芭蕉編 中編です
芭蕉side
先輩との予想外のあの出会いから数日が経ちました
既に先輩の存在は学園全土に知れわたり、先輩を倒し選抜メンバー入りの権利を得ようとするものもいれば
先輩を慕うものもたくさん出てきました
それほど、先輩の存在は大きかったのです
そして私もそんな光牙先輩の勇姿を目の当たりにし
先輩のような忍になりたいと思うようになっていきました
「えい、やぁぁ!っとう!!」
今、私は修行の一環として素振りの練習をしていました
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……ちょっと休憩しよう」
私は武器を立てかけると岩のほうに腰掛け、持ってきていたタオルで汗を拭いていました
その後、持ってきた水筒を手にし入れておいた緑茶を一口ゴクリと飲みました
「ふぅ…」
一息ついたとともに心地よい風が吹いてきました
風に煽られながら私がふけっていると
トコトコと自分のいる場所の近くから足音が聞こえました
「(誰だろう?)」
気になった私は物陰からちらっと見てみると
そこには
「」トコトコトコ
「こ、光牙先輩?」
なんと光牙先輩がいたんです
光牙先輩はこっちに気づいてないのかそのまま向こうに行ってしまいました
「…っ」スタタタ
私はこっそりと後をつけていきました
やがて、先輩は訓練場に着くとその足を止め、その場に立ち尽くしました
「…望み通り来てやったぞ」
光牙先輩が沈黙を破り口を開く
すると
「へへへへ、嬉しいよ。本当に来てくれるなんてさ」
「「「ひひひひひひ」」」ニタ
突然先輩を取り囲むようにリーダー格の生徒を含めた総勢15人くらいの蛇女の生徒達が現れたのです
「…ふん。こんなことだろうとは思ったが…タイマンが聞いて呆れるな」
「ほざいてな。あんたを倒せばあたしは選抜メンバーになることができるんだ。そのためにもあんたには消えてもらうぜ!やっちまいな!」
「「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」」
忍学生たちは一斉に光牙先輩の方に向かって行きました
「(先輩!?)」
今まさに先輩に襲いかかろうとした瞬間、私はこのままでは先輩がやられてしまうと思い、見ないように両手で顔を隠しました
でも、現実は違いました
ジャキィィィン!
ビュオオオオ!!!
「「「「「「「「キャアァァァァァァァァァァァァァ!!!?」」」」」」」」」
突然聞こえた無数の叫び声に恐る恐る目を向けると
「ばっ、バカな……あれだけの数をたった一撃で!?」
そこにはその場からあまり動かぬままにあんなにいた学生たちを蹴散らしてしまった光牙先輩がいました
そして光牙先輩の足元には襲いかかろうとした生徒たちが気絶し、倒れていました
「これで終わりか?」
「なっ、なんだと?」
「もっと歯ごたえのあるやつを引き連れてこい、こんなんじゃ……遊びにもなりはしない」
「っ!?」
光牙先輩の鋭い眼光に怖気をなしたのかリーダー格の生徒は悲鳴をあげながら仲間を見捨てて逃げ帰って行きました
「つまらん。時間の無駄だったな」
不機嫌な顔で光牙先輩はそう呟きました
「……ところで、いつまでそんなところに隠れてるつもりだ?」
「っ!?」
突然、こちらの方に向かって語りかけたことに私は驚きました
とりあえず私はゆっくりと物陰から顔をだした
「(うわーどどどどうしよう!?まさかこんなことになるなんて!?)」
私は緊張のあまり体がガチガチに固まっていました
「……おい」
「っ!?」
そんな私に光牙先輩が声をかけてきました
「お前は確か、選抜メンバー候補者たちの中にいた…」
「あっ、あの…その………ばっ、芭蕉です」
「そうか」
私は緊張しながらも自己紹介をしました
ふと私は光牙先輩がなぜ私に気づいたのかを尋ねてみることにした
