菖蒲side
さて、話しの続きですが
佐介兄さまに助けられる形で菖蒲は出会ったのです
実は以前から佐介兄さまの噂は耳にしておりました
最近学院に転入してきた先輩にあたる方であり
誰にも分け隔てなく優しく接し
頼まれごとや困っている方を断ることをしないそんな人柄のため
転入してから数日も経たぬうちにクラスの人気者となりました
そして佐介兄さまが忍だということも知り
同級生の他の候補メンバーたちみんなも佐介兄さまの強さ、人格や態度などから感服してました
それは真面目な土方も尊敬する人物と例えるくらいでした
皆に慕われる佐介兄さま……でもこの頃、菖蒲は偶然目撃したある光景により
佐介兄さまに嫉妬と妬みという感情を抱くようになりました
その原因とはかつ姉にありました
菖蒲が校内の庭を歩いているとかつ姉さまを見つけました
「かつ姉さま~♪」
急ぎかつ姉さまのもとに向かっていった菖蒲でしたが
「お~い佐介~♪」
「っ?」
菖蒲は次の光景を見た瞬間、まるで金縛りにでもあったかのように固まってしまいました
「うわっ、かつ姉!?…どうかしましたか?」
突然、佐介兄さまの背後から忍び寄ってきたかつ姉さまが佐介兄さまに抱きついてきた
「いやな。お前暇ならアタイと一緒にラーメン食いにいかねぇか?」
「えっ?ラーメン!?」キラキラ
「おう、どうだ?一緒に食いに行くか?」
「はい!!」キラキラ
ある時期を境にかつ姉さまが佐介兄さまととても親しくなったことがきっかけでした
※時間軸が丁度、佐介が葛城と心を通わせ、
菖蒲が必死にかつ姉さまに想いを伝えようと努力しているのに
佐介兄さまはいとも簡単にかつ姉さまと仲良くなり、可愛がられていました
それからというもの、菖蒲は佐介兄さまを敵視するようになったのです
佐介兄さまとかつ姉さまの仲を引き剥がすべくありとあらゆる手で妨害活動をおこないました
しかし、何をなすにも佐介兄さまとかつ姉さまの仲を引き裂くことはできませんでした
立て続けの失敗により菖蒲の佐介兄さまへの嫉妬心は増すばかりでした
しかし、その感情はある事件をきっかけに跡形もなく消え去っていったのです
それはある指名手配された忍さんを討伐する任務に出た時のことです
全員それぞれチームに分かれて行動することになり、
菖蒲のチームは菖蒲のほかにかつ姉さま。そして佐介兄さまでした
任務はこのスリーマンセルで始まりました
調べたところ
この人は菖蒲達同様、元は善忍に所属し
犯罪を起こした忍たちを投獄する監獄で監守人をしていたらしいのですが
気の向くままに囚人たちを痛ぶり尽くした上に、最期は命すら奪う
そんな彼の残虐非道の数々を目の当たりにしてきた上層部がついにその人を捕まえようとしたのですが
不覚にもその人の逃走を許してしまったらしいのです
捜索隊が行方を追う中、菖蒲たちもその捜索に当たり、見つけ次第
気づかれないよう居場所を捜索隊に連絡する
これが菖蒲たちが課せられた任務というわけです
タタタタタタタタタタタ!
「しかし許せねぇなその男!いくら罪人だからって改心する機会すら与えようとしねぇなんて!」プンスカ
「そのとおりですね!自分の憂晴しのために囚人たちを殺すなんて、善忍の風上にもおけません!……ですがわかってますよねかつ姉?僕たちの任務はあくまで標的を見つけることであり、戦うことではありません。」
「あぁ。わかってるって。心配すんなよ」
前をいくかつ姉さまたちのやり取りする声が聞こえてきましたが
正直、この時の菖蒲の耳にはお二人の声なんて聞こえませんでした
なぜならその時ですら、前を行くかつ姉さまに寄り添うように隣を走る
そんな佐介兄さまの姿に菖蒲はまたも嫉妬していました
「(またあの人、かつ姉さまとあんなに楽しそうに……許せません!かつ姉さまの隣は菖蒲のものです!この任務で手柄を立ててかつ姉さまの隣を勝ち取ってみせます!)」
今にして考えればこの菖蒲の考えが事態を悪化させることになるとは想いにもよりませんでした
そして捜索に乗り出して数時間が経ちました
「本当にこの先に指名手配犯が潜伏してるんだな?」
「えぇ、この子達が頑張って探し出してくれたので間違いはないかと…」
キュィ~!
ヴァウヴァウ!
佐介兄さまがあちらこちらに飛ばした手裏剣から変形した鳥さんや犬さんが標的を見つけたので菖蒲たちは潜伏先に急ぐと
そこは一言で表すなら不気味な場所でした
ぶくぶくと泡立つ沼が広がり、当たりには異臭が漂う、そんな場所でした
「うわ~…ひでぇ匂いだな?」クサッ
「確かに…これはきついですぅ~」クサッ
ここの臭いはとってもキツかったです
それこそ鼻がまがるくらいに
「とりあえず、あたりを探してみましょう」
「そうだな。じゃあ手分けして探すぞ。佐介はあっち、菖蒲はこっちだ」
「はいかつ姉」
「了解ですかつ姉さま!」
佐介兄さまとかつ姉さまの提案により、手分けして指名手配犯さんを探しました
「う~ん…ここにはいないのですかね~?」キョロキョロ
菖蒲はかつ姉さまと分かれて一人、標的を探していました
「でも抜忍さんは絶対に菖蒲が見つけてみせます!そしてかつ姉さまと……えへへ〜もうかつ姉さまったら〜♪」
抜忍を見つけてかつ姉さまに褒めてもらう、そう言ったシチュエーションを想像しただけで菖蒲は嬉しさのあまり、体をくねくねさせていました
「よぅ〜嬢ちゃん。随分と嬉しそうな顔してんじゃねぇか〜?」
「っ!?」
しかし、その楽しい気分は突然背後から聞こえる年のいった男の声を聞いた瞬間にして旋律に変わりました
それからすぐにカチャンと言う音とともに火が灯る音
「ふぅ~…」モワモワ
さらにこの煙に臭い…タバコの煙臭いだ
菖蒲は息を呑みながら壊れたおもちゃのように恐る恐る後ろを向くと
そこには手配中の男の人が不気味な笑みを浮かべながら立っていました
突然の事態、さらに抜忍さんから放たれる威圧に菖蒲の全身から震えが走りました
「嬢ちゃんみたいなガキがこんなとこで何してんだぁ〜?」
「みっ、見つけましたよ!あなたが指名手配の抜忍さんですね!」
「………なるほど、嬢ちゃんも忍の端くれというわけか、脱走した俺を捕まえに来たってとこだろうが、まさか嬢ちゃん。お前さん如きでこの俺を捕まえられるとでも?…ふぅ〜」モワモワ
指名手配犯さんは明らかに菖蒲を舐め腐るような目で見ていました
「あなたの身柄は菖蒲が拘束してみせます!」
「ふん。……やれるものならやってみな、嬢ちゃん?」ギロッ
ギラギラと鋭い眼で睨みつけながら手にしている鞘からゆっくりと刀を抜くのでした