね…」
そう言うと淡雪《あわゆき》は視線を紫苑から逸らす
「まっ、まさか!?」
彼女の視線の先に紫苑はハッとする
淡雪《あわゆき》の視線の先には倒れている雪泉たちが
「私の天使ちゃんを怪我した汚物ども…――っ!」ギュィイイン!
雪泉達に狙いを定めるや淡雪《あわゆき》が全身から力を溢れ出させると両手を翳す
「やめて!?やめてくれ!?」
「大丈夫よ天使ちゃん……今、終わるから」
必死に止めるように願いでても淡雪《あわゆき》には通じているようで通じてはいない状況だった
懇願しても止まらない淡雪《あわゆき》に紫苑は打開策を必死に考える
「これでおしまい…この世から消えてなくなれぇえええ!!」
パシュゥゥウウウウウウン!!
次の瞬間、怒りを込めた光波が雪泉たちに向かって飛んでいく
物凄い速さで光波が彼女たちに迫り来る
ドドドオオオオオオオン!!
刹那、光波が激突する音が響き渡る
手応えを感じたものの、爆発はしていないことに違和感を覚えた淡雪《あわゆき》がハッとした顔を浮かべる
「――っ!?」ググググッ!
「なっ!?」
そこには着弾の直前に雪泉たちの前に立ち、光波を受け止めている紫苑の姿があった
「ぐっ!ぐぎぎぎぎぎ!?」
雪泉たちを守らんと必死に光波を受け止める
「何をしているの紫苑!?やめなさい、このままでは貴方まで!?」
紫苑を巻き込みたくない淡雪《あわゆき》が止めるように声を掛ける
「いやだ!雪泉たちを見捨てるくらいなら僕は…死を選ぶ!!」
「――っ!?」
「ふっ、ぐぅうううううう!!」
淡雪《あわゆき》の説得を蹴り、紫苑は押し返そうと必死に藻掻く
「(だ、ダメだ。威力が強すぎてこれ以上、おっ押し返せない!?)」
しかし威力が桁外れな淡雪《あわゆき》の光波を抑え込めず、紫苑は絶望の状況に追い込まれる
もうダメかと紫苑が思った時だった
「――っ?」
不意に紫苑は背中を触られる感触を覚え、振り替える
「大丈夫ですか紫苑!」
「雪泉!?そ、それにみんな!?」
するとそこにはいつの間にか意識を取り戻した雪泉たちが紫苑を支えるようにして後ろに立っていた
「なっ、なんですって!?」
この状況にさしもの淡雪《あわゆき》も驚いていた
「紫苑、諦めてはいけません!」
「我らも力を貸す!」
「あたしたちの絆パワー見せつけてやろうよ!」
「みのりたちは絶対に負けないってところを!」
雪泉に続くように夜桜たちが紫苑を鼓舞し、自分たちも力を貸そうとしていた
「みんな、ありがとう…よし、行くよ!」
「「「「「はい(うむ)(OK)(うん)!!」」」」」
「「「「「「はぁああああ!!」」」」」」
キュピン!ビュォオオオオオオオ!!
「なっ!?なんですって!?」
皆の力を受け取った紫苑が発した光波が淡雪《あわゆき》の光波を押し返し始める
思わぬ事態に困惑する淡雪《あわゆき》だったが、自身も負けじと威力を上げていく
「「「「「「やぁあああああ!!」」」」」」
「ぐぅうううううう!!」
光波のせめぎ合いが繰り広げられ、互いに一歩も引かぬ接戦が続く
するとその最中、ぶつかり合いによる影響からか互いの光波のエネルギーが膨れ上がっていく
キュィン!ボバァアアアアン!!
「「「「「「「――っ!?」」」」」」」
次の瞬間、互いの光波が爆発し、発生した衝撃波が周囲を包みこんでいった
やがて光が収まり、視界も回復し始めた
「…うっ、うぅん…?」
意識を取り戻した紫苑が周囲を見渡す
見るとそこには同じように倒れている雪泉たちがいた
「み、みんな無事?」
「はっ、はい…なんとか」
声をかけると皆も目を覚ましたようで紫苑も安堵した
「…そっ、そうだ。あの人は!?」
ハッと我に返った紫苑が
「ぐっ…ぬぅぅ…!?」
「――っ!?」
すると後ろから苦しそうな声が聞こえ、振り替えるとそこには傷付けた身を引きずりながら歩いてくる
「そっ、そんな!?」
先ほどの撃ち合いで体力も残っていないこの状況で
「し…しお…ん…」
「渡さない…あなたは、わたしの…っ」
「――っ!?」
もう彼女も肉体の限界は超えているだろう、にも関わらず紫苑への執着心が身体を動かしている
紫苑は
徐々に少しずつ
だが、その時だった
キュピ―ン!
「――っ!?」
「こっ、これは!?」
それは突然の事だった
ギュィイイン!!
「なっ、なんだあれは!?」
更に程なくして空に謎の穴が発生する
「――ぐぅっ!?」ググィ!
すると穴が発生した途端、
「こ、これは、まっまさか指輪の効果が!?」
この現象から
「い、いやよ!せっかく、せっかく会えたのに!せめて紫苑、あなたを!」
「――っ!?」
「紫苑!?」
抵抗できる今の内に
しかしその直前、指輪の輝きが更に力を増す
「ふおっ!?――~~っ!?」グィイイ!
それに好悪するかのように吸引力が強くなり、とうとう
「やだ!こんなの、こんなの認めない!待って、待ってよ!しおーーーーん!!?」
ギュィイイン!キュピン!
必死に訴えかけるもその思いは届かず、
彼女を吸い込んだ後、穴は消滅した
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「おっ、終わったんでしょうか…?」
「…た、多分ね」
「そう…それは…よかった…」ガクッ
「ゆっ、雪泉…っ」ガクッ
戦いが終わったと知るや緊張の糸が切れた紫苑と雪泉は他の仲間たち同様に気を失ってしまった
その後、通りかかった同級生達に発見された紫苑達は病院に運ばれ、暫くの療養を余儀なくされるのだった
――
「うっ…うぅぅ…こ、ここは?」
気を失っていた
「あっ、
「…ゆ、みっ?」
声のする方を見るとそこには”雪泉”がいた
「心配しましたよ?登校していたら先生が通路に倒れていたんですから、それで夜桜さんたちに協力してもらってここまで運んできたんです」
「…そう、そうだったの?」
雪泉から事の経緯を聞きながら
「いったい何があったんですか?」
「それは…あっ、あれ?…わたしは”何をしてたのかしら”?」
「覚えてないんですか?」
「えっえぇ…ただ、敷いてあげるなら、”とても愛おしい存在”に会ったような…そんな感覚がするわ」
「愛おしい存在?」
空っぽな記憶に残る僅かな断片を辿った
「…ところで先生。こちらに見覚えはありますか?倒れていた先生の傍に落ちてたんですが?」
そう言うとともに雪泉が見せたのは二つに割れた指輪だった
「…さぁ、覚えがないわ?本当に私のなの?」
「あぁ言え、もしかしたらというだけなので先生のものでないのであれば問題ありませんよ」
「では先生、私は授業がありますのでこの辺で」
「あっ…えぇ、お疲れ様。ありがとう」
「いえいえ、それでは」
雪泉は一礼を終えると教室に戻っていった
「…いったい何だったのかしら?」
1人医務室に残された
どこかもやもやとした虚無感を感じるのだった