「あっ、あの……?」
「なんだ?」
「いっ、いつから私がここにいるって気づいてらっしゃったのですか?」
「最初からだ。俺を追いかけてきたようだが、気配がだだ漏れだったぞ」
「そっ、そう…ですか」
まさか最初からだったなんて、驚いてしまいました
じゃあ先輩は今まで気づいてないふりをしていたということに
やはり先輩は只者ではないということを身にしみるほど再確認しました
「それで、お前はこんなとこで何をしている?」
「えっ?」
「俺の首を取りに来たというのなら受けて立ってやる。ただしやるからには覚悟するんだな」
そう言うと光牙先輩は武器を構えて険しい表情を浮かべました
その鋭い眼光を目にした私はまるで蛇に睨まれたカエルのようにその場に震えながら立ち尽くしていました
「ままま、待ってください、ちなうんです!?」
「っ?」
「はわわわ、思わず噛んじゃった……って、それどころじゃなかった!ごっ、誤解しないでください先輩!わっ、私は先輩と戦いに来たんじゃありません!」アセアセ
「何…?」
私がそう言うと光牙先輩はキョトンとしながらそう呟きました
「で、でで、ですから、私は先輩と戦いに来たわけではないんですって」アセアセ
「…ならばなぜ貴様は俺を追ってきた?」
「わ、私はただ先輩が1人でここに向かう姿を見て気になったもので…」
「……ふん」スッ
話しを聞いた光牙先輩は何やら興が削がれたのか武器をしまいました
でも良かった。先輩と戦うことにでもなったら私1人では絶対に勝てはしないでしょう
まして私たち5人いっぺんに相手に無傷だった相手ですから
私がそんなことを考えていると光牙先輩がこちらに向かって歩み寄ってきました
段々と近づいてくる先輩を見て私は思わず右往左往する
しかし、先輩はそんな私を無視して先輩は何も言わず通り過ぎようとしました
私に背を向け、歩き続ける先輩
その時、私は思っていました
二度も先輩の戦う姿に見とれていた
そしてこの人から忍を学べば自分はもっと強くなれるのではないか?
今の自分を変えてくれるのではないかと
「あっ、あの!」
私は勇気を振り絞り、先輩に声をかけました
すると先輩は立ち止まりました
「なんだ?」ギロ
「ひぃ!?」ガクブル
軽くこちらを振り向いただけなのにその威圧は半端ないものでした
「あっ、……あの、ですね!」
思わず後ずさりしてしまいましたが、怯える自分に今一度喝を入れて先輩に話しかけました
「おっ……お願いします!私に稽古をつけてください!」ペコリ
「…?」
私は土下座しながら必死に頭を下げて頼みました
「…なぜ俺がお前に稽古をつけなければならない?」
「あ、あの……わ、私強くなりたいんです!一人前の忍になりたいんです!だからお願いします!」
「どうして俺に?鈴音や他の教員から教わればいいだろう?」
「…それもそうかもですが、先輩の戦うお姿に私、すごい感動を受けました。先輩から教われば私も強くなれるかもしれないと思いまして」
光牙先輩に自分の気持ちを私は素直に伝えました
先輩は少し考えているようでこっちを見ながら無言でいましたが
「はぁ…いいだろう」
「ふぇ?」
「だがな、これだけは覚えていろ。俺はここの教員たちの授業よりもハードだ。お前にそれらが耐えられるというのならな」
今以上に厳しい修行ときいて私は息を飲みました
「どうした?怖気付いたか?」
「…や、やります!やらせてください!私、頑張ってついて行きますから!」
「……ふ、よかろう。では今から修行を始めるぞ」
「ふぇ?い、いまからですか?」
光牙先輩のいきなりの発言に驚きました
「どうした?やるなら早くこい」
「はっ、はい!!」
私は修行場に行こうとする先輩を追いかけました
「(がんばるぞ、りっぱな忍、目指します!)」
先輩の後ろを歩きながら私は誌を読みました