自分を女性扱いする事に不満を爆発させ、紫苑はその勢いで忍部屋を出て行った
1人校門前でしょぼくれていた紫苑だったが、突如として起こった奇怪な現象と
その直後に現れた謎の女性の出現に困惑を隠せなかったが、手当てをするべく保健室に向かうのだった
女性を連れて保健室にやってきた紫苑は彼女をベットの上に寝かしつける
「はぁ……びっくりしたな。さっきのは一体何だったんだろう?それにその後に現れたこの人の事も」
ここまで連れてきたは良いものの、紫苑はこの謎の女性の事が気になって仕方ない様子だった
「にしてもこの人…どことなく僕に似てるような気が…?」
女性の容姿がどことなく自分にそっくりであり、そのことも相まって
ますます彼女の存在自体が謎だと感じながらも紫苑は女性の様子を見守っていた
「ん…んん~……」
「――っ」ピクッ
するとその直後、呻き声を上げながら女性の意識が目覚めつつある事を紫苑が感じ取った
軈て意識を取り戻した女性が上半身を起き上がらせる
「~…こ、ここは…保健室?」
完全に目覚めた女性がここが保健室であることに気づいた
「眼が覚めたんですね。良かった。お加減はどうですか?」
紫苑は女性が目を覚ましたことに安堵しつつ、安否確認を行う
「えっ、えぇ、大丈夫よ。まだちょっと頭がズキッとするけど問題はな……い?」
「ど、どうしました?」
目を覚ました女性が返事を返そうとしたが、紫苑の顔を見た瞬間、彼女が驚いた表情を浮かべる
そんな彼女を見て紫苑は何事かと不安にな表情を浮かべる
「…紫苑?」
「――えっ?」
次の瞬間、女性が発した一声に紫苑は言葉を失う
しかも困惑している中、女性は次第に目から涙を流し始め、紫苑は益々慌てふためく
「――しおぉぉぉん!」ダキッ
「うえぇぇぇ――っ!?」オロオロ!
直後に物凄い勢いで女性が抱き付いてきたが為に紫苑は状況が飲み込めず頭が回らない状態だった
「会いたかった…会いたかったわ紫苑。私の、私のかわいい天使♪」
「えっ、えぇぇ――っ!?」
自分の事を愛おしそうに、更には天使だなどと言うものだから紫苑は反応に困り果ててしまう
「ちょ、ちょっと!ちょっと待ってください――っ!!」
「あん!?」
混乱が最高潮に達する寸前で気持ちを押し込め、抱き付いて来た女性を引き剝がす
「…な、なんで!?どうして僕の名前を!?」
初対面の筈なのに女性が自分の名前を呼ぶものだから紫苑は焦った表情を浮かべる
「どうしてって?そんなの”私が名付けた”からに決まっているじゃない♪」
「えっ?」
更に女性の思わぬ言葉に紫苑は言葉を失う
「あ、あなたが僕に名前を?」
「そうよ。なんたってあなたは私のかわいい天使ちゃんだもの♪」
恐る恐るもう一度訪ねてみても答えは変わらなかった
「(こ、この人は一体何を言っているんだ?僕にこの名前をくれたのは黒影様なのに?)」
物心付く頃に黒影に拾われ、雪泉と共に名前を付けてくれたから今こうして自分には紫苑という名前がある
故に彼女の言っている事は全く意味が解らなかった
「(……だけどこの感じ、どう見ても嘘を吐いているようには見えないんだよな)」
様子を見る限りでは嘘を言ってはいないのだと読み取れるも
なればこそ余計にこの事態が解らなかった
「あ、あの~?」
「な~に私の可愛い天使ちゃん?」
「そ、その呼び方は勘弁してください……こほん、それよりも僕の名前を付けたってどういう事ですか?それに一体貴女は何者なんですか?」
恥ずかしげもなく自分を天使呼びされる事に紫苑のほうが恥ずかしさを覚えるも、気持ちを切り替えて本題を切り出した
どうして彼女は自分の事を知っている様子なのか、何故自分に名付けをしたと言ったのかについてを尋ねる
「何者ですって?……もう、この子ったら何おかしなことを言っているかしら?”母親が子に名前を付ける”なんて当たり前の事じゃない?」
「……えっ?」
「――っ?」
女性から語られた言葉に紫苑は完全に頭が真っ白になってしまい、沈黙の時が流れる
「(さ、さっぱり意味が分からない、この人が僕の母親!?一体何がどうなってるんだ!?)」
紫苑の心の中はまさに大混乱状態だった
「(いや落ち着くんだ僕、そもそも僕は真白の力によってこの世界に転生した存在だ。だから僕には本来母親は居ないんだ!)」
錯乱し掛けるも紫苑は嘗て自分が「
闇の力に落ちた旧友の夜泉達と壮絶な戦いを繰り広げ、真白の力によってこの世界に転生したのだ
故に自分に母が居る筈が無い事を何とか自己完結させる事に成功する
「(しかし、だとすればどうにも解せない。さっきの名前の事と言いこの人からは嘘を吐いているという感じがまるでしない?)」
いくら探りをかけてみても本当のことであるかのように言動が一貫しているし
なまじ母と豪語するだけあって容姿が自分に似ている事を踏まえても彼女の事が今一解らなかった
「どうしちゃったの黙り込んで?貴方のそんな顔、お母さんあんまり見たくないわ」
「あっ…えっえっとすみませんあまりのことで脳の処理が追い付いてなかったようなので」アセアセ
黙りこくってしまっている現状に痺れを切らした女性が声を掛けてきた
「……失礼ですけどお名前を教えてはもらえませんか?一回整理する為にも」
我に返った紫苑はとりあえず気を落ち着かせると共に情報を探るべく名を訪ねてみる
「(さっきから対応がどうも塩らしいわね?それに私に名前を訪ねてくるし…はっ!ま、まさか、もう数年会えず仕舞いだったせいでお母さんのことを忘れてしまったって言うことなの!?私の天使ちゃんが私のことを忘れて…)」ガタガタ
「あ、あの~?だ、大丈夫ですか?」アタフタ
名前を伺った途端に固まったかと思ったら急にガタガタと震え出し始めた事に紫苑は何事かと焦っていた
「ぴ…」
「ぴ?」
「ぴやぁああ――っ!!」
「わぶ――っ!?」
するとその直後、女性が奇声を上げながら紫苑に抱き付いてきた
その際、紫苑は彼女の雪泉達に負けず劣らずの豊満なそれの間に顔が埋まってしまった
「いや、いやよ!私の天使ちゃんが私のことを忘れてしまっただなんて、そんなのいやよ――っ!!」
「(い、息が――///っ!?)」ガタガタ
ショックで泣きじゃくる女性に抱きしめられたまま、紫苑は窒息死寸前にまで追いやられるのだった